『太陽のような』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
※物語(?)です。
太陽のような笑顔
その言葉が誰よりも似合う、そんな男の子だなと思った。
真っ直ぐで無邪気で私とは住む世界が違うんだと
心から笑っていない私とは真反対だ。
そんな嫉妬からだろう。私は彼が大嫌いだった。
真っ直ぐな心は才能とおなじ。生まれ持ったものなのだ。私がだいぶこじらせていることは自覚している。
_どこまでも可愛げ無いな…私
だけど人は自分に無い才能を持った人に惹かれるようにできているらしい。
手も届かないみんなを照らす明るい星。
「いつも大月さんってサポートしてくれるよね!」
彼はみんなに対して浮かべる笑顔を私に向けた。
_私も例外じゃないんだ
別に目立つようなことでもないのに、大したことで もないのに、そんな輝く表情を向けられたら…
私は勝手に嫌悪感を抱いていた事に罪悪感を覚えた。
それと同時に心まで照らされるような気がした。
眩しい笑顔が私を輝かせてくれた気がした。
[サンストーン]を入手したのは、
行きつけ店のオーナーが入院して閉店になった時だった。
「主人でなければ値段のことはわからないから」
当時のラベルの半額でいいと言う奥さんも、もう80を越すという。
もともと二人は東北大学の鉱山学科卒だったらしい。
地味な日本産鉱物や岩石がメインのこのお店の中で、オレゴンサンストーンの美しい原石は異様な代物に見えた。
「オレゴン産のはね、私が好きだったのよ。
日本のM島産のサンストーンもとても面白いのだけれど、この石を見たとき本当に太陽のようでびっくりしたの」
そういって奥さんも太陽のように笑った。
鉱物学的に言えば[含自然銅灰長石]だろうが、
同じ鉱物でも産地によって顔つきはさまざまだ。
この異彩なオレゴン産サンストーンは、透明の斜長石の中に自然銅の細かなチップをたくさん散らばせている。
終わりを迎えるこの店の最後を飾ろうとするかのように、虹色の美しい輝きを痛いほど放っていた。
●サンストーンには[太陽の石]や[日長石]の別名があります
【太陽のように】
どんなに苦しんでも落ち込まない
どんなに嫌なことがあっても笑顔で
どんな勝負でも熱血に
どんな人にでも穏やかに
どんな人にでも温かく
ときには人に幸せを与え
ときには人から幸せをもらい
そんな自分にも人にもやさしい
太陽のような気持ちでいたい
ええ〜!すっごくきれいな色だね
これだとすぐに見つけられるよ〜
朝のHR前に教室ドアの方でみんなが騒いでいた。色とりどりな人達の発光色と混じって、隙間から黄色の光が漏れ出ている。
おはよと群がる人をかき分けてこちらへやってきた。黄金色に包まれた幼なじみは私を見てうっすら笑みを浮かべている。
私今朝、やっと発光した
おめでとう 皆より遅れて柄にもなく不安がってたしね
柄にもなくって言うな
彼女は不満げながらも少し嬉しそうだ。
彼女の色は原色の中でも珍しく、鮮やかでさっぱりとしている。かくいう私は暗色だ。喜ぶ彼女と裏腹に、私は嬉しくなかった。むしろ私は、前から彼女を明るい色にしないでと願っていた。
どうした?色がいつもより濃いよ
まゆ根を寄せて覗き込んでくる。
私は彼女と並べない。どうしても彼女の光が私の色を誇張する。私の感情と比例して深くなるこの色も好きじゃない。
あんたまだ自分の色好きじゃないの?自信持ちって
彼女はいつも私を励ましてくれる。でも今は無理だ。嫉妬に駆られて余計なことを言い出しそう。
...あんたは嫌いでもさ、私は好きよこの色
いいじゃん、 紺碧 宇宙の色だ
私の色に自分の色を重ねて言った。
私と目が合うと全部を包む色だよと言う。
満面の笑顔で、私の色を讃えながら。
.太陽のような
ある日の放課後の帰り道、突然クラスメイトの女の子から声をかけられた。
「これあげる」
「え、ああありがとう」
あまり話したことのない女子から話しかけられ、少し動揺しながら受け取る。
もちろん物を送り合う間柄ではないので、もらう理由に全く心当たりがない。
「これバレンタインチョコね」
なるほど。バレンタインか。
今年のバレンタインは、いつも通り誰からももらえなかったので、素直に言って嬉しい。
だが――
「……バレンタインは一週間前だよ」
そういうと、彼女は困ったような顔をした。
「実はさ、バレンタインのやつがフライングしちゃって……」
「バレンタインは予定通りだったよ」
「フライングしてね」
「だから――」
「フライング」
「分かったよ」
堂々巡りになりそうだったので、自分の方から折れることにした。
「すぐ食べてね」
「分かった」
そうして綺麗にラッピングされた包装を丁寧にほどいていく。
まあ多少変だとはいえ、嬉しいものは嬉しい。
ワクワクしながら包装をとくと、出てきたのは何とも形容しがたい物体だった。
まあるい球になんだか毛?が生えている奇妙な物体。
ナニコレ?
「何これ?」
思わず口に出てしまい、しまったと後悔する。
だが彼女は俺の失言を聞いても、特に気にした様子もなく、質問に答えてくれた。
「太陽」
「たい……よう……。これが……?」
俺の体に稲妻が走る。
これが?あの太陽?
マジマジと見つめるが、全く太陽には見えない。
「君は私にとって太陽だから。太陽をイメージして作ってみたの」
「……そうなんだ」
太陽をイメージしたチョコ?
この出来損ないの太陽のような物体が俺だと言われても、俺の心中は複雑である。
もしやチョコを使った俺に対する高度な皮肉か?
それともドッキリ?
駄目だ、目の前の物体のショックによって思考がまとまらない。
何が正解なんだ。
「早く食べて。そんなにまじまじ見つめられたら恥ずかしいよ」
彼女は俺に食べるように促す。
目の前の物体を見て、俺は思わず生唾を飲み込む。
これは、普通のチョコのはずだ。
マンガじゃあるまいし、とんでもなく不味いということは無いだろう。
だが何故だろう。
とてもじゃないがおいしそうに見えない。
俺はいつも『食事は腹に入ってしまえば、全部一緒』だと思っていた。
だが今回の剣で、見た目は大事だと認識を改めることになった。
そんなことを考えている間にも、彼女は俺を心配そうに見つめている。
気まずい。
意を決し、太陽?チョコを口に入れる。
毛のようなものが口の中で刺さって少し痛い。
そしてかみ砕くと、口の中に甘いチョコレートの味が広がる。
「おいしい?」
「おいしい」
「よかった」
彼女は胸に手を当てて、息を吐く。
「ありがとう。じゃあ、私帰るから」
「え、ああ」
そう言って彼女は、そそくさと帰ってしまったのだった。
「なんだったんだ、今の」
彼女が去っていった方を見ながら、独り言を呟く。
何が何やら分からないが、このまま考えても答えは出ないので、家に足を向ける。
まあ、でも形は悪かったけど、けっこうおいしかったな。
でも、チョコをもらったということは、お返ししないとな。
人生初のホワイトデーは少しだけ楽しみだ。
何でお返ししようかな。
彼女は俺のことを太陽だと言っていたから――
『君は私にとって太陽だから』
彼女の言葉が頭をよぎる。
……ひょっとしてだけど、あれって愛の告白か。
今まで話したことすらないのに、なんで?
俺は告白の返答をすべきなのだろうか?
でも、彼女は俺に答えを聞くことなく帰ってしまったし。
もしかして俺の勘違いか?
ずっと同じ考えがぐるぐると頭の中を回り、気が付くと家の玄関の前まで来ていた。
こうなったら水を飲んでゆっくり考えよう。
そう思いながら玄関の扉を開けると、俺に気づいた母親がリビングから出てきた。
「お帰りなさい。着替えは洗濯機に――
……あら、どうしたの?
太陽みたいに顔が真っ赤よ」
ありがとう
ぼくに光を望んでくれた
夜道を照らすランプを見て
太陽のこと思い出すように
夜明けにかがやく太陽を見て
きみのことを思い出すよ
「太陽のような」
ある文官の処刑(テーマ 太陽のような)
1
ある中世ヨーロッパ「風」の世界の話。
一つの王国があった。
王は国を運営するため、貴族を使う。
貴族も身分の高低から影響力の有無まで様々であったが、それぞれの立場から貴族たちは王と一緒になって国を運営していた。
民主主義ではない国だ。
貴族は権益を守るために民に税を課し、平民は当然のように搾取された。
そういう国の話だ。
国の組織の上層部にかろうじて足を引っ掛けたくらいの職に、一人の貴族の青年がいた。
彼は王の意志に従って国の決まりを作ったり、決まりに従って貴族を動かしたりする、今の日本で言う官僚のような仕事をしていた。
彼は、それまでは主に上司の指示に従って地方の小貴族や平民の商家などに通知を出したり税の取り締まりや争いの執り成しなどをするための仕事をしていた。
彼は、自分のその仕事を『言われたことをやるだけの小間使い』だと思っていた。
そのため、昇進し、彼自身が裁量権を持って自由に仕組みや決まりを作る立場になった時、彼は喜んだ。
もちろん、彼は王様ではないため、できる範囲に限りはある。
しかし、彼は『小間使い』をしている間にしてみたいことが溜まっており、また、『自分だったらこうするのに』と思っていることもたくさんあり、その中には、いくつかの仕組みを変更することで多くの人が利益を得て、また、国の収益も増すという理想的な案もあった。
2
彼は早速、貴族たちへの根回しを始めた。
平民の商家は金を持っている。貴族たちは権力や影響力を持っている。
彼は平民の商家に『いい話』として、仕組みの変更にって得られる商家の利益を説いた。
商家の利益自体は大きくなかったが、案はうまくいくように思ったこと、何より、貴族が商家の利益のことも考えて動いてくれたことに心を動かされた商家は、ある程度の『協力金』を彼に払った。
彼は、その協力金を元に影響力のある貴族に会いに行き、付け届けを行い、仕組みの変更によって得られる貴族の利益を説いた。
貴族は、付け届けと、うまく行った場合の利益についてきちんと考えていること、そして何より提案の順序を間違えず、礼を失していないことに満足し、彼がその案を上司に出した時に賛成することを案に仄めかした。
彼はそれを繰り返し、渋る貴族がいたら商家に付け届けを増やしたり、その貴族の上の人間を説得したり、また、仕組みが回り出したときの利益供与の輪に組み込んで『自分ごと』にしたりと、労を惜しまず立ち回り、最終的に案を通すときには、反対するものが誰もいない状態まで持っていった。
そして、彼の新しい仕組みはめでたく通り、王国は複数の立場の人間にとって利益があり、損をする人間は特にいないという、改善が行われた。
そのそつない動きは周囲の貴族にも、そして、国の責任者である王の目にも留まった。
彼は、王から呼ばれ、これからもその活動に期待すると、直々にお褒めの言葉を賜る栄誉を得たのだ。
3
彼は王から認められたことを非常に喜んだ。
今代の王は、多くの場合公正で、多くの貴族の支持も得ており、名君であると評価を得ていたし、彼自身も王を尊敬していたからだ。
それは、彼の動きや思想まで認められたものだと、彼は思った。
彼は次の動きを始めた。
しかし、『小間使い』を脱した彼が次に目指すのは、王に褒められた『誰もが特をする状態に持っていく』ことを繰り返すのではなく、彼自身が、付け届けをした高位の影響力のある貴族の立場になることだった。
彼は、施策を進めるために影響力をつけていたのに、段々と影響力を増すための施策や利益供与のための事業を行うようになった。
それは、彼にとっては言い分のあることだった。利益を配分された貴族たちも、最初はありがたがっていた利益供与に慣れていき「協力するためには何かを差し出すのが「当たり前」と思うようになり、次は「より多くの利益を渡さないと協力しない」と脅してきた。
自分の影響力を増さないと、大きな事はできないのだ。
彼は、腹案をいくつか同じように根回したが、『誰もが特をする理想的な案』というのは早々あるものではない。
彼は付け届けのための資金を得るために商家に主に利益を供与し、あまり味方のいない貴族や、一部の平民に損をさせる仕組みを作り始めた。
損をする側の人間はもちろん反対するが、影響力がある貴族たちには利益を供与する形にしたため、反対意見は押しつぶされた。
彼の部下で、彼の言う『小間使い』をしている年若い貴族の少年は、彼に言った。
「この案では、声の小さい者たちが損をするだけではなく、その者たちが協力しなくなった時、長期的には王国に不利益が出ませんか?」
彼は、部下に言った。
「大きなことをやるためには、大きな影響力が必要だ。大きな影響力を得るためにはとにかく実績を積むことで、実績とはつまり、どれだけ多くの貴族や商家に利益を回したかということだ。ある程度はこういうことも仕方がない。」
「しかし、今回損をする者たちは、黙るだけで終わるとは限りません。国を見限って別の国に行ってしまうなどのおそれもあります。」
部下は、損をする者たちの中に平民の職員が含まれていることを気にしているようであった。
「そこまで気にしていては何もできない。今は私が私の責任で物事を動かしている。君は黙って言われたことをしてくれたまえ。できないなら別の者にやらせるまでだ。」
部下は引き下がった。
しかし、その部下は個人的に国の上層部の上澄みとつながっていた。
4
引き下がると同時にこの国の宰相の元へ走り、彼が暴走を始めているのではないかと懸念を話した。
宰相は少し考えると、答えた。
「お前の血筋と才は両方とも常人離れしたものがあると、私は思っている。だから、こうして立場を超えて直言を許すようにしている。しかし、今回のことは経験不足が出たかな。まだこの段階では何とも言えないのだ。」
部下は食い下がる。
「職人が逃げてしまうと、今はささやかですが、国の特産が減ることになります。」
「そうなった場合、国全体としては損失なのは確かだ。しかし、その損失の量に比べて、王の覚えがめでたい彼の実績と手腕は多い。その天秤が逆転しない限り、彼が罰せられることはないだろうよ。」
「実績よりも損失が逆転するほどのものであれば、逆転した時には、あの人は不興を買うだけでは済まないのではないですか。」
宰相は部下から目線を外し、窓の外を見た。
「そうだろうな。彼の進み方によっては、王に『国に益より害あり』と判断される頃には、取り返しが付かない状態になっている可能性もある。」
「・・・止めないのですか?」
「今は彼は王の覚えがめでたい。彼に下手に反対すると、彼が根回しした貴族たちのみならず、王の不興を買う可能性がある。太陽に近づきすぎるとこちらが焼かれる。立場とタイミングは考えなければね。」
「なんだか、あまり危機感を感じられていないように思われます。」
宰相はこちらを向いた。
「わかるかね。そのとおりだ。私は王をよく知っている。彼は太陽のような王だ。明るく、公明正大で、皆を照らす。しかし、太陽は太陽の理屈で動いている。彼は国を適正に運営するためにその神経を使っている。その判断において、たかが文官一人の暴走を処断するタイミングを間違うとは、私は思わない。」
5
文官の彼に話を戻す。
彼は商家から集めた金を溜め、『自分が巨大な利益を得るための仕組み』を通すための付け届けをし始めた。
貴族たちにももちろん金を渡すが、仕組み自体は『平民から利益を吸い上げ、最も利益を得られるのは彼自身』というものであった。平民といっても、商家は彼の金蔓であるため枠から外し、地道に畑を耕している多くの国民が搾取の対象であった。国民に少しの負担を強いて、別の少しの利益を与える。その仕組の間に彼自身が入り、負担と利益の間の僅かな、ほんの僅かな額のお金と、負担を吸い上げる仕事と、利益を与える仕事を割り降る大きな権益を手に入れる。
僅かなお金といってもそれは平民一人あたりの話で、国民全体で見ると大きな額であった。
そして、彼が莫大な付け届けでその案を上奏したとき、彼は逮捕された。
6
繰り返すが、ここは中世ヨーロッパ「風」の国だ。
この国では、明文化された法は現代日本と比べ物にならないほど少ない。
こういう国では、権力者の権力は強く、法などの『決まり事』の力は相対的に弱かった。
彼の逮捕には明確な理由はない。
『王の不興を買った』という事実の前に、そんなものは不要であった。
また、彼が付け届けをした多くの貴族たちは、今回の彼の『仕組み』には大きく組み込まれておらず、単に賄賂をもらっただけであったため、彼を弁護しようとまえはしなかった。
彼は逮捕からの拷問であっさりと仕組みの全体像を吐き、しかし『それのどこが悪いのだ』と叫んだという。
彼の疑問に答える必要はなかったが、拷問官は親切にも答えた。
「王様は、自分の国にこれ以上寄生虫を作りたくないんだろうよ。」
彼は無実と釈放を訴えたが、結局彼は処刑された。
7
彼の処刑は、国民の前で行われた。
処刑場は、国民を苦しめる仕組みを作ろうとした悪い代官の処刑、として、多くの国民が集まって大盛況であった。
その処刑場を遠目に見る宰相と彼の部下。
宰相は部下に諭すように言った。
「太陽は明るく、暖かく、我々がものを見るための光をくれる。ありがたい存在だ。
だが、同時に太陽の光は強すぎると雨を遠ざけ、作物を枯らせ、暑さで生き物を殺す。
そして、陽の光は影も生む。すべてを照らす光など、ないのだ。
我々は、太陽をありがたく思い、太陽のもとで我々がいかに強く幸福に生きられるかを模索しなくてはいけない。
それが、王に対する臣下の在り方というものだ。
しかし、太陽の方を自分の都合よく動かせると錯覚してはダメだ。
彼は、自分の心の中で太陽が自分の都合よく動いてくれると、勘違いしてしまったのだ。」
要するに、畏れが足りなかったのだ。
部下の少年の視線の先で、かの臣の首が落とされた。
初めて間近で見る処刑に、少年に宰相の言葉がどれほど響いたのかはわからない。
少年にとって、その王はそれまでもそれからも変わらず「太陽のような存在」であったから。
しかし、少年にとっての「太陽」の定義は、「暖かく正しく明るいだけのもの」から「 暖かく正しく明るいが、熱く冷酷で影も生む存在」に変わった。
少年が『小間使い』から卒業するまでは、まだしばらくの時間が必要そうであったが、少年は彼のようにならないためには、それでよいと思った。
元気ハツラツ、底抜けに明るい、誰にでも優しい。このうちのいくつかに該当する人のことを、太陽のような存在、と喩えることがある。現在では、自分の好きな人や推しが目映い存在である、という意味で用いることのほうが多いのではないだろうか。
私には、好きだとか推しだとか言える何かがないから、太陽のような、という比喩を使うことができない。これはとても悲しいことだ。生き甲斐がない、と公言しているのと同じだから。
淡々と過ごす日々は退屈で、いつも日が昇るたびに「また朝か……」と思ってしまう。眠りにつくときは幸せなのに、目覚めると憂鬱な気分になってしまうのは、ずっと夢の中にいることを無意識下で願っているからだ。断定しているけれど、そこにはそうあってほしいという私の想いが込められている。
十六の歳で永い眠りを望むのは、早すぎるにもほどがあるのだろう。しかし私には夢や目標もなければ、守りたいと思うものさえない。このまま生き続けるくらいならさっさと火葬されたほうがマシだと考えるのは、至極真っ当なことであるような気がする。
私の前に、太陽のような存在と呼べる人は現れるのだろうか。もしその人と出逢えたのなら、私のこのつまらない日常も、少しは良い方に向かうのだろうか。
夢から醒めてうだうだと巡らせていた思考を断ち切り、上体を起こす。
カーテンを開けると、眩しい日の光が、窓から差し込んできた。
私の部屋に、春の陽気が満ちていく。
……朝は嫌いだ。
だけれど、このときはなぜか、優しい温もりが、自分の中に宿る感覚がした。
第二十五話 その妃、謀叛を企てる
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
古来より、人々に恵みをもたらす太陽は信仰の対象とされてきた。
つらく苦しい時に手を差し伸べ、人々の心の支えとなった、かけがえのない救いの象徴。
恐らくこの国の人々にとって帝とは、太陽のような存在なのだろう。
人の心を変えることは、決して容易なことではない。ましてや、英雄のような存在に太刀打ちなど、到底できるようなものでもなければ、本来なら許されざる行為。
勿論、それは一般論の話に過ぎないが。
……一つ、こんな話をしてみよう。
夢の中に出てきたとある美しい小鳥と、それに心を奪われた一人の皇子の話だ。
皇子は、寝床や食事、一生楽して暮らしていける程の金貨も用意して、その小鳥に求婚を申し込んだ。
けれど、小鳥は自由を求めていた。
だから皇子は、小鳥の棲まう森を焼き払った。
それでも小鳥は、皇子の手を拒んだ。
愛する人々が救いを求め続ける限り、誰の手も取ることはできないのだと。
だから皇子は、貧しい村の人間たちの命を次々と奪っていった。
それを、間違いだとも思わずに。まるでこの手を取らない方が悪であると、知らしめるように。
さらに皇子は小鳥に希った。
どうか、我の国を助けてはくれまいかと。
作為的に、自国の村を貧困に苦しませて。
救いを求められた小鳥は、自由を諦めた。
けれど、その血に塗れた皇子の手だけは決して取らなかった。
それでも皇子は愉悦に浸った。
たとえ襤褸籠でも、ようやくその中に収まってくれたのだと。
立派な鳥籠を用意して待っていた皇子だったが、小鳥は自由だ。襤褸籠ではいつ壊れ、そして逃げてしまうかわからない。
だから皇子は、その襤褸籠に雄鳥を放つことにした。
……愛する小鳥から、自由を奪うために――。
『手掛かりを見つけたとは真か』
『わかったことがある、とだけ』
怯えながら少女が連れてきてくれた帝に、勿体付けながらこう答える。
捜し女はまだ現存していることを。
愛する男とその子供と幸せに暮らしていることを。
そして、眉間に皺を寄せた男は、怪訝そうな顔でそれにこう答えた。
『それがどうした』
薄々気が付いていた。
渡り歩いた夢の中でそれは徐々に確信へと変わり、そして今、目の前で確証を得た。
『それ以上用がないなら、我は失礼する』
この男は、崇められるような人間ではない。
最低最悪の下衆野郎だと。
『悪いけど、用ならあるの。捜し女を見つけ出すためには重要なことだから』
『可能な限り手は貸す』
『ありがとう。私も報酬のために全力を尽くすわ』
そうしてまずは、大量に様々な事を要求した。予言に必要だからと、適当に理由を付けて。毎日、毎朝、毎晩、一日に何度も。
予言の巫女などではなく、ただの我儘女ではないかと、高官たちが頭を抱えたら、今度は少女を見る目を変えた。
その我儘女に付き合える程に、この少女は優秀であると。
そして、瑠璃宮に想い人がいる高官に助言をし、少女を瑠璃妃付きの侍女へと昇格させた。
瑠璃妃がこの後宮で唯一、話が通じる人だということは、夢を渡ればすぐにわかること。
同時に、ここでは雑音が多過ぎるからと適当に理由をつけて、謀叛を企てるのには絶好の場所を手に入れた後、少女の推薦をした高官の書簡に一筆書き加えた。
“あなたのたった一つの願いを叶えましょう”
廃離宮までの、簡素な地図を添えて。
『これでようやく、予言に集中できそうよ。だから、最後に一つだけいいかしら』
そして、我儘に振り回されて過ぎて相手をするのさえ億劫になった帝は、適当に相槌を打って『叶えてやるからさっさと視界から消えろ』と睨み付けながら言い放つ。
けれど、言質は取ったと我儘女は、感謝するわと微笑んだ。
『“良”という少年を、私の世話係にしてくださる?』
理由は適当に……そうね。
“知人に似ているから”とでも言っておこうかしら。
#太陽のような/和風ファンタジー/気まぐれ更新
太陽のような
『太陽のようなあなた。いつも明るく笑っていて元気
な人。どんなに辛くても、みんなの期待に答えようと
して、本当の自分を出せずにいるあなた。本当は苦し
いのに、辛いのに、みんなの太陽でいるために一生懸
命に涙を堪えて笑っている。だから、あなたがひっそ
り泣いているのを見て、私はあなたの太陽になろうと
思いました。』その手紙を見ると、視界がぼやけて文
字が見えなくなります。手紙に滲みができて、私の太
陽であったあの人を思い浮かべるのです。いつも私に
笑いかけてくれて、あの日も自分が女子トイレに入っ
たことは内緒だと言いながら私の目元をハンカチで拭
ってくれました。あの時から、いやそれより前から彼
は私のヒーローだった。どんなに辛いことがあっても
彼がいたから私も笑っていられた。彼にとって私が太
陽であったように私にとって彼は太陽だった。
【太陽のような】
男「君は“太陽”の“陽”だ。僕は“太陽”の“太”、二人で愛の太陽を作ろう。」
女「ごめんなさい、太い人はちょっと…」
ーーーーーーーーーー
(時間足りないので一発ギャグです。)
あなたの笑顔は太陽なようだよ
一目みれば落ち着くし
自分も笑顔になれるんだ
だから会いたいって願ってしまう
あなたはどお思ってるの?
友達?
辛いな……
太陽のような
私にとって太陽のような存在は家族だ。いつもあたたかくて、力強くて、私の毎日を照らしてくれる。一緒にゲラゲラ笑って、私が泣いた時には優しく背中をさすってくれる。だから私の周りはいつもあたたかいのか。
私も家族の一員なんだから家族にとっての太陽のような存在であったらいいな。
[太陽のような]
太陽のような、あの人の笑顔。
とても素敵だな。
いつも笑顔ですごく楽しそう。
あの人は、とても面白い。
クスッと笑ってしまう。
あの人がいるから毎日が楽しい。
ずっと、一緒にいたい。
『太陽のような』
「太陽のような人」というのは、具体的にどんな人なのか考えてみました。
・光を与えてくれる人
・明るくて温かい心の人
・包容力があって優しい人
・方向を示してくれるリーダーシップのある人
・魅力的な憧れの人
あまり思いつかなかったですが、悪いイメージは浮かびませんでした。言葉的に、「ギラギラしてる人」も連想しましたが、「太陽のような人」ではないと判断しました。
日本語って不思議ですね。
【太陽のような】
昨日のミスをまだ引きずったまま
重い身体を起こして無理矢理目を覚ます
こんな朝は、太陽のような君に会いたい
何事もなかったように「おはよう」って
明るく眩しい笑顔を見せてくれるから
やりたい事よりやらなきゃいけない事が
1日の中で次から次へと増えていく
こんな日は、太陽のような君に会いたい
大丈夫、ちゃんとやりたい事もできるよって
全てを包み込むような温かさをくれるから
忘れかけていた喪失感が不意によぎる
こんな夜は、太陽のような君に会いたい
ぽっかり空いてしまった心の穴の
闇を照らして未来へと誘ってくれるから
僕1人だけじゃ何もできなくても
君と一緒ならそれだけで大丈夫だって思える
だから今日も、太陽のような君に会いたい
いつも笑顔で
頼りになる人。
その人の存在は
自分にとって
とても心地よく、
安心出来る。
だけど、
周りからも
沢山頼られていて
少し心配。
何か
ちょっとでも
負担を軽減できるような、
自分に出来ることしよう。
太陽のような君
ディズニーに行った時は
お互いちょっと遠慮していたよね
俺だけかな?
一緒に住むようになって
もっと距離が縮まったね
去年、世の中を騒がせたゴシップを覚えているだろうか。某アイドル事務所の社長が、
所属しているタレントに手を出していたという問題である。そこから、業界最大手だった事務所を取り巻く環境は大きく変わった。
テレビ出演の見合わせや、所属タレントをCMで起用しないことを明言した企業もある。
今まで、毎日のようにメディアで取り上げられていた人が一瞬で姿を消したのだ。なかには、これを機に退所を決めた人もいる。
それ以上に、問題視されたことが私たちが
タレントを見る目が変わったことだろう。
業界最大手というだけあって、所属タレントはプロ意識の強い人ばかりだった。いつも、
どれだけ辛いことがあっても人前では太陽のような笑顔を絶やさずにいた。そして、みんなはそんな彼たちを嫌に思う人はいなかった。それが今や、あの子は被害にあったのだろうかと邪推する人が多くなってきている。
もう、アイドルとしての再起は厳しいだろう。
どうして、被害者がこんな思いをしなくてはいけないのか考えた方がいいのではないかと思う。
【太陽のような】
今日の外回りの営業はこれで終了だが、少し休憩していこうと近くの公園に入った。それから直ぐに数人の子供たちがやってきた。
その内の2、3人はランドセルを背負っているところを見ると、まだ下校途中のようだ。
子供の体温は暖かい。だからきっと、寒い冬なんかも短パンで過ごせる子がいるんだろう。
俺はそんなことを思いながら、熱い缶コーヒー片手に、ベンチから公園ではしゃぐ子供たちを見ていた。
その時、コロコロとボールが目の前に転がってくる。子供たちのうちの一人が持ってきたものだ。
俺は彼らに向かってボールを蹴って寄越す。
彼らは笑ってありがとうございますと、俺に向かって言ったため、手を振り答える。
「先ずはちゃんと家に帰れよ」
ランドセルを見ながら彼らに告げると、はーいと笑顔でランドセルを手に持ち、また後でと何人かが帰っていく。
素直な子供たちの笑顔に、何故だか暖かくなったような気がした。
その後、手に持っていたコーヒーも空になっていたため、俺は公園を後にした。