『向かい合わせ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『向かい合わせ』
私の向い合わせはいつでもあなただった。
ふとした時に目に入るのは、いつもあなたしか考えられなかった。はずなのに。
幾年ぶりかに思い出してしまったあなたの像を掻き消しつつ、今はもう違う向い合わせを見つめる。
こんな私で、ごめんね。
小さく呟いた言葉は私の口の中で溶けていった。
「おまたせ!」
向かい合わせにいたはずの彼女の声が少し上から聞こえてくる。
「な、るせ?なんで…」
「えへへ、遥斗が寂しがってると思って会いに来ちゃった!」
傍にいてほしかった人が目の前にいる、のに。いい大人が泣きじゃくりながら、つっかえつっかえでうまく喋れなかった。それでも、そんな俺の話を聞いてくれる成瀬との幸せな時間は一瞬で過ぎ去っていった。
「遥斗、ありがとね?ほんと。」
その言葉を皮切りに彼女はふっと消えた。
目の前には水がかけられたただの墓石があった。やっぱり夢だったのか、そう思ったが添えられている彼女の好物は半分ほど減っていた。
「ばーか、せっかく供えたお菓子食べてくんじゃねぇよ…」
#向かい合わせ
向かい合わせで
男性の知り合いが
座っただけで
やきもちを焼かれるくらい
好かれていた
今は…
一緒に座ったら
と言われそう
楽だけどね…
「向かい合わせ」
向かい合わせの座席に座る
可愛いあの子
目が合うと笑って見せて
頬を染めてしまう
なんでこんなにも胸が苦しい
まだ気づかない
いや、気づきたくないのかもしれない
向かい合わせ
お皿に広げられたクッキーと、
マグカップに注がれたコーヒー。
私は向かい合わせに座る。
たまに開催するおやつタイム。
向かい合わせだと、会話が弾む。
私はこの時間が好きだ。
【向かい合わせ】
君の好きな人、
その隣が君。
そして、僕のとなりに座るのは
君が好きな男の好きな人。
その隣が僕。
だけど僕は君が好き。
向かい合わせじゃなく
肩を並べる
おなじ空を見て
おなじ光を感じたい
………向かい合わせ
「向かい合わせ」
洗面所に向かうと,鏡面に「僕」が映る。
「今日で夏休みは終わりか。」と溜息を吐く。
「それなら代わろうか?」と頭で声が響く。
馬鹿馬鹿しいと一笑に付す。
君はここから出せと怒りを滲ませて言う。
何を今更,君が現実社会が嫌だと言ったんでしょう?
君の代わりに僕が楽しむよ。
鏡
向かい合わせ
瞳は濁ってないかな?
大丈夫だよ
心入れ替えれば間に合うから。
向かい合わせ
向かい合わせに座ると、人は心理的に敵対関係を意識するらしい。
隣り合わせに座ると協力関係。
そのことを、誰かと座るたびに思い出す。
向かい合わせのお隣さん、
美人で可愛くて何より強いのだ。
大変な仕事をして夜勤もして月に一回だけ、
顔合わせに飲みに行く。
私よりも身長高くて、大人っぽい。
いわゆる地雷系の服を着てお酒を飲む。
彼女のほろ酔いが可愛い。
"お隣さんって、なんで私みたいな人と
飲んでくれるんですか?"
涼しい顔をしていた彼女が顔を真っ赤にして、
"魅力的で優しいから…。
飲みに行くのが楽しみで…。"
今日はなんとなく良い日だった。
新しい日常が始まるからだ。
一人じゃないっていいな。
〚向かい合わせ〛
ある日の君と僕は道で、すれ違う。
君は友人と喋り僕がいるのに気づかない。
僕はひたすら下を向き、後から君の方を向くよ。
君は笑顔で僕をみてくれるのだと想っていた。
翌日、君は笑顔で僕に話かける。
僕も笑顔で話すんだ。
それでも、僕らはすれ違う。
気づくはずもなく、2人同時に向かい合わせる。
向かい合わせ
向かい合わせで食事を始める
"まずはお茶を一口"
”まずはお茶を一口”
"次は副菜"
”次は副菜”
"その次は主役を食べる"
”その次は主役を食べる”
"あれ"
”あれ”
"同じ事してる"
”本当だ”
"www"
”www”
双子って楽しい
「向かい合わせ」とかけまして
「向こうから天津飯が歩いてきた」と解きます。
その心は「見つめ合う/三つ目会う」でしょう。
「向かい合わせ」とかけまして
「センレックやセンヤイ、センミーなどがあります」と解きます。
その心は「対面/タイ麺」です。
今向かい合わせになったら
殴りかかってしまいそう
マウスピース噛み潰して
ねます
まひろと十里君って兄弟みたい。
目は口ほどに、というよりは頬は口ほどに。顔が赤らんでいくのが自分でもわかる。
うれしい。
えー、やめてよ。ウー気持ちわり。
俺だって嫌だよー。
嘘だ。そんなわけない。
ただ、相手からのそういう嫌悪感があることが、僕は知りたくなかった。
僕はゲイか?いや、ストレートだ。
いや、ゲイを嫌っているわけではないし、僕は自分を腐男子だと認めている。世間はメディアが盛んに布教しているように、セクシュアリティの多様性、を狂ったように叫びまくっているが。それでも、そんなのは上辺談話。好き、それだけで通じる世の中ではないのだ。
ある意味、腐男子、というのは逃げなのかもしれない。
この子かわいい、
最初にまひろにあったときに後ろに自然について行ったのも、僕の性的嗜好なのかもしれない。
最初話し時は彼と気が合うのがうれしくて、そして、彼から、僕らは似た者同士だ、と言われたときには無性に嬉しかった記憶がある。
だから、当然のように、喜んでくれるものと、ある意味わかった気になって期待していたのかもしれない。
兄弟みたいな仲で。恋人でなくてもいいから。
兄弟コーデを嫌われた日、向かい合わせの僕と君、その間にあったはずの鏡は、突如として透明な板に様変わりしていた。
あめのみ
そういうんじゃないんだよなぁ、と彼は思った。目の前にはどう言ったらいいのか、とテーブルに肘をつき、両手の指を組んでそこに額をつけている旅団長。
「あなたがどんな風に捉えているのか分かりませんけど、ともかくあまりおおっぴらには喋らないでください。さっき言ったように、そういうものでは――ないので」
言っている旅団長のほうが困惑している。最後のひとり、彼を「散々な目」に何度も遭わせている張本人は涼しい顔をしている。言っていいことと悪いことは言い聞かせてある、と。口止めする部分がずれている、と旅団長は頭を抱えていたが、彼には話がよく分からなかった。
彼の故郷ではそれを語ることはタブーではなかったし、少なくとも男性がそれを語るときに、こと相手のことを慮っていたかというとそうでもなかった気がする。いずれにせよ自分には早いか、縁の薄いことだと思っていたから真面目には聞いていなかったし、聞かされて興をもよおすこともあまりなかった。オルステラも同じかどうかは知らなかったし、だから秘するべきことだというならあえて逆らいたいと思っているわけではない。ただ、彼の見聞きしてきた範囲で考えるに、どうにも一貫しないものを感じさせていたため、結局それらの情報をどう扱えばいいのか量りかねていたというのが正直なところだ。片方でひどく関心をもっているかと思えば、もう片方ではタブー視するし、それに対して率直であるほうがいいということもあれば、控えめなのがいいということもある。だから分からなかったのだ。当事者である彼女から伏せるように言われたことは守っているつもりだったから、旅団長にこうして叱られるのは意外だったし、言うことにも彼の思っていることとははっきりとしたずれがあったから、言われたことに諾々と従うのにも違和感があったのだ。もっとも旅団長の口ぶりから推し量るに、彼女自身もどこかすっきりとしないものを抱えているのはなんとなく分かったので、いい加減に聞き流すこともできずにいた。
そして彼は自身がそれをどう捉えているのかを考える。彼の故郷の文化に照らすと、彼のスタンスは異常である。が、彼自身はそれについてはなはだ懐疑的だったし、そのたびにああいう目に遭うことには却って充足を感じている。安心というか、再認識というか、いかにも自分らしい気がするのだ。いや、「彼女に」そういう目に遭わされることに強い納得を覚えていた。たぶん相手が彼女でなければ彼も抵抗したはずだし、怒ってすらいただろうと思う。そして彼女にとってそれは遊びというのか、気晴らし程度というのか、おそらくそういう感覚でいるらしいことにも彼は納得している。それもどうやら異常らしいのだが、それでもそれがしっくりくるのだ。ひと言でいえば惚れているのだ。それはもう熱烈に。
「ともかく、それそのものを止めるつもりはないのですが、中身はなるべく喋らないでください。その、真似する人が出るとは思えませんが、余計な好奇心にさらすこともないでしょう?」
「余計な、好奇心…」
彼は彼女に視線を送ると、彼女は口の前で指を立ててみせた。
向かい合わせ
日常に生まれる、ひとときの邂逅。
その人が私の向かいに座ったのはまったくの偶然だった。
一目見た瞬間、一気に視線を奪われた。
切れ長の瞳にすっきり整えられた髪。
体のラインにぴったり沿ったスーツはスタイルの良さが際立っていた。
向かい合っているけど視線は合わない。
私と彼の間では出たり入ったりと人々が行き交ってばかりだし、そもそも彼の視線はスマホの画面に注がれたままだ。
でもそれでよかったのかもしれない。
目が合ってしまったら、きっと私は耐えられない。
『次は◯◯駅〜、◯◯駅〜』
すいっと彼が立ち上がる。
油断していた。
自分が降りる駅がもう少し先だから、タイミングを逃してしまった。
言いたい。言わなきゃ。
今言わないと、絶対後悔するーーー。
「あの!」
振り返る彼。
「チャック、開いてますよ!」
言い終わった瞬間、プシューっとドアが閉まったのだった。
ちょっとショートカットしようと思って入った路地で、妙なヤツと出くわした。上から下までグレーの服。銜えタバコで小脇にカバンを抱えてる。さながら、そう『モモ』に出てきた『灰色の男たち』みたいな。
嫌な空気を感じた俺は、さっさと通り過ぎようと歩を速めた。すれ違いざまに、好奇心に勝てず顔をチラリと見たのが良くなかった。目が合ってしまった。
灰色の男が付いてくる。俺が速く歩くとヤツも速く、俺が遅く歩くとヤツも遅く。怖くなった俺は、あの曲がり角を曲がったら大通りまで一気に走ろう!そう思って角を曲がった瞬間、人とぶつかってしまった。
スミマセン!と謝り見ると目の前に灰色の男。ヒッ!と声にならない声を上げて、逃げようとしたが、どうしたことか体が動かない。どんなに身を捩っても、手も足も動かない。
灰色の男がこちらに手をのばす。両肩を掴まれ、後ろに押される。ぐいぐい押され、ついには壁にドンッと押し付けられた。汗が吹き出る。最後の力を振り絞って助けを呼ぶ為叫んだ。
その瞬間、シャーッという声と同時に頬に痛みが走った。
目を開くとこちらを覗き込んでいる愛猫と目が合った。辺りを見回すと、自室の床の上だった。あれがただの夢だと解り、安堵のため息をついた。
寝返りを打っている間に毛布でぐるぐる巻きになったのが原因のようだ。そのままベッドから落ちたらしい。
情けない話だと落胆しながら、多少痛む腰を擦りながら洗面台へ行く。鏡を見ると、頬に一筋の引っ掻き傷。
振り返って愛猫を見ると、涼しい顔をして毛繕いをしている。「悪夢から呼び戻してくれてありがとな」と言うと、愛猫がニャアとひと鳴きした。
―――よるのゆめこそ [ひと仕事]
#53【向かい合わせ】
「夜中に鏡を向かい合わせ――
つまり合わせ鏡をすると悪魔が現れるって話。
聞いたことあるだろ?」
「都市伝説というか怪談であるよね。
聖書で尻尾を挟んだり、瓶に閉じ込めたり、色々パターンがあるみたいだけど」
「というわけで鏡を2枚用意してみました」
「……え、やるの? 作り話だぜ?」
「悪魔に渡す供物してリンゴも用意してみました」
「……やるのね。
でも夜中まで待つの面倒くさすぎるんだけど」
「酒とツマミと、暇つぶし用に新作ゲームも用意してみました」
「はいはい、用意の良いようで……」
……
「ところで何で悪魔への供物がリンゴなの?」
「L知ってるか――」
「それは死神じゃねーか」
……
「さて23時50分だね」
「そうだな。ながかった。もぅ眠い。
ていうか寝よう」
「いやいや待て待て。
せっかくここまで頑張ったんだから、あと10分ほど頑張ろうよ」
「いいけどさー。どうせ何も起こらないぜ?」
「いや、色々起こるね。
こぅ……びゃー?って感じで」
「ふーん。まぁ何でも良いけど」
……
「あと残り3分弱。ここらでネタバラシをしようか」
「?」
「深夜0時に合わせ鏡をすると悪魔が現れるという話。実はあれは――ウソなんだっ!」
「うん。知ってた」
「実は夜中に合わせ鏡をすると現れるのはーー
『異界への道』なんだ!」
「……わー、そうなんだー。すごーい」
「その異界への道から異界人が時々迷い込んできたり、逆に異界へ迷い込む人もいるわけだ」
「それは何というか、運がない間抜けな人達だな」
「そう、そんな運がない間抜けな君のために帰り道を用意してみた」
「は?」
「鏡、見てみ」
「いや異界人? え? って、ちょ、ちょっ、鏡がっ、なんか、こぉ、びゃー?ってなってる!?」
「さぁ森へお帰り」
「それはΩっ!」
……
「帰れったって、そもそも俺は異界人じゃないぞ! あとなんだ、このびゃーってのは!」
「普通の人類にはツノも羽も尻尾も生えてないんだよなぁ」
「いや、これは人類として当然の……お前は生えてないな?」
「そうだね。あと、僕たち友達でも何でもないって、覚えてる?」
「え、いや……そういえば、お前は誰だ? あとなんかここに来るまでの記憶がない! ツノなし人間に誘拐された!?」
「落ち着け。落ち着いて思い出せ。異界への道を通った者は、時として記憶の一部を失う時があるんだ」
「そ、そうなのか?」
「そして失われた記憶は、その時傍にいた人間の記憶やら常識を元に疑似的に再構築されたりもする。君がツノなしの僕と違和感なく接していたみたいにね」
「ほー」
「しかし安心してくれ。
失った記憶は異界への道を通って元の世界に戻れば元通りに蘇るから」
「なんか詳しいな。オカルト専門家なん?」
「記憶を失う前の君に聞いた。
嘘か本当かは君次第だよ」
「マジか。俺がオカルト専門家だったのか」
「それは知らんけど。
まぁ無事に送り返すことができそうでよかったよ」
「あー。ありがとう?」
「どういたしまして」
「ん~と…………また遊びに来て良い?」
「……リンゴの用意はしておくよ」
// 向かい合わせ