『半袖』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ね、知ってた?
あの日、何度も何度も忘れたフリして集合場所と時間を聞いたのは、君が好きだったからだよ。
「団長っていっつもその格好だよね。」
オレは隣で歩いている白い燕尾服の男に言う。
「そうですね。これ以外に服ないんですよ。」
ニコッとこちらを見る。年齢に見合わない幼い笑顔は今日も健在だ。
「え?まじ??」
「はい。」
…これは本当なのか?それともちゃんと嘘か?この人は本気も冗談も同じ口調で言うのでわかりずらい。
「なんで?買わないの?お金ないの?俺たちの上司のくせに????」
「お金ならありますよ。ただ必要がないだけです。この服がいちばんしっくりくるんですよ。ほら、あなたも制服ばかり着ていると私服選びが億劫になるでしょ?」
「確かに…」
これはガチのやつらしい。
「団長」と呼んでいる彼はオレが所属するヒーロー事務所の「キーパー」。簡単に言うと上司だ。彼は団長という呼び名らしく、初めて会った時からサーカスの団長みたいな服を着ている。
今日は団長に誘われて買い物に付き合っている。と言ってもお店に入って見るだけで何も買いやしない。手ぶらで店を出る時の申し訳なさや怪しさ満点さを感じているのはオレだけのようだ。
「歩き続けると疲れるものですね。そうだ。いつものカフェに行きましょう。」
気分が乗ったのか軽くスキップをしてオレの前を歩く。オレに拒否権ないようだ。
「気まぐれだなーうちの団長は。結局なんも買ってないし。」
つい愚痴っぽく言ってしまう。まあ鈍感な人なので良いだろう。
なんて思っていると前の長髪男はスキップをやめて振り返る。嫌に綺麗な碧眼と目が合う。
「買い物はあなたを誘うための言い訳です。今日の本命はネタ探しですよ。おかげでまた色んなとこを知れました。ありがとうございますね。」
団長はニコニコというオノマトペが似合う顔をする。何も買っていないのにやけに満足げなのはそういうことか。ついでにオレを誘えば色々説明してくれるだろうとか思ったのだろう。
ネタ探しというのは彼の劇団の台本のとこだろう。団長は劇団の長でもあり、オレ達ヒーローのキーパーでもある。本人曰く、劇団が本業でキーパーは副業らしい。逆にする気はないようだ。
「団長って外国人だっけ?外国にも服屋とか花屋とかあるでしょ。」
「はい。ありますが、私の故郷にあった店とは全く違います。この国は本当に豊かですね。」
心からそう思っているのだろう。しみじみとした顔をしている。
「団長がこっち来たのって何年前?日本語普通にうまいよね。カタコト微塵もないし。」
「2年前の冬でした。こっちに来る前から言語だけは勉強させられていたので喋れますね。ちなみに副団長とダイスケもですよ。」
再び2人で並んで歩く。
足は無意識にカフェの方へと進んでいる。
「オレ副団長に未だにあったことないんだけど。」
「彼は多忙ですからね。台本作りに会計処理、ヒーロー事務所の運営などなど。やることがいっぱいです。彼、仕事人間なんですよ。」
呆れて苦笑しているがヒーロー事務所の運営はあなたの仕事では??と心でツッコんで言わない。
まぁ、上司がこれだ。副団長は仕事人間にならざるを得なかったのだろう。会ったことがなければ顔も知らない副団長の苦労がこちら伝わってくる。
「ダイスケさんもヒーローのくせにぶっきらぼうだよね。知ってる?事務所で最初に帰るのはダイスケさんなんだよ?」
「彼は昔からそうですから。安心してください根はちゃんとヒーローです。私が保証しましょう。」
その保証、信用できないな。昔からそうだと言われてもな。
ん?てか待てよ?
「ダイスケさん外国人??」
「はい。先ほどもそう言いましたが。」
「ダイスケって名前のくせに??」
「……」
団長の歩調が早くなる。こいつ、何か隠してる。
「そうだ!彼、こっちに来た時に名前を変えたんですよ。」
「帰化したってこと?名前変えるのめんどくさい手続きだって正華が言ってたけど。」
早歩きが駆け足に変わる。
「あー!間違えました。向こうにいた時からダイスケでしたよ。親が日本に憧れがあったとかでその名前にしたんだとか。ところでなんですか帰化って。」
こいつまじか。
「てか、団長たちの故郷ってどこの国?顔立ちからしてヨーロッパらへん?」
オレは無視をして質問を投げる。団長は秘密が多くオレたちもよく知らないことが多い。だが、そのせいで定期的にボロが出てこういうことになる。そんな時は構わず質問攻めにするのが効果的だ。
「私の質問に答えてください!帰化とはなんですか!!ちなみに私の故郷はフランスとかです!!」
質問に答えてくれるのか。律儀なところは評価しよう。というか「とかです」とか言わなければ信じたのに。
もしかしなくてもオレより馬鹿か?
駆け足はスピードを増し、追いかけっこが始まった。
現役ヒーローに勝てると思ってるのかこの男。
オレはすぐに追いついて襟を掴む。なんか高そうなのでシワがつかないように謎に気をつけた。
「はぁ、はぁ、」
「んで?本当は?ダイスケさんの名前の謎は?団長たちの故郷の国は??」
容赦なく追い詰める。日頃の恨みだ。子供と言われても構わない。オレはまだ高校生だ。
「個人情報ですよ!!ハヤト君!!」
「団長のとこは聞いたけどダイスケさんのことを言い始めたのはお前だ。オレはそれで疑問を持って聞いているだけ。」
うっ…と決まりが悪そうな顔を浮かべる。
この人余裕がないと表情管理がなってないな。
「はぁ、、出したくなかったですか背に腹はかえられません。ハヤト君!!これを見なさい!!」
団長は内ポケットから何か出したかと思うとそれをオレに見せつけてきた。
「……!!?!」
オレは驚きのあまり声を出すのを忘れた。無理もない。なぜなら団長が出してきたのが、
某有名ヒーローの招待チケットだったのだから。
オレは小さい頃からヒーローが大好きだ。大好きじゃこの熱は伝わらないかも知れない。そうだな、オレの体はヒーロー愛で出来ていると自信をもって言えるほどにはヒーローが好きだ。愛している。憧れている。熱が増しすぎてオレもそれになってしまったほどだからな。
そんなメイドインヒーローのオレが昔から好きな特撮ヒーローの周年記念イベントを知らないわけがない。応募はもちろんした。倍率が高すぎるのでお願いして親のアカウントでも応募をした。だが抽選というのは残酷だ。オレがチケットを手に取る瞬間は来なかった。
それなのに。なんで。此奴がもっている。オレより古参のファンだったのか??それはそれで腹が立つ。
「知り合いの伝手でもらったんですよ。今日のお礼にあなたに渡そうと思ってたんですが。気が変わりそうです。」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる。
こいつ。大人気ない。大人気なさすぎる。
だか侮られては困る。オレはペーペーでも、端くれでもヒーローだ。悪手に屈することなどあってはいけない。そう。たとえ目の前にあるのがヒーローショーのチケットだとしても。
たとえ、あの全人生の運を賭けても欲しいと思ったチケットでも。
たとえ、オレの青春の集大成でも。
「………。」
「欲しいですか?ハヤト君?」
「………」
そういえば、高校生は大人になるための大事な時期だと担任が言っていた。つまりオレはまだ子供で、目の前の卑しいやつは大人気ない人間。つまり子供。ここから分かるのは、大人になった方の勝ちということだ。
まぁしょうがない。ここは大人になるのがオレの成長のためだ。
「さっきのことは無かったことにしますよ。団長。」
オレは爽やかな笑顔を見せる。大丈夫だ。団長の秘密なんてこれからいくらでも聞ける。
「流石ハヤト君。大人ですね。大人な君には今日のお礼にこれをどうぞ。」
そういうと、団長はオレの手に紙切れを乗せた。手にした瞬間、目を閉じたくなるほどの光がチケットから溢れ出した気がした。なんてことない印刷紙。だけどオレにとって紙幣よりも重く、価値のあるもの。きっと、オレのこれからの生き甲斐となる宝物。口角が上がるのをやめられない。
なるほど、悪者はこうやって増えていくのか。オレは今、違う意味で大人になってしまったのかもしれない。ごめんなさい。先生。
顔を上げると目の前の男は相変わらずニヤニヤしていた。これもこの男の計画のうちだったのだろうか。
…いや、考えるのはやめておこう。
「カフェも奢ってくださいね。」
オレはやられっぱなしで終わらない。言っただろう。ペーペーでも、端くれでもヒーローだ。
「はぁ、しょうがないですねぇ。」
なんてやりとりをして、再び歩を進めるとすぐカフェに着いた。
今日は何を頼もう。何を頼んでもきっといつもより美味しく感じるはずだ。
半袖
絶対領域の一部。
でも、正直、今暑いから
風通しのいい服を着るのがいい
その一部。
世界。
暑さによる不安。
情勢の不安。
時間が早く進んでもう少し早く涼しくなってほしい
【半袖】
そして半ズボン
一年中それで過ごしてた彼は
どんな大人になっただろう
屈強な身体と
強靭な精神力
健康的な日焼け後
きっと
俺とはずいぶん違う大人になった事だろう
ちょっと見てみたい気もするけど
無粋な気もするな
半袖の礼服を着て私の亡き父の初盆
父の初盆前に推し活してきた
地元イオンの本屋で、今日から発売日の一番くじ
[僕のヒーローアカデミア相反する思い]
午前中で一番くじが残り20枚くらい
私が一番くじを引いている間に
私の後ろにも
ヒロアカ一番くじ目当ての人たちが
たくさん並び始めていた。
私が一番くじを引く準備をしているときは
並んでいなかった
フィギュアが、残り爆豪勝己フィギュア
しかなかった。
私は、爆豪勝己[通称、かっちゃん]に願掛けしたら
まかさの、かっちゃんフィギュアが出てきた
大きなポスターを、よく見ていると、
幼少期の緑谷出久✖️志村転孤(幼少期の死柄木弔)
の空欄の枠があった。
そこに願掛けしてたら、幼少期の2人フィギュアが
出てきたのかな?笑
だけど、かっちゃんフィギュアに出会えて嬉しい
気持ちになった
水色頭の死柄木弔フィギュア2体
緑谷出久フィギュア1体も私の部屋に飾っている
かっちゃんフィギュアを所持してなかったから
とても嬉しい
かっちゃんフィギュア1体しかなかったから
レアのレア
激レア
私の父が近くにいたのかな?
父も私に[かっちゃんフィギュア出ろ!]
と、願掛けしてたのかもしれない
父も偉大
お父さん、これからも見守っててね
ありがとう
半袖
「冬ってきらい。」
ニュースで何十年ぶりかの大寒波、
なんて言われていた中学二年の冬。
ワイシャツに学ラン一枚着たあいつが言った。
周りは勿論おれも、マフラーとか上着とかの防寒着でもこもこに膨れ上がってたのに。
何の話だ急になんて思いながら、特に話題もないので「なんで?」と返す。
おれは普段、放っておくと一生喋り続けているあいつの話に「ふーん」だの「へー」だのしか返さないから、あいつは少し驚いた顔でこっちを見た。
「なんだよ」
「お前って会話繋げたりできるんだなって」
「はー?」
「ごめんって」
正直なとこがこいつの取り柄であり短所だ。
変わったことはするもんじゃないなと考えているうちにもあいつは隣で喋り続けている。うるさいな。
そうこうしているうちにあいつと分かれる道が近づいてきて、そこでなんとなく「なんで?」に対する答えが返ってきていないことに気づいて、なんとなく「結局なんで冬がきらいなんだっけ」って聞いてみた。
「あー...」
「なんだったかな、もう忘れたわ」
「はー?記憶力よ」
「ははっじゃあまた明日」
誤魔化された感じもしたけど、そんなのどうでもいいだろと思って、あいつに手を振り返して一人の帰路に着いた。
中三の秋、あいつの葬式に参列した。
放課後校舎から飛び降りたらしい。
通夜の時に大人たちがもう冬が来ますねなんてテンプレートのような世間話をしているのを聞いて、
あの冬のことを思い出した。
学校のやつらが全員上着を着始めても頑なに半袖のシャツを着て登校してきたあいつが、珍しく学ランを着ていたこと。
あいつは死ぬほど寒がりだってこと。
あの時少し驚いた顔でこっちを見たあいつの表情に少しの焦りと期待が混ざっていたこと。
その後誤魔化すようにいつもより口数が多くなっていたこと。
あいつは頭がよくて、常に考えてて、どうでもいいようなことおれに話さなかったってこと。
あいつはすごく記憶力が良かったこと。
あいつがいつも着ていた半袖の裾から見えていたもののこと。
あいつが頑なに長袖を着なかったのは、それに気づいて助けて欲しかったからだったってこと。
半袖。
袖を捲ったヘインズ赤ラベル
洗いざらしのリーバイス501
ナチュラルのコンバースオールスター
1984年の夏、16才男子の正装。
今じゃユニクロのTシャツとステテコか…
高校生のとき
夏になると球技大会があった
どれか一つの球技に参加し
最後はクラス対抗の綱引きで終わる
わたしはソフトボールに参加した
炎天下のなか
球技大会が行われ
最後の綱引きが終わったあと
みんながTシャツの袖をまくりながら
日焼け自慢をはじめた
くっきりと
袖のところで色がわかれていて
すごいねーと
色の黒さをくらべあう
そして、みんながわたしの方をみた
わたしはもともと地黒なので
そんなわたしは
さぞや黒く日焼けしただろうと
思ったのだろう
友人が自分の腕と
わたしの腕を並べてみる
おや?
たいして変わらない黒さだ
友人はわたしの袖を捲ってみた
そこには
袖のないところと変わらない
黒い肌があった
どうやら
これ以上は焼けようのないくらいの
地黒だったらしい…
しばらくの間
わたしの地黒は
クラスで伝説のように語られるのだった
もう春や秋は無くなったんじゃないかってぐらい寒いか暑いかなきがする。
まぁ一応春は花粉がやばいし、秋は紅葉が綺麗なんだけど。
今だってこの間まで長袖だったのに今は半袖だ。
地球温暖化をどうにかしようと言っているけど便利を取るか自然を取るかという難しい選択だ。
こんなふうに偉そうにいってるが地球破壊をしているひとりなんだろう。 僕もゴミ拾いボランティアとかしてみようかな…。
No.7
半袖
今の時期に長袖着てる奴はいないだろ、そう思ったけど前に服を買いにいった時に長袖が売ってたような記憶がある。
なんか日焼け防止とかそんな感じで売ってて夏でも長袖って選択肢もあるんだなと思った。それにアームカバーみたいなのもあった気がする。
確かに素材によっては長袖の部分は負担にならないだろうし直射日光を防ぐことで半袖よりもむしろ涼しいかもしれない。というか涼しいんだろうな。
少し前に話題になってた日傘みたいなものだな。太陽の光を軽減できるから袖がないよりもあったほうがいい。そういうことだろう。
個人的にはそんな対策をしないといけない日中には外出するべきではないと思うけどそんなくそ暑い外に出かけないといけない。そんな時もあるわな。
そういえば作業員とか外で働く人に暑さによる手当てとして日当千円みたいな話もあったな。
夏はほんと死ぬほど暑い。この死ぬほどが比喩じゃなくて本当に死者が出てるくらい暑いから困るね。
『半袖』
ラペルは、可愛い女の子のイラストがプリントされた
半袖Tシャツを知人からもらった。
子どもっぽいデザインで、
正直なところ自分の趣味ではない。
クローゼットの隅に放置していたのだが、
その日は急な仕事で着ていくものがなかったので
渋々袖を通してみた。肌触りは悪くない。
⸻
任務を終え、血の匂いを纏わせながら帰路につく。
待っているのは、白い壁に囲まれた無機質で
殺風景な部屋。
乱雑にTシャツを脱ぎ捨て、
洗濯機の縁に放り投げた、その時だった。
「そこのあなた、お待ちなさい!」
鈴の音のように澄んで、それでいて芯のある声。
咄嗟に身構え、反射的に腰のナイフに手を伸ばす。
しかし、周囲に敵の気配はない。
「なんて失礼な方、
わたくしを雑に扱わないでくださいまし!」
声のする方を見れば――洗濯機の縁にかけられた
Tシャツの、プリントの女の子が
ぷりぷりと頬を膨らませていた。
暑さで頭がやられてしまったのか。
それとも疲労のせいで幻覚を見ているのか。
ラペルは思わず眉間を押さえた。
翌日、気を取り直して半信半疑のままTシャツに
話しかけてみるとやはり声がした。
どうやらラペルにだけ聞こえるらしい。
このTシャツ、半袖ちゃん(仮)は
何かと要求が多かった。
「洗濯機は視界がグルグルするから苦手ですわ。
手洗いしてくださいまし」
「アイロンでパリッと仕上げてくださいな」
面倒に感じることもあったが、仕事柄、親しい人間を一切作ってこなかったラペルにとって、半袖ちゃんとの何気ない会話は、ふわふわとした奇妙な感覚を胸にもたらした。
⸻
ある穏やかな昼下がり。ラペルは珍しく半袖ちゃんを
身につけて外出していた。
鮮やかな草木の緑、蝉の鳴き声を感じながら歩いていると、不意に胸元がぐいっと引っ張られた。
「ちょっ、どうしましたか?」
「いいからついてきてくださいまし」
導かれるままに路地を曲がると、古風な趣ある
店構えのお団子屋さんがあった。
軒先には「夏季限定 かき氷」の文字。
店内で美味しそうにかき氷を食べる客を見て、
半袖ちゃんはキラキラと目を輝かせている。
ラペルは宇治金時をひとつ購入し、誰にも悟られない
ように、こそこそと胸元へとかき氷をすくった
スプーンを持っていく。
「んんっ……!おいしいですわっ、
もっとくださいまし!」
パクパクと夢中で食べる半袖ちゃんを見て、
まるで雛鳥に餌をあげている気分になり、
ラペルは初めて抱くような温かい感情に包まれた。
刹那、穏やかな時間は砕け散った。
「見つけたぞ、ラペル!」
真昼間の店内に似つかわしくない銃声が轟く。
一般人たちの悲鳴が響く中、ラペルは冷静に対処した。研ぎ澄まされた感覚で彼を狙う刺客を次々と倒していく。
だが、倒し損ねた残党の一人が、
最後の力を振り絞り、背後から銃を構えた瞬間。
「危ないですわっ!」
突如、Tシャツの生地が膨らみ、
ラペルの背中を庇うようにせり出した。
銃弾が、半袖ちゃんを貫く。
「半袖ちゃん!」
ラペルは間髪入れずに隠しナイフを投擲し、
残党の息の根を止める。だが、彼の意識は胸元で
小さく息をつく半袖ちゃんへ向いていた。
「……あなたが無事で、何よりですわ」
掠れた声とともに、
半袖ちゃんがくたりと力なく項垂れる。
「半袖ちゃーーん!!!」
ラペルの叫びが虚しく響いた。
⸻
その後、Tシャツをくれた知人のアドバイスに従い、
オキシ漬けで数日間置いてみた。
すると――
「……ふわあっ、生き返りましたわ!」
奇跡的に半袖ちゃんは復活した。
⸻
「俺と共にいれば、常に危険と隣り合わせです」
暗殺者である自分との生活に平穏はない。
また彼女を危険な目にあわせてしまう。
そんなラペルの言葉に、
半袖ちゃんは何故か嬉しそうな反応を見せた。
「あら素敵。退屈な日常より、スリリングな方が
面白いですわ。それに――」
半袖ちゃんは、胸元で小さく微笑む。
「ここが一番落ち着くのですわ。あなたの鼓動が、
ちゃんと聞こえますもの」
――
最低限だけの物を持って、ラペルは殺風景な部屋を
去り姿を消した。
以前とは違うこと、それは彼の傍に――
たったひとつのかけがえのないものがあった。
一人の暗殺者と一枚の半袖Tシャツ。
奇妙なこの組み合わせは、互いの存在を確かめながら、闇の中を共に歩むことになったのだ。
君と出会ったのは冬だった。
冷たい北風が頬を刺すように吹いている。
私は会社でのパワハラに耐えられなくなって
公園のベンチで座っておえつしていた。
「もう、無理」
泣きながらそう思っていた。
ふと、コートの上から温かい物が触れた気がした。
そちらに目をやると缶のココアがコートに触れている
その手をたどって顔を見ると知らない男性、君だった
私はびっくりして思わずベンチから落っこちた。
馬鹿みたいに驚く私を見て君は大笑いをした。
「大丈夫?」
そう言って差し出してくれた君の手は冷たかった。
私は君の手を借りて立ち上がった。
それから一緒にベンチに座り、悩みを話した。
君は転職エージェントの社員だった。
果たして、君は私に転職を勧めた。
私と君はLINEを交換した。
そこから交際が始まった。
そして、私は君の転職エージェントを介して転職した
転職先は前職よりもさまざまな面で良好だ。
給料だけではなく、仕事も、人間関係も、設備も。
私は君に感謝している。
そして君を愛している。
今日は君と出会って初めての旅行だ。
私が恩を物で返そうとした時、
君は思い出で返してと私に言った。
だから、二人の給料を旅費に費やし、
思い出をたくさん作ることにした。
私は君と出会ってから夏が好きになった。
初めて半袖のポロシャツを着た君の腕を初めて見た時
筋肉質の腕に見惚れてしまった。
「見過ぎだよー」
と笑いながら照れる君を見て私も小さく笑った。
笑われたことと君の男らしさに改めて惚れた自分を
ちょっとだけ恥ずかしく思った。
待ち合わせの場所で君を見てあの日を思い出した。
半袖のTシャツ姿の君に赤らめた頬を隠したくて
すぐに荷物を置いて君をハグする。
今から始まる旅のことを思うと、
君の彼女であることを夢のように思う。
あの時、私を救ってくれた君の恩を返しながら
この旅で君と仲を深めたいと心底思い、
君のほっぺたにキスをした。
半袖
隣のお姉さんは麦わら帽子に首タオル、短パンサンダル。
蝉の声に囲まれて朝から洗車。
ホースの水できらきら虹を作って、愛車のボディを拭きあげたら、上から下まで水浸し。
半袖ワンピースにさらっと着替え、涼しい顔で出掛けて行きます。
何だか素敵。
『半袖』
私はバスの終点で降り、
駅へ向かって歩いていた。
意志とは関係なく
汗が吹き出してくるので、
何度も拭いながら改札を目指す。
目の前には、
黒の半袖ワンピースを着た人がいた。
首元には真珠のネックレス。
手元には黒い日傘。
――真夏の葬儀だろうか。
五年前の、真夏のお葬式を思い浮かべて
なんとも言えない気持ちになった。
私は思わず、
その人がどんな気持ちでいるのか
想像せずにはいられなかった。
想像したところで、
本当のことなんてわからないのに。
それでも勝手に想像して、
勝手に、その人の幸せを願っていた。
どうか少しでも、
笑えますように――と。
それは、見知らぬその人への祈りであり、
過去の自分への祈りのようにも思えた。
気付けば、
私の目尻には、涙がにじんでいた。
アスファルトから立ち上る陽炎が揺らめき、
照りつける真夏の日差しが、
車のボンネットを熱く灼きつける。
『着いたよ』
メッセージに顔を上げると、日傘を傾けた女の子が、こちらに駆け寄ってくるのが見えた。
助手席のドアを開ける。
「ごめんなさい、待たせちゃったかな?」
ハンディファンを片手に、
申し訳なさそうに微笑む女の子。
「ううん、俺も今来たところだから」
そう答える俺の視線は、
彼女の着ていたTシャツに釘付けになった。
真っ白な生地に、大きくプリントされた真っ赤な口。ヴィレッジヴァンガードにでも売っていそうな、
かなり攻めたデザインだ。
酷く不気味に思えたが、彼女の可愛い顔と、
Tシャツの上からでも分かる豊かな
胸元を見れば、もう何でもよかった。
俺が胸元を凝視していると、
彼女は恥ずかしそうにはにかむ。
「ちょっと、どこ見てるんですか?」
「ごめんごめん。いや、そのTシャツ、
なかなかパンチ効いてるなと思って」
「でしょ?お気に入りなんです」
彼女の笑みに、俺はさらに惹きつけられた。
「さて、どこ行こうか?行きたい場所とかある?」
「うん、実はね――」
人目のつかない場所に行きたい、という言葉に、
俺の胸は嫌らしい期待で高鳴った。
が、彼女が提案したのは廃墟だった。肝試しでもするつもりだろうか。真昼間から、と少し拍子抜けしたが、それもまた一興だ。
廃墟に着き、車を降りた瞬間、真夏の熱気とは
異なる、ひんやりとした空気が肌を撫でた。
荒れ果てた建物の壁には、蔦が絡みつき、
割れた窓からは薄暗い内部が覗いている。
「さ、行こ」
彼女と共に先へ進んでいると、
錆びたベッドを見つけた。
そこに腰を下ろし、手招きする彼女。
下半身に支配された俺は、同じく腰掛け、
流れるように彼女のTシャツの裾に手をかけた。
すると、白い手が俺の手をそっと制す。
「ダメ、上は脱がさないで」
着衣プレイか。それも悪くない。
むしろ、その方が興奮する。俺は欲望に目を細め、
彼女の顔を見上げた。その時だ。
「ヒヒヒヒ」
突如、どこからか声がした。
甲高く、そして粘つくような笑い声。
彼女のものではない。彼女の胸元から、
真っ赤な口が裂けるように大きく開き、
👄「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒィィィ!」
赤い口が、一瞬にして膨張し、俺の顔を、
頭を、そして身体を、すべて飲み込んだ。
バリバリ、むしゃむしゃ。
肉を噛み砕く鈍い音と、骨が砕ける耳障りな音が
廃墟に響き渡る。
痛みを感じる間もなく、俺の意識は闇に落ちた。
「あーあ、また口元汚しちゃって、
もう〜、かわいいんだから」
彼女は胸元の赤い口の端を指でそっと拭う。
まるで、恋人の食べこぼしを拭くように、
優しく、愛情を込めて。
👄「ヒヒヒヒヒ」
赤い口は、満足げに笑い、そしてゆっくりと
Tシャツのプリントへと戻っていく。
先ほどまで真っ白だった彼女の半袖Tシャツの
白地は、鮮やかな赤色に染まっていた。
お題「半袖」
半袖を腕まくりして、二の腕全開。
そこに、一匹のカエルのタトゥー。
「なんで…カエル?」
可愛いイラストの感じのカエル。
タトゥーとして入れるには似つかわしくない。
「別にいいだろ。若気の至りだよ」
「どんな若気だよ。カエルが好きなの?」
「そりゃ嫌いじゃないけど…このカエルは特別」
黄色くて、目がデカくて可愛い。
ニッコリ笑っている。
「特別なんだ。名前とか、あるの?」
「名前は…ピョン吉」
「…ん?なんか聞いたことあるな」
「昭和の頃のアニメに出てきたカエルだよ。Tシャツにプリントされてて…生きてた」
「生きてた?プリントされてて?」
「まあ、実際には、主人公のヒロシがつまずいて転んで、そこにいたピョン吉が潰されてペチャンコのまま、Tシャツに貼り付いてしまうんだ。それから、平面ガエルとしてヒロシのTシャツで生きることになる」
「なんだそりゃ。昭和ってハチャメチャだな」
「サブスクで見たんだよ、何の気なしに。そしたら、ハマっちゃって」
「…なんで?そんなに面白いの?」
「面白いし、ピョン吉が好きで。それで、このタトゥーを彫った。Tシャツは脱がなきゃいけないけど、これならずっと一緒にいられるから」
「嘘だろ。突っ走りにもほどがある」
「まさに、突っ走るんだよな、こいつ。何しろ『ど根性ガエル』だから」
「…どーゆーこと?」
「いや、だから…」
言葉の途中で、彼は走り出した。
もの凄い勢いで、駅前のたこ焼き屋台に向かって。
こいつ、そんなに腹減ってんのか?とも思ったけど、彼の二の腕の一部分が少し、盛り上がっているように感じたのは…気のせいだろうか?
「半袖着ないの?」
なんて、最近になってますます聞かれるようになった。
「いやぁ~、なんか、嫌じゃん」
そう言うと不思議そうにされるから。
「日焼けしたくないしさ」
と、付け足すと、
「日焼け止め塗れば?」
と、言われる。
「いや、あれはちょっと…なんか、気持ち悪いんだよね。ベタベタするし」
「そう?」
と、また不思議そうにされるから。
「匂いもちょっとさ、なんか、人の香水嗅いでる感じ?気持ち悪くなるんだよね」
「なんで?香水はいい匂いじゃん」
「いや、私、洗剤とかの、服についた匂いの方が好きなんだよね」
「あー、ね。なんかちょっと香ってくるのとかはいいよね」
これは共感されやすい。
「あと、長袖を着てる時間が長かったせいか、人に肌見せるの、なんか抵抗あるんだよね」
「へぇ」
「別に半袖は着れるんだけど、極力来たくないと言うか…」
ここまで言うと、
「……そうなんだ、まぁ良いんじゃない?人それぞれだしさ」
と言われるか、
「へぇ、良くわかんないなぁ」
の大体、二択に分かれる。
たまーに共感してくれる人もいる。
半袖
読んでくださりありがとうございました。
多分次のお題はちゃんと書きます。
あなたが半袖になった時、私も半袖になるの
あなたが好きなものは、私も好き
あなたの特技も私の特技にしたいし、
あなたが持っているものを持っていたい
あなたとの共通点が欲しいの
〚半袖〛
夏の青空に響きわたる蝉の声
青嵐に運ばれる向日葵の香り
心が波打つ海の美しさ
嗚呼、半袖はいいな
夏の全てを肌で感じれる__。
【半袖】
高校が夏制服になった
僕は美希の半袖から覗く細い腕の奥の脇をチラリと見た、二の腕の下にあるホクロがコチラを見ている「美希ちゃんの脇より下が気になる?」と言っているようだ
もちろん気になる
脇の下も横にある小さそうな膨らんでいる胸は
もっと気になる
美希は拒食症でとてもとても細い腕をしている
だから半袖の口から肩も見えてしまいそうなんだ
美希は幼なじみでたびたび拒食症になる
細いと綺麗で愛されると思っている
僕はエッチな気持ちで美希の二の腕を見る
それ以上に心配で骨のような腕もみる
セックスなんてしようと思えば出来る
美希は僕を好きだ
ダケド、僕は好きな気持ち半分と病気が心配な気持ち半分ではその気になれない
美希は誰に愛されたくてそんなに細くなりたいんだ
きっと自分に愛されたいのかと、そんな気がして
僕のセックスなんかでは埋められないと思った