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「それ、ずっとつけてるよね」
少し古くなったヘアピンを指さしてそう指摘される。
ああ、これね、とそっとヘアピンを撫でる。


いつだったかの誕生日に坊ちゃんからプレゼントを貰った。
小さな包みを開けてみると中から出てきたのは花の飾りがついたヘアピン。
俺には似合わないと思うけどなあ、と思いつつ「ありがとう」と頭を撫でてやった。
それでも坊ちゃんはきらきらした目で俺を見ていて、もしかしてこれをつけろとそういうことなのだろうか。
一瞬、考える。
いや、似合わないと思うんだよね本当に。
視線に耐えられなくてヘアピンをつけてやれば、満足そうに笑ってくれた。


「新しいの買ってあげようか?」
大きくなった坊ちゃんからそう提案されるが丁重にお断りした。
「物は大事にするタイプなんですよ。それに、これつけてないと不機嫌になるじゃないですか」
「子供の時の話だろそれ」
小さい頃の話を持ち出すと途端に呆れた顔をされた。
でもつけていたらとても嬉しそうな顔してたんですよ、貴方。そんな顔されたらちゃんと毎日つけるし、気に入るじゃないですか。
あはは、と俺は声を上げて笑った。


「ところでなんで花?」
「小学生が思いつく精一杯」
「もっと他にあると思うんですけど」

9/21/2024, 6:22:36 AM