まだ、妻が彼女だった頃、僕が大学生だったある夏休み実家のある街に来てくれた。
張り切った僕は、実家の車を借りて、街を見下ろすことができる、そこそこ高い山にでかけた。
その場所は、中学時代の悪友に、良い場所があるぞと教えてもらった。俺なんかより彼女を連れてくるべきだと。
そこでの夜景は、光まで距離があり、一つ一つが瞬いて見える。ありきたりの表現だが、一面の黒いビロードの上に散りばめた宝石、いや揺らめく瞬きが宝石を超えている。
車から降りて少しだが暗い道を登る。彼女は、少し怖そうだ。手がギュッと握られている。
その場所につき、星空から見下ろした瞬間、夜景が拡がる。彼女の動きが止まった。しばらく見入ったあと隣を見ると夜景から目を離せない彼女がいた。その目には一筋の光るものが見えた。夜景と聞けば、いつもこのシーンを思い出す。
9/19/2023, 7:54:30 AM