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『あっちぃー…』
前に座っていた彼が机に突っ伏しながらまあまあ大きな声で呟いた。
確かに、まだ6月だというのに気温は30℃を上回る日が多くなってきた。
『お前は夏、好きか?』
いきなり顔を上げ、自分に問いかけてきた。
正直、夏は得意ではない。
暑いし、汗かくし、虫の活動も活発になるし…言い出したらきりがない。
「得意じゃないけど嫌いじゃない。」
なんだそれ、と彼は笑う。
そう。別に嫌いじゃない。
大きな理由は彼にある。

・・・

写真部の自分は部活中は学校の敷地内を歩き回っている。
運動部の大きな掛け声、走る音、ボールの音、様々な音を感じる。そんな中、彼の名前が聞こえた。
サッカー部…。
彼はサッカー部のエースで男女共に好かれていた。
今日もベンチから女子たちが応援している。
彼はボールを追いながら走っていた。
思わずカメラを彼に向けた。
レンズ越しに目が合う。
彼が笑顔でこちらに向かってピースした。

カシャッ

シャッターをきった。
その場で写真を見返す。
キラッキラの笑顔に太陽の光を受けて光る汗。
すごくかっこいい。汗をも味方にしてしまうだなんて、流石だと思った。
写真を見返していると、誰かに肩を優しく叩かれた。
顔を上げるとそこには彼がいた。
ドキッとした。
鼓動は早まり、顔が熱くなる。
『カッコよく撮れた?』
微笑みながら聞いてくる彼。
完全に落ちた。
「キラキラしててかっこよかった…。」
恥ずかしくて無愛想になってしまった。
『そっか、なら良かった。
言葉にされると意外と照れるな。』
耳まで真っ赤の彼。
〈かっこいい〉だなんて毎日のように言われているのに照れるのか…?と疑問はあったがまぁ特に気にすることなく、話を終えた。
次の日、初めて教室で彼に話しかけられた。
ビックリしたけどすごく嬉しかった。

・・・

その日から彼とすごく仲良くなった気がする。
自分の中で過去最高の思い出。
自分の想いは伝えてはいないけどこのままの関係も案外悪くない。



彼と夏────

6/29/2023, 8:37:08 AM