『同情』
孤児院に暮らす仲間のひとりが流行り病でこの世を去った。亡くなった子の実の兄は葬式の場では気丈に振る舞っていたが、その晩の夕食に現れず、みなで手分けして探すことになった。
ひとりで弟の後を追ったりしていないだろうかと嫌な胸さわぎを覚えながら心当たりをいくつか探し、どうにか見つけ出した彼は物置の片隅にひとり隠れて泣いていた。こちらに気付いた彼は一度は涙を拭ったが、おれが手を広げてやると飛び込んできていっそう泣いた。
おれは赤ん坊の頃に孤児院の前に捨てられていたので、おれにはきょうだいがいるかいないかもわからない。けれど仲間たちのことをきょうだいのように思って暮らしていたので、彼の悲しみはおれの悲しみだった。励ますようなことを何ひとつ言えないままに悲しくなって、ついには涙がこぼれてくる。
物置にひとりふたりと仲間が集まってくる。みなさめざめと泣いて彼が悲しいことを悲しんで、もう弟が帰ってこないことを悲しく思っていた。
2/21/2024, 4:19:26 AM