友だちの思い出
引越しの準備をしていたら。
クローゼットの奥から懐かしいアルバムが出てきた。
「あ、これ、こんなとこにあったんだ」
うわぁ、懐かしいなぁ、なんて。
俺がアルバムを捲り始めると。
隣の部屋の物を整理していた彼が、こっちにやってきて。
「へぇ、懐かしいじゃん」
俺にも見せて、と。
彼が俺の隣に座った。
そして、一緒にページを捲り。
俺と彼は、学生時代を振り返った。
「あ、これ、修学旅行の時のだよな?」
そう、彼が指差したのは。
自由時間を一緒に行動したグループでの写真で。
その中で、俺と彼は特にピッタリとくっついて写っているから。
「この時って、俺達まだ友達だったよね」
「あぁー、そうだよ。確か、この日の夜に、俺がお前に告白したんだし」
「そっかぁ。それじゃ、この写真が友達だった時の最後の写真だったんだね」
「まぁな。けど、こんだけくっついてりゃ、今と変わんないけどな」
確かに、それはそうだ。
友達にしては、距離が近過ぎるもんな。
なんて、俺が笑ってしまうと。
「なぁに、笑ってんだよ」
と、彼に緩んだ頬を指で摘まれる。
「んー?俺達って、友達の頃と距離感変わらないんだなぁって思ってさ」
「そうかぁ?それはちょっと違うんじゃない?」
え?なんて。
さっきは彼からそう言っていた筈なのに、と。
俺が首を傾げて、彼を見つめると。
ニヤリと笑った彼の顔が近づいてきたかと思ったら。
ちゅっと、俺の唇にキスを落とした。
そして。
「友達じゃ、こんなことしないだろ?」
と、真っ赤になった俺の顔を見て。
満足そうに、彼は笑った。
End
7/7/2024, 5:31:04 AM