『哀愁をそそる』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「哀愁」は、「そそる」なのか?
◇哀愁をそそる◇
哀愁をそそる
(お題更新のため本稿を下書きとして保管)
2023.11.5 藍
秋の小さなそよ風が木漏れ日と共に降り注ぐ。
温もりのある木材で創られたこの小さな小屋は、私だけが知っているアトリエだ。大学を卒業して、ずっと憧れていた画家になろうと建てた空間。都市から少し離れた自然の中に建てた為季節の良さを常に感じ取れる。
紅茶を1口のみ、一呼吸おくと、「よし、描くぞ」とお気に入りの紅いベレー帽を被る。
空想的な風景画が好きで、よくある1面花畑に1人白いワンピースを着た少女が1人、みたいな絵を描くのが最近の日課だ。
人間観察も好きだ。街を歩く時は必ず喫茶店に行き、目に止まった人の人生を想像する。
最近私が描いているのは、共に青春を過したクラスメイトの絵。その人の人生とキャラ感を、いそうな空間に落とし込む。
「あの時のあの子は今頃何をしているだろうか」
確か吹奏楽部だったな。フルートを吹いていて、バンドの最前列で高音をきらきらと響かせていて。それに負けない笑顔をもった素敵な子。
高校で初めて出会った、初恋のあの子。
入学式で初々しい制服に身を包む私の目の前で響かせてくれた賛美歌を今でも忘れられない。
1つ歳上のあの子は、友達のように私に仲良くしてくれたっけ。
今でもフルートを続けているのだろうか。もしかしたら世界で活躍しているのかもしれない。
いつかまた聴けるだろうか。
もう戻れないあの時のあの子の音色を耳底に宿しながらキャンバスに青い夜空を描いた。
吹奏楽コンクールで演奏した曲でソリストを務めていたのを思い出して、一番星を描き込む。
冬の夜空がテーマの曲だった気がした。いや、違うかもしれないけど、あの子にはこれが似合う。
満月に照らされてきらきらと光る雪と、かぐや姫を連想させるような美しいあの子。
「もう、会えないのかな」
かぐや姫は月へ帰ってしまった。
あの子も、私といたあの空間から旅立ってしまった。
小さくため息を吐いて、赤い絵の具を取り出した。
黒と黄色を少量混ぜて深い紅にしていく。
その紅を瞳にのせる。
冷たく集中する曲調の中、ソリストのあの子は灯火のように繊細で暖かい音を奏でた。
その音は、静かな旋律の上を丁寧に撫でるように流れ、天の川如く、ホール全体に響き渡った。
「懐かしいな」
服はあえて制服にした。少しアレンジを加えて。
紺に白リボンといった典型的なセーラー服に、水色と紫の透明な布をレースのようにかけて、神秘的に描く。
演奏中のあの子を映す私の目には、この衣装が見えた。
艶のある黒い長髪と姫カットのそれはかぐや姫そのもので、 衣のような透明の布を被ったように透明で透き通った肌をしていた気がする。
肌を雪と同じ白で塗った。雪みたいな人だ。
キャンバス全体にスパッタリングで星を描く。
小さく輝く星屑は吹雪のように舞っていて、夜空に街を作った。
ふふ、っと笑みを零す。
頬を薄い赤で染めると、あの時のあの子が現れた。
そうだ、確かこんな笑みを浮かべていたな。
包むような優しさ。どんな事にも笑顔を向けてくれる、広い心を持っていて。
教室で絵を描く私に、やっほーと声をかけてくれて。
本当に素敵な人だった。
部活無所属だった私は、あの子がどこの大学に行ったかなんて知らない。音楽の道を進んだのか、それとも別の道に行ったのか。分からない。
「また、フルート聞きたいなぁ」
最後にキャンバスの隅に自分のサインを筆記体で描く。
完成だ。
イーゼルから外し、壁に立てかける。
にやけを浮かべながら、あの時のCDを探した。
吹奏楽コンクールの全国大会のCD。
あの子の最高傑作。私の宝物。
再生ボタンを押すと、拍手とアナウンスの後直ぐに曲が始まった。
「あぁ、懐かしいな」
木漏れ日に包まれる小さな小屋に、想像の冬景色が広がる。小窓から入ってきた枯葉が哀愁をそそる。
私は静かに目を閉じ、曲に浸った。
温い手でアイスコーヒー握りしめきみを待つとき時空は歪む
ぼくが待ち合わせで時計見た数>ぼくから話題振った数
「わかるよ」の呪文耐性あるぼくは魔法使いじゃないきみが好き
好きな人にだけ見せるって習った古賀先生がきみならよかった
すれ違う犬を見てるきみの横顔を見てる別に知らなくていい
お題 哀愁をそそる
お題 哀愁をそそる
そそられるほどの哀愁なんて俺のキャラじゃない。俺は能天気でお気楽な人間だ。そそるほどの哀愁を持っている奴は、ネクラでネガティブな奴に違いない。
あなたは、何ともないと思っているかもしれない。
でも私は、あなたがそっとあの時の記憶を辿っていくのを、切ない気持ちで見つめているの。あなたの隣に、あなたの大切な人がいないことが、すごくすごく悲しいの。
それなのにあなたは、昔見つけられなかったことや知らなかったものを見て、嬉しそうに笑うのよね。
だからほんの少し、私の心が暖かくなる。でも切ない気持ちはなくならないから。
あなたの背中が、哀愁をそそるのよ。
この朱、紅生姜天みたいやない?
真っ赤な鳥居の下、舞い散る紅葉に君がわらう。
けらけらと、からからと。
どこか遠いところをすでに見つめる君はきっと。
自分の先を、知るのだろう。
明日からの未来を知るのだろう。
ああ、どうか愛しいきみと。
ふたたび、ここに来る未来を。
哀愁をそそる
哀愁をそそる
今日の主様は少しいつもと違う気がした。
ほかの執事達にその話をしても、いつも通りと言われたが
なにか違う。いつもと雰囲気が少し違うのだ。
寂しそうな、何となくそんな感じ。
本人に何かあったのか聞いても、きっと主様の事だ。
上手くはぐらかされて終わってしまう。
まだなんでも言える関係性では無いのか、と少しだけ俺も悲しくなった。
担当執事が俺になって、主様から声を掛けられるまで待機していると、チリン、と呼び鈴が鳴った。
控えめにノックして返事を聞きドアを開ける
「お呼びでしょうか、主さ、ま…」
ドアを開けると窓の外をぼうっと眺める主様が映る。
その姿が寂しそうだがとても美しく、思わず言葉が詰まった。
俺に気づいた主は手招きして俺を呼ぶ。
『ハウレス、あのね…相談があるの』
『鏡の中の自分』 2023.11.4.Sat
※BL二次創作 『A3!』より 卯木千景×茅ヶ崎至
「鏡の中の自分に話しかけると、精神が崩壊するって話、知ってる?」
「藪から棒に怖い話でワロ」
出た、千景さんのこのモード。
弊社がこの涼しい顔をしたエースをこき使い過ぎたのか、はたまた俺達には言えない裏のお仕事とやらでMP削られたのか、なーんて……。
千景さんはときたま、なんとも形容しがたい空気を纏ってつらつらと喋り始めることがある。
「正確には鏡に向かって『お前は誰だ』って言い続けると、自分のことを自分と認識できなくなる、自分の顔でゲシュタルト崩壊を起こして狂っていく、って話なんだけど」
「さらに具体性を持たせて説明してきたよこの人」
知っているか知らないか、という話なら、ネットでは有名な話なのでもちろん知っている。都市伝説だー、とか、やってみた! とか、色んなもので脚色され肉付けされ、面白おかしく語り継がれているトピックの一つ。インターネッツという大海に漂う、ただの話題の一つに過ぎないそれ。
問題はその内容ではなく、このモードの千景さんが、“なぜ”その話題を選択したのか、だ。
「これは自分で自分の脳に強い自己暗示をかけているんだよね。つまり、一種の催眠術のようなもので……「せーんぱい。……すとっぷ」
俺はとっくに(具体的には『知ってる?』あたりから)身に入らなくなったゲームのコントローラーを置き、自由になった指を千景さんの唇にそっと触れさせる。
指の腹に伝わるふに、とした感触。皮膚を通して感じる体温。俺はこういうとき、「ああ、千景さんも血の通った、俺と同じ人間なんだな」とか思って、少し安心する。失礼この上ない。
この人にバレたら何を言われるか分かったものではないので、これは内緒だ。
俺の指が触れてから、石になってしまったかのように、ぴたりと動きを止めた目の前の人。俺は前触れなく指先にある唇を奪う。
触れるだけのキス。いつも先輩がしてくれるみたいに。安心させるように、体温を分け合うように、両頬を包んで、顔を上げさせて、おでこをくっつけ、鼻先を擦り合わせ、愛おしいと目で伝えながら、ありったけの愛を込めてキスを送る。
全部が全部、この人のやり方だ。
今更わからないなんて言わせるものか。
「お疲れですか、先輩。おっぱい揉む?」
「…………はぁ」
「ちょっと、ノーリアクションが一番ダメなんですよ」
「溜息はリアクションだろ」
「お、調子出てきましたね」
培った演技力を総動員。さらにちょっとの本音も混ぜれば、先輩にだって見破れない。内心心臓はばくばくなのだが、俺は“いつも通り”を演じてみせる。クソ生意気な後輩、口の減らない恋人。
そうやって、“いつも通り”を取り戻してもらう。
俺の、俺たちの知る、卯木千景に。
「……ごめん」
「うわ、ちょっと、明日大雨になっちゃうじゃないですか、やめてくださいよ」
「そしたら車で送ってやるよ」
「ガチ雨確定ワロタ」
不安を軽口で上塗りして、心配をキスで伝えて。
口を開けば憎まれ口、でもその合間にたくさんの口付けを送る。
石化の呪いがようやく解けたのか、のろのろと腕が腰に回る。ゆっくりと抱き寄せられ、ようやく向こうからキスが返ってくる。
「ありがとう、茅ヶ崎」
「大雪確定演出キタコレ」
ハローハロー、鏡の向こうの先輩。貴方の名前は卯木千景。MANKAIカンパニー春組所属、大手商社勤務、27歳独身。春組のおじいちゃんで、カンパニーのみんなが大好きで、クソチートでゴリラな俺の先輩。……そして俺の恋人です。
見失っても何度でも、教えてあげるので、ここに帰ってきてくださいね。
特に告げるわけでも無く、心の中でそっと呟く。
――今夜は先輩のベッドで寝よう。
YouTubeでたまに古い海外の映画やドラマを観ますが、哀愁のある俳優さんがよくいらっしゃいましたね、その人自身から漂うものだったり、演技だったり、立ち振舞いだったり。今の人は、演技は上手な人はいますが、哀愁のある人は見かけません。
乱筆乱文ですみません。
「哀愁を、『誘う』でも『漂わせる』でもなく、『そそる』って何だよって考えてたんだ」
次の題目配信まで、1時間未満。某所在住物書きは夜を窓の外に見ながら、大きなため息をひとつ吐いた。
要は、これなのだ。言葉の意味を考えて、そこからネタが出てこないか、書いて消して書いて。
そして時間が無くなる。
「サボってたワケじゃねぇよ。断じて」
昼寝してたでもねぇし、ソシャゲ周回が忙しかったでもねぇもん。
再度、ため息。窓の外の薄闇は、おそらく哀愁を、そそるなり誘うなり、していることだろう。
――――――
職場の先輩のアパートでお昼ごはん一緒に食べてたら、その先輩のスマホに、ピロン、画像付きのメッセが届いた。
「さして、見て面白くもない物さ」
先輩はスマホを見て、画像を確認して、にっこり。
「色は緑のまま、別に並木でも、何でもない」
穏やかに笑って、そのまま、私に画面を見せるでもなく、それをしまった。
「私の故郷の、……隣の隣の、そのまた隣あたりの、大きな大きなイチョウの木さ」
私の両親が見に行ったらしくて、今日の撮り下ろしを寄越してきたんだ。
先輩はそう付け足して、私に、実家から送られてきたっていう白菜を使ったミルフィーユ鍋を、野菜多めでよそってくれた。
白菜おいしいです(物価高騰の救世主:先輩の実家)
「見せて」
「なにを?」
「先輩の故郷の、イチョウの木」
「私の故郷、ではない。故郷の隣の隣の、」
「見たい。見せて」
「全然黄色くなっていないぞ」
「いいの。気にしないの」
お前も随分と、物好きなやつだな。
あきれたような、観念したようなため息を大きく吐いて、スマホを取り出して、また小さため息して。
先輩は私に、先輩のスマホを差し出して、届いた画像を見せてくれた。
「わぁ……」
表示されてたのは、青い空、少し見下ろすくらいに深くくぼんだ土地、周囲を囲む紅葉してたり葉を落としたりの木々、
それから、真ん中にどっしりと生えてる、見たことないくらい大きな、青々したイチョウの木。
それからその下にひっそり建てられた、小さな小さな祠だった。
「イチョウギツネの祠、というらしい」
地面すれすれ、というかもう地面に付いちゃってるくらいに低い枝と、
その枝を屋根かヒサシみたいにしてる祠。
先輩が、そこに伝わってるって話をしてくれた。
「昔々、イタズラ好きな狐が妖術で穴を掘って、その黒い黒い穴の中から悪霊だの化け物だの何だの、色々呼び寄せて悪さをしていたそうだ。
あんまり悪さが過ぎるんで、近所の村人は困っていたんだが、ある日自分で呼び寄せた悪霊のせいで、狐の母さんが病気になってしまった。
そこでようやく狐は、自分の行動を悔いて、泣いて、反省して、自分の全部のチカラを使って大きな大きなイチョウになり、化け物湧き出す大穴を、自分で塞いで封じたんだとさ。
11月になるとイチョウが狐の黄色になるのは、化けた狐が寒さで驚いて、変化が解けそうになるから、……と、昔話の中では、言われているな」
「なんか、ちょっとだけ、エモい」
自分のイタズラでお母さんが病気になっちゃった狐と、狐が化けたっていう大きなイチョウ。
ただの空想、フィクション、おとぎ話でしかないけど、その設定がなんだか、哀愁をそそる。
哀愁が漂ってるわけでも、その感情を誘われるでもなく、自然と湧き上がってくるから多分、「そそる」で合ってると思う。
「見頃はだいたい、例年2週間後あたりだ」
先輩が言った。
「とはいえ、来週あたり雪の可能性もあるから、ひょっとしたらそろそろ狐の尻尾ひとつ冬毛1本、出てくるかもな」
「えっ、」
「ん?」
「ゆき?」
「予報ではな」
「もう、ゆき?」
「一応、雪国だからな」
「ゆき……」
哀愁をそそる
白い犬が仕事に行く飼い主さんを見つめている。
遠くなる背中を一心に見送っている。
飼い主さんが大好きなんだね。
わかるよ。
もっと撫でてもらいたいし、本当は今すぐ追いかけたいんだろうなあ。
でも飼い主さんが困るから、そう躾をされているから、じっと動かずに耐えている。
行かないでって言いたいけど言えない。
好きとか寂しさとか我慢とか、きっといろんな想いを抱えている、物哀しいようなそんな犬の背中。
#78
鏡の中に行きたい。
ある一定のことだけして、
笑って、怒って、泣いて、
何も考えずに、
ただただ真似っ子していたい。
〜鏡の中の自分〜
〜哀愁をそそる〜
私は子供の頃から字が下手だが、大人になっても字が汚いままだった。そこでボールペン字練習帳を本屋で買って繰り返し繰り返し練習したが、なんか変な癖がついて余計読みづらい汚い字になってしまった。だから普段から文字を書いているとき自分の字の下手さに哀愁をそそられる。きれいな字が書きたい。
ある日、友は云った。
正義の対義語は悪ではない、もう一つの正義だ、と。
彼は歴史の造詣が深いので、さぞ高名な哲学家の格言かと
期待したが、どうやらゲームかアニメが出典らしい。
出典がどうであれ、この言葉は正しそうだ。
歴史は勝者によって清く書かれ、
敗者は否応なく悪として描かれる。
敗者も馬鹿ではなかっただろうから、
彼らなりにも信条があったのだと思う。
私がいつも辛気臭い顔をしているのは、
いつも悪の方を考えているからだ。
ひとに迎合するような性格でもなし、
意見は頑なで曲げられもしない。
どう考えても、正義にだけはなり得ない。
こうやって、チラシの裏で憂さ晴らしする程度の日々さ。
お題「哀愁をそそる」
苦しい時はお休み
難しく考えてないですか
忘れちゃってないですか
休みましょう
大丈夫
「やった完成だ」
「博士、何ができたのですか」
「助手か。見てくれ。これが哀愁をそそるサソリだ」
「哀愁をそそるサソリですって!?」
「色々な角度で見るといい」
「本当だ。どの角度からも哀愁をそそられます」
「フハハハ。どうだ天才だろう」
「天才です。博士は世界一天才です」
「そうだろうそうだろう。フハハハ。はあ、虚しい」
博士は近くにあった椅子に座る
「こんなもの作って何になるというのか」
男はがっくりと肩を落とす。
「いえどこかに需要ありますって。多分」
助手は博士を励ますが、言い切ることはできなかった。
「諦めてはいけません。足掻きましょう」
「助手よ。若いな」
「いけません、博士。諦めたらそこで試合終了です」
「無理だよ」
「大丈夫です。私がついてますから、さあ行きましょう」
そして部屋にはサソリ以外誰もいなくなった。
サソリは静かになった部屋で、自分の存在意義を考えてようとして、やめた。
何度か考えたが、意味がないとしか思えなかったからだ。
サソリは世界が赤く染まっていることに気がついた。
ケースの周囲を見渡して、夕日を見つける。
そしてサソリはずっと夕日を眺めていた。
夕日が沈むまで、ずっと。
ps
哀愁をそそるってどういう意味なんですかね。
だれか教えて欲しい
君は
私から哀愁を感じる、
と言う
歳を重ね
皺が増えると
同じように
抱えるものが
多ければ多いほど
哀愁が漂ってしまうのだろう
君にも
いつか
わかるよ
君も
いつか、きっと
哀愁の漂う素敵な男性に
なることでしょう
先輩に恋しちゃった
部活の時にしか会えない
でも部活のときは沢山話しかけてくれる
それがとても嬉しい
夕方 公園 飛んでいったボールを拾いに行く子
一瞬で離れたものを時間をかけて追う
輪のために輪から外れていく
追いかける小さな背中には哀愁が漂っている
そのとき地面を蹴る脚の疲れはその子だけしか知らない