さっちゃんは特別な男の子が好き
頭が良い坂口くん。サッカーのうまい大倉くんに、楽器が得意な神崎くん。何かの大会で賞を取ったなは、伊藤くんだったかな。どの子も何かに秀でていて、普通の子とは違う特別な男の子。
さっちゃんは普通の子。普通に可愛くて、普通の身長で、普通に優しい子。強いて言うなら、さらさらのロングヘアーは素敵。それを括ったポニーテールが揺れる姿を見ると、私の胸はいつもざわついてしまう。
さっちゃんは奥ゆかしい。いつも気になる男の子たちのことを、彼女は目で追っているだけ。話しかけもしない。関わりもしない。「それで良いの?」って聞いたことはあるけど彼女は笑うだけ。「いいの、それだけで良いことがあるから」、そして彼女は笑うだけ。不満そうな表情一つ見せない。
「さっちゃん」
「なに、みなみちゃん」
「坂口くんと付き合うことになったの」
すると、さっちゃんは大きく目を見開いて、ふんわりと笑む。涼しげな目元を柔らかく細め、私を見つめてくれる。
「おめでとう、みなみちゃん」
心底喜んでいると言いたげな彼女は、いつだって私の幸せを祝福する。本当に?嬉しいと思ってる?私はさっちゃんの好きな人と付き合ったのに。
ふぅん。
坂口くんへの気持ちが一気に萎んでいく。しばらく彼氏と一緒に帰ると伝えると、「わかった」と返す聞き分けの良い友達を、私は嫌いで仕方がない。
7/7/2024, 4:07:05 AM