友だちの思い出』の作文集

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友だちの思い出』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

7/7/2024, 6:50:47 AM

作者の自我コーナー番外編


小学生の頃、私の全ては友だちでした。まだ趣味も何も持っていない頃、私には友だちしかありませんでした。
ひょうきんな子でした。勉強が苦手で、かと言って運動が出来るわけでもなく、可愛いわけでもない。
カーストで言うと下の中くらいの位置の子。

でも愚かな私にはあの子がすべてでした。
あの子に新しい『お気に入り』が出来たら、酷く焦りましたし、その『お気に入り』がどれだけ私に懐いてきても疎ましくて仕方がありませんでした。
今でもその子は私を慕ってくれるのですが、幼い私には見る目がありませんでした。大嫌いでしょうがなかった。
あの子を私から奪うそれが。

私の学校生活はあの子の機嫌を損ねないようにするというミッションだけで成り立っていました。拗ねると面倒くさいから。
よく回る口で詰ってくれたらいいのに、あの子は口を閉ざすのです。そうして周りの子と示し合わせたように私の存在を教室から消去するのです。
人を居ないものにするのが上手な子でした。ちょっかいを出してみても、目の前に手をチラつかせてみてもなーんにも反応しませんでした。
そうしてしばらく透明人間になった私をいきなり見つけてくれるのもあの子でした。私の存在の有無はあの子の気まぐれ。

2度大きな喧嘩をしたことがあります。と言ってもやっぱり一方的に存在を消されただけなのですが。
2週間ほど私は授業中以外は透明人間でした。でも運動会の練習中コケて、血だらけになった私にあの子は真っ先に近づいてくれました。
喧嘩は有耶無耶になって、またいつも通りに戻りました。それが良くなかったのかもしれません。
私とあの子は一度も向き合うことが出来なかったから。
2度目の喧嘩のときも同じように私は怪我をしました。
別に、故意にした訳ではありません。でも、駆けつけてくれたのはあの子じゃなくて、疎ましくて仕方なかったあの『お気に入り』でした。
それから私はあの子の視界から消えたまま。同じように『お気に入り』もあの子の視界から消え、私の元に来てくれました。

でも、私が欲しかったのは。



未だに同じ名字や名前の子に出逢うと身体が強ばります。
人を信用するのが怖くなりました。心の内を見せられなくなりました。あの頃馬鹿みたいにさらけ出していた心の内を今度は馬鹿みたいに頑丈な檻に仕舞い込むようになりました。

なのにあの子、人の気持ちが分かるようになった。って
じゃあ私は人じゃなかったのかもしれない。



これが私の最初で最後の『友だちの思い出』です。

7/7/2024, 6:19:25 AM

『友だちの思い出』

私の友人は、それはそれは本が好きで、結婚するときに「本でいっぱいの式にしたい」と言い出しました。

まず、ホテルの小規模バンケットルームに大量の本を持ち込んで並べ、各テーブルの上には招待客一人一人に合った本の一節をウェルカムカードで配置しました。

新郎新婦の生い立ちではそれぞれの読書遍歴を語り、ふたりの出会いの再現ビデオは書店で本を取ろうとして意図せず指が触れ合って……というもの。

親類や友人のスピーチは、各自お気に入り本のオススメトーク。
ケーキ入刀の代わりに、新郎新婦イチオチの本に栞を挟みました。

ブーケトスは、小さめで当たっても痛くない本をトス。受け取った人は「読んだことない本だ」と、ちょっと嬉しそうでした。

クライマックスの両親への手紙では、友人が今まで読んだ本の中から選りすぐりの《感動的な文章》を読み上げ、ご両親は苦笑しながらも涙ぐんでいらっしゃいました。



…………なんてね、そんな友だちいないんですけどね。

7/7/2024, 6:08:03 AM

「ねえねぇ、りっちゃん」
「なあに?」

私は休み時間、友達のかよに話しかけられた。

「今度の日曜日にある、祭りで一緒に回らない?」
「いいよ、私も暇だったし」

来週日曜日は地域の祭りがある。様々な露店が立ち並び観光客も多く来る祭りだ。
私はその日は誰かと行きたいなと思っていたので好都合だった。
私たちはその日の予定を話し合っていたら休み時間が終わりそうだった。

「じゃあ、また日曜日に」
「うん、またね」

7/7/2024, 5:53:59 AM

友だちの思い出
私にはぬいぐるみや物語以外に数少ない友だちがいる

友だちと言っても、私の部屋から見える景色にやってくる彼と話すだけなのだが

それでも私にとっては唯一の友だちと言ってもいいくらいかけがえのない存在

7/7/2024, 5:51:51 AM

私の友達の思い出は、いっしょに、お泊まり会をした事です。楽しかったです

7/7/2024, 5:48:13 AM

【思い出は還らない】

あの時、埋めた宝箱をひとりで掘り返す
箱を開けると懐かしい香りのする品々と共に
一緒に開けようと約束した君から
未来の僕に宛てた手紙
それがほろ苦くて
滲んでなくなってしまいそうな視界を
繋ぎ止めるようにぐっと力を込めた_

/友達の思い出

7/7/2024, 5:38:20 AM

だきしめて

ほしがもえるまでに

花瓶にふうじこめた珊瑚礁

かみさまにあそんでもらって

咲いたら割って

遠すぎて会えないくらい

宇宙をひとたびおわらせても

ともだちよ

森でめざめたら

泣くような生きものだから

物語ではなく

現実のなかにいるのよ

静かな日曜日

コンクリートの都市

ふやけてしまいそうな暑さ

わたしは部屋で

恥ずかしいことをして

気持ちがいいから

何もかも忘れてしまったかみさまに

なったんだよ

あなたがしんでも

いきても

うまれたくは

なかったんだよ

#友だちの思い出

7/7/2024, 5:31:04 AM

友だちの思い出


引越しの準備をしていたら。
クローゼットの奥から懐かしいアルバムが出てきた。

「あ、これ、こんなとこにあったんだ」

うわぁ、懐かしいなぁ、なんて。
俺がアルバムを捲り始めると。

隣の部屋の物を整理していた彼が、こっちにやってきて。

「へぇ、懐かしいじゃん」

俺にも見せて、と。
彼が俺の隣に座った。

そして、一緒にページを捲り。
俺と彼は、学生時代を振り返った。

「あ、これ、修学旅行の時のだよな?」

そう、彼が指差したのは。
自由時間を一緒に行動したグループでの写真で。
その中で、俺と彼は特にピッタリとくっついて写っているから。

「この時って、俺達まだ友達だったよね」

「あぁー、そうだよ。確か、この日の夜に、俺がお前に告白したんだし」

「そっかぁ。それじゃ、この写真が友達だった時の最後の写真だったんだね」

「まぁな。けど、こんだけくっついてりゃ、今と変わんないけどな」

確かに、それはそうだ。
友達にしては、距離が近過ぎるもんな。
なんて、俺が笑ってしまうと。

「なぁに、笑ってんだよ」

と、彼に緩んだ頬を指で摘まれる。

「んー?俺達って、友達の頃と距離感変わらないんだなぁって思ってさ」

「そうかぁ?それはちょっと違うんじゃない?」

え?なんて。
さっきは彼からそう言っていた筈なのに、と。
俺が首を傾げて、彼を見つめると。

ニヤリと笑った彼の顔が近づいてきたかと思ったら。
ちゅっと、俺の唇にキスを落とした。

そして。

「友達じゃ、こんなことしないだろ?」

と、真っ赤になった俺の顔を見て。
満足そうに、彼は笑った。


                    End

7/7/2024, 5:30:55 AM

これは私の記憶にある
友達の思い出だ
ある友達は病弱で病室で
寝たきりの子だった
初めて会ったのは2ヶ月前
その友達が倒れてしまったのを
助けたきっかけ。同い年で
趣味も似ていたので
友達になった。
最初は乗り気ではなかったが
話してみるととても楽しかった
トランプやあやとり、折り紙などで
遊んでいた。
でもその楽しい時間はあっという間に
散っていった。
その友達が心臓病で死んだのだ
私は泣き叫んだ、やっと親友が出来た
みたいな生きがいだった。
その友達の思い出を振り返り
今、私は自○しようとする前だ
「○○今、そっちに行くからね…。」
そのまま私は意識がなくなり目を閉じた
再び目を開けるとそこには親友の○○が
立っていた。
「これからも○○と遊べるよ。」
と言った。

【切ない親友と私】BADEND

7/7/2024, 5:13:17 AM

友だちとの思い出は遥か彼方、けれど確かにここに在り消えることはない。

7/7/2024, 4:56:54 AM

〈お題:友達の思い出〉ー評価:良作


彼は夢中で走った。

今年の大会で優勝すると豪語した彼は、1日たりとも練習を休む事はなかった。

大会当日。
参加賞を携えた彼の薄ら笑いを収める。
彼の青春の一幕は、確かに見届けた。

7/7/2024, 4:40:02 AM

『友だちの思い出』

毎日のように顔を合わせていた同級生とは進路が分かれたことで会う約束をしていても年に2回ほどしか会わなくなった。夏はこちらから、冬はあちらからと連絡をすると分担を決めて、会えば積もる話と何度話したかもわからないふたりの思い出話をしてはあの頃と本質が変わっていないことに少し安心する。そんな仲だった。学生だった期間より社会人になった期間のほうが長くなったにもかかわらず、いまだに同じようなやり取りを続けている。
今年も夏の盆休みが近づいて、家族や同僚にどこかいい店を知らないかと聞いて回る。その人のこと、だいぶ好きなんですね、と後輩からはからかわれ、私とのデートより気合い入ってるよね、と妻からは呆れられる。言われたことをそれぞれ改めて考えてみると実際そうかと自分の行動に少し驚く。
「うん、けっこう好きかもだな」
「だって、君より長い付き合いだから」
後輩からはちょっと引かれ、少し機嫌の悪くなった妻からはさらに呆れられた。
暑い日の続くさなかに同級生に店が決まったとメッセージを送る。ほどなく返ってきた短い返信とスタンプにその日を心待ちにする胸がそわそわとし始めた

7/7/2024, 4:37:41 AM

「ねえ、ウチら今星の上歩いてない?」
「はぁ? ぽよ何言ってんの?」
「暑さにやられたんだよ、ぽよは」
「ちげえよ、よく見ろよ下!」
「下ぁ? あ」
「星は上じゃない? あ」
「さっきまで雨降ってたじゃん? 街灯がさ、濡れた道路に反射して、超キラキラしてない?」
「あーね」
「確かにキラキラしてる」
「星空みたいじゃない!?」
「まぁ、言いたいことは分かるけども」
「星……星かこれ」
「星だよ! もうここまできたら天の川っしょ!」
「天の川!?」
「天の川は失礼すぎてマジウケる!」
「やばくない? 海水浴先取りって感じ?」
「アハハッ! 川なのに海水浴!?」
「キャハハッ、なら水着着てこいし!」
「ていうか今年海行く?」
「行くに決まってんじゃん」
「海とプールと夏祭り、あと花火大会と温泉旅行」
「マジ金足りないんだけど」
「何言ってんの? 約二ヶ月もまとまった休みがもらえるの、今年が最後っしょ」
「就活、卒業制作。色々あるけど遊ばないと!」
「あー、マジかー。バイト増やそう」


『友だちの思い出』
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駄弁っている時が楽しいのは私だけだろうか。

7/7/2024, 4:24:26 AM

青空の
下で笑って
顔合わせ
何でも笑える
私と君

文豪の
話をしては
ぶつかって
笑顔で論争?
上等だ

私は文豪が好きなんですが友達の影響なんですよね。
その友達と文豪について論争(?)をしてます。
メチャ楽しい。

7/7/2024, 4:20:52 AM

友達にもらった年賀状、引っ越しの時にやっぱり整理しきれなくて写真を撮っておいた。
データを整理している時にふと見つけたんだ。
今疎遠になっている人に、送ったらどうなるのかな。
と、今特に親しい友達もいない私は思ってしまうんだ。

7/7/2024, 4:18:50 AM

七夕の今日にこのお題か〜〜〜
思い出すのは縁がとうに切れた友人ですね
綺麗な思い出ばっかり。帰り道に寄った和菓子屋さんとか、初めてギューって抱きしめあった日とか。私からすればね。
あの子からしたら嫌なものばかりになってるんだろう。人生において負の面になってしまった私が会うことは許されないだろうけど、願う位はいいんじゃないですかね、やっぱ駄目かな。
七夕と言えば何があるだろ、願い事はやっぱ無しで、それっぽいことしたいな。

7/7/2024, 4:17:20 AM

友達の思い出

私は中高一貫校に通ってる、地元から離れている学校

中学受験をしたから小学校の友達とはあんまり遊べなかった。勉強が忙しくて。

でも思い出はある。運動会に学習発表会、修学旅行、バザー、自然教室、社会科見学。どれも楽しかった。


そんなこんなで付属の高校へ内部進学。元々一貫生の数は少なめだし、外部進学の方が多い学校。

中高じゃ校舎が違うから、高校一年生になったときには、高校棟での新たな生活を楽しみにしていた。

高校の入学式。私は生徒代表挨拶をした。



その2日後、4つぐらいクラスの離れた子が、教室に来た。廊下にいたクラスメイトが、〇〇ちゃんに会いたいんだって!と声をかけてくれた。

なんだろう、そう思いながら恐る恐る廊下へ歩みを進める。

そこには、小学校の頃の友達がいた。



思わず抱きしめた。気がついたら抱きしめていた。

遠くの学校へ進学した私は、もう二度と友達と会えないと思っていたから。

ずっと廊下で立ち話をしていた、まだ少し肌寒い、春の風の中。

思い出の蓋を開けて。

二度と会えないと思っていた、友達との思い出の蓋を



2024/7/6

7/7/2024, 4:15:56 AM

「あのな。全員が全員、友人がいると、思うなよ」
ぼっち万歳。19時着の題目を確認した某所在住物書きは、開口一発、孤独への讃歌を呟いた。
「『自分の』、自分と友達との思い出。無い。
『友達の立場からの』、友達の思い出、
あるいはその友達が所有している思い出。知らん。
女友達だの男友達だの、『恋人未満』あるいは『フられて友達に戻った相手としての』、思い出。
……ぼっち万歳」

ところで、本来存在しない筈の「思い出」を、事実として存在したようにガチで錯覚させる、「虚偽記憶」を作成することは可能だそうだな。
物書きはハタと閃き、「友達に虚偽の思い出を植え込む」物語を考えて、結局諦めた。

――――――

最高気温が体温どころか、微熱レベルに到達する予報の都内某所、某アパートの一室、昼。
部屋の主を藤森といい、遠い雪国出身の上京者。
今日も明日も冷房きかせた室内で籠城の予定で、白い甚平に身を包み、室内にひとつ風鈴を飾っている。
チリン、 チリリン。 エアコンの首振り送風によって揺れるガラスは多分冷涼な響き。外は地獄。

ところで近所の稲荷神社在住の子狐が、藤森の部屋をクールスポットか何かと勘違いしている。
くわわ、くわぁ、くわうぅ。
某最高品質のヒンヤリN冷涼ベッドに陣取り、
それはそれは、もう、それは。幸福に寝言など鳴いて狐団子を形成し、時折寝ぼけてタオルケットを毛づくろいしようとペロペロ。
コンコン子狐は夢の中。涼しい朝霧の中で寝転がり遊んだ去年、友だちの思い出の中に居るのだ。

「そういや藤森。去年のアレ、まだ貰ってないぞ」
その涼しい室内へ遊びに来たのが藤森の親友。
宇曽野である。土産にコンビニアイスを持参した。
ニヤリイタズラ顔で、右手を差し出し、ちょいちょい人さし指を振って何かを催促している。

「『去年のアレ』?」
藤森は宇曽野の申し出に首を小さく傾けた。
世話好きな宇曽野からはよく助けられているので、藤森は彼との借りと貸しの収支が時折分からなくなる――心当たりがあり過ぎるし、返礼済と未済の時系列が記憶内メモを読み込まなければ迷子なのだ。
「去年のアレとは?」

「今頃の『賭け』のハナシだ。例の『星空』の」
「ほしぞら?」
「青い池。白い雨粒が水面に落ちて星空。その絶景の名前を言い当てられるかどうか」
「『それ』はお前との賭けではない」
「お前のとこの後輩とはしただろう。コーヒーとアイス代。チャンスは3回。思い出したか?」
「彼女は当てられなかった」

「俺は当てたぞ」
「当たり前だ。数年前にお前と行ったんだから」

「……懐かしいな。夏の雪国」
自分が買ってきたアイスのカップを、ポン。
ひとつ藤森に投げ渡して、宇曽野が言った。
「青い池と、デカい岩の海岸と。海は波が岩と岩の隙間を叩いて、間欠泉のようになってた」

「私が何度も『濡れるぞ』と忠告したのに、面白がって覗いて。間欠泉の直撃を食らったのがお前だ」
カップを受け取った藤森がチラリ冷涼ベッドを見ると、寝ていた筈の子狐の姿が無い。
それもそのはず。自慢の耳と鼻と本能とで、アイスの存在を感知したのだ。
藤森の足元で、行儀よく「おすわり」をして、尻尾をブンブンのビタンビタン。目をダイヤモンドレベルに輝かせている――「こぎつね。お前のじゃないぞ」

「俺だけ完全に、びしょ濡れになってな。お前が車にバスタオルと着替えを積んでいたから助かった」
「どうせやらかすだろうと思ったんだ」
「お前にはあの日、随分世話になったなぁ」
「行動的過ぎるお前をカバーする私の身にもなれ。
あの冬もそうだった。船の上で女の子の飛んだ帽子を取ろうとして海に落ちかけた。私の実家では庭の雪にダイブして、その雪の上に2階からも、」
「2階からのダイブはお前もガキの頃やったんだろ。俺はお前の思い出を真似しただけだ。『ここは冬ともかく大量に雪が積もるから』と教えてくれたのは」
「だ、ま、れ」

はっはっは!軽く笑い飛ばす宇曽野は、それから穏やかにひとつ、ため息を吐いてアイスを食う。
「藤森」
ぽつり、宇曽野が親友を呼んだ。
呼ばれた方は、「友だちの思い出」のドタバタ道中のアレやコレに言及しようと視線を合わせるが、
途端、視界から外れた己の膝に重量を感じた。

「藤森。あのな」
宇曽野が言った。
「早く食わないと、多分食われるぞ」
膝の上に居たのは藤森のアイスを狙い口をあんぐり開けて体と前足を伸ばす子狐で、
藤森は慌ててカップとスプーンを天井に掲げた。

7/7/2024, 4:07:05 AM

さっちゃんは特別な男の子が好き

 頭が良い坂口くん。サッカーのうまい大倉くんに、楽器が得意な神崎くん。何かの大会で賞を取ったなは、伊藤くんだったかな。どの子も何かに秀でていて、普通の子とは違う特別な男の子。

 さっちゃんは普通の子。普通に可愛くて、普通の身長で、普通に優しい子。強いて言うなら、さらさらのロングヘアーは素敵。それを括ったポニーテールが揺れる姿を見ると、私の胸はいつもざわついてしまう。

 さっちゃんは奥ゆかしい。いつも気になる男の子たちのことを、彼女は目で追っているだけ。話しかけもしない。関わりもしない。「それで良いの?」って聞いたことはあるけど彼女は笑うだけ。「いいの、それだけで良いことがあるから」、そして彼女は笑うだけ。不満そうな表情一つ見せない。

「さっちゃん」
「なに、みなみちゃん」
「坂口くんと付き合うことになったの」

 すると、さっちゃんは大きく目を見開いて、ふんわりと笑む。涼しげな目元を柔らかく細め、私を見つめてくれる。

「おめでとう、みなみちゃん」
 
 心底喜んでいると言いたげな彼女は、いつだって私の幸せを祝福する。本当に?嬉しいと思ってる?私はさっちゃんの好きな人と付き合ったのに。

 ふぅん。
 坂口くんへの気持ちが一気に萎んでいく。しばらく彼氏と一緒に帰ると伝えると、「わかった」と返す聞き分けの良い友達を、私は嫌いで仕方がない。

7/7/2024, 4:03:11 AM

クーラーの効いた車のなか、私はまどろんでいた。
光と陰が降り注ぎ、心地よさにいつの間にか意識を手放していた。

遠くではしゃぎ声と叫び声が聞こえる。
私はどうしてここにいるんだっけ?
「ターッチ」
あ、そうだ鬼ごっこしていたんだ。休み時間の校庭で、クラスメイトの子たちと一緒に。
ずいぶん彼らと離れてしまった。少し戻ろう。
歩き出したときに、なにかが動く気配がしてそちらを振り向く。
なにかいる。なんだろう。そーっと近づいていく。
逆上がりの補助板のうら、そこに彼女はいた。
彼女は小さな世界をつくっていた。葉っぱのテーブルに、小枝のソファー、どんぐりの住人。
「わあ、すごい」
彼女は肩を揺らしていた。驚かせたことを謝り、
「私も一緒に遊んでいい?」
そうお願いした。彼女はコクンと頷く。
彼女はすごく無口で、だけどとても優しかった。
それから私は休み時間の度に彼女に会いに行った。雨でなければいつも彼女は補助板のうらで遊んでいた。そして私は毎回そこにお邪魔していたのだ。
それが彼女との思い出だった。

「おーい、ついたぞ」
父に起こされ、私は伸びをした。
車内から出れば太陽が照りつけた。私は手庇をつくる。
祖母の家はやたら広い。その廊下を歩いているとがさがさと音がした。半開きになった襖から首をのばす。
広がるのは小さな世界。木製のテーブルに、木製のイス、多種多様のぬいぐるみたち。
私はなつかしさに目を細めた。

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