食欲の化身

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1/27/2025, 7:18:15 AM

『わぁ!』

フォンダンショコラをご存知だろうか。
フランス生まれのチョコレートケーキで、「フォンダン」はフランス語で「溶ける」を意味する。
40年ほど前にフランスの料理界を代表するシェフ、ミシェル・ブラス氏が考案した「クーラン・オ・ショコラ」というチョコレートケーキがフォンダンショコラの原型と言われている。

フランス国旗が描かれた箱にお菓子と共に入れられていた解説書から目を離し、そのフォンダンショコラとやらを見つめる。
フランスの旅行土産に、と友人から貰ったその菓子は、6つ入りで、どれもケーキと言うにしては小さく、直径6cm程で、少し大きめの一口サイズだ。

こっくりとしたチョコレート色と白いパウダーのコントラストが美しい、見るからに高級そうなお菓子だ。
いったい1個いくらするのだろう…と思わず下衆なことを考えてしまう。いけない、いけない。

解説書の「美味しい食べ方」の欄に従い、電子レンジで少し温める。
勿体無いので2個だけ食べて残りは明日のために残しておくことにする。

電子レンジの作業完了を告げるベルの音にわくわくしながら少しだけ温まったそれを、お気に入りの白い皿の上に乗せる。


見れば見るほど可愛らしいフォンダンショコラを前にして、早く食べたい気持ちとこのまま保存しておきたい気持ちがいったりきたりする。
生憎このお菓子に合いそうなおしゃれなフォークは持ち合わせていないので、はしたないが手づかみで頂く。

親指と人差し指で挟んだフォンダンショコラは、想像していたよりも柔らかく、もう少し力を入れたらすぐに崩れてしまいそうだ。
一口でも簡単に食べられそうだが、ちょっと気取って二口で食べることにする。いただきまーす。

「んっ…!」

しっとりとしたなめらかなショコラ生地に歯を立てると、待ってましたとばかりに溢れてくる、とろりと生温かいチョコレート。

今にも溢れてしまいそうなそれを、慌てて口に含む。
チョコレートの濃厚な風味が口の中に広がる。

成程、「フォンダン」とはこう言う意味だったのか。
解説書の意味を、身をもって理解する。

口に入れたフォンダンショコラはチョコレートの香りを残しつつもいつの間にか消えている。
満足する気持ちと、少しの寂しさを感じる。
皿の上にはあと1つしか残っていない。
もういっそのこと全て食べてしまおうか。

鼻歌を歌いながら冷蔵庫から残りのフォンダンショコラが詰まった、フランス国旗の箱を取り出した。


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お久しぶりです、食欲の化身です。
約4ヶ月に書きました。文章が拙くてお恥ずかしいです。

今日のお菓子は「フォンダンショコラ」です。
フランス生まれのこのお菓子は意外にも最近になって誕生したものらしく、元はフランスの三ツ星レストランでデザートとして出されていたものなのだとか。
噛んだ瞬間チョコレートがとろっと溢れ出す…。
聞いているだけでお腹が空いてきますね(笑)
いつもの如く私は食べたことないので全て想像で書かせていただきました。なので物語中に出てくる味や感想は全て偽物です。皆さんは是非実際に食べてみて、本物の味を感じてみてくださいね。

10/9/2024, 1:22:23 PM

『星座』

目の前に運ばれてきた、ぷるぷる、つるつるのわらび餅を前に、ゴクリと唾を飲み込んだ。

某SNSアプリで写真を見てからずっと来たかった、わらび餅専門店。
きらきら、もちもちのわらび餅を夢見て、今日まで必死に働いてきた。
待ち望んだ週末が来て、真っ先に足を運んだ。

ついに、ついに。

心の中の期待に胸を踊らせながら、震える手で黒蜜が入った小瓶を手に取り、傾ける。
ゆっくりと全体に黒蜜をかけたら、横にあった金箔を少量つまんで、ふりかける。

真っ黒な蜜の上に金箔が散らされた様は、まるで満天の星のよう。
写真で見るのとは違う、その美しさに思わずため息が出た。

わらび餅の横に控えめに添えられた黒文字を手に取り、わらび餅を慎重に1口大に切る。
持ち上げると、振動でふるふると震えるわらび餅がなんとも可愛らしい。

口に含むと、もっちりとコシがあり、ぷるんとした食感とともに黒蜜の甘さが口いっぱいに広がる。
わらび餅の温かさと、優しい甘さに包まれて、幸せな気持ちになる。

もう1口、もう1口…と食べ進めるうちに、いつの間にかわらび餅は半分にまで減っていた。

甘すぎる口の中を、一緒に運ばれてきた抹茶を飲んで、直す。その温かさに、ほっとする。
いつもは苦手な抹茶の苦味が、黒蜜の甘さによって中和され、程よい苦さも残りつつ、スッキリとした味わいになっていて、飲みやすい。

わらび餅と抹茶を交互に味わう。
甘い、苦い、甘い、苦い…。
口の中で変化していく2つの味を、目を閉じて楽しむ。



空になった皿と湯飲み茶碗を見下ろして、満足の息をつく。久々の和菓子も悪くないな、と思う。



口に残るわらび餅の甘さと温かさの余韻に浸りながら、店を出る。
いつの間に暗くなっていたのだろうか、空には無数の星が輝いていた。


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ハートがついに100になって嬉しい。

9/29/2024, 9:12:22 AM

『秋🍁』

紫芋のモンブラン、かぼちゃのプリン、三色団子⋯。

コンビニのスイーツコーナーに新たに入荷された商品を見て、少し早い秋の訪れを感じる。
少し前まではエクレアやチョコケーキなど、黒や茶色のスイーツたちが陳列されていたのが、今は黄色や紫、白など明るい色も加わり、華やかな印象を受ける。

「期間限定!かぼちゃをたっぷりと使った、秋の味覚! かぼちゃのモンブラン」

大きく“期間限定”と書かれたその商品に、目が惹き付けられる。

蛍光灯の人工的な光に照らされて、己を主張するその黄色のスイーツは、クリームがどっしりと乗っており、甘く、濃厚そうな見た目をしている。

私はミルクレープに伸ばしかけていた手を止め、少し考えた。


風呂から上がってから、冷蔵庫を開ける。
今日買ったばかりのモンブランを取り出す。
北海道産の自慢のかぼちゃを大量に使用したという、そのスイーツ。
そんなに言うのだから、さぞかし楽しませてくれるのだろう。
期待と、少しの不安を胸にパッケージを開ける。

ふわりと香ったかぼちゃの香りは甘く、食欲を掻き立てられる。
パッと目を引く明るい黄色のかぼちゃホイップは、美しく1列に絞られており、それが幾重にも重なっている。

プラスチックのスプーンで掬ってみると、1番上の層には生クリームが、その下の層ではスポンジケーキに挟まれるようにかぼちゃペーストがこれでもかと詰められていた。

ひとくち食べて、その美味しさに思わず舌鼓を打つ。

ホイップクリームは予想以上に軽く、なめらかでクリーミーで、食べた瞬間からかぼちゃの甘さがふわりと香る。ミルキーな甘さでしつこすぎず、食べやすい。
かぼちゃペーストはクリームよりも深く、濃厚で上品な味がする。ほろ苦さがスポンジに挟まれて中和しており、中々美味しい。コンビニスイーツにしては上出来だ。

クリームにしても、スポンジにしても水分が多すぎないため、見た目よりも軽い味わいで、重すぎず、しつこさのない味わいと、最初の可愛らしい見た目に私は大満足である。

食べ終わった後の余韻に浸りながら、絶対に次も買おうと心に決めた。


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何気に初めまして。食欲の化身です。

実際にあるらしいこのコンビニスイーツ。
写真を見て全部想像で文章を書いているので、味の保証はできませんが、是非食べてみてください。

ちなみに私はモンブランは好きじゃないです。

9/16/2024, 10:49:16 AM

『君からのLINE』

スマホが震えて、通知が届いたことを知らせる。
電源ボタンを押すと目に飛び込んできた、「2件のメッセージ」の表示。
ロック画面を上にスワイプし、LINEを開く。
1番上に表示された君のトークルームを長押しする。

19時49分。
君から送られた 4文字と、スタンプ。

返信はせずに、スマホを閉じた。


動揺しているはずなのに、頭だけは酷く冷静で、どこか他人事のように冷蔵庫にローストビーフがあった事を思い出す。

君と食べるために奮発して買ったローストビーフ。
缶ビールと共に、1人で食べる。

パックを開ける。

ローストビーフの上に大根おろしを乗せて、その上からポン酢を少々。
ローストビーフで大根おろしを包んで口に運ぶ。
ローストビーフの肉々しさを大根おろしのさっぱりとした味わいが程よくかき消し、ポン酢の爽やかな風味が口いっぱいに広がる。幸せ。

君が教えてくれた、この食べ方。
君のおかげで、ローストビーフが好きになった。
君の好物だったから、ローストビーフが好きになった。

パックに書かれた表記を見て、2日前に賞味期限が切れていたことに気づく。
9月14日。君の誕生日。


トーク画面を開いて、文字を打ち込む。消す。
入力と削除を繰り返す。

今更 私が君に言える事なんてあるだろうか。息を吐く。
君のメッセージにリアクションスタンプを押して、トーク画面を閉じた。

7/29/2024, 1:02:44 PM

『お祭り』

夏祭りの境内は独特な熱気を孕んでいる。
祭囃子が響き渡り、何十人もの大人や子供の話し声や笑い声が飛び交う神社は、普段の厳かな雰囲気とは一転、大衆的な雰囲気に包まれる。

一見すると低俗とも言えるこの雰囲気が、私は嫌いでは無い。

年齢や性別、立場も違う、様々な人々が同じ空間で、同じ時間を過ごし、同じ感情を共有する。
普段は厳格な大人も、この日ばかりは羽目を外し、子供に交じってはしゃぎ回る。

踊口説が流れ始めると、男も女も、誰も彼もがリズムに合わせて手を叩き、踊り狂う。
その光景はある種の宗教的な何かを感じさせる。

その喧騒に引き寄せられるのは、人間だけではないのかもしれない。
お面を1枚隔てれば、人なのかそうでないのかの判断は曖昧になってくる。


人か魔物か夢現。
あそこに浮かぶは提灯か、人魂か。
私の前の此奴は人間か、それとも。

夏祭りの妖しげな雰囲気が、熱気が、私を惑わせる。

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