小学校の集団登校で同じ班だった彼に恋をしていたんだと気づいたのは彼が卒業してからだった。
初めて会った時のことはあまり覚えていない。
自分は小学一年生で彼は小学四年生だった。
彼と話すのは楽しくてあっという間に時間が経った。
私が小学三年生になった頃どうしても学校に行きたくなくて、泣きながら家で駄々をこねていた。
彼は六年生で班長ということもあり、家まで迎えに来てくれた。
泣きながら出てきた自分に戸惑いながらも側にいた彼の友達に「泣かせるなよ〜笑」など冗談を言って自分が笑顔になるまでたくさん話してくれた。
その年、彼が付き合い始めたという噂が流れた。モヤモヤして苦しくなった。
当時の自分はこれが嫉妬だなんて思いもしなかった。
そのまま彼は小学校を卒業した。
彼がいた日々はとても楽しくて幸せだった。
彼のいない学校生活は何か物足りなかった。
三つ年が離れている事もあり、中学生になっても会うことは無かった。
近所にある彼が住んでいたあのアパートはもう違う家族が住んでいる。
もう二度と出会うことはないでしょう。
ですが、自分はいつまでもこの初恋を大切にしたいのです。
『あっちぃー…』
前に座っていた彼が机に突っ伏しながらまあまあ大きな声で呟いた。
確かに、まだ6月だというのに気温は30℃を上回る日が多くなってきた。
『お前は夏、好きか?』
いきなり顔を上げ、自分に問いかけてきた。
正直、夏は得意ではない。
暑いし、汗かくし、虫の活動も活発になるし…言い出したらきりがない。
「得意じゃないけど嫌いじゃない。」
なんだそれ、と彼は笑う。
そう。別に嫌いじゃない。
大きな理由は彼にある。
・・・
写真部の自分は部活中は学校の敷地内を歩き回っている。
運動部の大きな掛け声、走る音、ボールの音、様々な音を感じる。そんな中、彼の名前が聞こえた。
サッカー部…。
彼はサッカー部のエースで男女共に好かれていた。
今日もベンチから女子たちが応援している。
彼はボールを追いながら走っていた。
思わずカメラを彼に向けた。
レンズ越しに目が合う。
彼が笑顔でこちらに向かってピースした。
カシャッ
シャッターをきった。
その場で写真を見返す。
キラッキラの笑顔に太陽の光を受けて光る汗。
すごくかっこいい。汗をも味方にしてしまうだなんて、流石だと思った。
写真を見返していると、誰かに肩を優しく叩かれた。
顔を上げるとそこには彼がいた。
ドキッとした。
鼓動は早まり、顔が熱くなる。
『カッコよく撮れた?』
微笑みながら聞いてくる彼。
完全に落ちた。
「キラキラしててかっこよかった…。」
恥ずかしくて無愛想になってしまった。
『そっか、なら良かった。
言葉にされると意外と照れるな。』
耳まで真っ赤の彼。
〈かっこいい〉だなんて毎日のように言われているのに照れるのか…?と疑問はあったがまぁ特に気にすることなく、話を終えた。
次の日、初めて教室で彼に話しかけられた。
ビックリしたけどすごく嬉しかった。
・・・
その日から彼とすごく仲良くなった気がする。
自分の中で過去最高の思い出。
自分の想いは伝えてはいないけどこのままの関係も案外悪くない。
彼と夏────
私の可愛い友達。
ついに彼女にも好きな人ができた。
部活の先輩だとか。
彼女は男バスのマネージャーをしていた。
彼女が好きなった先輩は
学校でとても有名な生徒で
男女ともに好かれていた。
ある日、彼女が私に言った。
『私、告白しようかな。』
体に衝撃が走った。
突然の事に動けなくなった。
『…どう思う?やっぱり
やめといたほうがいいかな。』
動けず、黙ってしまった私の顔を
不安そうに覗く貴女に胸が苦しくなる。
どうしようか。
あの先輩とやらは彼女に気がある。
1度相談されたことがあった。
《彼女に恋人がいるのか》と
私は
『一応いるみたいですけど…』
と答えた。
すると彼は露骨にガッカリとした顔をした。
何だコイツと思った。
私の一言ですべてが変わる。
告白するなと言えば彼女は多分高確率で
告白しないだろう。
でもそれは本当に彼女の幸せなのか。
私のわがままになってしまうのではないか。
彼が羨ましかった。
彼女に好かれる彼が憎かった。
嫌いだった。
私のほうが…。
私が彼だったら良かったのに。
貴方は私の理想の姿そのものだった。
友達が死んだ。
自殺だった。
昨日まで暖かく笑っていた
彼は冷たくなっていた。
信じられなかった。
2日前、彼は言った。
『今日の空は飛ぶのによさそうだなぁ』
その時の天気は快晴。
彼が好きな天気は雨。
俺はよく分からなかった。
俺は
『飛ぶって、羽でも生えるのかよ〜笑』
そう言って茶化した。
『俺に羽が生えたら意外と似合うと思わね?』
微笑んだ彼は美しかった。
なぜ俺にあんな話を…。
今日の天気は雨。大雨だった。
俺の涙か雨か分からないくらいだ。
彼が逝ってから3日が経った。
未だに信じられない。
確かに止まってしまったlineのトーク、
電話をかけても貯まるのは履歴のみ。
食が進まない。
実感してしまった。
今まで押し殺していた感情に。
俺は彼が好きだった。
あの笑顔、あの声すべてが好きだった。
あの感情に気づいてしまってからの
行動は早かった。
俺は走った。彼が空を飛んだあの場所に。
雨が冷たい。心だけが熱かった。
30分ほど走った。見つけた。
そこは薄暗い廃墟で人通りも少なく
俗に言うお化け屋敷のようだった。
屋上に行くために階段を登る。
ふと横を見ると、何か書いてある。
《愛してる。──》
彼の字。俺の名前。
心臓がドクドクと早く脈打つ。
何これ。こんなの、、。
「俺だってお前のこと愛してるよ。バカ。」
俺は早く彼に会いたい一心で階段を駆け上がる。
フェンスに足をかける。
屋上に立つ。
目を閉じると聞こえた彼の声
「ごめん。」
何がごめんだよ。
俺はもうお前無しじゃ生きていけない。
これからもずっと一緒。
自殺した理由ちゃんと教えろよな。
飛んだ。
あ、もう地面だ
そう思った頃には
バンッと鈍い音がした───────