『夜明け前』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
どうか彼女が生き延びてくれますように。
婚姻関係になくてよかった。彼女は我々と同列に扱われることはないだろう。そもそも彼らが彼女を寄越したのだから、およそ無用な心配か。彼女が彼らの駒であることにははじめから気付いていた。気付いていたが、彼女と過ごす時は心地よかった。将来について話し合った。この国をどうしていくか、民を豊かにするために何が必要か。時に他愛ない話もした。
彼女に心を寄せるのは、当然だった。
彼女にとって私はどのような存在だっただろう。私との別れを惜しんでくれるだろうか。そうなれば彼らは彼女を害すだろうか。彼女が生きていてくれるなら自分とのことなど覚えていなくていい。
この城はすぐに占拠される。抵抗する気もなかったので残っている者にも暇を出した。両親は気付いてもいないだろう。この城に彼らの手の者がいることにも気付いている。その手引もあれば城の占拠など容易い。気付かないふりをしている。
彼らにとって己が愚かであるほうが都合がいい。
とても静かだ。元々意図的に音を立てる以外は何か聞こえるとして紙を捲るときの擦れる音が聞こえるくらいだ。それをふまえてなお、今は静かだ。この城が静寂に包まれているのも限られた時間だけだろう。ならば、この時間だけは私のために使おう。
彼女との思い出を整理しよう。
――もうすぐ夜が明ける。
題【夜明け前】
「もう、朝になりますね~。」
「そだね~。」
今日は、私の家ですみれと私、葵がお泊まり会をしてるの!
「もう、眠いです。」
「だよね、徹夜で恋ばなとか面白いね(笑)」
「分かる~!盛り上がって、夜明け前まで寝ちゃいましたもん。」
「ね!て言うか、すみれがさっき言ってた、ふうまとのデートって何!?」
「へ!?それ、は、ショッピングモールに行っただけです。」
「え~?嘘だ!手を繋いだり、キスしたり、しちゃった!?」
「しっ、してない!あれ、したかも?」
「きゃー❤️どっち?どっちも、とか!?」
「いえ、したのはてを繋いだだけです!」
「そっか❤️」
「葵も今度ひなたと行ってみたら?デート!」
「うーん。そうだね、行ってみようかな❤️今誘ってみる!」
「えっ。今?」
プルプルプル プルプルプル…、
「もしもし!葵!?どうしたの。」
「あっ、その…。あの!今度、デートってどうかな?」
「えっ!行く行く!?OK!いつ?」
「じゃあ、29日にしよ❤️」
「分かった!開けとくね。葵、神!」
「ありがとう。じゃあね~❤️」
「うまく行きましたね!」
「うん。楽しみだな~❤️」
凍えるような寒さを覚えている。
長い、長い冬だった。いつ明けるのかもわからなかった。
何人も死んでいった。隣人が、同胞が、恋人が、家族が。そうして、飢えはひもじいと、それでもわからない馬鹿どもが大勢いた。
凍えるような寒さを覚えている。
山に阻まれ、雪などめったに降らないけれど、それでも吹きさらす寒風は体に堪えた。
体の芯まで、震えていた。抱きっぱなしの猟銃は、体温までぬくくなっていたはずだ。それでも私から温度を、際限なく奪っていった。
今日、死ぬかもしれない。
私は決して悲観的な人間ではない、故に皆思っていたことだ。明日、飢えて死ぬかもしれない。凍えて死ぬかもしれない。それでも今日まで我々は銃を掲げなかった。今日死ぬだろう、それでよかろうと思えなかった。
しかし、いよいよどうしようもなくなって、その覚悟ができてしまった。ここにいるのは皆、他ならぬ自分の意思だ。ああ、凍えるばかりのはずなのに、心臓ばかりが煩わしくなる。震えは止まりもしないのに、高揚していると、そう言うより他に、仕方がなかった。
ああ、そう。今日、死ぬのだ。死ぬだろう。
だが私が死んでも生きても、きっと今日、世界が、変わる。
世界中の人間が、この町を見る、そして知るだろう。どれほど人が強かで、また、己の手で未来を勝ち取る気概のある生き物なのかを。私の死は、決死の行動は、それを人類に証明するのだ。
深く、息を吸った。震えは幾分かマシになった。ゆっくりと吐き出した息は、当たり前のように白かった。
犬の遠吠えが聞こえた。次第に抱えた銃の輪郭が、隣人の怯えた顔が、薄ぼんやりと見えるようになってきた。
遠くでバサリと音がした。3メートルはある木の棒に、茶色く汚れた、びりびりに割かれた、旗が立つ。負ければ暴動、勝てば革命。そのくだらぬ戦に命を賭すと示した、我々の意志が翻る。
間もなく、夜明けが訪れるのだ。
【夜明け前】
夜明け前。
カーテンの隙間から射す灯り
孤独な部屋
塞いだ耳のせいでよく聞こえる、自分の呼吸
重たい心、やめてしまいたい人生、過去、未来
組んだ足、不快な暑さに汗ばむ夜
手癖で手繰り寄せる煙草の本数は心許ない
軽いのは財布だけ、コンビニすら躊躇する
こんなはずでは、と思える程の野望は無かったな
マンションの廊下から見下ろす道路
ゲームなら迷わず跳べるのに
夜明け前、新聞の配達、排気ガス
さよならは誰にも言わない
おはようも誰にも。
久しぶりに夜明け前に目覚めた
寝ている彼女を見つめる
寝てる顔も可愛いけれど起きている顔はもっとかわいい
撫でようと思ったが流石に起こしたら申し訳ないので静かにベッドから降りてキッチンに向かう
彼女はいつも俺より早く起きて料理を準備している
今日は俺が作ろうかな
そんなことを思いながらとりあえず冷蔵庫を開くと廊下から走る音が聞こえた
「ごめん!早く起きれなかった!」
髪の毛もメイクも整えていない彼女は俺を見て謝る
「今日早く起きただけだから大丈夫だよ」
俺は冷蔵庫を閉めてから彼女にハグをする
「ご飯準備しようとしてくれてたの?」
「うん、でも君のほうが早かったね」
「ありがとう」
「こちらこそいつもありがとう、一緒に作ってもいい?」
うんと頷く彼女に俺はまた惚れ直す
「準備しないとね!」
彼女は笑顔を見せて一緒に料理を作る
「「いただきます」」
少し変わった夜明け前の朝いつもの日常へと戻る
それでも彼女への愛は変わらない
僕は彼女を愛してる
夜明け前
眠れない時はお茶を淹れてゆっくりと過ごすに限る。
今日はミルクティーにしようか。
そういえばお昼にドーナツを差し入れられたのだ。お茶と一緒にいただくとしよう。
最近は持病の喘息が出るので大抵遅くまで起きてしまうのだが、こうして気持ちを切り替えて、お茶を楽しむ時間だと思い込む事で、病も少し落ち着く様な気がする。
ミルクティーのいい香りが立ち込める中、ドーナツをぼんやりと眺めながらふと思った。
自分は集団行動においてドーナツの穴か生地かどちらなのだろう。
ドーナツの穴はドーナツというものにおいて唯一生地の無い部分。当然だが味は無い。しかし、無ければドーナツとは言えない。そんな役割がある。
ドーナツの生地は空気と油と味の化学反応でしっかりと結合され、綺麗に焼き上がっている。バランスがとれて生み出される味は格別だ。
穴はどう頑張っても穴だ。
味がどうと理解をしていても周りと分かち合えないのだ。そうゆう性質なのだ。
しかしながら、生地も生地だ。
変わり映えの無い味である。
普段、仕事をしていると、やけに元気にお喋りをしながら結託をし華やかに仕事をこなす婦人達を見ていると、彼女達はドーナツで言うところの生地に思う。
そして、共に働く私は昔からどこに居ても、誰と居ても、集団が苦手である為に気がつけば1人で混じり気無く作業をする事が多かった。
私も旨いドーナツ生地側の人間になろうと、過去に何度も試みたが、周りと常にくっついて協力をしてと言うのがどうしても苦痛で仕方がなかった。
なので私はドーナツで言うところの穴なのだ。
かろうじてドーナツに関わり、やる事は果たしている。
人の元ある性質は変えられない。
しかしながら、生地も穴も、どちらも存在するからドーナツが成り立つ。どちらも大切なのだ。
・・そんな事を考えつつ、ドーナツを食べて最後にミルクティーを飲み干す。
「旨い」
全てを包み込み、味を調和させるこのミルクティーが一番最強なのかもしれない。
こんなミルクティーの様な人格者は・・と、妄想を膨らませたい気持ちもあるがそれはまた明日にするとしよう。
夜明け前の、ささやかな喜び。
「夜明け前」
ある夜の出来事
私は、秋の夜長にのんびりと過ごしていた。
そんなとき、奥の部屋で物音がした。私は奥の部屋に行った。
「誰だ、何をしているんだ。そこで。出てこい。」
すると、奥からなんと、猫美がいた。
私 「おまえは、何をしているんだ?猫美。今はレッスン中だろ?」
猫美 「アタイは、あの月を観てるにゃあ~。」
私 「そうなんや?確か今日は中秋の名月だったな」
猫美 「今日は中秋の名月なんだにゃ」
私 「おまえは、夜明け前に猫に戻るだな。このままがいいのだがね。」
猫美 「うん」
寂しそうに私を観ていた。でも、私が魔法陣で少し長引かせることが出来る。
猫美は、夜だけでいいらし、こう言っていた。
猫美 「人間は、疲れるから猫美は猫が一番。だから、これがいい。」
私 「そうか、猫がいいか。・・・・」
そんな会話していると、夜明け前になってきた。そろそろ、私も、猫に戻るとするか。
この話はフィクションです。
ついに
2024/09/13㈮日記
新紙幣の千円札が2枚
手元に回って来た。
あーもう少し新紙幣が来ない記録を
伸ばしたかった。
記録は発行されて2ヶ月と数日。
話しに聞いていた、おもちゃの
お札っぽいフォントに違和感を
感じて、お財布からすぐ出ていって
もらった後に気づいた。
番号を見るのを忘れていたし
綺麗な新札だったからお年玉用に
置いておけば良かった。
次、新紙幣が来ても新札とは
限らないかも。
まだ9月だけど年末年始のことを
頭に置いておかないといけないなあ
と思った。
今日、スーパーにお米が並んでいた。
野菜売り場に「常時入って来るか
まだわかりませんので、お米コーナーではなく、ここに置いて置きますね」って感じだった。
早い者がちだね。
欲しい人に届きますように。
僕はもう少し町が落ち着いてから
買おうと思う。
夕方、スマホの充電器を買いに。
店員さんが「これはケーブルが
短いからおすすめしないなあ、
うーん」って悩んでくれたんだけど
僕は短くても良いです、と買った。
親切な店員さん。
良い機会だから両親用に室温度計も
買った。
僕が持ってあるのと同じの。
光、音でも危険を教えてくれるんだけど、その機能は、はっきり言って
要らないけど、アイコン(顔)で
教えてくれるから、その機能が
わかりやすくって良い。
危険なときは凄く辛そうな顔をして
安全な時はニッコリ。
今もニッコリ微笑んでくれている。
僕のことを思って微笑んでくれるの、
このコだけかもと思うようになったら
休んだ方が良いよね。
おやすみ。
鮮やかな海の色
空には無数の星
1日の最初の幸せな瞬間
見れなくたってもいいじゃないか
明日、明後日見ればいいじゃないか
こんなにも綺麗なんだから
遅くたって見てほしい
オレンジ色の空
ちょっと暗いところもあるけれど
いつもとは違って見えた
夜明け前
「夜明け前」
よく「明けない夜はない」って言うよね。
確かに必ず夜は明けるし、又夜も来る。
雨も降れば風も吹くし、晴れる日もあれば雪の日もある。
良くも悪くも時間は過ぎて、良い事も悪い事も飲み込んでゆく。
でも、今現在辛い時に、そんな事言われても、わかっているけど慰めにもならない。
みんなわかってるの。辛い事も一生続くわけじゃないし、いい事があるって事もわかってる。
ただ、今が、この瞬間が辛いの。苦しいの。どうしようもないの。
わかってるけど、この気持ちを持て余して。
慰めにも八つ当たりして。
どうすれば良いかわからなくて。
怒りが爆発して暴れたい時もあれば、何もしたくなくて虚無的になる時もある。
でも、その嵐の時間や沈んだ時間が過ぎると、結局は「明けない夜はない」って言葉に縋ってる。
今は夜明け前。だから今からは······って思える。思いたい。
陽が昇るように、希望が、喜びが現れると信じたい。
書きもの No.2「夜明け前」
東京の夜明け前がすき。
ほとんどの人が深い眠りについている中、
ちかちかと規則的に光る信号を見ていると安心する。
これから仕事に行くのか帰るのか、
はたまたどこかに遊びに行くのか
静かな街をぶーんと走り去っていく車の音も好き。
実家はほどよく田舎だから、虫の鳴く声しか聞こえない。
でも東京は、昼も夜もどこかで人が生きている気配がする。
時々ひとりが淋しくなる夜中、
眠れない日に迎える夜明け前の時間は
なんてことない生活音や、少しずつ街を明るくしていく空が孤独感から救ってくれる。
私、ちゃんと生きてる。
ちゃんと東京で生きていけてる。
大丈夫、大丈夫。
ひとりだけど、独りじゃない
そんな私の夜明け前。
夜明け前
それまでの自分を否定するわけじゃない。
ただ、夜明けを待つだけじゃ、明日は来ないから。
何も取り柄がないから怖くて、周りの言葉が怖くて、自分の選択が間違っていないか怖くて。
でも、どうしてか、一歩踏み出して見たい。
今が悪いわけじゃない。ただ、もう少し、自分に期待してみたくなったんだ。
夜明け前、特に何も感じることはない。
あぁ、またいつもどおりの日常が始まる。
少しの希望と憂鬱を抱えて今日もまた準備のために体を起こす。
今日は何が起こるかな、わかりきってることなのに期待することをやめられない。
つまらないな、嫌だな、でも死にたくないな。
生きていたい、みんな大切な人を失わずに楽しい時のままを生きたいな。
結構日が短くなってきたので、朝方も明るくなるのが遅くなった、とは母の主張。
6時過ぎに目が覚める時があるが、その頃はもう明るいので、まだ夏の名残りがあるなぁと、ぼんやりと考えている。
この時期、夜明け前ってどんな暗さなんだろう。
睡眠中に目が覚めるのは嫌。だから空模様なんて知りたくない。
「夜明け前」
ビンテージのボタンを買った。硝子に細かな装飾がされていて、中央の膨らんだ部分を囲むように等間隔に並ぶみっつのピンクの花がとてもかわいい。ドイツの蚤の市にあったものらしい。眠れない夜にみるものが増えた。
夜明け前
悩んで眠れず迎えた夜明け
貴方と共に迎えた夜明け
わくわくして迎えた夜明け
許せない思いで迎えた夜明け
お別れを迎える夜明け
出発を誓った夜明け
一生のうちに迎える夜明けはどれくらいあるんだろう
泣いていても、笑っていても
夜明けはゆっくり
照らしてくれる
end
夜明け前 9/13 (金)
中学生になってからだろうか。
夜更かしをして自室でゲーム機をいじる
背徳感に浸る日が増えたのは。
家族が寝静まった、淋しく、喜ばしく、
世界に1人しかいないような感覚と共に見る映像やゲームの世界は一段とキラキラとしている。
ゲームをいじってればいつの間にか
朝がやってくるので 外の景色なんか
気にも留めていなかったけど、
大事な青春の夜を、今だけの夜を
ゲーム機器に溶かすのはな、と思い
カーテンを開くことにした。
エアコンに映っている時刻は4時56分。
カーテンをざっと開くと
紺碧色の空と、向こうに絵の具が滲んだような
ホイート色が見えて、思わず心がどき、とした。
空を見るなんて久々。
夜明け前の空気の味を咀嚼して、
軽くなった心臓のままベッドに寝転んだ。
次起きた時の私は
前の私よりも 世界を美しく思えている気がした。
夜明け前
夜明け前のこと。ミルは早くに目が覚めて、中庭に来ていた。
(うーん……今日は何も無いのに、早くに目が覚めちゃったな……)
あくびを噛み殺して、中庭のベンチに腰掛ける。秋が深まるこの季節の夜明け前はかなり冷え込むようになっていた。着ていたカーディガンを引っ張り、身を縮こめてミルは空を見上げる。薄く明るくなっていく空には白い星が淡い光を放っていた。
(……綺麗、だな)
「!」
ふと、気配を感じて振り返る。少し離れたところに白い服の男が立っていた。静かに微笑んでミルを見つめている。
「おや、私に気づくとは流石だね。それだけあの子が気にかけている……少し、妬けてしまうな。あの子が私に向けるのはいつも痛々しいくらいの殺意と憎悪だというのに」
(……エミール執行官)
「うん?だんまりかい?耳が聞こえていないのか……それとも、話す口が無いのかな?」
微笑みながら話すエミール。ミルは「……いえ、失礼いたしました」と頭を下げる。
「少し……驚いただけです。エミール執行官」
「そうかい。まぁ、いい。とりあえず、お前にあるものを渡したくてね」
そう言ってエミールは赤い封筒をミルに差し出す。
「これは?」
「今度、ヴァシリーと一緒に北の支部へおいで。そこで茶会をしよう。師弟関係を結んだお前たちのことを私は知りたいんだ」
「……茶会を?」
「ああ。私はヴァシリーの育て親ではあるが、あれには尊敬の念を抱かれたことは一度もなくてね。もちろん、私もあれに大事な弟子と思ったことは無いが」
微笑みながら淡々とエミールは言う。それに対してミルは背筋が凍り、今にも震えそうになったが必死に耐えた。
(……普通、じゃない。どうして拾った子供に対してそんなことを)
「ん?どうした?青い顔をして」
「……いえ、何でもございません。ただ、私の師は気まぐれな性格ですから、エミール執行官の招待に応じるかは確約しかねますが」
「ああ、別に構わないさ。お前だけでも来てくれたら私は歓迎するよ。あれがどうしてお前に目をかけるようになったのか、私は知りたい」
口元こそ笑っているが、その目は氷のように冷えている。ミルに向けられたその微笑みは厚意ではなく、殺意そのもの。
エミールは音も無くミルに近づくと、無遠慮にその顎を掴んで視線を合わせる。
「見た感じはただの小娘だというのにな」
「……何のつもりですか?」
「ふうん。ついさっきまで青い顔をしていたくせに、気丈な一面もあるのか。まるで猫だね」
にこりと笑ってエミールはミルの顔から手を離す。静かにミルはエミールを睨み、手の中の封筒を懐にしまう。
「ではね。返事を期待しているよ」
ひらりと手を振って、エミールは立ち去った。その場に残ったミルは静かに息を吐くと、夜空を見上げた。
(夜明けは気分が晴れるものなのに。あの方のおかげで、憂鬱な気持ち……)
小さなくしゃみを一つ。ミルは身体を小さく震わせて、中庭を後にした。
─── 夜明け前 ───
本棚の前に立ち今夜読む本を選ぶ
お気に入りの茶葉で紅茶を淹れ
灯りは蝋燭だけ
少し肌寒くなってきたから
去年編んだブランケットも羽織る
なんとなく昼間は違う気がして
読書はいつも夜にする
しんと静まり返った
誰にも邪魔されない私だけの時間
夢中になるのは素敵な事だけど
夢中になればなるほど時間が過ぎるのも早い
気が付けばもう東の空が明るくなりそう
その瞬間が一番静かで
一番美しくて一番悲しくなる
私はことのほか早く起きて、近くにある小川の土手に座った。
もう少しで暗闇が去ろうとした頃だった。
1匹の水鳥が、水面に足をつけながら地平線の彼方へと飛んで行った。
それはまるで絵筆のように。
足が触れると同時に変わる水面の様子は、孔雀の羽よりも美しかった。
夜明け前 𓈒𓏸𓐍 𓇢