『声が枯れるまで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
声が枯れるまで
叫んで泣いて怒って
次の日声はガラガラで
その繰り返し
え、ない。なんかある?思いついたら編集で書き直します。
「声が枯れるまで」
—打てよ、打てよ。打て打てよ。お前がやらなきゃ誰がやる。
「かっ飛ーばせー!たーかちほ!」
固く結ばれた指が、祈りを乗せて一層締め付けられる。
—さあ、フルカウント満塁。ピッチャー振りかぶって……。
キィン、と響く鋭い金属音と共にドッと湧き上がる歓声。
ピッチャーが青ざめた顔で振り返る。客席も、カメラも、茶の間も、一斉にその視線の先を追った。
美しい放物線を描いた打球は些か伸び悩み、天高く掲げられたグラブへと吸い込まれて行った。
学校総出で応援に行った甲子園地区予選決勝。9回裏、逆転のチャンスが訪れたが、センターフライでゲームセット。敗退してしまった。
瑞樹は散々日焼け止めを塗ったものの、顔も腕も真っ赤に腫れ上がってしまった。
今日は振替休日であったが、日焼けで身体が怠いからと、瑞樹は冷房の効いた部屋で二度寝をしていた。
だが母の言葉で飛び起きる。
「みずきー。リョウタ君来てんで」
「…は?!」
慌ててパーカーを羽織り、瑞樹は玄関まで向かう。
「うっす」
「っす…」
ランニング途中で寄ったのか。涼太は上下ランニングウェアを身に纏っていた。少し汗ばんでいる。
すぐ瑞樹は後悔した。寝起きそのままで出迎えてしまったし、なにより。
「いや、自分声枯れ過ぎやろ」
「……うっせ」
昨日応援で叫び過ぎたせいか、喉はささくれ立って聞き取りにくくなってしまった。
「…ごめんな。応援してくれたんに」
「…ぇぇょ」
カッスカスの声で答える。わざわざ謝りに来たんだ。そう思うと、胸がギュッと苦しくなった。
もっと気の利いた事を伝えたいのに。瑞樹は必死に唾を飲み込み声を発した。
「…また来年で、ええよ」
同時に鼻の奥がツンとした。ウチが泣くんは違うやろ。そう言い聞かせ、俯く。
「…おう。来年は絶対連れてったるよ」
チラリと目をやった涼太の顔は、瑞樹よりもっと日焼けして黒々としていた。肌が坊主頭と一体化して、まるでタピオカみたいだ。
気を揉んだかと思ったが、少し目が赤くはあるもののその表情は清々しいものであった。
「お前ん声、めっちゃ聞こえたわ。来年も頼むで」
「アホ。聞こえるかいな」
軽く小突くと涼太は嬉しそうに笑い、踵を返した。軽く手を振りその背を見送る。
(来年も、いくらでも応援したるから。やから)
がんばれ。瑞樹は小さくなる背に檄を入れた。
≪声が枯れるまで≫
「へへ、いくらでも叫んでいいんだからな…仲間どころか地上にすら届きやしねえよ」
見つかってしまった
1年間、ダイルさんの家で隠れて暮らしてきた。
見てはいけない隣国の秘密を知ってしまったユマ達4人は殺されそうになって、そのうちの1人、ランナウが他の3人を逃した。
そしてランナウは……。
とにかくユマ達は逃げてきたんだ。この状況にだけはならないようになんとか逃げてきた。
でももう終わりだ。こうなったらどこまで知ったか吐かされて殺されて、周りの関わった人達まで口を塞がされる。モセウさんも、ヘキさんも……ダイルさんでさえも、きっと国には敵わない。
「そいつは騒ぎそうだから下でヤるぞ」
「嫌だ!やだやだやだ殺さないで!やめて!嫌だあたし何も知らない!話してないからやめて!」
腕を乱暴に引かれるセリの叫び声に心臓が更に大きく跳ねる。
既に気絶するまで殴られたオチホは床に転がされて動かない。
殺されるんだやはり。
あのときの記憶が蘇る。
「逃げろ!」
叫ぶランナウ。彼の魔法で飛ばされるユマ達。
ランナウの胸から飛び出る、鮮血。
「うあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁ!!!!!!」
「おっと狂っちまったか?静かな嬢ちゃんだと思ったが流石に刺激が強すぎるよなぁ」
「いやあ゙あ゙あ゙ぁ……!!」
「オレはあのヒゲと違って叫び声は嫌いじゃねえから存分に叫びな、諦めと痛みで叫び声がかすれて来る時が堪らねえんだよ……全くあいつは分かってねえな……」
「ゔゔゔ……うあああああああ!」
涙でぐちゃぐちゃで、もう最後の足掻きだと思ったとき。
「叫び声に興奮するとかキモすぎうるッせぇだけなんだよそんなの」
ユマの顔を覗き込んでいた男が後ろを振り返って、そこにはそのひとが立っていた。
「何だおま……うわああああ!!!」
ゴッ
「ッせえなだから静かにしろっつってんだろ!」
男に強い一発を食らわした。
「っ……ダイルさん!!」
来てくれた……!通常運転なダイルさんを見てほんの少し落ち着く。
「ユマ、こいつ死んでねぇよな?」
オチホを指さす彼。
「う、うん。でもセリがまだ下に!何されてるか分からない!!」
「アあすぐ回収して来る。助けが遅れたのはまあ……すまん。あとは安心してオチホ見とけ」
「あ、え、うん」
へたんと座り込むユマ。
下の階からすごい音がして、すぐ止む。
こんなに頼りになる人だなんて、思っていなかった。
そういえば、ダイルさんは事情を知っていたモセウさんが安心して任せるほど、とても強かったんだ。
とりあえず全部仕留めたけど、どうすりゃイイんだ……?という声が近づいてきて安心したユマは、そこからの意識がない。
気がつくと当たり前のようにダイルさんの家にいて、ユマはまた泣いてしまった。
昨日の休日はファミレスに行った
モーニングセットがお手頃だ
朝が早い私達は
7時半には到着している
ホールの女性は時々見かける人
1人でホールを回してる
「いらっしゃいませー」
「お料理少々お時間頂いてます」
「大丈夫ですか」
「お好きなお席 どうぞ」
来る人ごとにこのセリフ
少々声もかすれ気味
後ろの席に
ツーリングの団体客
なるほど これは大変だ
声が枯れるまで
がんばるこの人に
あまり無理は言えないね
『声が枯れるまで』
周りの声に紛れて、口だけを動かす。
顧問に怒られたくないし、
あいつを応援してない奴になりたくないから。
たった0.1秒の差だった。
学校の練習で負けたことがあっても、
大会では全て勝っていた。
当日のコンデションだって悪くなかったのに
それなのに、なんで…。
よりによって3年最後の大会で
わかってる。最後だからたくさん練習したんだろうなってことも、少し油断してた俺も。
あいつの勝ったと分かった時の顔が忘れられない。
咄嗟に見た顧問の顔、横で喜ぶ部員達。
観客席からあいつを見るのは始めてだ。
いつも俺がいたはずのスタート位置にあいつが立つ。
途中
張り切って髪を金髪にし、眼鏡からコンタクトに変え、ピアスを開けたものの、高校デビューには微妙に失敗してしまった。
いや、野暮ったい前髪に分厚い眼鏡であだ名が『メガネ』だった中学時代を思えばだいぶ良くなったというべきか。
どうして、いつの時代もクラス分けは理不尽なのか!
俺はアイツの隣に立つために、足りない学力を必死の受験勉強で補い、家から少し離れた学校に通うことに反対する両親をあの手この手で説得し、兄のファッション雑誌を読み漁ってイメチェンし、ここまで来たのだ。いっそのこと、学力順に振り分けられているのであれば、諦めがついたのに。
(どうしよう)
考えていると、アイツが
「オレ、軽音部に入るわ」
と言っていたので即入部を決めた。
音楽は、授業以外で触れたことがなかった。
小さい頃に少しだけピアノを弾いていたが、女子が多い中に男子が1人だけだったので、気恥ずかしくなってすぐにやめた。
初めて触れたギターに、心が震えた。入部した動機は不順なのに、俺は音楽に夢中になった。
文化祭ではバンドを組んで好きな曲を演奏した。
とても盛り上がった。
幼なじみのアイツに、彼女ができた。
引き攣る表情筋を無理やり操って
「そっか、おめでとう」って言った。
今日は部活は休みで、アイツはバイトだ。
なんとなく家に帰る気分じゃなくて屋上に来た。
昼休みにはよく来るが、放課後に来るのは初めてだった。日差しが弱くて少し体が冷える。
今日は風が強い。俺のちっぽけな歌声なんてあっという間に攫われてしまう。むしゃくしゃして、どうしようもない感情を歌と共に吐き出すが、ぜんぜん減る気配がない。それどころか、次々と腹の底から湧いてきて心を揺らす。挙げ句の果てに涙まで出てきた。
そのまま声が枯れる歌い続けた。気がついたら暗くなっていた。体はすっかり冷え切りっている。
案の定、次の日は風邪を引いた。
「失恋ぐらいで泣いたりしないし」
鼻を鳴らして、友人はたった今運ばれてきたレモンソーダを吸った。
「じゃあなんで呼んだの」
「は、何、泣かないと呼んじゃダメなの?」
「そうじゃないけど、こういう時って辛いものでしょ。慰めて欲しいのかなって」
ガンッ、と趣のある純喫茶で鳴っちゃいけない音がした。木製のテーブルにすごい勢いで落とされた彼女の拳が原因だ。衝撃で注文した飲み物たちがコースターからちょっとずれて、なみなみだった私のホットコーヒーは大さじ1杯ぶんくらい飛び散った。
「ふざけんな。あたしはそんななよなよしい女じゃない、人を馬鹿にするのも大概にしてよ」
明らかに、かなり怒っている。それでも声のトーンは控えめで、彼女が最大限周りに配慮してるのだと分かった。既に拳の音で周りのお客さんはぎょっとしてるんだけど。とにかく私は慌てて口を動かす。
「ごめん、怒らせるつもりじゃなかったの。辛くないのかなって思って……」
精一杯の弁明の言葉である。本気で怒らせるつもりはなかった。珍しく友人から「失恋したから話聞いて」なんて連絡をもらって、ちょっとだけ浮ついていた。まさか頼ってもらえるなんて思ってもいなかったから。大泣きしている彼女を勝手に頭に思い浮かべて、元気づけようと張り切りすぎたのが裏目に出たらしい。交友関係が下手くそなのは自覚があった。頭を下げると舌打ちの音が聞こえる。
「まじ、有り得ないから。あんたのそういうとこまじで嫌い」
「うん、ごめんね……」
「あんたが昔から思ったこと言っちゃう奴って言うことは知ってるけどさ、もうちょい自分の使う言葉のニュアンス気にした方がいいよ。友達無くすわよ」
「友達はあなたしか居ないもん」
「だっる」
綺麗な顔をぐちゃっと歪ませて、友人はそう吐き捨てた。どうしたらいいか分からなくなって、私はコーヒーを一口飲む。味の善し悪しは判別つかないが、インスタントのよりは匂いが濃い気がする。
「……」
気まずい空気が流れた。友人は不機嫌そうにカウンターの方を眺めている。もう一回謝った方がいいかな。さすがに落ち着かなくなって来た所で、「……別に」彼女が先に口を開いた。
「悲しいよりムカついたから誰かに愚痴りたかっただけ。……あんたいつでも暇そうだし、そんなんで誘って悪かったわよ」
いつも強気な彼女には珍しく、紡がれる言葉はぼそぼそと歯切れが悪い。
「ムカついたの?」
「だって2人で映画見に行ったり旅行までしたのに、『彼女がいるから』って振るのよ!?意味わかんない」
再びテーブルに拳が振り下ろされる。ごん、とまたいい音が響く。ウェイトレスがなにか言いたそうにこちらを見ているのが尻目に見えた。
「彼女いるって知らなかったの?」
「知らない、言われてない。絶対遊びかキープだったんだわ」
「言語化したら余計ムカついてきた!!」なんて口調を荒らげながら、友人は残りのレモンソーダをぐいっとあおる。もはやストローが意味を成していない。段々声量も上がっているし、そろそろお店側に何か言われても文句は言えないかもしれない。でもさっきの今で余計なことを言って怒らせたら元も子もないから、私は大人しくウンウンと頷くに留めておいた。
「しかもあたしが繋いだ後輩ちゃんと付き合ってるって何なの、もー絶対奢ってやんない」
「うん、紹介した後輩ちゃんと付き合うなんて酷いね」
「何その機械みたいな返し、絶対思ってないでしょあんた」
とりあえず頷いているだけなのはあっさりバレた。申し訳ないが、私は恋愛はおろかお悩み相談さえ経験不足である。ごめんと謝ると、「そんなすぐ謝るな」とまた怒られた。
「……ああ、でも口に出したらちょっとましになった。今度は絶対騙されるもんか」
いつの間にか、険しかった表情はだいぶ普通の顔になっている。自分の中で解決してしまったらしい。「あークソ!クソ喰らえ!」かなり子供っぽい捨て台詞を吐いて彼女はぐっと伸びをした。
「聞いてくれてありがと、一応お礼しとく」
「何もしてないけどね」
「まあ、あんただったからなりふり構わず吐き出せた気もするわ」
「……結局泣かなかったね」
あまりに綺麗に吹っ切れてしまっているさまをみて、私はぽろっと言ってしまった。友人が強い人間なのは知っていたけども、まさか失恋トークがこんなあっさり終わってしまうなんて。「まだそんなこと言ってんの」友人はまた眉間にしわを刻む。
「こんなので泣くわけないでしょ。泣くのはめちゃくちゃ心底惚れちゃうような人に振られた時に取っとくのよ」
友人はそう言って、今度は笑った。生命力に溢れていて、夏の花みたいな笑顔だ。私は見蕩れた。
「……うん、うん。それがいいね」
「振られるは否定しろ馬鹿」
あーもう、景気づけにデザート頼んじゃお、とメニューを捲り始めた彼女をぼんやり眺める。いつか彼女が本気の恋をしたその日、私はまたこうして呼び出して貰えるだろうか。
もしもの未来について想像する。彼女がたった一人を想って、声を枯らすほど号泣する。不機嫌な顔と笑った顔しか知らない私は、彼女の泣き顔を上手く思い浮かべることができない。きっと綺麗だろうということだけがわかる。鮮やかに怒って笑う人だから、泣き顔もきっとそうだ。
隣に居る人間を心底羨ましく思った。それが私だったら良いのに。
彼女に言えばだるいきもいって言われそうだな、なんて自分の思考にちょっと笑った。
(声が枯れるまで)
声が枯れるまで
あなたは
声が枯れたことが
ありますか
それは
どんな理由でしたか
いつですか
声が枯れるまで
年々、そんなことから
遠ざかる
声が枯れるまで
それは、若さの残照です
酒と煙草は別です
叫びたい!
横浜ベイスターズが
勝ったぞ!
(巨人が勝っても良かったけど笑)
雄叫びは
私を少年少女にしてしまう
「おめでとう!」
「声が枯れるまで」
引越しが終わってすぐ風邪をひいた
酷い咳で声は枯れ、なかなかの高熱が出てふらふらしながら子どもを親戚に預け、いざ寝ようというところでインターホンが鳴った
結論から言うとソーラーパネルの営業だった
風邪うつしても悪いしパジャマだし…と思い、インターホン越しに対応して帰ってもらったが「家の計測がどうこう〜」と言っていたので固定資産税を確定させるために役所の人が来たのかと思いその日のうちに市役所に電話をした
もちろん役所の人はそんな人を知らないのでホームメーカーにも確認をとる羽目になり、まあまあ面倒であった
しんどいから大人しく寝させてくれ…。訪問営業嫌い
長くなってしまった。1,400字超です。
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【声が枯れるまで】
魔法を使うのに『声』なんて要らない。
『無詠唱、格好いいだろ』なんて粋がっていた過去の自分をぶん殴りたい。
「だから何度も言ってんだろう!! ちゃんと声掛けろって!!」
戦士ケインの怒鳴り声が酒場に響く。
俺が魔法の『発動句』を忘れたからだ。
『発動句』は『呪文』じゃないし『詠唱』とは違う。
この世界で『無詠唱』は別に格好いいものじゃない。
元々詠唱は必要ない。なのに声を出すのだ。
それに気が付くまで、転生者の俺は随分時間がかかってしまった。
例えば《ファイアボール》という発動句。
これは魔法の属性が火で、大体こぶし大のボール状で、相手に向かって飛ぶ魔法を放つ時のもの。
魔法使いがちゃんと「ファイアボール」と言えば、前衛で戦う戦士は『声の方向から火の玉が飛んでくるな』とわかるし、避けられる。
これが『発動句』無しだと、どんな魔法がいつどこから放たれるかわからないわけだ。
そんなの危険極まりない。それはわかる。
だけど。
咄嗟に声より先に魔法が出てしまう。
ソロで活動していたことの弊害だ。
俺は壊滅的に他人との共闘が下手だった。
「……ごめん。気を付けるから」
謝ったら、ケインは益々キレた。
「そんなちっせえ声で聞こえるかよ! 慣れてねぇなら練習しろ! もっとでかい声出せ!! 叫べよ、声が枯れるまでさぁ!!」
「ごめん」
「聞こえねぇって言ってんだろ!!」
「落ち着きなよ。悪気はないんだから」
パーティの紅一点、僧侶のレイラが俺を庇うせいで、ケインは更に機嫌が悪くなる。
「悪気がなけりゃいいのかよ!? いつか誰かが大怪我するぜ、こいつの魔法でな!!」
もう、これ以上は無理だ。限界だ。
怒鳴られるたびに『俺』が擦り減っていく。
「悪かった……パーティ、抜けさせてくれ」
「はあ!?」
「ごめん」
盛大に舌打ちして、ケインは席を立った。
「勝手にしろ」
「あ、あの。元気でね!」
レイラがケインのあとを追う。
もうひとりの仲間である武闘家が、ちゃんと代金を払ってくれたことにホッとした。
「君、大丈夫?」
俺に声を掛けてきたのは男の魔法使いだった。
「ソロが長かったの? 連携、難しいよね」
勝手に隣に座ったそいつは、俺に一杯奢ってくれた。
「良かったら、僕が練習に付き合おうか?」
「練習……?」
「そ。声を出す練習」
このままひとりになりたい気もした。
けど、独りになりたいわけじゃなかった。
「……お願いできますか?」
「うん。僕はルーファス。よろしくね」
「俺、クオンっていいます。よろしく」
最初は弱い魔物相手に戦闘を繰り返した。
とにかく声を出す練習をした。
余裕のある戦いから少しずつ、難易度を上げていった。
ルーファスと二人だと前衛がいない。
でも、それが問題にならないくらい、ルーファスは防御魔法が上手だった。
お互い魔力は多かった。
前衛がいない不安はなかった。
相性も良かったのだろう。
防御はルーファスが。攻撃は俺が。
戦士と組むより、ずっと戦いやすかった。
俺たちはお互いの魔力の動きで相手のしたいことがわかるようになっていった。
声なんか掛けなくても、自分の魔法で怪我をさせるなんてことはないと確信を持った。
魔物にだって耳はある。
『発動句』を使わなければ不意をつける。
俺たちは声掛けなんてしなくなった。
魔法使いの二人組。
前衛がいないパーティ。
なのに強い、と俺たちは評判になっていった。
魔法を使うのに『声』なんて要らない。
『発動句』だって要らなかったのだ。
誰かを巻き込むことはないとわかっていれば。
「クオンの発声練習が目的だったのになぁ」
どうしてこうなった、と相棒が笑った。
なかなか合うことが出来ないから。声が枯れるまで話してたい。無口で寡黙な貴方だけどやっぱり何故か好きだから。
元、小学校の同級生。弟同士がが同じ小学校ってだけで細く繋がっている。向こうはこっちのことなんか思う時なんて一瞬すらもないだろうけど。そんな貴方に恋をした。
私には、三十年連れ添った夫がいる。
夫は外でお金を稼ぎ、その間私は家事をする。
結婚する前、話し合って決めた。
今どき珍しいスタイルだけど、結構うまくいっていた。
――のは結婚して一年間だけ。
一緒に暮らし始めてから夫の欠点が目に着くようになり、不満だらけになってしまった。
世の夫婦は長く連れ添うと色々諦めがつくらしいのだが、私の場合は諦めるどころか不満は増えていくばかり。
一応好きで結婚したのだが、今では後悔しかない。
子供がいたころはなんとか堪えたが、みんな独り立ちをしてからは、一気に我慢できなくなった。
今では喧嘩のしない日は無い。
喧嘩の始まりは、いつも夫のグウタラぶりだ。
パジャマは脱いだら脱ぎっぱなし、脱いだ靴下は裏返し、食器は片付けない、お菓子は食べ散らかす、風呂を沸かせても入らない、そのくせ一番風呂じゃないとキレる、エトセトラエトセトラ。
数え上げたらキリがない。
特に許せないのは、『何食べたい?』と聞いて、『何でもいい』と返ってくる事だ。
これほど腹ただしいことはない。
『何でもいい』と答えるのはまだ許せる。
けれど、料理が出てから『肉が食いたかった』は無いだろう!
じゃあ『肉食いたい』って言えよ!
何度言っても治らない、夫の悪癖。
我慢の限界だった。
いつ離婚届を突き付けてやろうかと思っていたある日の事、私は天啓を得た。
どうせ何を作っても文句を言われる……
ならば逆の発想、本当に『何でも』を――私の好きな物を出そうじゃないか。
ちょっとした復讐である。
リビングに行くと、夫はけだるげにテレビを見ていた。
しかもつまらないのか、あくびをしていた。
なんという堕落っぷり。
少しくらい家事を手伝ってくれてもバチは当たらないと思うが、一度も手伝ってくれたことは無い。
けれど、今回は腹を立てている場合ではない。
すすす、と夫に近づいて質問をする。
「ねえ、あなた。
今日何食べたい?」
「何でもいい」
よし来た。
いつもは聞きたくない言葉だけど、今日ばかりは心の中でガッツポーズ。
私はあらかじめ用意していた言葉を紡ぐ。
「今、『何でも』って言った?」
私は確認のため、夫に問い返す。
だが夫は何かに気づいたのか顔をしかめた。
「……言ってない」
否認ですか、そうですか。
夫は都合が悪くなるとすぐこれだ。
だけど言質取ったんだよね
私は手に持っていたスマホを操作する。
『ねえ、あなた。
今日何食べたい?』
『何でもいい』
スマホから、先ほどの会話が繰り返される。
そう録音である
これで言い訳できまい
「悪かった。
謝るから許してくれ!」
録音を聞いた夫の顔は、見る見るうちに青ざめていきついには土下座した。
離婚して慰謝料でも取られると思ったのだろうか?
それも面白そうだが、今回の目的はそうではない。
「あなた、顔を上げて。
別に怒ってないの」
そう、怒ってない。
楽しみはこれからなんだ。
むしろ笑いがこみあげて来る。
「じゃあ、離婚は……」
「ばかね、するわけないじゃない」
夫が笑顔になる。
どうやら安心したらしい。
このあと、どんな試練が待っているかも知らずに。
「それで話を戻しますけど、『なんでもいい』と」
「それは!」
「いえいえ、咎めたりはしませんよ。
ただ……」
「ただ?」
私は一拍置いて、口を開く。
「ただ、これからは私の得意料理を作りたいと思ってます。
好きなように!」
「君の得意料理って……
あっ」
夫の顔が再び曇る。
どうやら思い出したようね。
私の得意料理を!
私がマヨラーだということを!
「待ってくれ、これからは何でもは言わない――いや俺が作ろうじゃないか!
だからマヨネーズだけは!」
「あなたは昔からマヨネーズが嫌いでしたからね……
でも私が作ります。
料理は私の担当なのですから。
ちなみに、今日のメニューはマヨネーズをふんだんに使った『マヨネーズ丼』です」
「あ、あああ」
夫がうな垂れる。
後悔しても遅い。
私の積年の恨みを思い知れ!
一日の始まりはいつもマヨネーズ。
そこから終わりまでマヨネーズ。
これから楽しい人生になりそうだ。
私はマヨネーズを買い足さないといけないと考えながら、買い物の支度を始めるのであった。
制服を着ていたあの頃の私。
文化祭の出し物でやったお芝居。
人気のバンドのコピーをしていた軽音部のライブ。
クラス対抗のリレーや球技会。
声が枯れるまで稽古した。
声が枯れるまで一緒に歌った。
声が枯れるまで応援した。
青春って、なんてエネルギッシュ!
声が枯れるまで
友達とくだらない事でずっと笑ってた
それって滅茶苦茶しあわせだよね
その小学校は校舎の老朽化と少子化の影響で、来年には閉校となる事が決まっていて、その小学校に通う生徒達は、来年からは隣町にある小学校へとバスで通う事になっている。そんな廃校目前の小学校の野球チーム最後の大会に、新聞社のスポーツ部門で働く、入社1年目の私は密着取材し、その記録を残す事になった。
カーナビを頼りに目的の小学校まで辿り着くと、その小学校のグラウンドに、少年野球チームのコーチの怒声が響いていた
「ボケっとしてんな!終わったら早よぅ、球拾いに行け」
「はい」
今は大会目前と言う事もあって、コーチの指導にも普段以上の熱が入っていると、児童の保護者の方は私に教えてくれた。
「よし、10分休憩するぞ。しっかり水分補給しとけ」
「はい」
子供達は嬉しそうに屋根下のベンチに座って、美味しそうにドリンクを飲んでいた。休憩中の子供達の表情は、練習中の気迫なんて感じられない程に無邪気だった。
休憩中、何人かの子供がコーチにアドバイスを貰いにコーチの所へと駆けて行く。それに対してコーチは子供達にも分かりやすい様に、丁寧に指導をしていた
休憩が終われば再びコーチの怒声が小学校のグラウンドに響く
それでも子供達は誰もコーチに反抗する事なく、汗を流しながらも練習を重ねる
だけど、汗をかいているのは子供達だけでなくコーチも同じだった。全員、汗だくになりながら同じ目標に向かって頑張っている。そこに大人も子供も男子も女子も関係無かった。
それから1時間程した時だっただろうか?コーチが練習の総括を述べて練習終了となった。練習の時は怖いコーチだけど、練習が終われば優しいおじさんの様な人。私の取材にも気さくに答えてくれた。それから私は何度かその小学生チームの取材を続け、子供達とも次第に仲良くなってきた。
そしていよいよ大会本番がやってきた。けれど、試合とは時に目を背けたくなる程に残酷なドラマを作る。
彼らの初戦の対戦相手は過去に何度も大会で優勝している強豪チーム。3回裏終了の時点で10点以上の差がついていて、私が取材したチームのコールド負けは確定していた。そんな中でもベンチではチームメイトとコーチが選手に対して、1回表から大きな声で声援を送っていた。そんな彼らの声は最早枯れていた。それでも、負けると分かっていても皆んなで声援を送り続けた。その熱意に、客席から見ていた私は自然と涙が溢れて止まらなかった。そしてコールドゲーム。
彼らは対戦相手の前で、枯れた声で悔し涙を流していた。
※この物語はフィクションです
声が枯れるまで 作:笛闘紳士(てきとうしんし)
通っていた小学校は、年中行われる様々な行事にとても力を入れていた。特に運動会。赤白対抗で行われ、各競技の得点を合計して競う。応援合戦。えっこれも特典換算されるの!?と今思えば疑問が残るが、無垢な子供たちは懸命に応援に取り組む。取り組まないと怖い先生に怒られてしまうのもあって、喉を痛める勢いで腹から声を出す。中でも応援団長はありったけのパワーを使って団員たちを率いるのだから、かなりの統率力と大きな声が必要だ。12歳にやらせることじゃないよ、あんなの。卒業して随分経ったが、母校は今もやっているのだろうか。あのころの私たちは声を枯らして懸命に叫ぶように応援の言葉を繰り返した。エールいくぞー!おー!
カラオケで親友と声が枯れるまで歌い続けて
変な声になって笑いあったり恋の話をしたり
俗に言う青春を送りたかった。
誰に課せられたわけでもないのに
大人から良い子に見えるように
迷惑かけないように
やりたいことにバカバカしいと蓋をして、
門限も、言われたことを馬鹿みたいに守ろうとする。
自分を正当化して、やりたいことができても
言われたことすらできないこんな自分は
やりたいことをやれる価値なんてない。
今思えばあの時私は苦しかったんだ。
苦しさから目を背けて大丈夫だと思い込んでいたんだ。
青春はあの時しか無かったのに。
同級生が輝いて見えていたのかな。
もう、覚えてもないけれど、
あの時バカにしてたのは、
本当は心の奥底で羨ましかったからなのだろう。
散歩日和
2024/10/21㈪レポート
朝、風が強かった。
玄関前にカマキリがいて
飛ばされるんじゃないかと思って
見ていたら(暇なの?)
強風の中でも少しずつ
前に進んでいて強いなと。
今日は 学生さんを よく見かけた。
昨日が運動会で、今日は休みだったなのかもしれない。
駅のホームの端で男子学生の
3人組がカメラを持って楽しげ。
同じ趣味の友達と集まっていいね。
電車に乗って都会に着いた。
交通量の多い大きな道を
歩いているとコンクリの隙間から
生えた雑草の裏からスズメが
2羽出てきて段になったコンクリの
上でちょっと遊んで空に飛び立って
行った。
自然がほぼない都会で生きている
スズメ も強いよね。
でも絶滅しそうだなんて。
人間のいる所で生息するらしい。
健気で可愛いけど、生き辛いだろうな。
幼稚園に近づいたら
凄い泣き声が聞こえた。
3歳児クラス?の子供達が
3列になって 門の前で並んでいた。
お天気が良いから、公園に?
前の方に並んでいた子供たちは
泣いてない。
これから散歩に行くって
ちゃんとわかっている様子だった。
しっかりしているなあ。
後ろの複数の子供達は
ギャン泣きしていた。
自分の気持ちに正直で良いよ。
みんな可愛い。
今日は早く帰れた。
また職員さんが土手の草を刈って
くれたみたい。
川が良く見えた。
お蔭で5羽の鴨が飛来しているのに
気付けた。
もう晩秋なんだね、暑かったけど。
〇〇日和ってつければ
何でもイケそうだ。
今日は可愛いものを
たくさん見る事が出来た。
やっぱり仲間と生きるって良いな。
今週も無理はせずに行きましょう。
おやすみね。
いろんな感情がぐちゃぐちゃして、
気持ちはしぼんだまま。
大丈夫。
明日には元気になってるから。
だから今日は泣かせて欲しい。
声が枯れるまで