『夏』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
#101 自由律俳句
おろしたての
麻シャツに抜ける
風は初夏
お題「夏」
夏の太陽
大きな入道雲が空に映える
海と白い砂浜
横目に自転車をこいでいく
風が気持ちいい
木陰に入れば、せせらぎの音
木々の涼しさと、水の冷たさがよぎる
蝉時雨をあとにして、帰路につく
縁側に置いてある蚊取り線香
扇風機を回してスイカを食べる
チリン、と風鈴の音がした
今日は夏祭り、花火も上がる
浴衣を着て、かき氷を食べよう
コップの中の炭酸が、シュワシュワと弾けた
カラン、と氷の音がした
午後3時冷えた麦茶も汗をかく
浴衣の金魚だけが涼しげ
お題:夏
タイムマシンの針を壊して、
永遠にあの夏を回避出来たなら。
止まった時間の中で、
君とふたり笑っていたかったよ。
たとえこの先何も手に入れられなくても、
大人になれなくても、君の傍にいられたのなら、
僕はそれだけで良かったのに。
目が覚めると、チクタク進む針の音。
ジリリと鳴り響く目覚まし時計。
引き忘れたカーテンの隙間から差し込む光が
今日を昨日にして、明日を今日にする。
平凡な毎日、変わらない日常の中に、
君だけがいない。
君を忘れた夏が、またやってくる。
絵の具をそのまま塗ったような青に、線を引いたようにくっきりと映える入道雲。私はこの空が好きだ。暑さなんて忘れそうになるほど、この涼しげな色が。
高校最後の夏。この教室から見られるのは今年が最後だ。来年はどこからこの空を見上げるのだろう。まだ進路は決まっていない。やりたいことも分からないけれど。この講習にどれだけ集中できるか次第だよなあ、なんて。ぼんやり考えて、私は目の前のテストに向き合うことにした。
私は夏が嫌いだ。
好きな人との思い出が沢山詰まっているから。
私は来年も同じ夏が来るって思ってたから。
でもそんなことなくて、いつか終わるものだった。
もう私はあの人の腕の中にいることはできない。
だからね、今年は別の人の腕の中で泣きながら毎日過ごすよ。
湿気の強いじめじめする部屋
雨のカーテンを開けたら
まぶしい太陽の外に出た
夏が来る
/6/28『夏』
ギラギラとした太陽が、容赦なくこちらを照り付けてくる。額や首を何度となく汗が伝い落ち、湿ったTシャツが肌に貼り付いてうざったい。
俺は夏が嫌いだ。
暑いし、蒸せるし、寝苦しいし、いいことなんて何もないくらいに思っている。
「私は夏って好きだよ」
俺のすぐ隣をついてきていた彼女が、そう言って楽しそうに笑った。
「・・・・・・へぇー」
こちらがすごく興味がなさそうな返事をしても、彼女はやはり楽しそうだった。
「ほら夏ってさ、夜もどことなく騒がしい気がするじゃない? そこかしこで生き物がいる気配ががするの。私、あれ好き」
だって、寂しくないもの。
そう締めくくって柔らかに笑った彼女が、ふわりと跳ぶ。
俺はそんな彼女の横で、早くクーラーの効いた室内に入りたいと切に願っていた。俺が無言になったのが気になったのか、彼女が俺の前へと回り込んだ。
「・・・・・・君は本当に変わってるね」
「いや、俺から見れば、夏が好きなお前のほうが変わってると思う」
俺の正面でくるりこちらに反転した彼女と向かい合う。「私にそういう自然な返しをしちゃえることが、すでに変わってるよ」なんて言葉が聞こえたが、俺は暑さのせいで、もはや何かを思考するのも限界だった。
「あ」
そこで俺は、はたと気付く。
「そうだ、お前、ちょっと俺に触れてみろ。この際乗り移ってもいい。お前、幽霊だから体温ないし、俺が涼むにはちょうどいいかもしれん」
こうしている今も、強い日差しと茹でった気温に俺は体力を奪われている。
自分としては何ていいアイデアだろうと思ったうえでの発言だったが、俺の目の前にふわりと浮いていた彼女は「バーカ! 死んじゃえ!」と何とも辛辣な言葉を投げ掛けた後、ぷいっとそっぽを向いた。
【夏】
57夏
市ヶ谷にある予備校の窓からは釣り堀が見える。駅裏の一等地を戦後からずっと不法占拠しているという、年季の入った釣り堀だ。都会のオアシスなどと呼ばれて人気があるらしいが、不法占拠は不法占拠じゃないか。どうかしている。サボりのサラリーマン、だらしない恰好のカップル、近隣の専門学校の派手な学生。正しくない場所で正しくない遊びをしている人間がどうして楽しそうなんだ? 僕はそれに納得がいかない。だけどなぜだろう。今無性に、あそこに降りて行って釣りがしたい。生まれてこの方、一度も釣りなんてしたことがないのに。生きた魚なんて触ったこともないのに。ただひたすら、東大合格だけを目標に生きてきたのに。最近、模試の成績が下がっているせいだろうか。無性にあっちに「降りて」行きたくて仕方ない。『降りて』なんて言い方は傲慢だと思う。だけど東大を目指すと決めたときから、僕の生き方は決まっている。高みに行くことや居続けること。それが人生の目標だ。なのに。カップルが大きな魚を釣り上げて、嬉しそうで、自分も魚を釣ってみたくなっている。こんなのはおかしい。ああ、どうしてだろう。僕はあっちに行きたいのだ。
おかしな願望を振り切るように、テキストに向かった。何も考えるな、と自分に言い聞かせながら、過去問を解いていく。この夏が大切なんだ。来年こそは、受かるんだ。
中2
夏
ねぇ〜聞いて〜(´;ω;`)
給食の時間に、陽キャが、
夏休みいつ遊ぶ〜?
とか、話してました、、、、
みんな予定がつめつめだそうです!
私の予定、、、、、、、
なし!!!!!!!!!!
フリーターです〜(*^^*)
ゲームします!
【夏】
君と春に出会い、夏に恋をし、
秋にお互いの誕生日を迎え、冬に別れを告げた。
君との思い出を振り返ると
夏が一番煌めいて、輝いてた。
ただ、僕の好きな季節は秋だ。
君の誕生日は歳をとっても忘れたくない。
仕事を終え、オフィスから出るとさすがに暗いのだけれど、ぬるい空気に浮かれた気持ちになる。
このまま帰るのはもったいない。友人に「飲み行こう」と連絡してみる。急な誘いにもかかわらずオッケーしてくれる人がいるラッキーな人生。
待ち合わせの時間まで繁華街の大型書店で時間をつぶす。目を合わせないようにしていた本と目が合ってしまいしばらく逡巡する。
呑兵衛の友人とは絶対二軒目に行く。なんだったら味変と称して三件目も行く。そしたら一万円くらいよくわからないうちになくなるのだ。ここで二千円ちょっとの本代をケチる意味があるだろうか、いやない、反語。
本を購入し約束の店まで歩く。アスファルトから熱はまだ放出されていて、空気が冷える気配はない。
きっとレモンサワーが美味しいだろう。
路地にある店のドアに手をかけたところで、室外機の熱風を浴びた。支度は万全。
#夏
【夏】
「ゴメンなさい、遅くなって」
人混みに紛れて、聞き慣れた声がした。それでも僕は目聡く待ち合わせの相手を見付ける。
「ううん。僕もさっき着いたとこ」
「私、ここの七夕祭り来るの初めてだから、何だか嬉しくて」
待ち合わせの相手―――付き合い始めてまだ間もない恋人は顔を上げて、ふわりと笑った。藤色の地に菖蒲の花模様の浴衣に抹茶色の帯を締め、髪には同色のピン。優しい色合いが涼しげで、彼女の雰囲気にも合っている。
「僕も祭りなんて久し振りだし、浴衣姿のキミも可愛いし、テンション上がるよ」
「……有難う。折角だし、浴衣の方がお祭りらしい雰囲気出るかなって」
夏休みどころか盆休みもない職業柄、僕は二人で過ごす初めての夏だというのに彼女を何処にも連れて行ってあげられそうになかった。
休み前ではあるけれど、せめて何か夏らしい事を……と思っていた矢先、隣町で七夕祭りがある事を知り、奇しくも休みだった僕は彼女を誘ったのだ。
正直人混みは苦手だが、こんなに喜んでくれるなら、誘って良かったと胸を撫で下ろす。
「人出、多くなってきたね」
「この混雑だと、はぐれたらもう会えなくなりそうだなぁ」
スマホがあればどうとでもなるけど敢えてそう言って、彼女の手を握る。彼女も黙って従っていた。
暗がりでお互いの顔はよく見えない。熱くなってくる掌と、脈打つ心臓の音が耳にうるさくて、汗が噴出してくる。
少しして、彼女がそっとハンカチを差し出してきた。
「ずっと外で待たせちゃったから……暑いよね。何か飲む? ラムネ持ってる子が居たから、近くで売ってるのかも」
「あー、そうだね。ちょっと喉渇いたかな」
汗が繋いだ手のせいだとは微塵も思っていないのか、彼女は真面目な顔でそんな事を呟いた。
喉を潤して、食欲を満たした頃にはだいぶ自然に手を繋げるようになったかなと思う。時折手に力を入れると、彼女もそっと握り返してきた。
そんな事を何度か繰り返していたら、頬を染めた彼女が僕を見上げ幸せそうに微笑み掛けてくれるのが可愛い。
手から伝わる体温だけが、僕の意識の中心を占めていた。街に戻って二人きりになったりしたら、抑えが利かなくなりそうで、少し怖くなった。
そんな僕の心配をよそに、彼女はもう眼をキラキラさせて露店を見回している。特定の店を探しているようにも見えた僕は、彼女に尋ねてみた。
「さっきから何か探してる?」
「うん、やってみたいのがあるんだけど……出てないのかな。――あ、あった! 私、あれやりたかったの」
彼女が小走りで駆けて行った先を見ると、それは意外な出店だった。
「え、射的!?」
穏やかな彼女と射的が結び付かない。
しばらく呆然と見守っていたけれど、彼女の弾は景品にかすりもしない。いくら初めてとは言え――絶望的に下手クソだ。
「ぷ……っ!」
抑えたつもりだったが、少しだけ僕は笑ってしまった。しかし彼女はその表情を見逃さなかった。
「笑う事ないじゃん、初めてなんだからさ……」
拗ねた様に、僕を睨む。
「だって、いくらなんでも下手過ぎ。……ホラ、貸してごらん」
多分、次で弾は最後のはずだ。
「え?」
「一発で仕留めてあげる。何が良い? こういうのはさ、始めから狙いを定めた方が――」
「え、私……始めからずっとドロップ缶狙ってたんだけど」
「そうなの!? 手当たり次第に撃ってたのかと思ったよ。当たればラッキー、みたいなさ」
「うぅ……」
「オッケー、一番上のドロップ缶ね」
(これでも僕、射的はガチで得意だったしチョロいチョロい!)
「あっ、本当に当たった! 有難う!!」
「どう致しまして」
僕としてもちょっと良い所見せられたし、子供の様にはしゃぐ彼女の姿を見ると、素直に連れて来て良かったと思う。
一通り露店を回り終え、僕は彼女を促した。
「そろそろ戻り始めた方が良いね。下りの電車も混んでくるだろうし」
「うん」
駅に着いてからも彼女をアパートまで送る道中、手は繋いだままだった。少しして、不意に彼女が僕に呟いた。
「あのさ、腕……組んでも良い?」
「ん、良いよ」
すると彼女は甘えるように腕を組んできた。瞬間、感じた柔らかい感触……完全に胸が当たっている。
偶然? わざと? そんな考えが頭の中を駆け巡る。けれど彼女は僕の知る限り、恋愛事における計算とか駆け引きとか、そういう事が出来るタイプじゃない。やはり偶々だろう。
(最後の最後にこの接触って……我慢出来なくなりそう、もう)
無自覚で、隙だらけな彼女に、僕はこれまで何度手を出そうとしたか知れない。
けれど、どう考えてもそういった事に免疫の無い彼女に、欲望に任せて勢いのまま触れ合ってはいけないと我慢してきたつもりだ。
とは言え、具体的な欲求がないかと言えば嘘になる。
しかし焦らず、自然の流れでそうなるように安易に手出しはしない、傷付けたりしない。
腕に当たる柔らかい感触が気になりつつも、僕は頭の中で繰り返し自分に言い聞かせた。
「ハイ、無事到着~」
何とか持ち堪えてアパートに着くと、嬉しそうに彼女から礼を言われた。
「今日は一緒にお祭り行けて楽しかった! 誘ってくれて有難うね。あと……これも」
そう言って、ふふふと笑うと、彼女は僕が射的で取ったドロップ缶をカラカラと軽く振る。
「はは、どう致しまして」
この雰囲気のままなら、じゃあまたねとスマートに帰れると思ったのに、彼女は僕に更なる一撃を仕掛けてくるのだから酷い。
引き止める様に僕のシャツの裾をくいくいと引っ張ったかと思うと、彼女は爽やかに誘ってきた。
「部屋でちょっと飲んでいく? ビール冷えてるし……」
「え? でも」
「帰りの電車も座れなかったし、少し休んでいって」
「そ、そう? じゃあ折角だし」
(ああ……何て意志弱いんだ、僕は)
ずっと我慢してたのに。結局彼女には適わない。
部屋に上がり込んで酒まで入ったら、僕のなけなしの理性なんて簡単に吹き飛んでしまうんだよ。
まさか、判ってて挑発してないよね……?
「すぐ枝豆茹でるねー」
そう言って先に階段をカツカツと上がる彼女の後ろ姿を見詰めながら、僕は小さく溜め息を吐く。
(多分、全然休まないと思うよ……)
夏
夏はあまり好きではない。私は暑いのが得意でなく、日焼けをするのも好きではないからだ。
けれども太陽のでている時間が長いのは好きだ。
仕事からの帰り道を空が明るいのを見ながら歩く時間は、明日もいい一日になるといいなと考える時間になる。
家についてもまだ窓から光が差し込み、今から出かけようかと思わせてくれる。
全身を包み込む熱気も、後から後悔することになりそうな日焼けも好きではないのに、それらを退け外へ誘い出す魅力が、夏の青い空にはあるのだ。
#夏
「今年やりたいこと?」
「そう。去年の夏は、結成準備とかで忙しかったでしょ?」
「だから今年はなにかやりたいなぁって」
️「皆んなで行った…花火大会」
「思い出す、りんご飴の…あの甘さ」
「www」
「虫取りに…キャンプファイヤー」
「海辺でやったバーベキュー」
「海では…クラゲに刺された」
「思い出すのは、俺たちの…」
「夏」
「………」
「お前っ、そこでツッコまないん!?」
️「リーダーしっかりしてくれやーw」
「もぉらんらん!w」
「えっwごめんw懐かしいなぁってw」
「1年くらい前だもんねぇ」
「あれだろ、今年はこれ全部するんだろ?w」
「え、したい!」
「俺クラゲに刺されないとだよぉ笑」
「らん盾にしろw(」
「ちょっとなっちゃん!?ひどっ!w」
今年は、去年とは違う夏を過ごしたい
『あっちぃー…』
前に座っていた彼が机に突っ伏しながらまあまあ大きな声で呟いた。
確かに、まだ6月だというのに気温は30℃を上回る日が多くなってきた。
『お前は夏、好きか?』
いきなり顔を上げ、自分に問いかけてきた。
正直、夏は得意ではない。
暑いし、汗かくし、虫の活動も活発になるし…言い出したらきりがない。
「得意じゃないけど嫌いじゃない。」
なんだそれ、と彼は笑う。
そう。別に嫌いじゃない。
大きな理由は彼にある。
・・・
写真部の自分は部活中は学校の敷地内を歩き回っている。
運動部の大きな掛け声、走る音、ボールの音、様々な音を感じる。そんな中、彼の名前が聞こえた。
サッカー部…。
彼はサッカー部のエースで男女共に好かれていた。
今日もベンチから女子たちが応援している。
彼はボールを追いながら走っていた。
思わずカメラを彼に向けた。
レンズ越しに目が合う。
彼が笑顔でこちらに向かってピースした。
カシャッ
シャッターをきった。
その場で写真を見返す。
キラッキラの笑顔に太陽の光を受けて光る汗。
すごくかっこいい。汗をも味方にしてしまうだなんて、流石だと思った。
写真を見返していると、誰かに肩を優しく叩かれた。
顔を上げるとそこには彼がいた。
ドキッとした。
鼓動は早まり、顔が熱くなる。
『カッコよく撮れた?』
微笑みながら聞いてくる彼。
完全に落ちた。
「キラキラしててかっこよかった…。」
恥ずかしくて無愛想になってしまった。
『そっか、なら良かった。
言葉にされると意外と照れるな。』
耳まで真っ赤の彼。
〈かっこいい〉だなんて毎日のように言われているのに照れるのか…?と疑問はあったがまぁ特に気にすることなく、話を終えた。
次の日、初めて教室で彼に話しかけられた。
ビックリしたけどすごく嬉しかった。
・・・
その日から彼とすごく仲良くなった気がする。
自分の中で過去最高の思い出。
自分の想いは伝えてはいないけどこのままの関係も案外悪くない。
彼と夏────
夏
夏といえば、色々思い浮かぶ。
夏祭り、夏花火、夏休み、夏季休暇、夏風邪、夏バテ、など。
夏は気候が暖かい。
私の住む街は意外と寒冷地にあたるので、夏はちょうど良い快適な気候だ。
おかげ様で電気代も節約されているが、
デメリットもある。
最も大変なのは賃金が上がらない事。
気候と都市が離れているだけあって、それなりの対応だから非常に困る。
人口も数少ないからこそ、物価が高い。
何でも高い。
世間では高騰だと騒がれているが、ハッキリ言って、私が住んでいる街が一番訴えたいと思う。
人口が多ければ、それなりに補助や給付が貰えるし、優遇して貰えるだろう。
だけど、人口が少なければ、それなりの対応をしてくれたとしても、物価が高ければ意味がない。
野菜を買うにしたって、一部の地域が高いと感じたとしても、遠い位置にあたれば、年中高いものは高い。
天候にもよるので仕方がないとは思うが、寒冷地に住む人達にとっては、温暖地に住む人達のある野菜は安値で買えるけど、寒冷地の人達にとっては何倍もの価格に値するのだ。
それに値して、人口も少ないので給料も非常に安い。
その差別が私にとっては非常に腹正しい!
ハッキリ言えば、そこら辺のイジメよりもまだタチが悪いとさえ、思っている。
どうにかしてくれませんかね?
日本の政治家さん?
日本という国には四季があるらしい。
春、夏、秋、冬の四つが一年を通して過ぎていく。と、今読んでいる本に書かれている。
「また読んでんの?それ」
千里は勢いよく本を閉じた。
「もう、ビビり過ぎ。先生今職員会議だから。別に少し見てるぐらい大丈夫だって」
背後から視界に入ってきたのは、同じクラスの美希だった。千里に「おは」と、声をかけ、教室の隣の席に座って優雅に足を組み、こちらを見てくる。
「真面目だね。今日のはなんの内容?」
「季節の話だよ。今は夏のところ」
千里はさっき閉じた本を開き直して、四季『夏について』と書かれているページを見せた。美希は椅子を近づけて、本を覗き込む。
「夏?……え、暑いの?夏」
「うん。四十度近くなる日もあるらしいって」
「外出るの絶対無理なやつ……ほら、これとかよく生きてられるよね」
千里は美希が指さした箇所を見た。挿絵には海で楽しそうにボール遊びをする家族が描かれている。
「流石にこれは死ぬやつ」
確かに死ぬかな。と思ったが、千里は味わったことの無い四十度は少し興味があった。一度だけでもいいから暑い夏という季節を過ごしてみたいという好奇心が、いつか満たされる日が来ればいいなと考えながら、鼓動が少し速くなっている胸を押えた。
【夏】フィクション作品 #3
夏の日、太陽が青空に煌めき、砂浜には微かな風が舞い降りる。
ある日、ひとりの少年が海岸を歩いていた。
彼の目に飛び込んできたのは、波打ち際で必死にもがく小さなカニの姿だった。
少年は優しい心でそのカニを助けるために手を差し伸べる。
カニは必死に少年の手に捕まり、思い切り水平線を見据える。
そして自由の大海へと舞い上がるように逃げ出していった。
少年の思いやりに触れ、胸が熱くなる瞬間だった。
そこに立つ彼は、夏の奇跡を感じるのであった。
夏が誕生日だと、暑さでほとんど忘れてしまう。年を取ると、もはや誕生日は嬉しくない。長生きなんて損しかないものだ。