彼女の白く滑らかな肌に跡をつけた。
友人──彼女の夫はもうこの世にはいないのだから、忘れてしまえと。赤い印を身体中に散りばめて、喪った悲しみなど思い出さぬように。
そう、私への恨みで忘れてしまえ。彼女が救われるかはわからない。わからないが。私にはそれしかできなかった。
仄暗い私室、衣擦れとベッドの軋む音。絡み合う身体は汗でじとりと湿り気を帯び、吸い付いて離れるのを嫌う。
そうして月明かりの光だけで彼女が快感へ溺れる様を眺める。互いの体温を奥深くで感じ、何度も達した。卑猥な水音も彼女の喘ぎ声も、己を興奮させるものでしかない。
夫以外に許していない肌を食み味わい尽くすことは、なんと罪深く甘美なのだろう。想像できるか?一番の友人と豪語していた男がその妻を抱いている、この背徳感。
「──んぅ……ぁ」
振り絞るくぐもった矯声。快楽に堕ちぬよう必死に耐えている姿にますます情欲をそそられる。締まる感覚で絶頂を感じるとそのまま彼女に覆いかぶさった。
荒い呼吸を整える間も口づけて離さない。ぬめりと舌を絡ませ、まだ冷めない熱と共に弄んでいると、一筋の光が見えた。
彼女は泣いていた。
悦がって出た涙ではないことはわかる。まったくもって愚かしい行為をしたが、彼女の気持ちがわからない程愚かでもなかった。
彼女への同情、そして自身が友人を喪った悲しみから逃れるための過ちの夜──きっと私は生涯悔やみ忘れることはないだろう。
【同情】
2/21/2024, 4:52:41 AM