大切なもの』の作文集

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大切なもの』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

4/2/2024, 4:10:38 PM

自分にとって大切なものって何だろう?いくら考えても思い浮かばない。多くの人は、家族とか恋人とか友達とか愛とか金とか健康とか、そんな感じのものを答えるのだろう。ただ、これらのものを自分に当てはめてみても、どうもしっくり来ない。何か別のもっと普遍的なものが深い所にある気がする。哲学的すぎてわからんから考えるのやーめた

4/2/2024, 4:08:09 PM

大切なものと言われて、今頃ここにいる人達は面白おかしく言葉を並べてることだろう。
大切なものと言われたら、何か形容しなければならないと考えるのが人の思考だから。

大切なものを言葉で表す事は難しいことではなかろうか。


強いて言葉にするならば、「無くなってしまったら辛いと感じるもの」程度ではないだろうか。

難しい言葉。

4/2/2024, 4:08:06 PM

はらはらと溢れて止まない涙が、少女の頬を濡らす。
白魚の手がそれを受け止めようとするが、溢れる雫は散りばめられた星の中に消えていく。

深い星の海の中に横たわる半身が魚の少女は、深い悲しみに満ちていた。その少女の周りをゆっくりと、少女の悲しみを伺うように魚が泳ぐ。少女の尾鰭と魚の巨体を繋ぐ紐がゆらゆらと揺れていた。

少女は別れが寂しいのだ。
一月ほどしか少女の側に居られない太陽はつい先日に去っていったが、少女はその太陽から聞く話が大好きだった。万物を見渡す太陽は、少女の知らないものや触れたことのないもの、聞いたことのないものの話をしては少女を喜ばせてくれたのだ。
次に出会うまで一年かかる。その事実が少女には無性に寂しく思えてしまい、涙を流して深い星の海の底に沈んでしまった。
愛らしい少女が深く悲しむ姿が、魚もまた苦しかった。
瞬く星たちの中で、少女と魚がまとう星の明るさはあまり目立たない。だからきっと、少女がこんなにも悲しんで沈んでいることを知られることはないのかもしれない。魚はせめて己だけでもと少女に寄り添うようにそのすぐ側に巨体を横たえた。

──────のは、つい先程のはずだ。時間でどれくらいかと言われれば魚には分からない。分からないが、分からないなりに分かることもある。深く落ち込んで沈んでいた少女は今や、きゃあきゃあと声を弾ませて海王星の星占いを聞いている。なんならその側で土星も微笑ましげに見守っているではないか。

星が星に星占いをしていることに何の意味があるのかは魚には分からないが。

太陽と違い長めに双魚宮に滞在する海王星や土星はもちろんのこと、何なら今の時期は火星や金星も双魚宮に滞在しているので賑やかなものだ(金星はそろそろ出て行くらしく準備しているが)。
魚はその巨体を泳がせずに横たえたままであり、少女ははしゃぐたびにその巨体をぺちぺちと叩いている。
なんでも海王星と土星がいる今がうお座の夢を叶える成長の兆しが云々とか何やら魚には理解しがたい話の真っ最中である。少女は良い兆しかと喜んでいるが、先ほどまで太陽が去ったのをあんなにも悲しんでいたのが嘘のようだ。まるで泡のような浮き沈みの激しさだなと考えつつ、魚は目だけをぎょろぎょろと動かした。
太陽に聞いたのだったか水星に聞いたのだったか忘れたが、少女の天真爛漫さは地上ではよく知られているそうだ。実際に目にしたことのない少女のことをよく知っているなと驚いた記憶がある。機会があれば、宝瓶宮か人馬宮にでもその理由を聞いてみようかと考えてみたが、独自の理論や哲学で捲し立てられても魚には理解出来なさそうだなと思い直したことがある。それならまだ丁寧に我慢強く教えてくれそうな処女宮と天秤宮に尋ねに行く方がいい。今度こそ尋ねてみようと魚は頷けない頭をエラを動かすことで頷く気分になってみた。
そうやって巨体がわずかに動いた瞬間に、視線が当たり前のように少女の姿を捕える。少女もまた魚の方へ愛らしい笑みを向けており、どうやら海王星から聞きたての星占いを魚にも教えてくれるらしい。喜ばしいことは一番に魚に教えてくれるのは少女の常だ。

二匹は離れられないわけではないが、離れたことはない。
近過ぎるほどに近い距離は、互いに丁度いい。
同じものを共有して、大切なものを当たり前のように分け合うのだ。
昔からの親しい友人のように、親子のように、兄弟のように、恋人のように、英雄と姫君のように、鏡ごしの自分相手のように。

体の星が細く瞬いて、魚は笑った。
魚が笑ったのを理解していたのもまた、少女だけであった。





“大切なもの”

4/2/2024, 4:07:50 PM

大切なものっていうのは、失ってから気付くらしい。

「先生、俺、元カノとまた付き合うことになった」
「え」
放課後の教室。またわざと補習を受けている変な生徒が、突然そんなことを言った。
思わず間抜けな声が出て、次いですぐに『俺の気を引くための嘘だ』と脳に流れる。だから、自然と笑っていた。
「はは、お前、エイプリルフールはとっくに過ぎたぞ」
ジッと見つめてくる生徒から目を逸らし、彼の手元の補習プリントを手に取る。ざっと見る限り、全問正解だ。
「うん、合ってる。じゃあ、補習終わり」
「ねえ、先生」
「ほら、さっさと帰らないと」
「先生」
生徒の手が、俺の左腕を引っ張った。
「確かに嘘だけど、なんで先生は嘘だって思ったの」
「は?」
「普通祝うじゃん。去年は俺と元カノのこと、心配してたじゃん」
「そ、それは……」
目が泳ぐ。
言えない。言えるわけがない。また付き合うと言われた時、ショックを受ける自分がいたことなんて。
「先生、俺のことどう思ってるの」
「……どう、って」
言葉に詰まる。吹奏楽部の練習の音が聞こえる。

俺は一度喉を鳴らすと、思い切って生徒への返答を口にした。

4/2/2024, 4:05:15 PM

大切なもの

それは健全な魂と健全な肉体。それさえあれば良い

4/2/2024, 3:55:05 PM

#16『大切なもの』

花明かりの下で二人
結んだ約束が遠い未来先でも
ずっと繋がれますように。

4/2/2024, 3:55:04 PM

#1『大切なもの』


私の大切なものは笑顔です。

小さい頃から家族の笑顔が大好きで、
笑わせるのも大好きでした。

いつしか私は、家族だけでなく
世界中の人々にも笑顔を届けたいと
思うようになりました。

今ではイラストをSNSに投稿しています。
私のイラストが誰かを笑顔に繋がることが夢です。

1人でも多くの人に笑顔になってほしい。

私は、幸せな瞬間を
もっと世界に届けたいです。

4/2/2024, 3:45:01 PM

もっとも必要であり、重んじられるもの。値打ちが大きいもの。
大切なものがあるとするならつまり、もっとも必要でなく、軽んじられ、値打ちが低いものも、またあるということだ。
もっとも必要でなく、軽んじられ、値打ちがないものは、どういうものか。
その存在を認識できないほど、ありとあらゆる生活の場面から締め出されたものか。
それとも、邪魔に感じるもののことか。
必要でないとは、それを欲することがまったくないということだ。欲しないから、あることに気づかない。あるいは、欲しないから邪魔に感じる。捨てたくなる。
しかし邪魔に感じるそれは、いつか欲したからそこにあるのだから、この先、それを欲する選択肢が現れる可能性はある。あることを知っているから、選ぶことができる。
するとそれは、“必要でないもの”ではなく、“今は必要でないもの”だろう。
つまり、あることに気づかないものほうが、より必要でないと言える。
かもしれない。
軽んじるとは、存在を認めないということだと思う。
実在を認めない。
触れるのか、見えるのか、嗅げるのか、音がなるのか、味はするのか、動くのか、意思はあるのか、それらを気にしていないことすら気にしないということ。
値打ちがない、ということを考えるのは難しい。貨幣経済の話をすべきだろうか、それとも資本主義か、それとも所有の話か、もっと他の相応しい何かがあるようにも思う。“値”とは何か。金銭的価値のことだろうか。だとすると、値打ちがない、値打ちがある、の意図するところは、それそのものではなく、それは今の社会、貨幣経済、資本主義社会、ある共同体の中でどう見つめられているか、という話になる。
たぶん。
もし大切なものがあるのなら、いま、わたしがあることにすら気づかないままでいる何かも、またある、ということだ。
もしその共同体が値打ちがあると見つめるものがあるとするなら、見つめることさえできていないものも、また、あるということだ。
わたしはいつもとりこぼす。
わたしの視野の外には常に豊かで広大なものがある。
わたしはそれに気づいてすらいないので、その魅力を見ることができない。できないということにすら気づかない。
見ることができないとすら気づかないままだから、あることにも気づかない。気づかないから、踏みつける。踏んでいると気づかないまま、踏んだままでいる。ずっと踏んだままだ。足をどかしたいと切に願っても、どこからどかせばいいのかわからないから、ずうっと踏みつけている。わたしが。
気づくためには、教えてもらうしかないのだ。なぜ、と思うが、しかし教えてもらうしかない。なぜ苦しんでいる側に、気づかれていない側に、さらなる労力を払わせるのだ、と怒りは湧くが、しかし、教えてもらうしかない。わたしは主体にはなれない。ただどうにかしてその声を聞かせてもらうしかない。教えてもらうには、わたしに気づいてもらわなくてはならなくて、だから話すことをやめたらだめだと書いてある本が、わたしはほんとうに好きだ。

4/2/2024, 3:40:28 PM

【大切なもの】

大切なものは何か

そう聞かれて思い浮かぶものはなんだろう

おもちゃ?
ゲーム?
スマホ?

それとも
友達?
家族?
仕事?

どれも大切なものになるかもしれない
でも大切なものって1つじゃなくてもいいと思う

私だったらこう答える
私の周りにある全てのもの
普段の生活、日常
私を支えてくれた人々
これ以外にももっともっと沢山ある

大切なものが沢山あるって悪いことじゃない
逆に素敵なことだと思わない?

全てのものを大切にできる
物も
人も
動物も

自分自身も

これができる人ってなかなかいない

だから人はみんな
互いに想いあって
互いに支え合う

互いを大切にしあう

傷つけないように
壊さないように

たまに衝突することもあるかもしれない
それでもまた互いを想い合えるなら
それは本当に大切にすべきものだとおもう

1度傷ついてしまったら塞がらない傷ができてしまっても
それを理解し
よりそってくれる人がいる

貴方にとってその人の代わりがいないように
その人にとっても貴方の代わりになる人なんていない

だから貴方がその人を大切にするのと同じぐらい
自分自身も大切にしてあげて

4/2/2024, 3:39:37 PM

弦を弾くゴツゴツした手。
でもそれを撫でる指先はやけに優しい。
長い前髪や首筋をつたって流れた雫は
眩しいほどに輝いて、落ちる。
強い意思を持った存在感の強い音も、
揺れる肩と共にホールへ響く。

ステージに立つ先輩は、別世界の人間。 
あの誰よりも真剣で楽しそうな表情が、
どうしても頭から離れなくて。 
目で追うことしか出来なかったけれども。
特別な人、だったな。


青春時代を彩ってくれた、彼の音色。
ラムネ瓶に透けて見えたあの夏の景色は、
きっと忘れることはないだろう。



#19
大切なもの

4/2/2024, 3:38:09 PM

大切なもの  20240402

俺は俺が一番大事だ。誰だってそうに決まってる。自分の人生だ、テメーを優先しないで誰を優先すんだ。

ずっとずっとそうやって生きてきた。それこそ物心ついた時にはもう備わっていた感覚だ。

今だってその気持ちには変わりはない、だけど何か…
俺の中に俺だけじゃない部分、何かが混ざり合ったような感覚の場所がある。昔はなかったはずだ、いつから?そんなこと、本当はわかってんだ。

アイツの存在は俺を強くする。
自分は自分が思う以上に大事で、大事にされるべきで、そしてアイツを大事にしてやることができる。
俺の大切なもの。
丸ごと全部、大事に扱ってやるんだ。

4/2/2024, 3:35:29 PM

あっという間の夢のようだった。

日差しを受けて揺れるビー玉の影、田道に咲いていた小さな小さな花。大切な貴方たち、嫌いなあなたたち。
今までの私の思い出はどれも大切だと今はそう感じます。
幸せだった時間も、苦しかった時間も、今の私を形作る大切なものだったって、そう思いたいのです。

本当に嫌で、苦しくて悔しくて、あまりに苦すぎる思い出もありますが、それもまた必要だったのでしょう。
どんなものでも、もう二度と体験し得ることのない
思い出になってしまったあの時間は かけがいがなくて、時折思い出しては、懐かしいなぁ と浸るのです。

私はまだまだ子供で未熟で、会えない人を思い出すたびに、切なくて悲しくてうずくまってしまう。
会えないのに、辛い思いをするのに、会いたいと思うほど、あなたとの思い出が頭を駆け巡って、余計に辛くなる。

二度とは戻らない時間。焦がれたところで仕方がないもの。もう過ごすことのない日々。
私は無くして初めて、懐かしいと思い出して初めて
その時間が大切なものだと知るのです。

4/2/2024, 3:32:48 PM

大切なもの

前だったら、即答できていた
のかもしれない

いまは、即答できない

曖昧なものに変化して
いる気がする

でも、意識的には大切なもの
と言えなくても、無意識レベル
…目に見えないレベルでは
大切なもの。

最初から変化なんて
していない。

ただ、目立たないところに
隠れているから、大切なもの
と聞いて、即答できない

それでいいのかもしれない

人に言えるぐらいなら
大切なものとは言えないから

秘密の領域で大切に
保存して、熟成…

言語化できないレベル
無意識レベルまで…
大切にしたいのだろう

大切なもの
不思議なものだ

雲隠れ

4/2/2024, 3:32:06 PM

大切なものは棚の1番上の引き出しの中に隠してある。うっかりなくしたくもないし、普段から目につくよりたまに思い出したりしたいものだから。


【大切なもの】

4/2/2024, 3:30:59 PM

大切なものと聞かれてすぐに思い浮かばない
大切なものは沢山あるはずなのに
ありふれた世界で生きているはずなのに
出てこない

命を救ってくれた何かでも
私を美しく象った写真でも
思い出すだけで楽しくなってしまう思い出でも
何かが終わってしまう悲しみでも
なんでもなくて

きっと

4/2/2024, 3:30:59 PM

自分の気持ちに正直でいることを大切にしている。
 私は性格があまりよくないのだが、自分でこれは正しくないと思う状態でいるともやもやして気持ちが悪い。だから正しいと思う行動を取る。
 それが結果的に誰かのためになり、優しい人だと言われることもある。
 私が内心で何を考えていようと他人にはわからない。その行動から私がどんなやつなのか判断するしかない。
 他人の言う私の人物評と私の知っている私が乖離しているのは面白い。

4/2/2024, 3:25:54 PM

キラキラ光る、ハートの偽宝石

どこかのゲームセンターで使われていたコイン

文字が書けないほど短くなった鉛筆

授業中にふざけて書いたメモ紙


幼い私は、大切な缶ケースにそれらを詰め込んだ。
あの時は、これが大切なかけがえのないものだった。



時が経って、

おもちゃや大切なお友達は、姿を消した。

大切なものはだんだん増えていって、
欲しいものもだいたい買えるようになった。

あの時詰め込んだ、大切なものは、
私にとって、なんの価値も意味も無いゴミとなった。



それでも、

例え大人になった日が来たとしても、
あの時にしかなかった気持ちを忘れたくない。
その過去は、私の一部だから。

大切なものだったものは、確かに今でも大切なものだ。

4/2/2024, 3:25:21 PM

大切なもの

恐ろしい単語である。

如何せん、「手前の大切なものは大切だから大切なのだ」という理由は通じない時がある。

社会的、あるいは道徳的など、世間一般に受け入れられる理由付けが求められる場面では、中々難しい。

幼少期から持っているぬいぐるみ
幼稚園の縄跳び練習のがんばったで賞(えんぴつ)
日記
手紙
部活道具
文献の数々
推しグッズ

大切なモノには種類がある。
大切の意味にも違いがある。

その全てに理由を付すなど、野暮なことではないだろうか。

4/2/2024, 3:25:16 PM

大切なもの

 春の温かい陽射し。透明に流れる川。いっぱいに香る花。
 少女の髪は若草の上に揺蕩うように広がり、瞳は真っ直ぐに空を見上げているのにどこか物憂げだ。
「やっと見つけた。まったく、いい加減にしてよね。君だけなんだよ、自分の想いを一つも手放さないで後生大事にしてるの。そろそろ掟に従ってわたしに預ける気にならない?」
 突如聞こえた声。少女は自分の横に降り立った彼女−−−“悪魔”の方を見もせずに答える。
「預けるじゃなくて、明け渡すんでしょう。自分の中から想いが消えるより、好きなままで失くす方がずっといい」
「だから、君が胸に抱いているそれ、ずっと持っていくって?」
「そうだよ」
 頷いた少女の顔は、黒く塗り潰されている。少なくとも“悪魔”にはそう見える。彼女の精神と身体がどうしようもないほど侵食されているのが−−−『愛』によって蝕まれているのが。人の心は弱いと人類が気づいたのはいつだっただろう。
 少女の胸の膨らみに手を当てると、弱い鼓動が手のひらを打った。
 人の心は『愛』という重さに耐えきれなかった。『愛』は憎しみや闇よりもずっと重く、痛く、哀しいのだ。
 “悪魔”は少女に再び語りかける。
「君は弱い。ひとであるにはあまりに弱い。その弱さこそが、君が愛するものから手を離すことを妨げている。そしてその弱さこそが、君を『愛』という地獄の中で生きるまでに強くしている」
「だからなに」
 少女が不意に、絞り出すように呟いた。その目に、涙が浮かんでいる。黒い染みのような顔でも“悪魔”にはそれが知れた。
「……何かを好きでいることって、それだけなのに、死んじゃいそうなくらい苦しいんだよ。わたしの命を救ってくれたものを好きになったら、今度はそれのせいでおかしくなっちゃうんだよ」
 少女は涙をこぼす。見えない顔から、空虚な瞳から透明な水を流す。
「だから、いっそわたしをこの心ごとぐしゃぐしゃに壊してよ。愛してるって、わたしにはもうそれだけなんだよ。だからあなたがこんなわたしを裁いてよ」
 少女は醜い顔を晒し、汚れた愛を叫びながらあれほど逃げてきた“悪魔”に縋る。少女は好きなものを好きでいることしかできないのだ。潰れた心を支え続けているのは今でも愛なのだ。好きという気持ちに殺されても、やっぱり少女はそれを捨てられない。
 自分の胸に縋り付く少女の手に“悪魔”はそっと自分の手を重ねる。
「……『わたし』のことを、今でも好きでいるなんてあんただけなんだよ……」
 その言葉は少女に届かない。これまでも、これからも。
 だからこそ、少女は“悪魔”から逃げ続けなければいけないのだ。“悪魔”を−−−大事なものを手放さないように。
 そうと知らぬまま。

4/2/2024, 3:24:28 PM

『大切なもの』

はじめまして。…おや、なんとも珍しいお客さんですね。いえいえ、構いませんよ。この店は、どんな方でも歓迎しておりますから。どうぞ、お席にお座りください。
 この店は、夜しか経営していないカフェなのです。夜、一息つきたい。そんなお客さんの為に、この店は存在しております。そして、この店に決められたメニューはございません。お客さんのリクエストにお応えしてお品物をお出ししております。…といっても、当店の在庫にあります食材でできる範囲内ではございますが。基本的にカフェで食べられそうなものは作れるように取り揃えておりますので、どうぞご安心ください。
 それでは。今日は何をお作りいたしましょうか?勿論お飲み物だけでも構いませんが。…ふむふむ。オムライスとココアですね。かしこまりました。オムライスの上にかけるものは、ケチャップでよろしかったですか?そうなんです。ケチャップ以外にもオムライスの上にかけるものがあるのですよ。ケチャップでいい?それは過ぎたことを申し上げました。ケチャップ以外がかかっているオムライスは、いずれまたお召し上がりください。
 ところで、どうしてこんなところにいらしたのですか?…なるほど、わからない。でも、迷子というわけでもない、と。そうですね。そうおっしゃるのなら、きっと迷子ではないのでしょう。こちらでオムライスとココアをお召し上がりになっている間に、きっと思い出しますよ。
 …おや、卵でご飯を包んでいるところを見たいのですか?勿論よろしいですよ。ただ、危ないので手は出さないでくださいね。…面白そうですか?確かに、ちょっと難しいですが、慣れればそれなりに楽しいですよ。コツは「中火で焼くこと」です。といっても、卵料理全てにおいて言えることではあるんですがね……。
 お話している間に、できましたよ。オムライスとココアです。オムライスには好きにケチャップをかけちゃってください。…いいんですよ。オムライスは描いて楽しむものでしょう。食べ物で遊ぶな、という言葉はありますが、こういった遊び心は忘れたくないものです。
 お味はいかがですか?…懐かしい、ですか。それはなんとも嬉しい言葉ですね。お客さんのお口に合ったのであれば何よりです。おや、どうされたんですか?もしや、目に何かゴミでも……。
……そうですか。思い出されましたか。あなたは、もう死んでいることを。…詳しくは存じ上げませんが、あなたは交通事故で亡くなられたと聞いております。そのままあなたは成仏されるはずだった。しかし、記憶をお忘れになったようで、そのまま現世にとどまり続けてしまっていたのです。そのまま数年は経ち、今私の目の前にいらしているのです。
…このオムライスは、あなたが生前一番好きな料理だったようですね。あなたのお母さんがよく作ってくれた。私はあなたのお母さんのオムライスを完全に再現することはできませんが、限りなく近い味だったようでよかったです。ココアもそう。夜眠れなくなったときに、お父さんにこっそり作ってもらっていたようですね。どちらも、あなたにとっては忘れられない、大事な思い出。
 え?私との思い出も作りたい?……お気持ちは嬉しいですが、私はいいのですよ。あなたが満足されている。その姿を見られただけで充分ですから。ただ、そうですね……。もし、次またお会いできることがあれば、その時は、ケチャップ以外がかかったオムライスをお出ししますよ。是非楽しみにしていてください。
 …そうですか。もう行かれますか。どうもありがとうございました。またのお越しを、お待ちしております。

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