『大事にしたい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
先週の金曜日に起こった私と彼のお話(実話)
ここには私を知る人はいないから好き勝手書きます
金曜日に彼と喧嘩した、こっちが100%悪かった
彼の友達と相談しあった、その時に言われた
「𓏸𓏸さん他の男とやったんだって?w」
私は衝撃だった
信用してた彼にしか話したことがない
私の秘密
私は彼と付き合って1ヶ月たった時に
バイト先のお客さんにレイプされた
彼に言うか迷ったけど隠し事はしたくなかった
しっかりしてなかった自分が悪い
危機感をもっと持つべきだった
自分にそう言い聞かせたけど
彼には慰めて欲しかった
辛かったね、君は何も悪くないよって
私は彼に伝えた、
自分の中でまだ整理しきれてないまま
その日の出来事を、
それを彼は彼の友達に愚痴っていたそうだ
「ありえない、信用を失うとか思わなかったのかなw」
と、言っていたらしい
それを彼と喧嘩して三日後の電話で伝えた。
金曜日の喧嘩のことについての話だったが
それに加えて私からも伝えた
「𓏸𓏸君に話したんだって?」
「何を?」
「あのこと」
「……あーうん、話したよ」
「なんで、?私はあまり人に知られたくなかった、あなただから話したのに…」
「…え?wほんとにわかんない?信用失ったとか思わないの」
友達から聞いた通りの言葉が返ってきた
どうやら私もその気があったんじゃないかと思っていたらしい
そんなわけないのに
呆れた、もういいや
私はこのまま勘違いされてたら癪だったので
その日の出来事をこと細かく伝えた
お酒を飲んでいたけど走って帰ろうとしたこと
お客さんが着いてきてて突然引っ張られたこと
大声を出して大暴れしても
周りの人は何も見てないふりをしてたこと
部屋に連れ込まれて壁を叩いた
大声を出し続けた
相手を叩いて蹴った
体に痣ができた
首を絞められたり殴られたりして殺されるかと思った
実際、私も死んだと思った
私は死にたくなかったから大人しくした
終わったのか男は服を着て誰かと電話しながら金だけ置いて出ていった
男には嘘をつけと言われ
バイト先にも一緒に楽しくカラオケにいると連絡しろと言われ目の前で文字を打った
本当にこと細かく話した
彼は言った
「…ごめんそこまでとは思わなかった、本当にごめん、俺が悪い。」
私はもう思い出したくなかった
自分の中で少しづつだけど消化していたところなのに
もう諦めた、もういいや、どうでもいい
私が彼にどう思われようが友達からなんて言われようが
心底どうでもいい
そんなことがあったけど
やっぱり私は彼が好きだし、嫌いになれない
きっとこれからもっと辛いことがある
そうじゃないと私が可哀想、
だから
私は私を大事にしたいと思う
「大事にしたい」
いつも私のわがままを聞いてくれてありがとう
優しいあなたにはつい、甘えてしまいます
だから、これも私の“わがまま”です
他人を優先するのもいいけれど
それは、あなたの“美点”なのだけれど
どうか、まずは“自分”を優先してください
優しいあなた
どうか私の願いを叶えてください
他の“わがまま”はこれからちゃんと我慢します
だから
どうかどうか、お願いします
私の願いを叶えてください
誰にでも、別け隔てなくやさしいきみへ
#大事にしたい
母は一度買ったものはちょっとの問題なら改善して使う。
父は安物を買ってはちょっとの問題ですぐ捨てる。
母は壊れた物を補修をしてなんとか使おうとする。
父は壊れた物は捨ててすぐ新しいものに買い替える。
母は父の捨てようとしてるものを見て
捨てるなら私もらうと言って何かに使っている。
父は母がなかなか買い替えないのを見て
この人は一度買ったものは買い替えなくていいと
思っているんだと笑う。
母のところに縁あって来た物は第二、第三の人生がある。
父のところに来た物はまだ動けても、あっさり首を切られる。
母の回りは片付かない。
父の回りはキレイさっぱり。
大事にしたいことは人それぞれ。
ちなみに私は二人に似ずめんどくさがり。
私のところに縁あって来た物もほったらかしで片付かない。
(大事にしたい)
大事にしたい
美しいと感じたとき
踊る心を止められないとき
嘆き苦しんで下を向くとき
溢れる涙に抗わないとき
万葉人からの悠久の時空を纏うこのとき
大事にしたい
幸せだ、と自分に言い聞かせないこと
感謝しないと、と自分に強要しないこと
心から湧き上がるエネルギーを
偽らずに
大事にしたい
大事にしたい
大事にしたい、誰よりも。
――だって、好きだから。
ミサを拾ったのに特段深い理由なんてない。ただの気まぐれだ。
彼女と会ったのはとある晴れた日。ギルドへ帰る途中だったおれは、「ぱぱ」と声をかけられた。
よくある手口だ。「ぱぱ」とか「まま」とか、小さい子どもに声をかけさせて、「親とはぐれて迷子になった。探すのを手伝ってほしい」とかなんとか言わせる。それで一緒に探してくれようとした親切なやつを路地の奥に連れ込み、そこで待ってる仲間が身ぐるみをまるっと引き剥がす。ここ貧民街じゃあ、日常と言ってもいい景色だ。
だから無視してもよかったんだけど、その日のおれはなんとなくその話に乗ってみた。
ここらではかなり顔の知れたおれに声をかけてきたのがおもしろかったし──なにより、彼女の目。ふわふわとした長髪はよくある灰色だったけど、大きなぱっちりとした目は深い深い青色で──それはおれの瞳とまったく同じだった。
もしかしたら、って思わなかったと言えば嘘になる。寝た女のことなんていちいち覚えちゃいない。その中の誰かが身籠って産んでたとしたって、なにもおかしくはないわけだ。
だから本当に「まま」がいる可能性も一応考えてついていき、果たしてその先にはガラの悪い仲間がいて、おれはため息をついてそいつらをボコボコにした。
もうここに用はない。早々に立ち去ろうとしたおれに、彼女はまた「ぱぱ」と叫んだ。
「おれはきみのぱぱじゃない。あはっ、もしかしたら本当にぱぱかもしれないけどね。でももう用事なんてないだろう? きみがここでひとりで生きていくのは難しいと思うよ、早く次の仲間を探しな。それじゃあね」
「ぱぱ。待って! 行かないで!」
なんでだろう。そう言って泣きじゃくる彼女を放って立ち去ることがおれにはできなかった。
女も子どもも関係ない。いままで何人も殺してきた。何人も見殺しにしてきた。
その数が1増えたって今さらなんだって話なのに──どうしてか、そこで背を向けることができなかった。
「一緒に来るかい?」
「──! うん!」
邪魔になったら捨てるつもりでいた。イルのときとはわけが違う、まだ小さな女の子だ。殺すのなんて一瞬だ。
でも、その日から。
一緒に出かけるときは危ないから必ず手を繋いだり。
金なんて余ってるから全部ミサの服に使ったり。
おれはそんなに食べないから、食べ物は毎回ミサに半分あげたり。
そんなこんなで、結局おれはまだミサと一緒にいる。
出演:「ライラプス王国記」より アルコル、ミサ
20240921.NO.57.「大事にしたい」
今までひどい扱いばかりだったから。
優しさなんて触れたこともない。
だから、わからない。
「相手のことをよく考えて」
なんて言われるけれど
そもそも"よく考えられた"ことがない。
当たり前だ。
ずっと避けられてきたから。
まるで化け物を見るような
そんな目を向けられてきたから。
でも、今なら、少しだけわかる。
一度だけ言われた褒め言葉。
自分を見るでなく、自然と零れた言葉。
それだけで生きてきた。
大事に、大事に。
また、会えたら。
次は君自身を、大事にしたい。
《大事にしたい》
彼と帝都を散歩していたら、通りに少し古いけれど居心地の良さそうなお店を見つけた。
「古書店…。」
落ち着いたデザインの看板には、お店の名前と”古書”という文字が。
建物の雰囲気の良さもあって、私はそこが気になってしまった。
「いいですね。どんな本が置いてあるか興味があるので、入ってみましょうか?」
お店に惹かれていた私に気が付いて、彼が声を掛けてくれた。
彼も読書が好きな事もあるし、私は一も二もなくその提案に頷いた。
「はい、私も色々見てみたいので。」
優しく微笑んでくれた彼と一緒に、古書店に入る。
店内は薄暗くて、それでも換気が行き届いた清潔な空間で。
天井近くまである本棚には、歴史を感じさせる重厚な本から割と最近の文庫まで色々な古書が並んでいた。
奥の方にいる眼鏡を掛けたお爺さんが、ゆったりと椅子に座りながら丁寧に本の表紙の乾拭きをしている。
その手仕事を見ていると、このお店の本が大切にされている様子がはっきりと分かる。
だから過ごしやすい空間なんだなぁ。
「失礼します。ご主人、しばらく店内の本を見せていただいてよろしいでしょうか?」
彼がそう声を掛けると、お爺さんはこちらを向いて目を細めて答えた。
「ああ。ゆっくりと見ていきなされ。」
その返事に、彼がありがとうございますと礼をして答える。
私も一緒にお辞儀をすると、お爺さんはうんうんと頷いて、また本の手入れに集中し始めた。
「それでは、それぞれ見たい本を見て回りましょうか。」
そう提案する彼に私も賛成して、各々見たい本の棚に移動する。
こういうところでは、私は昔の絵本や料理のレシピ、神話や伝承の本に心惹かれる。
あちこちの地方の特色や時代ごとの表現など、同じジャンルでも読み比べると差があって面白いから。
絵や写真の表現も独特の特徴が出たりして、それも見ていて楽しいんだよね。
そんな感じで、本棚の色々な本を見ていた。
こちらでもやっぱり、童話や伝承の原書は残酷な表現もしっかり描写してある。
料理レシピは、地方ごとの調味料や調理過程が現代版は帝都でも調理しやすい簡略化したレシピになってる。
どの本も丁寧に手入れされていて、古いのに本当に読みやすい。
ゆったりした空気に満ちていて、いるだけでも安心できる。
私は、夢中になって本に目を奪われていた。
そしてふと気が付いて壁の時計を見ると、優に1時間は越えていた。
しまった! 夢中になり過ぎて、彼を待たせちゃってるかもしれない!
私は読んでた本を棚に戻して、慌てて、それでも走り回らないように彼を探した。
するとお店の奥、お爺さんの座っているところで、別の本棚の間から少し焦ったような彼が現れた。
「ごめんなさい! 夢中になり過ぎちゃって…。」
「すみません! 待たせてしまいましたか?」
お互いの顔を見ながら、二人同時にそう言った。
私もびっくりしてぽかんとしてしまったけれど、いつもは冷静な彼もそうだったのかきょとんとした顔で私を見ている。
私達は、偶然同時に同じ事を考えてたんだ。
二人とも本が好きで、このお店を気に入って、ふとお互いを思い出すタイミングも一緒。
それに気が付いた私は、じんわりするような暖かい幸せに包まれて。
そして、お互いに顔を見合わせてくつくつと笑い出した。
その奥では、お爺さんが私達を慈しむような目で見つめていた。
「よかったら、また遊びに来なされ。」
お爺さんが、柔らかい声で言ってくれた。
「はい、是非またお伺い致します。」
彼が笑顔でそう答え、私と一緒にお辞儀をする。
そうして、何冊かの本をお会計してもらって私達は古書店を出た。
帰り道は、どんな本に心惹かれたかを語り合う。
秋の柔らかくなった空色が、彼の笑顔に光を照らす。
ほんの何気ない日常の、それでも貴重な時間。
ずっと大事にしたい、私の宝物。
・大事にしたい
最近大好きな推しがアンチに粘着されてる。
推しは優しいから放置してるけど、正直コメント欄の空気が悪くなっているからどうにかしてほしい気持ちはある。
とりあえず各種SNSで迷惑行為として通報してみたけど凍結される気配はない。
このままじゃ埒が明かないからアンチのアカウントを晒して他のファンに注意喚起と通報の協力を促した。
それでもアンチは消えることも迷惑行為を止めることも無かった。
悔しいからとうとうアンチに注意した。これ以上推しの活動の邪魔をするな、と。
話の通じないアンチはさらに迷惑行為をするようになった。いい加減にしてほしい。
これはもう推しに直接注意をしてもらうしかない。
恥を忍んで今回の話を推しのメッセージに送ったら、そのままブロックされてしまった。
どうして?
私じゃなくてアンチをどうにかしてほしいのに。
もしかしてアンチと推しって繋がってるの?
もしそれが本当なら推しはファンを騙してるんだ。有り得ない。
頭に来たから今までの話全てをSNSで晒そうと思う。
(だいじ/おおごとにしたい)
大事にしたい…
ねるねるねるねを練りたいと思うことと、実際に練ることとに間には、大きなギャップがある。
それでも、色を大事にしたいという気持ちは、尊重されるべきだろう。
大事にしたいこの10年
あ、あと9年なのか
ほんとに無駄にしたくないのに
無駄なことばっかりして
忙しくしたくてバイトをたくさんした
遊びたいのかもよく分からない友達と遊んで
お久しぶりの人からの連絡
何も聞かずに誘いに乗った
想像のつくところで想像のつくことをした
終わった時の虚しさもその後の態度も関わり方も何もかも想像通りだ
自分のこと大事にしたいのに
時間も大事にしたいのに
無駄な虚無な時を過ごしてしまう
これも経験と思って過ごしていいものか
来年にはやめたい
春風は不思議な娘だ。
「なぁ、まだ帰らねぇの?」
俺は何度目か分からない質問を春風芽已の背中に投げた。
彼女は幼稚園からの幼なじみで、いつからだったか、一緒にトンボを捕まえたり、親に内緒で買い食いをしたり、そんな過ごし方をする仲になった。
小学校も中学校も、いま通っている高校も縁あって同じだ。
1年生の時は同じクラスだったが、2年生の今は別々のクラスだ。
さて、当の本人は聞いているのかいないのか、右手の人差し指を唇に当てて、大衆的な雑貨店内をキョロキョロしている。
アレは集中している時の癖だ。
「うーん…有りそうなんだよなぁ…」
春風はぶつぶつ呟くと、長い黒髪が床にくっついても気にせず、カラーボックスの一番下の段を覗き込み、手を差し入れて物色している。
「…」
汚れにも無頓着。
案の定、右の掌は年季の入った埃で黒く汚れていた。
…ったく!
「おい」
俺はずかずかと春風に近づき、右手首を掴んだ。
すかさず、きちんとアイロンがかけられたモスグリーンのハンカチで春風の汚れた掌を拭った。
「何?夏木」
春風はされるがままだ。
「お前、そんな汚ねぇ指を口につける気か」
「え?…あー」
そこで春風は、初めて気がついたというようにハンカチで擦られている右手を見た。
でも、それも一瞬。
直ぐに視線は店内へと移される。
俺はため息をついて、手早く汚れを拭いた。
だから、放っておけない。
「ほれ、きれいになったぞ」
春風の眼前に右手を差し出してやる。
動じない春風。
右手と会話をするように
「夏木、ありがとう」
と言って振り返った。
ベルベットのような黒髪が美しく揺れる。
緑がかった瞳が俺をとらえたことを知り、ギクリと体が硬直する。
それは1桁の歳から見慣れてきたはずの、ただの幼なじみの顔。
そのはずだが―
俺はハンカチを握る右手に意識を集中した。
モスグリーンの生地に黄色の蛙の刺繍。
刺繍の下にコバルトブルーの丸い書体で『YOUSUKE』とある。
春風が、家族で温泉旅行に行った時の土産だったはずだ。
既製品のハンカチに名入れをしたのだと。
別に、春風の贈り物癖には慣れた。
春風から贈られる物は、だいたい奇抜で一度みたら忘れられない。
だから、特別感があって捨てられない。
「『モウドクフキヤガエル』使ってくれてるんだ」
春風は俺の右手を指差した。
俺は一瞥して言った。
「ま、目立つし」
春風はくすりと笑った。
「大事にしてくれてて嬉しいよ」
#大事にしたい
大事にしたい
夕方の神社。寂れたそこには秘かに神様が住んでいる。
「なにか面白いことはないだろウか」
退屈な毎日の中に、何十年かぶりの参拝者がやってきた。忘れ去られた山の神社の中に。
悲壮な顔をした少女は鮮やかなメイクや爪をしている。
これはイイ!遊びがいのある新しい人間だ。
「やあ、そこなお嬢さんこんなトコに何しに来たの?」
努めて明るい声で話しかけた。けれどその人間の目は胡乱げ。少女は冷たい声音で僕に答えた。
「気にしないで。ただの気まぐれだから」
せっかく遊ぼうと思ったのに、そんな反応では辛いじゃあないか。
「なぁに、悩み事?僕に言ってみなよ。手伝ってアゲル」
少女は驚いたような表情をした。そして、初めて僕の瞳を見た。
「なンだい、僕に惚れちゃった?」
少女は笑った。
「心配させてごめんね、この神社に思い入れがあるんだ。ただ大事にしたいだけなの」
僕は首を傾げた。ここ何十年も人が来ていないのにどうして思い入れがあるのだろうか。
「君がココに来るのは初めてだと思うんだけど」
少し恥ずかしそうに少女は目を伏せた。
「来たのは初めてなんだけど、おじいちゃんが撮ったこの神社の写真がずっと大好きで。……やっと来られたんだ」
さっき悲しげな顔をしていたのは──?
「おじいちゃん、もういないの。でもなんかいる気がしてさぁ」
僕は神様だから、この娘の祖父がいない事がわかってしまう。けど、少し嘘をつきたくなった。
「よかったね。君のおじいちゃんらしき人がずっと君を見守っているよ」
僕がそう言ったらその子は目に大粒の涙を貯めて、僕を抱きしめた。「ありがとう」と小さく呟いて。
大事にしたい
今日、いや、さっきと言ったほうが良いか、
衝動的に買い物をしてしまった。
科学館での買い物。
黄鉄鉱と白雲母
別に高かったわけでわないがそれなりの出費だ。
やってしまった、後悔と同時に謎の満足感に襲われる。
まぁ、家に飾ればいいか、
大切にしたいものがまた増えた。
❦
大事にしたい
家族、友達
みんなお互いに支え合いながら
懸命に生きている。
人は1人では生きていけないと
日々思う。
家族、友達はとても大切。
「それ、ずっとつけてるよね」
少し古くなったヘアピンを指さしてそう指摘される。
ああ、これね、とそっとヘアピンを撫でる。
いつだったかの誕生日に坊ちゃんからプレゼントを貰った。
小さな包みを開けてみると中から出てきたのは花の飾りがついたヘアピン。
俺には似合わないと思うけどなあ、と思いつつ「ありがとう」と頭を撫でてやった。
それでも坊ちゃんはきらきらした目で俺を見ていて、もしかしてこれをつけろとそういうことなのだろうか。
一瞬、考える。
いや、似合わないと思うんだよね本当に。
視線に耐えられなくてヘアピンをつけてやれば、満足そうに笑ってくれた。
「新しいの買ってあげようか?」
大きくなった坊ちゃんからそう提案されるが丁重にお断りした。
「物は大事にするタイプなんですよ。それに、これつけてないと不機嫌になるじゃないですか」
「子供の時の話だろそれ」
小さい頃の話を持ち出すと途端に呆れた顔をされた。
でもつけていたらとても嬉しそうな顔してたんですよ、貴方。そんな顔されたらちゃんと毎日つけるし、気に入るじゃないですか。
あはは、と俺は声を上げて笑った。
「ところでなんで花?」
「小学生が思いつく精一杯」
「もっと他にあると思うんですけど」
「ここが真人(まひと)の部屋か~初めて来た!」
そう言ってまじまじと眺めるのは、高校の時親友だった陽太(ひなた)。
「ん?これもしかして、実家から持ってきたタンス?」
「あぁ、うん。まぁなんでも買えるってわけじゃないし」
「じゃあ俺が内緒で貼ったプリキ◯アシールとか未だについてるのかなー」
「は?どこ」
「陽太クン忘れちゃった❗」
「その顔絶対覚えてるだろ」
言えよ、と詰め寄る真人を余所にカレンダーに近寄る。
「カレンダー発見!黒ペン借りるね~」
「は?ちょ、シールは」
陽太は真人の机の引き出しを開け、黒ペンを取る。そのキャップを外すと、今日に『陽太クンとの再開❕』と枠いっぱいに書き込んだ。
「何してんだよ」
「えー!真人と俺が再び会えた記念に、書き記しておこうと思っただけだよー!」
「嘘つけ、お前次の日にも何か書こうとしただろ」
「それは明日の予定だよ!だって俺一年しか居られないんだよ!!大事な一年なんだよー!」
ぴょんぴょんと跳ねるが、落下したときの振動や音がまるでしない。
「一年って短いんだよ!だから早く真人との計画立ててるんだよ!」
そう言うと陽太は再びカレンダーに向き直る。
(...大事な一年なら、家族とか地元の友達とか、他の人達のところに行くべきだろ)
はぁ、と軽く息を吐く。
「...なんで俺のところに来たんだ?」
「え?だって真人ともっと遊びたいから。もっかいアイス、二人で食べようよ!」
曇り無き眼には、光にやられる真人が映っている。
「そんなことでいいのかよ......仕方ないな」
「へへっ、いいよいいよ真人クン❗陽太クンわくわく😍してきちゃっタ😁✨一緒にアイス🍨食べようネ❗」
「なんかやだな」
「ひどいヨ😭💔真人クン❗」
真人は陽太の隣に並び、カレンダーを見る。
「......なぁ陽太、一つ聞いていい?」
「ん?何?」
「お前なんで俺の黒ペンの場所知ってんの?初めてきたんだよな?」
「あ、やべ」
「お前絶対初めてじゃないだろ!!」
お題 「大事にしたい」
出演 真人 陽太
「お金があれば幸せになれる」
昔はそう思っていた。
確かに今でもそう思う。
お金があれば、ほとんどのものが手に入る。
だけど、信頼という積み上げてきた努力は
お金では買えない。
いじめられて、心を病み、引きこもりだった経緯から
私は身に染みて感じている。
お金を稼ぎ、
口座に振り込まれた時の達成感は計り知れない。
改めてお金のありがたみを感じる。
お金は大事だと分かってる。
それ以前に信頼を得なければお金は稼げない。
自分が体調を崩した時に
その信頼は真心に変わり、勇気につながる。
私は色水。
紙の上にゆらゆらと浮かび染み込まないように浮かぶ色水。
そこに違う色の色水が近づいてきて私と触れる。
張っていた力が緩んで少し混ざる。
また新しい色水が近づいてきて、また少し混ざる。
そうやって大きな色水が紙に浮かんだ。
どう?私綺麗?
いろんな色に囲まれて前より鮮やかになったんじゃないかな。
いいでしょ?
うん。確かに綺麗。濁った色になってるとこも少しあるけど遠くから見ればとっても鮮やか。
でも私は少し薄くなった気がする。
前はもっと濃い色だったんじゃないだろうか。
今の私はどこまでが私かはっきりと分からない。
きっともっと私は綺麗だった。
私は私の色だと思われるとこまでで色水を切り離した。
少しだけ別の色が混じっている。
以前よりも小さくて少しくすんだ色水になってしまった。
でもそれでいい。今から私の色で染めるのだから。
濃く、強く、激しく染まれ。
私は私だけに染まってゆけ。