『君からのLINE』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
パラノマの時代ってスマホがなかったけど、もしスマホあったらボス達、どんなLINEをするのかな?
軽い音を立てて、スマホがメッセージの受信を告げた。
ロックを解除しアプリを開こうとするも、画面は黒いまま。
とうとうきたか、と口元が歪む。
宿のチェックアウトは済ませたばかりだ。タイミングがいい。
暗い画面を見続けていると、画面中央に小さい何かが現れる。
おや、と首を傾げていると、その小さい何かは次第に大きく近づいて。
それが人の手だと理解したのは、画面をすり抜け腕を掴まれてからだった。
「なっ、え?まさか」
ぐい、と引かれて手がスマホに沈んでいく。振りほどこうにも思いのほか強い力に、逆らう事が出来ない。
「ちょっ、待って。これはさすがに」
想定外の展開に焦りが生じるが、時すでに遅く。
スマホに沈んだ手が何かに触れた瞬間。視界が一面黒に染まった。
気づけば、狭い和室の中心に座り込んでいた。
「なんだ、これ」
記憶にはない、殺風景な部屋。
掴まれたままの手に気づき視線を向けると、俯いて同じように座り込む屋敷の主。
「なにが、たりない。なにが。どれが。たりない。たりない。どうすれば」
「おい。ちょっと」
「たりない。なんで。どうして。たりない。まだ。たりない」
たりない、と只管に繰り返す。普段とは比べものにならないほど、無機質な声音。
俯いているせいでどんな表情をしているのかが、分からない。それが何より怖かった。
手を引いてみる。解けないと分かっているが、気づいてほしかった。
ただそれだけだったのに、するりと簡単に手は離れていく。
離れて、しまった。
「たりない。まだ。もっと、」
「足りないなんて、当たり前だろうが!自分勝手に進めてないで、ちゃんと俺の話も聞け。この大馬鹿やろう!」
思わず叫ぶ。
びくりと震える肩と、止まった言葉に、この際だからと思いの丈を吐き出す。
もう化かし合いだのなんだのと、意地を張る余裕はなかった。
「何で勝手にいろいろ抱えて極端な結論を出すんだよ。話さなきゃ分かるわけないだろ。変に疑って悩んだこっちの身にもなれ。さあ、望みは何だ?言えよ!妖が望んだっていいだろ。今ここで全部吐き出しちまえよ。そしたら俺が応えてやるから!」
「………なにそれ」
ゆらりと頭が上がり、感情の抜け落ちた虚ろな目がこちらを見つめた。
まるで幽鬼のようだ。思い描いていた予想と違う現状に、眉根が寄る。
「応えてやる?何言ってんの。逃げ出したのは一葉《いつは》なのに。今更どの口が戯れ言を言ってるんだよ」
くつり、と喉を鳴らし、口元が歪み笑みの形を取る。
馬鹿にしたような、嫌悪したようなその笑い方に頭に血が上るのを、どこか冷静に感じていた。
「俺は、俺に関係する隠し事をされるのが一等嫌いなんだよ!だから逃げ出した。全部ぶち壊してやった。ざまあみろ!」
「なら、俺さんと合一になってと言ったら、応えたわけ?命を削ってまで、誰かのために式を打つ一葉が?おとなしく俺さんの言う事を聞くのかよ」
「おとなしくは聞かない!何か癪だから、取りあえずは反抗する!でも気が済んだら、ちゃんと理由を言えば、一緒になってやってもいいよ」
「なにそれ」
どろりとした暗く濁った眼に、呆れが僅かに灯る。
だがだいぶ落ち着きを取り戻した屋敷の主とは対照的に、一度激昂した思考は簡単には戻す事が出来ない。
「大体他人のためだけに式を打つわけないだろうが、馬鹿!命を削る?そんな事、お前以外には絶対にしたくないね!お前のための式だぞ!お前に、褒めてもらうだけの、…あ、やべっ」
慌てて口を押さえるも、一度溢れ出た言葉は取り消す事が出来ず。次第に赤くなる顔を隠すように、膝を抱えてうずくまる。
やってしまった。屋敷の主の反応が気になる所ではあるが、今はまともに顔を見れる余裕はない。
いいわけと、どう誤魔化すかを必死で考えるも、何一つ良案は思い浮かばず。
悶々と考え込んでいると、小さな優しい手が頭に触れたのを感じた。
「一葉は俺さんに褒めてほしかったの?そういえば、寝起きで鶴を飛ばした時に感想を言ったらうれしそうな顔をしてたものね。すぐ赤くなって布団に隠っちゃったけど」
「うるさい」
「言ってくれればいいのに…いや、うん。俺さんも同じか。じゃあ、お互い答え合わせをしようか」
促されて顔を上げる。穏やかな、それでいて少し困ったような表情をして、両手で頬を包まれて眼を逸らす事が出来ない。
まだ赤みが引かない、情けない顔の自分を濁りの消えた眼の中に見て、さらに羞恥に顔が赤くなる。
「俺さんはね、一葉がほしいよ。人としての生を謳歌してくれていたのなら、見ているだけで十分だったけど、会う度死にそうな顔をしているんだもの。それなら俺さんにちょうだい?永遠に大事にしてあげるから…一葉は?一葉は何を望むの?俺さんに全部教えて」
屋敷の主の本心に、意味のない呻きが口から漏れる。
答え合わせだ。本心を語られたのなら、こちらも言わなければならない。そうは思っても、うまく言葉にならず。
そんな自分に屋敷の主は小さく笑って、一葉、と呼んだ。
「俺、は。俺はただ、一緒にいたかった。あの夏の日のように一緒に遊んで、俺の打った式が飛ぶのを見てはしゃいで、疲れたら一緒に昼寝して…あの時よりも上手になった式を見たらもっと褒めてくれるって、それだけだったんだ」
「そっか」
「屋敷から抜け出して、現世のもの処分して。そんで賭けをした。あの時みたいに隠れ鬼をして、見つけてくれたなら最後に足りないものをやるって…ずっと待ってた」
一葉、と砂糖菓子のような甘い声が呼ぶ。
羞恥で泣きそうになる自分を、それでも頬に触れる両手が視線を逸らす事を許してくれない。
自分をつくり上げてきた意地や、見栄や、素直でない虚飾がすべて剥がれ落ちて、最後に残ったちっぽけで寂しがりな自分がしゃくり上げながら声を上げる。それを屋敷の主は丁寧に拾い上げて、優しく宥めながらどろどろと溶かして呑み込んだ。
そんな幻を垣間見た気がした。
「遅くなってごめんね。でもちゃんと見つけたよ。捕まえた。だから一葉の残りの全部をちょうだい?」
小さく頷く。
ずるいなぁ、と心の奥底で呆れた自分が笑っていた。
「万結《まゆ》」
自分が嫌いな名前。女のようで大嫌いな。
首を傾げ困惑する屋敷の主に、ほぼ八つ当たり気味に睨み付け、繰り返す。
「俺の名前。一葉は名字で万結が名前。これでそろっただろ?」
「万結。万結かぁ。そっか。だからか」
くすくすと笑われる。
違うと分かっているのに、名前を笑われた気がして、悪態を吐きそうになる唇を噛みしめた。
「だからあの時、俺さんに『ゆま』って名付けたんだ」
「…え?」
「覚えてない?あの夏の日に名前のない俺さんに一葉が、万結が名付けたんだよ。なんでゆまなんだろって思ってたけど」
記憶を辿る。
懐かしい、あの夏の日の向こう側。素直でない自分がつけた、屋敷の主の名前を。
思い出して納得する。
あの時からすでに、この迷い家は自分のものだった。だから屋敷の主と共にいる事に、何の違和感も忌避感もないのだろう。
ならば折角だ。あの時の単純な名前に意味をもたせようか。
「じゃあ『夢迷《ゆま》』にしよう。夢に迷うで夢迷。俺に夢を見せてくれる、俺だけの迷い家」
「夢迷…綺麗な名前。うれしい」
万結と夢迷。
名前を認識して、屋敷の主の眼の中の自分が揺らいでいく。
体が縮む。幼くなっていく眼の中の自分に、これじゃあ逃げられないじゃんと嘯いて笑う。
どこまでも素直になれない自分を、屋敷の主は、もう一人の自分は呆れて笑った。
「さて、と。そろそろ行こうか。新しく迷い家を作り直さないと」
「俺。からくり屋敷にしたい。壁がぐるんってなるやつ」
「好きにするといいよ。ここは万結の迷い家なんだから」
手を差し出される。その手を離さないようにと強く繋いで。
立ち上がり、歩き出す。
障子を開けた先の真っ白な空間に、顔を見合わせ笑い合う。
万世を結びつけるように。
夢幻を描きながら迷いなく足を踏み出した。
20240916 『君からのLINE』
君からのLINE
<おはようございます
起きていたら反応してください
xxx>
<バスルームに行きましょう
まずは歯磨きです
👍🏻>
<次は顔を洗って
👍🏻>
<髪もとかしましょう
👍🏻>
<終わったらキッチンへ
トースターの横に
ブレッドケースがあります
👍🏻>
<パンを一枚出してトースターに
右下の目盛を3にしてください
👍🏻>
<冷蔵庫の真ん中の段の右端
ジャムとバターを出します
<見当たりませんか?
🍳>
<今日は無理です
🍳>
🍳>
🍳>
<明日一緒に作りましょう
今日は苺かカシスのジャムで我慢
匙とバターナイフはお皿の上です
🍓🍓🍓>
<召し上がれ
<書き忘れました
右にコップがあるでしょう
ミルクは冷蔵庫のドアの内側です
👍🏻>
<食べ終わったら
食器を全部シンクに置きます
👍🏻>
<また寝室に戻ります
クローゼットの左端に
シャツが二枚あるはずです
👍🏻>
?>
?>
<片方はスナップ
もう片方はファスナー式です
試してみてください
<ボタンを留めるのが
大変そうだったので
仕立ててもらいました
<着られそうですか
👍🏻👍🏻👍🏻>
<タイはシャツの横です
結んであるので
首からかけて締めれば大丈夫
!xxx>
<襟をちゃんと折り返して
👍🏻>
<全部着替えたら居間へ
次は電話台の上です
<お財布 鍵 身分証
その横の箱からハンカチを一枚
👍🏻>
<ほかに必要なものがあればそれを
なければ玄関へ
👍🏻>
<コートを着て 帽子を被って
帽子は絶対ですよ
?>
<今日の捜査会議はいつもより
偉い人が来るそうです
👎🏻>
<そういうことをしない
<媚びなくていいので
素敵でいてください
!>
<鏡で全身をチェックして
大丈夫なら出発しましょう
👍🏻xx>
<鍵をかけて
👍🏻>
<大通りでタクシーを拾ってください
乗ったら連絡してほしいです
<タクシーには乗れましたか?
今どこですか?
🚓>
<それは出勤に使う車じゃありません
何をしてるんですか
👍🏻👍🏻👍🏻👍🏻👍🏻>
<ちゃんと言葉で説明してください
文字列の入力をお願いします
xxx>
結婚して初めての当直がなんとか終わった。たぶん今日で、不安と安心という感情を理解した気がする。ちなみに彼がパトロールカーに乗っていたのは家を出てすぐに引ったくりを捕まえたからだった。良かった。
ただ、まだ分からないことがある。
「あのバツ印は何ですか?」
彼はハムステーキから顔を上げた。こういう時はいつもより幼く見える。でも、いつも綺麗だ。
「…バツじゃないよ」
じゃあ何ですか、と訊くと彼はばつの悪そうな顔をしてこう言った。
「アルファベットのエックスは、手紙や何かでキスマークの代わりに使うの」
その後は二人とも黙って食べ、黙って食器を洗い、その後にキスをした。
明日の朝は彼の希望通り、卵二つで目玉焼きを焼こうと思う。
『君からのLINE』
スマホが震えて、通知が届いたことを知らせる。
電源ボタンを押すと目に飛び込んできた、「2件のメッセージ」の表示。
ロック画面を上にスワイプし、LINEを開く。
1番上に表示された君のトークルームを長押しする。
19時49分。
君から送られた 4文字と、スタンプ。
返信はせずに、スマホを閉じた。
動揺しているはずなのに、頭だけは酷く冷静で、どこか他人事のように冷蔵庫にローストビーフがあった事を思い出す。
君と食べるために奮発して買ったローストビーフ。
缶ビールと共に、1人で食べる。
パックを開ける。
ローストビーフの上に大根おろしを乗せて、その上からポン酢を少々。
ローストビーフで大根おろしを包んで口に運ぶ。
ローストビーフの肉々しさを大根おろしのさっぱりとした味わいが程よくかき消し、ポン酢の爽やかな風味が口いっぱいに広がる。幸せ。
君が教えてくれた、この食べ方。
君のおかげで、ローストビーフが好きになった。
君の好物だったから、ローストビーフが好きになった。
パックに書かれた表記を見て、2日前に賞味期限が切れていたことに気づく。
9月14日。君の誕生日。
トーク画面を開いて、文字を打ち込む。消す。
入力と削除を繰り返す。
今更 私が君に言える事なんてあるだろうか。息を吐く。
君のメッセージにリアクションスタンプを押して、トーク画面を閉じた。
クラスではあまり皆と話さない。
部活は入っていなくて、授業が終わるとすぐさま帰っていく。
がさつに見えるけど、実は料理がとても上手い。
持ってくるお弁当は彼が自分で作っている。
幼い頃に母親を亡くして、今はお父さんと二人暮らし。
だから料理だけじゃなくて、家事も一通り出来るすごい男の子で。
勢いで誘った料理部の活動にも、「皆と騒いで作るのも楽しいから」と欠かさずに参加してくれる。
私がばっさり失恋したときも、深くは聞かずに側にいてくれて。
悔しくて悲しい気持ちを一緒に消化してくれた。
心強い部活仲間で、友人で。
彼をさらに知る度に、好きな気持ちも膨らんだ。
この好きは、恋? それとも熱い友情の延長なの?
どちらなのかは自信がないけれど、貴方を映画に誘っては駄目かなあ。
部活の連絡事項では散々メッセージのやり取りをしてきたけれど、いざ純粋に遊びのお誘いとなると、何だかとても緊張してしまう。
『観たい映画があるんだけど、受験勉強の息抜きに一緒に行きませんか?』
何回も消して迷った文面は、ちょっと他人行儀になってしまった。
それでも他に良い文面も思い付かなくて、えいっ! と勢いに任せて送信した。
数分待って。
貴方から届いたのは「オッケー!」の可愛いスタンプ。
ぶっきらぼうな彼の印象からは意外だったけれど、彼は返信にスタンプを多用する。
前に理由を聞いたら、「簡単に済むから」と、これまた彼らしい理由に笑ってしまったっけ。
まだ映画のタイトルも伝えていないのに即答してくれたのが嬉しくて、うじうじ躊躇っていた心が晴れ渡る。
スマホを握ったまま、小さくガッツポーズを決めていれば、追って彼から今度はメッセージも送られてきた。
浮かれてすぐさま画面を開いた。
けれども、その内容を確認して固まってしまう。
『他の三年にも声かけようか。王子とかも誘う?』
彼の優しさに、がっくり項垂れる。
違う。違うよ!
確かに。学年一番の優等生、あの王子のことは好きだったけれど、バレンタインで振られてちゃんと諦めがついたんだから。それも、貴方のお陰で。
そりゃあ、今でも格好いいなあって。アイドルを応援する憧れの気持ちみたいなのは残っていて。
王子が料理部に参加したいって聞いたときは思わずはしゃいでしまったけれど。
そんな橋渡しみたいなこと、してくれなくても大丈夫なのに。
王子と彼が親しくなって以来、私が好きだった人を察していた彼は、時々こうして仲を取り持つような真似をしてくれる。
けれどもその度に、彼の優しさと勘違いに心がぎゅっと締め付けられて、実はちょっと辛い。
こんなに悩んで。やっぱりこれは恋する気持ちなの?
ああでも。彼の言うように、皆で出掛けるのも楽しそうだ。
提案を断るのも何だか変だし。ああもうどうしよう!
名前の付かない気持ちと、ワクワクする気持ちを抱え込んで。
トーク画面を見つめたまま。再び頭を悩ませる私は、すっかり恋する乙女なのかもしれない、と。
彼には内緒で、こっそり赤面した。
(2024/09/15 title:055 君からのLINE)
君からのLINE
ピコン!と軽快な音が聞こえると勢い良くスマホを見る
「なんだ…」
公式LINEに落胆する
君からのLINEはいつ来るのか…
待ってるこの時間はドキドキワクワクする
僕は君に恋をする。高校生の頃、君だけが僕に話しかけてくれた。「これからよろしくね😊」たったその一言だけだったけど。僕は嬉しくて、彼女に一目惚れした。彼女はすぐにクラスのみんなと仲良くなって、1ヶ月もすると、クラスの中心キャラになっていた。僕とは真逆だ。そんなある日、文化祭の出し物についてクラスのみんなで話し合うことになった。結果は僕が苦手なメイド&執事喫茶だった。僕は髪が長くて、眼鏡をかけてる陰キャだから、店員をすることは無いと思っていた。すると、彼女は、「もちろんみんな参加だからね!」と言った。僕は慌てて、彼女に提案した。「あっあの、チラシ配りの人とかも必要だと思うんだけど、、、」すると彼女は、「安心して!みんなの衣装は用意するから!その服着て、チラシ配りとか案内とかしてもらうから!」僕は焦った。そして、また彼女から提案があった。「みんなでグループLINE作ろう!」ぼくは帰ろうとしたが、案の定彼女に止められた。「逃げないで!」僕は仕方なくグループLINEと、彼女のLINEに繋がった。LINEは苦手だけど、一目惚れの彼女と連絡先を交換できたのは嬉しかった。自分から連絡する勇気がなくて、ずっと君からのLINEを待っていた。文化祭が終わってからもずっと。でも、卒業してしばらく経った今も、彼女からLINEが来ることは無かった。僕は一言思い切って彼女にLINEした。「久しぶり。僕のこと覚えてないよね?あの時の文化祭楽しかったね。」と送った。既読が着くことは無かった。
『 君のLINEを待つ僕』END
君からのLINE
君からのLINEをふと見返す。
生産性のない会話。ほとんどスタンプで終わる会話。
なのに何故か笑えてくる。
月に数回の、唐突に始まる会話だ。
ちょうどいい距離感で、適当に語り合える。
このまま疎遠なんてならないといいな。
帰宅して部屋の電気を点けると、今日もスマホが鳴った。
今日も『お疲れ様』——それだけを伝える見慣れたスタンプが届いたようだ。
君からのLINEは、いつも見計らったかのように良いタイミングで来るよね。いくら問い詰めても君は「○○の彼女ですから!」と繰り返すだけだけど、俺にはそんな嘘吐かなくていいのに……。
頼むからもう少し話を聞いてくれよ。俺、君と付き合ってなんかない。マンションの前の電信柱の影から、じっとこちらの様子を伺うのも辞めてくれ。
LINEだって本当は開きたくもないんだ。未読で10分も放置しようもんなら執拗な追撃が来るから開いてるだけで……。君の愛する可愛らしいキャラクターは俺にとっては最早恐怖の象徴だよ。頼むからこの可愛らしいキャラクターを、そんなものに仕立て上げないでくれ。
俺の願いも虚しく、翌日も君からのLINEは届く。
一体いつになったら俺は解放されるのだろうか……。
2ヶ月前に別れた彼だ、
画像共に「懐かしいね」とメッセージが送られてきた
私は、何も考えず、気にせず送られた瞬間メッセージを開いてた。そこには桜の並木の写真。見た事ある場所。
そこは1年前に彼と花見に行った場所だった。そして彼と来年もまた一緒にここに来ようねと約束した場所だった。だけど私達は別れた。彼が2ヶ月前急に別れたい、別れさせてくれとその一点張り。彼とは結婚するつもりだった。相手もそう思ってくれると思ってた。「新婚旅行行くならここがいいなぁ…。え、めっちゃいいやん。楽しみだな」「子供が生まれたらね…」「どんな事があっても乗り越えて一緒に幸せになろうね」となのに彼は急に別れようって。私は意味が分からなかった。引き留める事も理由を聞くことも怖くて別れた。当時は未練ばかりで何にをするにもままならなかった。私は後悔した。なのに急に彼からのメッセージなんて、怒りしか湧かなかった、けれどそれを上回るくらい凄く嬉しかった。メッセージの続きには「連れてってあげれなくてごめん。何もかも急でごめん。幸せにな。」そのあとメッセージを返しても返事してくれなかった、既読すらつけてくれない。それから時が流れ2年半。私は彼の事を自分の隅の隅にはあり、未練などは一切無いとは言えないけどいつも通りに過ごそうと努力した。そしていつも通り仕事に向かっている最中、信号待ちをしている時、あたふたしている大人がいた。下を向きながら独り言を話ながら混乱している様子だった。頭を上げた瞬間私は驚いた。彼だった。変わり果てた彼がいた。私と目が合った、けれど知らない人かの様に目を逸らされた。その後彼の知り合いらしき人が探したよと彼に言っていた。だけど彼はその人に対しても誰だろうと困った顔をしていた。別れた後、彼に何があったのか、もしかしたら何かがあったから別れたのか、わからないが心がギューと締め付けられた。
だけど一変した彼を見ても私は彼が好きだった。
彼を見た瞬間消えかけていた好きという気持ちが込み上がった。
私は、色んな事、言葉が蘇った。
ねぇ、どんな事があっても乗り越えて一緒に幸せになろうねって言ったのは貴方だよ
ねぇ、覚えてる?
なにか作業をしているとき。
趣味でも、勉強でも。
しばらく携帯から目を離していて。
いつまにか来ていた通知を
ひとつずつ確認する。
その中に紛れる、君の名前。
他愛もないメッセージだとしても
そのひとつで心が締め付けられるんだ。
───『君からのLINE』(2024.09.15.)
聞き慣れた通知音が鳴る。友人からだ。
他愛もない話をして、キリが良くなったらやめて、スマホを置く。
少しソワソワしながら、雨のように降り注ぐ時間を受け止める。
聞き慣れた通知音が鳴る。母からだ。
今日の夕飯の話を軽くして、要件を済ませば、スマホを置く。
ため息を一つ溢して、河のように流れる時間に身を委ねる。
聞き慣れた通知音が鳴る。君からだ。
少しだけ、ほんの少し喋ってスマホを惜しみながら置く。
体中の血液と一緒に多幸感が巡り巡って、目眩がするほど脳が麻痺する。
明日もどこか期待してしまう自分がいる。
2024/09/16 #君からのLINE
日に三度
時々もっと
光る画面
未読でごめんね
透ける指先
‹君からのLINE›
神を見た
捧げられた宝玉に触れ
満足に微笑む神を見た
誰もが心奪われ
誰もが魂囚われる
愛しく慈しむ眼差しに
ある人は木を掘った
ある人は機を織った
ある人は弦を鳴らし
ある人は字を連ねた
皆神に焦がれた
あの眼差しを受けるに足る作品を
あの微笑みを間近に受ける僥倖を
心を込めて
魂を削って
命を燃やして
精根尽き果てて尚
神に焦がれた
慈愛に焦がれた
そしてそしてそのくには
神が微笑み歩く宝物庫は
作品以外は何もかも
誰もかも残ってはいない
‹命が燃え尽きるまで›
君からのLINE
やっとやり取りすることが出来た。
緑色のアイコンをこんなに見つめたのは初めてだ。
通知を示す赤色が
僕たちを繋ぐラインの色だったらな。
生まれたときには存在しなかった長方形の中にある
生まれたときには存在しなかった緑色の長方形が
生まれたときには存在しなかった感情を生んでいる
「君からのLINE」
嬉しい、僕の想いがやっと届いた。
ずっとずっと一緒いようね。
大好き…。
いつもLINEが来るたびに、君からのLINEじゃないかと期待してしまう。
ピコンッ
「何?…あぁ、公式LINEか…」
私はがっかりしてスマホを置く。
今日も、あの人からのLINEは来ない。
わかってる。もう、LINEは来ないって。
私のせいで君は…。
あのとき、私がLINEを送らなければ…。
ピコンッ
またスマホが鳴った。
「今度は何…?……?!」
それは、亡くなったはずの君からのLINEで。
「あんたのせいで死んだんじゃないんだけど?私、人に責任負わせんの好きじゃないの、知ってるでしょ。あんたは生きなよ」
そう、書かれていた。
わかってはいるけど。親友からのLINEじゃないことは。
でも私は涙が止まらなかった。
「生きて、土産話たくさん持ってきてよね、親友!」
〜君からのLINE〜
君のメッセージには愛が溢れている
本当に私の事大好きだなって
私は素直じゃない
試すこと言ったり、わざと意地悪したり
素直に受け取れないこともある
でもさあなたはいつも私を一番にしてくれる
きっと自分のことより私が大事なんだろうな
あなた自身を一番に考えて欲しい私と
私のことを一番に考えてくれるあなた
きっとそんなとこですれ違ってるんだろうな
素直って難しいな
深呼吸
私もあなたに愛を伝えるよ
できるだけ素直に
混じり気がない光のように
──君からのLINE
LINE形式で書きたいと思ったので他の場所にて書き上げました。
朝7時。
目覚ましの音で目を覚ます。
君からのLINEが来ていることを確認すると、
私は朝の支度を始める。
きっと私は、今日もそのLINEを開くことは無い…。
君は毎朝7時に必ずLINEをくれる。
今日は傘を持っていった方がいいだとか、
クーラーで冷えるだろうから
ちょっとした筋トレをした方がいいだとか、
そんな内容だ。
自然災害が起きた時も、いつも連絡してくれるよね。
流石に心配になって確認するようにはしているけれど、
それ以外で開くことは滅多にない。
それでも君は、毎朝私にLINEをくれる。
そのお陰で、どんなに億劫な朝もスイッチが入る。
いつもありがとう。ウェザーニュース。
-君からのLINE-