『同情』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私は同情されるのが嫌いだ。
だが、それはどんな所でもある。
運動会の保護者たちの声、体育での同級生たちの同情の目が本当に嫌い。
ねぇ私、新しい恋をして気づいたの。
彼女は結ばれることのなかった運命で、タイミングの交わらなかった宿命で、私はこれからどんな人に出逢おうと彼女を忘れられなくて、どんなに彼女を嫌う努力をしても、もう私の中の奥底に住み着いてしまっているんだって。
そんな恋ができてよかったな。
でも、一緒に幸せになりたかったな。
今更あの時勇気が出なかった私に落ち込むし、あんなに苦しんだのに優しい思い出しか蘇らないのはきっと何かの罰だよね。
好きだったの。すごくすごく。
彼女のためなら何にでもなれるくらい、そのくらい好きだったの。
-愛ゆえに-
悩みって、人それぞれみんなあると思うんだ。
それを1人で抱え込む人もいれば、誰かに相談する人もいる。
僕はどちらかと言えば後者だ。
とても人に言えないようなことは言わないが、大体は話す。
話すと言うよりは、言わされるに近いけど…
親というのは身勝手で、自分が”産んであげた”から自分が子供をいちばん知っていて、子供にいちばん信頼されている
と、勝手に思っている。
でも、それが本当なのはきっとこの世に半数もいないだろう。
だから、僕が泣いていたり、悩んでいる顔を少しでもすると、
「なんで泣いてるの」
「言ってくれなきゃわからないよ」
「言ってごらん?」
などと、ほぼ確実に言わなければいけないという鬼畜イベントが始まる。
ここで話すことを断ると、親は勝手に機嫌が悪くなったり、怒ったり、悲しんだりする。
だからこうなってしまった以上、嘘とついてでも何かは話さなくてはならないのだ。
話したところで親は解決も、子供のメンタルケアすら出来ないくせに。
「親」という、こんな素人に話したところで、カウンセラー相手のように上手く話もできないし、上手く表現すらできない。
もってのほか、「どうしたいの?」なんて聞かれたら何も言えなくなってしまうのだ。
親は子の悩みを聞くにあたって、比較的いい親であれば、子を理解しようとして、必ず『同情』をする。
言い方は悪いが、間違ってはないだろう。
同情なんてされたところで、それこそうつ病などの精神疾患になってしまった子にはなんの効果もないのだ。
少し気分が落ち着いても、結局繰り返す。
だから意味は無い。
親に話せと言うくらいなら精神科や心療内科、メンタルケアクリニック等へ連れていってくれた方が全然いいだろう。
話は変わるが、誰かの親をしている皆さん
これを見て、「同情」 って、なんだと思いましたか?
うんうん。
「理解してあげること」?
「寄り添うこと」?
「分かり合うとこ」?
、
、
、
、
ふーん。
それは、表向きの印象ではありませんか?
もっと詳しく言えば、
「周りから見た印象」
ではありませんか?
そりゃ、親が子供に同情している所を周りが見たら、「良い親だな」「良い親子関係だな」
と、思うに決まっていますよね。
対して、同情を受けてる側はどう思っているでしょうか?
僕の場合、こんなことを思います。
「僕の気持ちなんて分からないくせに」
「知ったようなこと言わないで」
「気持ち悪い」
「結局偽善者なんでしょ」
、
、
、
、
、
まぁ、これは僕の意見にすぎません。
みんながみんな、こんなひねくれた子供ではありません。
でもまぁ、
こんな子も少なからずいることを
大人はわかってあげるべきなのではないでしょうか。
本心を言われたら
「それは違う」と怒るくせに
同情されたら腹が立つ
じゃあなんて言われたいの?
…答えなんてない
自分が一番分かってる
自分に腹を立ててるんだよね
今ある問題を解決できるのは自分だけ
『同情』
どうしてこうなったのだろう。
皆が同情の目を向けているのが分かる。
私は教室でうつむいて座るしかなかった。
ことの発端は中学のクラス対抗球技大会の日。
私の大ミスで優勝を逃したのだ。
慰める友もいたが嫌みを言う人もいて
どうしていいのか分からない心情を
後日の作文にしたためた。
それを教育実習生が授業の題材に使いたいと言う。
とんでもない!と拒否したが
本人が分からないように配慮するの条件で
しぶしぶ承諾した。
ところが授業が始まると、作文の名前こそ読まないがそのままの文章に皆が私の方を向いた。
あれほど言ったのに、配慮も何も無いじゃないか!
それから1人づつの感想が続く。
目の前に本人が居るので、皆一様に頑張った
責められるものではないと言っている。
この流れだと最後は私だ。
皆の優しさが嬉しいですとでも言えば
きっと実習生は満足なのだろう。
「皆さんの言葉を聞いてどう思いましたか?」
案の定、最後に実習生は私に聞いた。
どう答えようか。
考えていると再度、どうですか?と促された。
私はゆっくり立ち上がると‥。
同情
自己憐憫に浸れるほど、私は私が好きじゃない
同情はいらない
ただ、放っておいてほしいだけ
私に興味のない人に同情されることほど
面倒なことはない
彼女の白く滑らかな肌に跡をつけた。
友人──彼女の夫はもうこの世にはいないのだから、忘れてしまえと。赤い印を身体中に散りばめて、喪った悲しみなど思い出さぬように。
そう、私への恨みで忘れてしまえ。彼女が救われるかはわからない。わからないが。私にはそれしかできなかった。
仄暗い私室、衣擦れとベッドの軋む音。絡み合う身体は汗でじとりと湿り気を帯び、吸い付いて離れるのを嫌う。
そうして月明かりの光だけで彼女が快感へ溺れる様を眺める。互いの体温を奥深くで感じ、何度も達した。卑猥な水音も彼女の喘ぎ声も、己を興奮させるものでしかない。
夫以外に許していない肌を食み味わい尽くすことは、なんと罪深く甘美なのだろう。想像できるか?一番の友人と豪語していた男がその妻を抱いている、この背徳感。
「──んぅ……ぁ」
振り絞るくぐもった矯声。快楽に堕ちぬよう必死に耐えている姿にますます情欲をそそられる。締まる感覚で絶頂を感じるとそのまま彼女に覆いかぶさった。
荒い呼吸を整える間も口づけて離さない。ぬめりと舌を絡ませ、まだ冷めない熱と共に弄んでいると、一筋の光が見えた。
彼女は泣いていた。
悦がって出た涙ではないことはわかる。まったくもって愚かしい行為をしたが、彼女の気持ちがわからない程愚かでもなかった。
彼女への同情、そして自身が友人を喪った悲しみから逃れるための過ちの夜──きっと私は生涯悔やみ忘れることはないだろう。
【同情】
同情なんかされても意味がない。
君が私のことを好きになってくれなきゃ。
「同情」
アナタが主人公ではないのに勝手に同情して主導権を握ろうとしないで、自分の物語のように話さないで、この人生は、この感情は私のものだ。
『同情』
孤児院に暮らす仲間のひとりが流行り病でこの世を去った。亡くなった子の実の兄は葬式の場では気丈に振る舞っていたが、その晩の夕食に現れず、みなで手分けして探すことになった。
ひとりで弟の後を追ったりしていないだろうかと嫌な胸さわぎを覚えながら心当たりをいくつか探し、どうにか見つけ出した彼は物置の片隅にひとり隠れて泣いていた。こちらに気付いた彼は一度は涙を拭ったが、おれが手を広げてやると飛び込んできていっそう泣いた。
おれは赤ん坊の頃に孤児院の前に捨てられていたので、おれにはきょうだいがいるかいないかもわからない。けれど仲間たちのことをきょうだいのように思って暮らしていたので、彼の悲しみはおれの悲しみだった。励ますようなことを何ひとつ言えないままに悲しくなって、ついには涙がこぼれてくる。
物置にひとりふたりと仲間が集まってくる。みなさめざめと泣いて彼が悲しいことを悲しんで、もう弟が帰ってこないことを悲しく思っていた。
同情されても嬉しくない
構わないであっちにいって
わたしのことなんか知らないくせに
差し出される手を振り払って
ありのままをぶつけたの
憎愛に混ざった貴方の顔
今でもそれが忘れられない
どうかわたしを許さないで
持たざる者たちのシンパシー(テーマ 同情)
1
中世ヨーロッパ「風」のどこかの世界。
私達が名も知らない王国の首都に、大きな貧民街があった。
貴族や市民階級が近寄らない、明日のことを考えられない貧民の街。
自警団はここには近寄らず、衛兵など輪をかけて近寄らない。
平穏や秩序を守るための手は届かないのか、そもそもないのか。
盗みや殺しがあっても放置される。そんな場所だ。
その貧民街に、一人の少年が生きている。
この街の多くの者が、気力もなく道端に座り込んだり、ボロボロな家に住んでいたりしたが、少年は街の端の場所に、一見簡素だが雨漏りをしない家に住んでいた。
少年は一人だ。親も兄弟もいない。
幼い頃、ここに少年を連れてきて、しばらく一緒に暮らしていた親代わりの男も、何年か前に殺されてしまった。
家はその男が建てたものだった。
男は頭が良かったのか、単に馴れ合いが嫌いだったのか。水場から遠く、街の端で森に近い場所に家を建てた。不便な場所に建てることでトラブルに遭いにくく、外見を良くしないことで家を奪われるリスクを減らした。
しかし、それは『実際に不便』ということで、少年は毎日遠くの水場から水を汲んでくることに時間を費やしており、少年は貧民街の中でも特に食べ物に困る人間のうち一人であった。
少年は日々、食べられるかわからないものを食べて、その日を生き延びていた。
2
貧民街の人間は、通常の街や街道に出ると、襤褸をまとっているため、すぐにそれとわかる。
旅人や街の庶民、めったに見ないが貴族などは、貧民を見ると視線だけ同情したり、あるいは忌避したりした。
その少年は、同情されるのが嫌いだった。
(奴らは悲しいふりをしているだけだ。実際に何をどうしようとも思っていない。できれば目に入らないでほしいとすら思っている。)
少年は気がつくと常に無表情で、自分にも他人にも無頓着になっていた。しかし、無頓着な一方で、奇妙な自尊心のようなものは持っていたため、同情というものを嫌悪していた。
それが、他の貧民と少年を分ける僅かな違いだったかもしれない。多くの貧民は同情の視線に慣れている一方で、『同情』というものを『する側』の気持ちはほとんど知らなかったから、嫌悪もしなかった。
同情されるのを嫌うのは、元々いた地位から転落してきた者だ。『自分はこんな目で見られる人間ではない』と思うから、同情されるのを嫌うのだ。
少年は、たとえその日、食べることができるかどうかわからなくても、着替える服がなくても、寝る場所が無くても、『どうせ一人で生きて、一人で死ぬのだ』と思っていた。
3
少年はある日、道端で倒れている少女を見つけた。
少女は貧民としてもかなり年季の入った襤褸、肌も汚く、髪もボサボサであった。
少年はどうか。
少年も襤褸を着ており、一見して貧民とわかる。しかし、水場から水を毎日瓶に長い時間を使って汲んできたり、体が痒くなると川まで行って水浴びをすることも多く、多少は見た目がマシであった。
少女は道端に倒れたまま、咳を繰り返している。病のようであった。
貧民街の道は狭い。横を通り過ぎようとしたが、少女に足を掴まれた。
「離せ。」
少年は、日課の水汲みの最中だった。遠い水場から水を桶に入れ、家まで持っていく。何度も繰り返さないと瓶には貯まらない。長い朝の労働だ。
蹴飛ばそうと思ったが、水の入った桶を抱えているのでやりにくい。
(こんなのがあるから、いい道は通りたくないんだ。次から遠回りするか。いや、これ以上水汲みに時間をかけたくない。)
「ゴホ、ゴホ。お願いです。み、水をください。」
少女は少年の足を両手で抱え込むようにつかんでいる。意外に力が強い。
「この水は俺が水場まで行って汲んできたものだ。俺がお前に水をやって、代わりにお前は俺に何をするんだ。」
言いながら、少年の心の何処かでチクリと刺すものがあった。
この少女は寝転んでいる。つまり立ち上がることも難しいのだ。
この少女だって、自分で水場に行けるなら行くだろう。
それができないから、こうして道端に倒れ、たまたま通った少年に懇願している。
(それでも、この調子で道行く奴らに欲しがるだけ水をやっていたら、俺は自分の水を永遠に家に持ち帰ることができない。)
「な、なんでも。ゴホ。このままでは、死ぬだけ、なので。」
咳をしながら少女はこちらを見た。
顔は体と同じく垢だらけで臭いもひどかったが、瞳は青く大きかった。
(意外に目が綺麗だ。)
いくつかやり取りをして、結局少年は少女に水をやり、空になった桶と少女を背負って家に帰った。
特に利益を見い出せたわけではない。
やり取りが面倒になったのと、自分が幼い頃、同じように助けてもらったことを思い出してしまったからだ。
4
少年の家で少女が暮らすようになった。
(といっても、主に寝ているだけだ。こいつ、水汲みとかしないし。)
少女はそもそも家から出て街の方へ行きたがらなかった。
しかし、毎日瓶の水を飲み、まずいながらも食べ物を食べ、体を拭くようにしたからか、しばらく経つと、体調は大分マシになり、立ち上がれるようになった。
少女は街には行きたがらなかったが、森には行っていたようで、よくわからない草などを持ってきて、少年の持ってきたこれまたよくわからない生き物や実を使って料理をした。
最初はまともな味がしないものや、二人とも食あたりを起こしたりもしたが、繰り返すうちに食べられるものと美味しいものがわかるようになったのか、『食べられるもの』になった。
(ゴミのようなものと雑草くらいしかないはずの貧民街で、まともな料理が食べられる。それだけでも拾ってよかった。)
一般的な料理と比べてどうかなど、少年にはわからなかったが、少女の料理は美味しいと思っていた。
少年と少女は、助け合うことができるようになり、二人とも、一人でいるときよりも生活が楽になった。
5
それからしばらく暮らしていたが、そのうち、少女の咳が止まらなくなった。
少年は気遣いを見せるが、少女から「自分が気遣われたときは同情で、自分が気遣った時は優しさ、なんて言わないわよね。」と言われた。
( つれない。)
少女はそもそも、料理を作るようになってから自分の意志というものをよく見せるようになっていた。
(そうだ。そもそも俺は同情が嫌いだった。)
少年は、少女からそう言われることで、かつての自分を思い出した。
6
そして、少女の症状が軽くなった頃、今度は少年が咳をするようになった。
少女から病が感染したのか、それとも、良くないものばかり口にして、身体がおかしくなったのかはわからない。
少年は咳をし始めてから、しばらく寝込み、逆に少女の看病を受けた。
嫌がっていた水汲みも、その日は少女がやった。
「ゴホ。俺は同情が嫌いだ。面倒なら放っておいてもいい。」
少女はボロ布を水につけて少年の額に乗せた。
「私はあなたに共感し、情をかける。あなたも私に共感し、情をかける。こうしていれば、私達は一人で生きるより強く生きていける。」
「単に、それだけのことよ。他人の同情を嫌い続けても、良いことなんてない。」
少年は、寝床でしばらく考えていた。
7
やがて、少年も少女も体調が回復した。
少年は、少女と助け合うことで、人の厚意を跳ね除けることはしなくなった。
(断っても損するだけだ。黙って受け取れる間は有り難く受け取る。それで恩着せがましく何か言ってくるなら、受け取らないまで。)
少年は少し、大人になった。
ふざけるな!
同情の言葉を吐いて、
心の隙間に付け入って、
散々甘やかして、優しくして。
心を許したところでこの仕打ちだ!!
こんな事なら、
こんな結末になるのなら、
あの時その手を取らなければ良かった。
出会いたく無かった。
知りたく、無かった。
愛したくなんて……
ああ……勝手に置いて逝くな……馬鹿野郎
テーマ『同情』
理解してほしいだなんてそんな贅沢言わないから
ただわたしの感情を認めてほしいの
#同情
「やっば、マジ最悪!ああーーー」
帰宅早々、「ただいま」もなく叫ぶJK
そりゃ、そうでしょうとも!
散々遊び倒し 一夜漬けではね…
遊びたい気持ちは同情できても
一夜漬けは…
コツコツ派からしたら 同情できないわ
#同情
敵とされる者にも人生というものがあり、哀しき過去があるときもある。
そういうときは同情してしまうが、それとこれとは別問題。
目の前で殺されそうな人を見て、それに同情して助けられるのなら、人としてそうすべきだろう。
だから僕はその人を助けると決めたんだ。
「同情」
あのとき私に向けられた
瞳の暗さにそぐわない笑み
初めて知った哀れみの色
「他人の、特に苦悩を、自分のことのように親身になって『共に感じること』が『同情』なら、
まさしく真の意味で同情できるのって、実は酷い花粉症なんじゃねぇかな、とか考えたのよ」
ネットに溢れる、事実とも虚構とも、あるいは販売促進を意図するだけとも認識可能な情報に、某所在住物書きは目を細め、ティッシュを1〜2枚。
北海道には天国があるという。スギとヒノキの自生しない、5月に少しシラカバが飛ぶ程度の天国が。
「やっぱさ、目鼻のつらさを知る同志だからこそ、花粉への怒りと怨嗟を燃やす同類だからこそ、『自分のこと』として、同情……」
同類だからこそ、上から目線でも下から目線でもなく、同じ位置から共感できるんじゃねぇかな。
物書きはため息を吐いた――釧路か。寒いかな。
――――――
前回の「枯葉」の投稿分から、まさかまさかの続き物。雨降る都内某所、某森深めの稲荷神社に、物言う不思議な子狐が、家族と一緒に住んでおりました。
昨日は子狐のお得意様、稲荷神社の参拝者さんから、おいしい雪中リンゴ約20個の差し入れ。
子狐には赤と黄色のリンゴの2種類にしか見えませんが、差し入れてくれた雪国出身いわく、赤3種類と黄色2種類、計5種類とのこと。
要するに都内価格4桁後半から5桁前半。コンコン子狐、よくよく覚えました。
なかなか美味しかったので、コンコン子狐、ご近所のガキんちょ呼びまして、つまり遊び仲間の化け猫と猫又と化け狸なのですが、
雨のしとしと歌う中、お茶会……もとい、緊急の極秘会談を開催したのでした。
「丁度良い茶飲み話、私仕入れてきたの」
猫又の雑貨屋の子が言いました。最近、「窓に貼るマスク」なる花粉症対策グッズが新入荷したそうです。
「私も途中から見たから、最初の方はよく知らないんだけどね。ともかく悪いお客さんのハナシ」
悪いお客さん。モンスターカスタマー。
和菓子屋の化け子狸と、惣菜屋の化け子猫、思い当たるところがあるらしく、身を乗り出します。
なんなら自分が遭遇したこと、対応したこともあるのです。その目は少し、同情に似ていました。
「私がお店に出た時には、もうアレだったの」
雑貨屋の子猫、ニャンニャン言いました。
「新入りのバイトさんが、チーフと一緒に対応してたわ。お店の中には、年配の常連さん3人と中年の良い冷やかしさんと、同じく中年のお得意さん」
で、初めて来たっぽいモンスターカスタマーさんが、値段が高過ぎるだの接客態度がおかしいだのって文句つけてたの。 子猫は付け足して、惣菜屋の化け子猫が持ってきた南国豚の焼き豚に、雪国の雪中リンゴのアップルソースを添えました。
「悪いお客さん、きっと自分の身の上話をしてたんだと思う。お金が無いとか、仕事が無いとか」
「うん」
「すっごく怒鳴ってて、すっごく大きい声だった」
「うん」
「悪いお客さん以外、全員シーンとしてた。みんなピリピリして。で、お金とか仕事とか無いっぽいその悪いお客さん、早口でバイトさんに怒鳴ったの。
『同情するより金よこせ』って。
バイトさん、◯◯よこせしか、聞き取れなかったんだと思う。きっと商品購入と勘違いしたのね。
『カードでしょうか現金でしょうか』だって。
……途端に年配の常連さんも中年のお得意さんも爆笑しちゃって、『名台詞が台無し!』って。
居心地悪くなった悪いお客さん、『SNSで叩いてやる』って、スゴスゴ帰ってった」
「ゴメンよく分かんない」
「大丈夫私も分かんない。でも帰ってった理由をクイズにすれば、そこそこ良い茶飲み話になるでしょ」
なんでだろう。雑貨屋の子猫が焼き豚をかじります。
なんでだろうね。惣菜屋の子猫が焼き豚に、アップルソースを追加してやります。
コンコン子狐、和菓子屋の子狸が淹れてくれるお茶のおかわりが欲しくて、子狸を見ますと、
ポンポコ子狸、クイズの答えを知ってるようで、モンカスさんへの哀れむ同情とも、常連客への笑う共感ともとれる顔して、数度、頷いておったのでした。
「うん。……うん」
ポンポコ子狸、子狐にだけ聞こえる声で言いました。
「『同情するなら』『カードですか』。現代的……」
同情
ぼくがどんなに苦しんだかを
知っていれば君は同情するだろうに.
彼女は何にでも同情する人だ、
雪瀬
「ねえ、私と一緒に死んでよ。」
幼馴染の千帆にそう頼まれたのは、今にも雪が降り出しそうな寒い日だった。
今は学校も離れて疎遠になりつつあったけど、目の前に現れた彼女を見れば、その言葉の理由は察するに余りある。
制服のスカートから覗く千帆の脚には、傷があった。痣があった。タバコの跡のようなものがあった。
そして何より恐ろしいのが、首にうっすらと赤く残った圧迫の跡だ。
「…私が無口だから、大人しいから、抵抗しないから、みんな私には何しても良いと思ってるんだ。このままじゃ、いつか殺される。だからその前に、唯一信用できる相手と逃げたい。一緒に死にたいの。」
彼女の声と、暗闇に閉ざされた瞳が、震える。取り乱しているのかと思ったら、千帆は冷静に僕の返答を待っていた。まるで、幼馴染の無理な頼みに対してどんな反応をするのか、試されているみたいだった。
「…いいよ。死ぬか、一緒に。」
僕がそう答えると、千帆は黒い目を見開いた。僕の返事が意外だったようだ。自分から言い出したくせに。
「僕が一緒に死んであげる。本当にその気があるなら、いつだって。」
今は、君が欲しい言葉をあげる。たとえ嘘でも。思ってもいないことでも。
君が、可哀想だから。