「おまたせ!」
向かい合わせにいたはずの彼女の声が少し上から聞こえてくる。
「な、るせ?なんで…」
「えへへ、遥斗が寂しがってると思って会いに来ちゃった!」
傍にいてほしかった人が目の前にいる、のに。いい大人が泣きじゃくりながら、つっかえつっかえでうまく喋れなかった。それでも、そんな俺の話を聞いてくれる成瀬との幸せな時間は一瞬で過ぎ去っていった。
「遥斗、ありがとね?ほんと。」
その言葉を皮切りに彼女はふっと消えた。
目の前には水がかけられたただの墓石があった。やっぱり夢だったのか、そう思ったが添えられている彼女の好物は半分ほど減っていた。
「ばーか、せっかく供えたお菓子食べてくんじゃねぇよ…」
#向かい合わせ
8/25/2024, 10:12:34 AM