『夜景』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
サカイからは2つ指輪をもらった。いつ頃どういうタイミングでかは覚えてないんだけど、ひとつはティファニーのシルバーリング。チューリップが一輪立体的に指に巻き付いたようなとても珍しいデザインで気に入ってるよ。サカイが選んでくれたのか、一緒に選んだのか忘れちゃったなぁ。もうひとつは私の誕生石のオパールの指輪。ロングビーチのジュエリーショップで見かけて、私が気に入ったやつ。学生にとってはかなり高いものだから、その場で買うなんて無理だったんだけど、サカイが親にも相談してお金を何とか工面して絶対に買ってあげるって約束してくれた。しばらくして本当に買ってくれたよね。私を喜ばせたい、大好きだよって気持ちがサカイの満足そうなニコニコ笑顔で伝わってきた。今も鮮明に覚えてる。大事に大事に持ってるよ。ティファニーのチューリップはショップに持っていくと無料で磨いてくれるんだよ。オパールは特別な時に付けるよ。普段指輪はしないからしまったままでもったいないね。
Theme:夜景
子供の頃、夜空に輝く星でネックレスを作るのが夢だった。
もっと大きくなって背が伸びたら、村の櫓から星を掴んでネックレスを作ろう。
君はきっと喜んでくれるだろう。
歳を重ねると、星ではネックレスを作れないことを知った。
更に歳を重ねて村から都市へ出ると、星が見えないことを知った。
眠らない都市では、星の代わりに眩しいほどの灯りがずっと輝いていた。
都市の夜景には、星はなかった。
それから更に時を経て、俺は都市で出会った女性にプロポーズした。
どんな灯りにも負けない輝きを放つダイヤモンドの指輪だ。
結婚を報告しに故郷の村に帰ると、君は素朴ながらも美しいパールのネックレスをしていた。
君の腕に抱かれた小さな男の子が、パールを掴もうと必死に手を伸ばしている。
満点の星空の下での淡い願い事を懐かしく思い出しながら、俺は妻となる女性の手を取った。
俺も君も違った夜景のもとで、それぞれの道を歩んでいく。
久しぶりに見た満点の星空は温かく、それでいてどこか寂しく思えた。
都会の夜は光り輝く
いつまでも光に照らされて賑わい続ける
消えないビルの灯りたち
眠らない街
眠れない街
私はそんな街を遠目に見ながら眠りにつく
あぁ、今日も夜景が綺麗だ
#夜景
「夜景」 小説
菜々子はゴッホの『夜のカフェテラス』のことを思い出していた。あの絵には暖かさを求める何かがあって、孤独で寂しいと言うよりは、星の瞬きの下で大いなるものと交信しているゴッホの魂があるのだと感じた。それは以前から、そう感じていた訳ではなく、いまこの瞬間に降りてきたものであった。目の前にいる夫が
「どうしたの?」
と訊ねたので、菜々子はワインを一口飲んだ。
「とても美味しいわ。またここに来たいと思って」
夫は微笑むだけだった。心の中で、次にここに来るのは、いつの記念日が良いかと考えているのかも知れなかったし、帰りの電車の時間を心配しているのかも知れなかった。
レストランの外に出ると、店の中の暖かな光が街路に広がっていて、美しいものに包まれた心地がした。夫の手を握りしめ
「今日は、ありがとう」と言うと、
「気に入ってもらえて良かったよ」
と、手を優しく握り返してきた。昼間、美術館で見たゴッホの絵には、夫婦らしき二人の人物が描かれていて、ちょうど絵の中の登場人物になったようだった。夜風が気持ち良かった。夏の気配を残しながらも、ゆるやかに季節が変わろうとしていた。
函館の夜景を見に行った
何ヶ月も前から計画立てて
すごく楽しみにしてた
なのに霧で視界不良
あの時は笑うしかなかった
来年は見れますように
LEDの青が好きだ。
一時期なんでもかんでもこの色使われてて
辟易したこともあったけど、やっぱり好きだ。
家の最寄り駅の商業施設はハロウィンが終わると
LEDの青一色でライトアップをする。
これホント楽しみ。
ただ、毎年スマホのカメラで夜景モードとやらを試みるも
上手く撮れないんだよなぁ。
年々の失敗画像がいつの間にかグループにされてて
なんとも切ない。
大きなビルの最上階から眺める夜景はいつも心を守ってくれた。暗闇は街の灯りを一層際立たせた。この一つひとつの灯りの向こうには見たこともない人たちの暮らしが広がっている。その中にはきっと私と似たような苦しさを抱えた人もいるんだろうな。その夜だけは一人じゃないと思えたんだ。
夜景が綺麗だった。
この夜景を写真に収めて、送りたい相手はひとりしかいない。
そう思った矢先、スマホを手に取り写真を撮った。やっぱり綺麗だな。
彼にLINEを送った。
『今日の夜景めっちゃ綺麗なんだが!』
今日もすぐに返事が来た。
『マジだ!お前さ、一緒に夜景見たい人とかいんの?』
えっと思った。彼しかいないに決まってるじゃん。そんなの送れるわけがない。
『いないけど、どーした?』
『今度さ、俺と夜景見ない?もし、俺でよければ😳』
ヤバい、どうしよう!さすがに断れない!!
『いいよ!』
『よかったー!早いと思うけど、明後日いけたりする?』
『いける!』
『じゃあ明後日楽しみにしてる!』
私も楽しみにしてるよ。
まだ、妻が彼女だった頃、僕が大学生だったある夏休み実家のある街に来てくれた。
張り切った僕は、実家の車を借りて、街を見下ろすことができる、そこそこ高い山にでかけた。
その場所は、中学時代の悪友に、良い場所があるぞと教えてもらった。俺なんかより彼女を連れてくるべきだと。
そこでの夜景は、光まで距離があり、一つ一つが瞬いて見える。ありきたりの表現だが、一面の黒いビロードの上に散りばめた宝石、いや揺らめく瞬きが宝石を超えている。
車から降りて少しだが暗い道を登る。彼女は、少し怖そうだ。手がギュッと握られている。
その場所につき、星空から見下ろした瞬間、夜景が拡がる。彼女の動きが止まった。しばらく見入ったあと隣を見ると夜景から目を離せない彼女がいた。その目には一筋の光るものが見えた。夜景と聞けば、いつもこのシーンを思い出す。
ホテルの窓から夜景を見たりすると、いつも思う。
あの光の中の、どれかひとつが、あの人の住んでいる家の、窓の光なんだ、と。
そう思っているだけで生きていける。
大阪にいるとね、それがないんだ。
ここには何にもない。
ここにいる間は生きてても死んでいるのと同じだ。
中島らも「失恋について」
お題 夜景
夜景は嫌いだ、天上で輝く本物の星が隠れてしまうから。
子供の頃、星の見えない都会へ連れてこられて、そう母に文句を言ったことを思い出す。
だけど、大人になるにつれ、少しずつ分かったことがある。
天上の星に勝る輝きが、デート前の誰かの心を浮き立たせることがある。
生活の星が集まって銀河になることで、どこかのレストランでプロポーズする誰かの心の支えになるときがある。
僕自身、彼女に教えられるまで知らなかったけど。
こんな楽しみ方も悪くない、と今は素直に思える。
そして、そう考えたほうが人生はきっと楽しい。
ふと、通知音が鞄から聞こえた。
取り出してみれば、帰宅を急かす妻と娘のLINE。
そっと笑み、スマホをポケットにしまう。
煌びやかな街をまた、歩き始めた。
人が働いてる証を見てきれいねなんて
自分たちだけが美しいものを愛でてる
喧騒
人混みと湿気に気を取られ
落としたたこ焼き
中までは甘くないりんご飴を
黙って口に押し込む
喧騒
人混みと蚊に気を取られ
見落としたしだれ花火
ゴミとかした水風船を
黙って回収する
喧騒
人混みとヤニの匂いに
飲み込まれた自分
水風船の犠牲になったTシャツに
なんだか笑えてきて
ふいに
この街の夜景が
大人のはずの自分が
こんなにも変わっていなかったと
やっと気づいた
夜景
天壇青に染まる世界をあてもなく彷徨い歩く。
歩けども歩けども、何処へも辿り着けない。
昼も夜もない、自分でさえ本当に居るのか分からない、この世界で。
歩き疲れて息も絶え絶えで、もう止めてしまおうかと思っていた時。
ふと、誰かの声が聞こえた気がした。
懐かしい、でも誰の声かは思い出せない。
その声のする方へ、一歩また一歩と進む。
何故だか無性に、その声の主に会いたかったから。
また、足に力を込めて歩きだした。
テーマ「夜景」
「夜景」
宝石箱をひっくり返したみたい
君はそう呟いたあの夏の終わりの夜
『夜景』(創作:詩)
遥か昔の光の粒を星といい空高く眺め
地上に光る美しい人工光の夜景に見惚れる
生まれたての光の粒は
まぶしいほどに明るくて
その人工光の明るさは
空の星まで飲み込んだ
明るい空の静かな月は
地上を見おろし冷ややかに笑う
遥か昔の光の粒の
その旅路の果てを想い
冷ややかに 冷ややかに
夜景は大好物である。高台や展望台などの上から見下ろす夜景も好きだが、街中でふと上を見上げた時、周りを見回した時のザ・繁華街の夜とわかる景色も好きなので、夜帰る時は駅周辺を通るのを楽しみにしている。
8月に東京に旅行したことがあるが、サンシャインシティの展望台から見下ろす爛々と光り輝くビルが大量に眼下に広がる夜景は絶景であった。夕食を食べ終わったあとホテルをぶらり回ったのだが、駅周辺のネオンがぎらついて「これが東京かあ」と実感させられた。展望台上から見たこの場所に今自分は立っている、しみじみと感慨深かった。
博多の夜景も印象深かった。上から見下ろすと言ったようなことはなかったが、2月に母と訪れたときに夕食を食べる店を探しつつ街をぶらりとしたことは本当に楽しかった。またこのように夜にぶらりと昼とはまた違うショッピングを楽しんだり、美味しいお店を探したりするような旅行をしてみたいものだ。
写真の中に広がる光
夜を彩る鮮やかな夜景
今では当たり前の光景
未来ではありえない光景
あの星と星を結ぶと何座になるんだよ。と夜景を優しく教えてくれたあなた。
そんなあなたが、まさか他の人のところに行ってしまうなんて。
今は、夜空を見上げるのが、辛い。
今度は夜空を見上げて、あの星がきれいだよね。とただ、それだけを言える人を。
#夜景#
ソフィア
「あれ?先客が居たんだ♪」
人気の少ないビルの屋上,見下ろせば車や街灯の光が満面の星空と思えるほど輝いている。
僕は今日,このビルから飛び降りようとしていた…いわば自殺である。
「君は誰?…もしかして止めに来たの?」
フェンスに手をかけ,突然現れた彼女を怪しく思い,顔を顰めながら問いかける。
すると,彼女は焦った様に首を振り,
「えッ?違うよ,私はたんにこのビルに来ただけ」
そう言うとほほえみながら僕の方へ歩み寄り,フェンス越しに周囲を眺め,つぶやく。
「私さ,夜景が好きなんだよね♪きれいだし嫌なこと全部、忘れさせてくれる。」
彼女がそばに来てようやく気づいた,彼女の体は小枝のように痩せており,健康体には見えぬということに。
「…病気なの?」
言わぬべきだったか,その言葉を口にした途端彼女は驚いた表情を見せ”なんで病人が外でてるんだとか思った?”と悲しそうにつぶやき,恐る恐る僕の顔を見る。
「…別に」
どうせ死ぬんだから今更気にしても無駄だろう…,そう考えれば興味がわかず素っ気なく返す。
「そっか…」
僕の反応を見,彼女は安心した様子で小さく笑みを浮かべ,僕の手を取り,
「ねぇ,私と一緒に来てくれない?君と逝けば怖くないと思うんだ」
彼女と過ごせる時間がまだ続くのならそれも悪くないだろう。僕は”いいよ”そう一言だけ言えば,彼女の手を強く握る。
ほんの少しの勇気を振り絞っただけで,僕の心と身体は未だかつてないほど身軽になった気がした。
今日,僕は名も知らない少女と,ともにビルから飛び降りた。