わをん

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『友だちの思い出』

毎日のように顔を合わせていた同級生とは進路が分かれたことで会う約束をしていても年に2回ほどしか会わなくなった。夏はこちらから、冬はあちらからと連絡をすると分担を決めて、会えば積もる話と何度話したかもわからないふたりの思い出話をしてはあの頃と本質が変わっていないことに少し安心する。そんな仲だった。学生だった期間より社会人になった期間のほうが長くなったにもかかわらず、いまだに同じようなやり取りを続けている。
今年も夏の盆休みが近づいて、家族や同僚にどこかいい店を知らないかと聞いて回る。その人のこと、だいぶ好きなんですね、と後輩からはからかわれ、私とのデートより気合い入ってるよね、と妻からは呆れられる。言われたことをそれぞれ改めて考えてみると実際そうかと自分の行動に少し驚く。
「うん、けっこう好きかもだな」
「だって、君より長い付き合いだから」
後輩からはちょっと引かれ、少し機嫌の悪くなった妻からはさらに呆れられた。
暑い日の続くさなかに同級生に店が決まったとメッセージを送る。ほどなく返ってきた短い返信とスタンプにその日を心待ちにする胸がそわそわとし始めた

7/7/2024, 4:40:02 AM