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10/2「奇跡をもう一度」

 蘇りの儀式は成功した。崖崩れの事故で土砂の下敷きになり命を失った我が妻は、再び生を取り戻したのだ。
 目を覚ますなり、妻は息子の名前を口にした。
「あなた、ロビーは?」
「…君と同じ事故で死んでしまった」
「そんな…。あなた、お願い。私を生き返らせたように、ロビーを生き返らせて」
「それは…」
「お願いします。私の命をあげてもいいから。ロビーだけは、どうか…」
 妻を再び失うわけには行かない。私はうなずいた。
「では再度、儀式の準備をしよう。部屋を出ていなさい」
 妻が出て行った後、私は隣の小部屋を訪れた。
「やはり、そう言うと思ったよ」
 小部屋の老人は笑った。
「構わん、わしの命をやりなさい」
「しかし…」
「良いのだ。妻も同じことを予想し、望んでおった。娘と孫のためなら何も惜しくはない」
 義父はそう言って儀式の部屋に行き、魔法陣の中央に立った。
 奇跡を起こすための準備は、整った。妻の母を、そして今度は妻の父を、儀式の生贄として。

(所要時間:9分)

10/2/2023, 10:32:02 AM