『大空』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
42回紙を折ったなら月に届くという。
でも10回も行かず折れなくなってしまったから
切って重ねていこうとした。
でもあまりに小さな破片になりすぎたから
はじめの紙をとても大きくした。
折って折って折って切って切って重ねて重ねて
高く高く高く空に伸ばしたならそうしたなら
「また例の事件ですか」
「しかしガイシャはなんだっていつも」
「こんな紙の山に埋もれてるんですかね」
‹大空›
べー、と古びた音を立てて灯る赤いランプ。
隣の子は静かに眠っている。
振り返る運転手に首を振ると、また車体が動き出す。
流れていく車窓の景色を一つも見ないで
眠る子を可哀想に思う。
「帰りたくない」だなんて、
よりによってこのバスで言ってしまうなんて。
‹ベルの音›
大空
果てしなく広大な
パレットは
どこから来たかも
わからない
七色のアーチや
オレンジの波紋
可憐な水色
このパレットの持ち主は
色作りが得意なんだろう
『 大 空 』
それはとても広くってどんなに走ったり
追いかけても追いつけないんだ
どれだけ続いてるかだなんて誰も分からない。
人生もそのはず
だれも自分の人生なんてさ
分かるはずがない
だから今を楽しまなきゃ意味が無い。
大空を飛び立ちたい
空を大きく中に飛び回りたい
そんなできたら最高だね!
大空
※土日祝はお休み
金曜のお題は週末に更新します。
大空
俺はついこの前まで部屋に3年間引きこもっていた。外の世界を遮断しインターネットの中の名前も顔も知らない人とゲームをして毎日を過ごしていた。中学2年の冬から学校には行っていない。
そんなある日、突然知らない大人が訪ねて来て、俺の部屋の前でなぜか北海道の牧場の話しを始めた。
昔、サラブレッドだった馬を飼っている。
牛は全て放牧しているから餌やりは必要ない。北海道では羊も食べるから何頭か飼育を始めた。豚もいるよ。などなど本当に牧場の話ししかしない。
誰だこいつ。
どうやら、中学のクラスメートの叔父さんらしいが、そのクラスメートも思いだせない。ますます謎だ。それでもその人は2カ月間、毎日通ってきていた。俺が返事をしなくてもお構いなしだ。
そして、春が終わりに近づいたころ、その人は北海道に帰ると言った。
「一緒に行こう。明日、中標津空港で待っているよ。」
俺は3年ぶりに部屋から、家から出ることを決めた。なんだか、北海道へ行くことが当たり前に感じていた。牧場へ始めて行く気がせず、知っている場所に帰るような感覚があった。
中標津空港には、牧場のオーナーであるクラスメートの叔父さんと迎えにきていた奥さんが俺を待っていてくれた。
奥さんの車は雄大な北海道の真っ直ぐな道を牧場に向けて快調に走っていく。きたの大地に大空が広がり、俺が今までいた世界とは真逆の景色だ。
でも、不思議と不快感はなく、むしろ心が落ち着いてきていた。
牧場のゲートを抜ければ、そこには牛に馬、羊、豚が静かに優しく飼育されていた。
北海道に来てから1年が経つが、俺は牧場でボーダーコリーのシェリーと放牧している羊を集める仕事についている。俺とシェリーの息が合わなければ羊を思うように誘導することはできない。気の抜けない仕事だ。
これからの夢もある。近い目標は、高卒認定試験に合格することだ。仕事の合間にオーナーの奥さんに勉強を見てもらいながら合格を目指している。奥さんはスパルタだが忍耐強く付き合ってくれる。優しい奥さんだ。
そして、高卒認定試験に合格したら大学にいって酪農のことを専門的に学び、いずれは獣医になりたい。「夢はでっかく」がオーナーが俺にいつも言ってくれる言葉だ。その言葉通り、獣医になることが最大の目標だ。
今日も牧場の中をシェリーと走りながら
空を見あげる。この空に誓って、必ず獣医になり、俺を変えてくれたオーナーに恩返しをしていきたい。
友達はいないけど、信頼できる大人がいる。相棒のシェリーがいる。馬が牛が羊たちがいる。大家族のようなこの生活を守っていきたい。
大空
1ヶ月半ほど投稿してなかった。毎日投稿しようと一応思っているのだが、「明日でいいか」を40回以上続けてしまった。ある意味すごい。誇ることではない。
さて、本題はこれではない。「大空」か。ちょっと物語は思いつきそうにないのでエッセイ(?)になります。
大空と聞くと青空ばかりが思い浮かぶ。私だけだろうか。
「大空」と調べても「広々とした空」としか出てこないのに、私たちは(少なくとも私は)この言葉に「晴れ」「青い」といった意味を自然と見出している。
不思議だなぁと思う。厚い雲に覆われた真っ黒な空でもいいだろうに。
理由を考えてみる。
まず第一に、「天気」や「ご機嫌」といった単語に代表されるように、漠然とその「モノ(コト)」を示す言葉はポジティブな意味を持つことが多いのではないだろうか。(ネガティブな意味を持つものもあるかな? ちょっとすぐには思いつかない。)
だから「大空」と聞いたときも晴れている様を思い浮かべてしまうのではないか?という考察だ。
ま、多分この第一の理由が一番正しいんだろうなと思うんだけど、少し別のベクトルから違う理由を挙げるとすると、青色が後退色だからというのも考えられるんじゃないかと思った。
青色は後退色だから遠くにあるように見える。つまり、青空のときの空はより大きく見える。そのイメージが無意識に刷り込まれていて、「大空」と聞くと広く見える青色の空を思い浮かべる……という仕組みなのではないか。
……いや、書いていて思い出したけど、そういえば昨日、「青色の波長は大気中で散乱しやすい。空が青く見えるのはそのため。『光』には青色が少なく、『大気』には青色が多くなるので、青色の物体(=青色光を反射する)が暗く見えたり、影の部分が青く見えたりする。それで青色は後退色と言われる」という動画を見たばかりだった。
この理屈でいくと空の青色と物体の青色は別物だから、青が後退色であることは空には関係ないのかな。
面白い説だと思ったんだけどなぁ。こうやって、せっかく思いついた面白いストーリーが正しい理論で潰されてしまうと何とも言えない気持ちになる。間違っているのはこちらなんだけど、反抗したくなる。
しかしまぁ、仕方ないか。
もっと考えれば他にも理由は思いつくだろうか。
おそらく今回のテーマは、私みたいな素人じゃなくてちゃんとした人が調べた論文もあると思う。普通に卒業研究のテーマとかになりそうじゃない?
でも面倒なので調べることはしません。この怠惰は私の悪いところだ。
あぁ、きっとこれから空を見上げるたびに今回書いたことを思い出すんだろう。
そのときは理論へのささやかな反抗として、青空が他と比べて広く見えないか注意してみよう。広く見えたら私の勝ちってことで。
寂しさ ベルの音 大空
何にもしたくなくて
部屋で閉じこもっていると
ふと物悲しさと寂しさが
師走の空気に混ざり合う
勿論
賑やかな予定を示す
ベルの音も鳴らない
嗚呼、宅配のワクワクもだ
意外にも
寒かった筈の窓の外から
明るく暖かい陽が差し込む
大空に鳥が羽ばたいて行った
飛べはしないが
まぁ自由な休日だ
【大空】
綺麗だよ見てみて
上を向くでしょ
海よりも空が好きな理由
しにたいと
ため息混ぜて
呟いた
星の美し
大空へ向け
知ってるよ。
君と見る空が1番綺麗だってこと。
晴れじゃなくたっていいの。
満天の星なんて見えなくたっていいの。
君が私のそばにいてくれるなら、それだけで充分だから。
空が映し出すのは、いつも幸せなものとは限らない。
だけど君のことを考えながら見る空はいつも、
私を優しく包み込んでくれるのよ。
たとえ離れていても、
見上げたこの空を君も同じように見ているなら、
私たちはどこかで繋がっている気がするの。
ほら見て、今日はいい天気ね。
『大空』
「大空」
一人で暮らして
ひとりでご飯を食べて
ひとりで夢をみる
夢の中では誰かと会話をしているのに
目が覚めたら一人
面白いね
寂しさよりも
自由に過ごせる時間と開放を選んだ
曇りの日でも
雲の上は青空だし
そのうち下界にもお日様が顔を出す
いつか力尽きるまでは
ゆるゆるコツコツ日々を過ごしましょう
雲の上は いつも青空
耳をつんざくような爆発音。鳴り止まぬ人々の恐怖と絶望の声に意識が浮上する。
目を開けば、焼け落ちる民家と無惨にも犠牲となった罪なき人々の亡骸……数刻前まで平穏な暮らしが築かれていたであろう場所に、血の海が広が広がっている。
立ち上がろうと力を込めれば腹に大きく痛みが走る。
……嗚呼、そういえば、もろに攻撃を食らってふっとばされたんだったか。
他人事のようにそう思い出しながら、今度はなるべく傷に負担のかからぬようゆっくりと立ち上がる。剣を杖代わりに地面に突き立てふらつく体を支え、一歩、また一歩と歩みを進める。
戦禍から逃げ惑う人々が俺の姿に怯え、必死に逃げようと踵を返したり大事な者を守ろうと身を挺して庇ったり。そんなことをせずとも、もうこの身に剣を振るうだけの余力はないというのに。
死に場所を求め戦地へと赴き戦い続けたこの体は、ついにその無駄な命の終わりを迎えようとしているらしい。
陛下からの勅命のまま、戦い、殺し、領土を広げてきた。今回の戦争も我が国の勝利であろう。敵軍の姿はとっくに見当たらない。
遠くから仲間が駆け寄ってくるのが見える。この状況下でよく俺を見つけたものだ。
「レイアード! 大丈夫か?! しっかりしろ、すぐ基地へ戻り手当を──」
「おい、俺は曲がりなりにも副司令官だぞ。いくら幼馴染とはいえ公務中はせめて卿をつけろって言ってるだろーが。」
笑顔を作り、いつものように軽口を叩く。
直属の部下であり、唯一親友と呼べる相手。所々怪我は見られるが、命に関わるようなものはなさそうだ。
「言ってる場合か!! 無駄口叩いてないで、ほら、担がれたくなかったら掴まれ。」
「……いや、いい。」
「は……お前、そんな傷で基地まで歩けるわけないだろ。馬鹿なこと言ってないで、早く。」
「んな傷だからだよ。……自分のことは自分がよく分かってる。今回ばかりは、もう無理だ。」
「そんな事言うな!! 死なせるもんか。絶対、お前だけは……!」
「キルギス、見ればわかるだろ。俺はもう──っ、」
数回咳込めば鮮血が吐き出される。足の力が抜けその場に崩れ落ちそうになるのをキルギスが支え、そのまま担ぎ上げられた。
そのまま両腕に成人男性一人抱えて全力で戦禍の中を駆け抜ける。よくそんな体力が残っているな、なんて感心しつつ、男を横抱きで運ぶのはいかがなものかと苦言を呈すが、舌をかみたくなければ黙っていろと一蹴された。仕方がないからそのまま身を委ねる。
重く、自由のきかなくなっていく体。霞む視界と薄れゆく意識。最後に視界に映った景色は、黒煙に覆われた大空と、今にも泣き出しそうな親友の顔だった。
耳をつんざくような悲鳴に目を覚ます。
騎士団訓練場すぐそばの小さな丘の上。心地よい風が草木を揺らしながら吹き抜けてゆく。
ゆっくりと体を起こし訓練場へ目を向ければ、キルギスが団員たちをしごいているようだ。
死を覚悟したあの日、神の気まぐれかキルギスの努力の賜物か、俺は一命をとりとめた。まだ十分回復したとは言えないが、取り敢えず日常生活には支障はない。
戦争はこの国が勝ち、あの街は占領され建て直されている最中だ。数カ月もすればそれなりに機能を果たすようになるだろう。
異常がないことを確認すれば、またその場で横になる。眼の前に広がる大空に、もうあの日の面影はない。
団員の嘆きとキルギスの怒声、ぶつかり合う剣の音を聞きながら、晴れ渡る空の下、再び眠りへ身を任せた。
#19『大空』
たいくう、天空の輝きに私の眼が灯ったのはいつだったか。
たいくう、青空を二つの眼で見上げてもうつろなノイズが走るよ。
たいくう、朝空に伝う蜘蛛の糸はみな電子情報網になってしまった。
たいくう、手のひらをあたためる雀が飛ぶ夕空はどこにあるの。
たいくう、移ろいやすい虚空はブルーライトを浴びた瞳には笑って泣きたくなるほどに痛いよ。
たいくう、夜空しか見上げられない淋しさに熱は冷めていく。
たいくう、私もいつかは自然湧き上がるあらしの闇に眼が灯るだろうか。
たいくう、あなたが見たよい月を私もひとりで見て寝るよ。
おやすみなさい大空。
(241221 大空)
朝日が照らす大空に、夕日が輝く大空に、月が照らす大空に、不変の愛を捧げよう
死にたくなる。大きな空に、自分はどうしようも無くちっぽけだと感じるから。
どうせ死ぬなら、愛を捧げて善行をしておこう
渡す相手など居なかった私の愛を
貴方は受け入れてくれるはず
【大空】
ああ。
大空のように広い心を持てたらなあ。
『大空』
放課後になれば、少しばかり涼しくなる。吹奏楽部の楽器を吹く音が聞こえてきた。屋上の方からは応援団の練習している声がする。それに紛れて、どこかの部活の叫ぶような声。きっと、これは青春なのだ。それはわかってるのだ、わかっているつもりなのだけれど、それ以上のものがあって、どうしようもないのだ。
「──ねえってば。聞こえてる?」
好きな人が、隣にいるのだ。2人きりの教室。勉強を教えてほしいと頼まれ、快諾した結果がこれだ。ずっと上の空で、何もできない。焦って返事をしようとする。
「空、綺麗だねって」
ふと言われたその言葉に、窓から外を見る。建物と、木と、夕焼け空。暗くなってきた空の方に、煌めく一番星。ゆっくりと冷えていく空の彼方に、何年も前の光が笑いかけている。本当に、今まで見てきた景色の中で、いちばん美しいのではないかと思ってしまった。空がこんなにも大きいことなんて、知らなかった。しかしそれも、この人と一緒にいるからだということくらいわかっていた。
「こんな大空、久しぶりに見た」
「大空って。大袈裟だなあ」
あなたは知らないでしょう。
この大きな空の下で、あなたに何を言おうかと迷って成長しようとしている、小さな僕のことを。
大空を見上げると白鳥が飛んでいた
冬になると田んぼや湖沼にやってくる
バレエ作品にもなる鳥だけあって
佇まいが美しい
大きな翼を広げて力強く飛び立つ姿に
手を振りたくなってしまう
今は長旅の疲れを癒して
病気やけがもなく
無事に春を迎えて欲しい
『大空』
今日は
私を責めてくるような青い空。
だけど、
どこか優しく見える
暖かく包んでくれる夕焼け空。
そして、
私を1人にするような
私を呑んでしまいそうな夜空。
そんな空。
毎日の私の気分と共に
私から見える空の気分も変わるのね。
私から見える大空は私のこころ次第。
私のこころ大空みたい。
「ばあちゃん、なんで空見上げてニコニコしてるの?」
「ふふ、懐かしいなぁって気持ちになるからよ。」
ふうん、と孫の春子が不思議そうに首を傾げる。
1945年5月27日。目を閉じれば、いつもこの日に私は帰る。
あの日も同じ、青く高く、雲一つない空が悠々と広がっていた。
バリバリと激しくエンジンを鳴らす、日の丸をつけた飛行機。
エンジンは次第に回転を上げ、砂煙を巻き上げながら飛行機が続々と飛んでいく。
当時、私は15歳だった。
みずぼらしいモンペを履いた、おしゃれしたくてもできない、可哀想な女学生。
だから少しでも可愛く見えるように、毎朝いっしょうけんめいにおさげ髪を結っていた。
お勉強をするために学校に行ったのに、そんなことしている場合じゃなかった。
毎日が、がまんの連続。
いちばんきらいだったのは、竹やりを持って叫ぶ授業だった。
そして、そんな私がひっそりと楽しみにしていたのは、近くの基地に兵隊さんのお手伝いをしにいくことだった。
粗暴で退屈な「授業」なんかより、ご奉公しに行くほうがよっぽど魅力的だった。
女学徒隊として、兵隊さん達の服のお洗濯をしたり、お話をしたり。
その基地にいらっしゃった、ある兵隊さんのことは今でも忘れられない。
その兵隊さんの名前は、源二さんといった。
私が源二さんとお話しした時間はとても短かった。
源二さんは、基地に2週間ほどしかいらっしゃらなかったから。
源二さんと初めてお会いした日は、いつものように仲のいいクラスメートのミッちゃんとケイちゃんと3人で
お洗濯した服を干しているところだった。
兵隊さん達が寝泊まりしている、三角形の変なかたちをした兵舎の裏手はちょっとした林になっていて、
そこの木に紐を結んで洗濯物を干していた。
ちょうど、兵舎のほうからこちらに真っ直ぐいらっしゃる兵隊さんが見えたものだから、私達は手を止めてご挨拶をした。
「おはようございます。先日こちらに配属になりました、田中源二と申します。身の回りのことをして下さり、感謝しております。」
優しげに目を細め、源二さんは深々とお辞儀をした。
それからわずかな暇の時間に、源二さんは時間を作っては私とおしゃべりしてくれた。
時間がないときは文を書き、交換した。
話すことは、源二さんの故郷のお話だったり、私の退屈な竹やり授業だったりと色々だった。
源二さんのお話はいつも、とても興味深くて、たまにおかしかった。
源二さんは私のつまらない話でも、とても楽しそうに聞いてくれた。
源二さんがずっとここにいてくれればいいのに、という想いは、いとも簡単に打ち砕かれることになる。
「明日、私は特攻します。」
5月26日。突然の言葉に、私は言葉を失った。
私は、今までにもたくさんの兵隊さんに鶴を折り、旅立つ姿を見送ってきた。
この地にやって来た若い兵隊さんは、飛行機に乗ってどんどんいなくなって、また新しい兵隊さんが次々にやってくる。
心のどこかでは、源二さんも、と気づいていた。
私が泣いたらいけない。
源二さんは、お国のために大空へ飛び立つのだから。
でも、源二さんがあまりにすてきな笑顔でお話しされるものだから、私の小さな鼻の奥がつんとした。
「ご武運を祈っております。」
私は、そう伝えるだけで精一杯だった。
5月27日。雲一つない快晴。
女学徒隊も、今から飛び立つ兵隊さん達のお見送りに出る。
基地の兵隊さんや女学徒隊が見守る中、飛び立つ兵隊さんは各々、ご挨拶をしていた。
静かに様子を見守っていると、頭に日の丸のはちまきを巻いた源二さんが、まっすぐ私に駆け寄ってくるのが見えた。
バリバリというエンジンの振動よりも、私の胸の鼓動のほうがずっと大きく高鳴った。
「アコさん、ありがとう。」
一呼吸おいて、私は口を開く。
「源二さんと、お話しした時間はずっと忘れません。私の宝物ですから。」
源二さんは、初めて会った時と同じで優しくはにかんだ。
「もし、よければ。
アコさんが、この青い大空を見た時に、私のことをたまに思い出してくださると嬉しいです。
アコさんはきっと、ご立派な女性になられます。」
それでは、と太陽よりも眩しいお顔で笑い、
源二さんは自分の飛行機へと駆けていかれたのだった。
バリバリと激しくエンジンを鳴らす、日の丸をつけた飛行機。
エンジンは次第に回転を上げ、砂煙を巻き上げながら飛行機が続々と飛んでいく。
源二さんは、まっすぐに前を見つめて飛んでいった。
飛行機達は、大きな円を描くように旋回して広大な青空に消えていった。
銀色の鳥達が、矢となり降り注ぐ海に向かって。
12/21 大空