お題 夜景
夜景は嫌いだ、天上で輝く本物の星が隠れてしまうから。
子供の頃、星の見えない都会へ連れてこられて、そう母に文句を言ったことを思い出す。
だけど、大人になるにつれ、少しずつ分かったことがある。
天上の星に勝る輝きが、デート前の誰かの心を浮き立たせることがある。
生活の星が集まって銀河になることで、どこかのレストランでプロポーズする誰かの心の支えになるときがある。
僕自身、彼女に教えられるまで知らなかったけど。
こんな楽しみ方も悪くない、と今は素直に思える。
そして、そう考えたほうが人生はきっと楽しい。
ふと、通知音が鞄から聞こえた。
取り出してみれば、帰宅を急かす妻と娘のLINE。
そっと笑み、スマホをポケットにしまう。
煌びやかな街をまた、歩き始めた。
9/19/2023, 7:53:02 AM