『君からのLINE』
スマホが震えて、通知が届いたことを知らせる。
電源ボタンを押すと目に飛び込んできた、「2件のメッセージ」の表示。
ロック画面を上にスワイプし、LINEを開く。
1番上に表示された君のトークルームを長押しする。
19時49分。
君から送られた 4文字と、スタンプ。
返信はせずに、スマホを閉じた。
動揺しているはずなのに、頭だけは酷く冷静で、どこか他人事のように冷蔵庫にローストビーフがあった事を思い出す。
君と食べるために奮発して買ったローストビーフ。
缶ビールと共に、1人で食べる。
パックを開ける。
ローストビーフの上に大根おろしを乗せて、その上からポン酢を少々。
ローストビーフで大根おろしを包んで口に運ぶ。
ローストビーフの肉々しさを大根おろしのさっぱりとした味わいが程よくかき消し、ポン酢の爽やかな風味が口いっぱいに広がる。幸せ。
君が教えてくれた、この食べ方。
君のおかげで、ローストビーフが好きになった。
君の好物だったから、ローストビーフが好きになった。
パックに書かれた表記を見て、2日前に賞味期限が切れていたことに気づく。
9月14日。君の誕生日。
トーク画面を開いて、文字を打ち込む。消す。
入力と削除を繰り返す。
今更 私が君に言える事なんてあるだろうか。息を吐く。
君のメッセージにリアクションスタンプを押して、トーク画面を閉じた。
9/16/2024, 10:49:16 AM