目が覚めたような気がした。
顔を上げると、そこは自室で、見慣れた風景だった。
体を触ると、それは俺で、僕ではなかった。
床に降りると、それは何か違うで、僕の部屋ではなかった。
鏡を見ると、俺は、僕は、私は、顔が白かった。
つまりは、何も映ってなかった。
「#jdb」|+〆」
「あなたは、誰ですか」
#あなたは誰
いつまで経っても消すことのできない君のLINE。
どうせ、開くこともできないのに…。
いつか、君ごと全部忘れられたらいいな。
#開けないLINE
寂しくなった夜、君はいつも駆けつけてくれる。
私に連絡もしないで、突然の深夜の訪問。それでも君なら嬉しかった。
ねぇ、最近はなんで来てくれないの?
ねぇ、早く…会いに来てよ。
ねぇ、。
ーなんで、私より先に死んじゃったの?
会いたいよ、ばか。
#突然の君の訪問
しとしとと降り注ぐ雨の中、傘もささずに僕はその場に佇む。
でも、いくら待っても君は来ない。
―ふいに、身体に雨が当たる感覚が無くなった。もしかして、と思い振り返る。が、それは彼女ではなく同僚だった。
「なぁ、遥斗…。本当は、わかってんだろ?成瀬さんがもう、この世にいないこと。」
途端、彼女が死んだときのことがフラッシュバックする。いつまでも一緒に日本の平和を守ろうね、なんて言い合っていたのに…捜索中、彼女は被害者を庇って殉職した。
…成瀬、ほんとはね?僕、この国より君を守りたかったんだよ。
次こそは守るからさ、早く傘をさしに来てよ。
初めて会ったときみたいに。
#雨に佇む
「おまたせ!」
向かい合わせにいたはずの彼女の声が少し上から聞こえてくる。
「な、るせ?なんで…」
「えへへ、遥斗が寂しがってると思って会いに来ちゃった!」
傍にいてほしかった人が目の前にいる、のに。いい大人が泣きじゃくりながら、つっかえつっかえでうまく喋れなかった。それでも、そんな俺の話を聞いてくれる成瀬との幸せな時間は一瞬で過ぎ去っていった。
「遥斗、ありがとね?ほんと。」
その言葉を皮切りに彼女はふっと消えた。
目の前には水がかけられたただの墓石があった。やっぱり夢だったのか、そう思ったが添えられている彼女の好物は半分ほど減っていた。
「ばーか、せっかく供えたお菓子食べてくんじゃねぇよ…」
#向かい合わせ