『半袖』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
覚醒
君の言葉が僕を目覚めさせた
君の言葉が僕を奮い起たせたんだ
僕は勇気を得た
神様は知っているだろうか?
僕は地獄の日々の中に楽園を見つけたことを
そしてそこでノートの切れ端に愛の言葉を綴っていたことを
すべてが心地よい
すべてが新しく、爽やかだ
僕は風の中で、朝日を浴びて立っている
工事現場のそばのアパート
子供たちのはしゃぎ声が聞こえる校庭
水平線の彼方にぽつんと見える貨物船
すべてが心地よい
すべてが新しく、爽やかだ
僕は抗鬱薬が全身の血管に行き渡るのを感じる
学生の頃...夏になったと同時に夏服が届き
みんな一斉に着替えるあの時の感じ、風景、何もかもが
懐かしい
まだ5月というのに日差しは夏そのものだ
「そう言えば、5月が一番紫外線が強いのよね」
と響子は慌てて日除けのサンバイザーを被った
まだ朝の早い時間だったが、洗濯物を干す額にはうっすらと汗も滲み始めた
そんな日でも響子は半袖を着ない
物心ついた時から半袖の服を持たなかった
響子の左腕には肘から手首にかけて、長いこと共に生きてきた自分でさえ目を背けたくなるような醜いケロイドがあった
それは響子が幼い頃に、母親の不注意で負った火傷の痕だった
響子の母親は子供には全く興味の無い人間だった
どんな時も自分が最優先、友人との長電話に興じたり、テレビに夢中になっている間に響子が怪我を負うことは日常茶飯事だった
だから、虐待を疑われたことも一度や二度では無かった
そんな母親の態度が、体に負った数々の傷よりも深く鮮明に響子の心に傷みを刻み続けた
そんな響子が半袖を身に付けないのは当然のことにも思われたが、醜い腕を晒したくないという思い以上に、頑なに半袖を着ないことで自分の負った体と心の傷の深さを母親に見せつけ続ける思いの方が圧倒的だった
そんな母がこの春先、呆気なく世を去った
その傷についての謝罪や母としての思いはついに一度も聞くことはないままで…
ところが不思議なことに、長年響子の心に執拗に付きまとっていた母への怨念に近いような憎しみは、母の体の存在の喪失とともに潮が退くように消えていた
母もまた私に負わせていた傷の数々に苦しんでいたのではなかったのか、とその時初めて気がついた
だからこそ、あえてその話には触れず、むしろ触れることが出来なかったのではなかったのかと
今までは憎しみのあまり母の気持ちなど考えようともしなかった…
この夏はほぼ半世紀ぶりに半袖の洋服を買おう
そして、その姿で母の墓参りに行こうと響子は初夏のような日差しを感じながら、久しぶりに爽やかな風が心に吹いていることを感じた
『半袖』
半袖を着る季節がもうすぐだね。
君は夏が好きかい?
僕は好きだ。
僕は暑いのは苦手だが
好きなものが多くあるんだ。
風鈴の音に
蝉の声
氷が解けてカランと音が鳴る音
他にも夏を感じたり涼しい音が欲しくなる季節が
好きだ。
暑いのは勘弁して欲しいけどね。
─────『半袖』
あの夏を忘れない。
初任給を握りしめて帰った。
そうはいっても高校生の短期バイト。
今思えば、たった42,000円。
本当は家族で何かしたかった。
「久々にみんなでメシでも」
そういえたらよかった。
でもいえなかった。
ぎこちない言葉を紡ぐより
確かなものを残したくて
中古で買ったカメラに
現像代も考えずに金をつぎ込んだ。
だからNikon F4で撮り溜めた
どうしようもない俺の日常は
すぐに色を失った。
最後の半袖になる頃
お袋は家を出て行った。
大人たちの事情なんて
知り得ない。
【理解はしたけど納得はできない】
小6の弟は
俺よりも言語化がうまい。
俺は親父の代わりに
親父は弟の代わりになった。
正気のまま狂っていく
乳臭い大人をみて
弟は「お母さんはどこ」なんて
もちろん言わなかった。
失ったものへの執着は
こんなにも鮮やかなのに
あの夏の、母さんの笑顔は
カビ臭いカメラの中に
閉じ込められたまま。
【半袖】
夏に着るのは「半袖」だが、たまに肌寒かったり暑すぎて服も脱ぎたくなる日もある…ほんと地球温暖化🌍
あいつは、頭が良かった。小狡いとか、世渡りが上手いとかではなく、知識の分野でずば抜けて頭が良かった。
ただ、ちょっとズレてる所があって、誰かといるところを見たことはそんなに無かった。
でも俺にはあいつが誰より面白くて、最高の友達だったから、毎日話しかけに行っていた。
生真面目に見える癖に、考えてるのは俺と変わらない、時には俺より馬鹿なことも考えていた。あいつの武勇伝(?)に、こんなのがある。
「冬服の限界って、どこまでなんだろうな」
と呟いたのが全ての始まり。俺は特に気にせず流していたけど、案外あいつは本気だったようだ。次の日から、あいつは上着まで着こんで登校するようになった。
教師にも咎められていたのに、どこ吹く風で聞く様子もない。最初は俺も笑ってたけど、夏も真ん中になると呆れてきた。
見てるこっちも暑苦しいし、熱中症になるだろ。そう言ってもあいつは笑って、「でも、知りたいから」と言った。流石に開いた口が塞がらなかった。
そして数ヶ月、あいつはとうとうこの夏を冬服で乗り切った。あの根性には、俺も拍手喝采を贈るしかない。
そんなものすごい伝説を持つあいつが大好きだった。
テスト前に、ノートを貸してもらったことがある。そこには単語とメモくらいしか書かれてなくて、本当に『自分だけ分かる』って感じの。
借りる相手間違ったかもな〜なんて思いながらページをめくってると、丸いシミを見つけた。
そこだけ紙がよれよれしてたから、水でも零したのかと思ってた。
数日後、風呂場で何気なく思い出した時に気付いた。あれは汗だ。
考えてみればなんて事はない、そりゃあ夏だし汗もかく。何より、あいつは長袖で過ごしていたんだから。
そうかそうか、とうんうん頷いたら、何だか笑ってしまった。あんなに人間味のない奴も汗をかくってことが、何だかおかしかったんだ。
うん。ごめんな。嘘だ。
みんな嘘だ。
あいつと仲が良かったのも。冬服で過ごしてたのも。
俺な、あいつが好きだったんだよ。
でも、俺とあいつが仲良くなれるわけ無いんだよ。ちょっととズレてるところなんてない。見た目通りの真四角だった。
騙してごめんな。でも、ノート借りた時に、シミがあったのは、本当だよ。
嬉しかったんだよ。ごめんな。
お題『半袖』
半袖…
一年の 三分の二を 半袖で
熱く働く 警官の君
「おはよー」
いつものざわめきとともに肩をぽんと叩かれ僕は振り向く。そこには顔に満面の笑みを浮かべる彼女が立っていた。
「おはよう。今日も元気そうだね」
「返信が近所のおじいちゃんか」
ケラケラと笑いながら隣を歩く彼女に僕は目を細める。
5月のくせに青空が少なくても彼女の笑顔があればなぜか晴れやかな気持ちになる。
「君は7月が似合いそうだね」
夏のひまわりみたいだと思いそうつぶやくと彼女は大きな瞳をまんまるに開けた。
「どゆこと?夏が似合う的な?」
「うん」
コクリと肯定するように首を動かすと、にまぁっと彼女の口角が上がった。
「やだぁ照れちゃいますよぉ。そんな笑顔が輝いていて眩しいなんて言われても」
「そこまではいってないよ」
即座に突っ込むとツボが浅い彼女のツボに入ったようで笑いが溢れている。
「…そういえば、今日から半袖なんだね?」
そう違う話題を渡すと笑うのをやめた彼女が笑みを深める。
「そうなのです!どうですかぁ?夏が似合う女に似合ってるでしょ」
その場でくるりとポニーテールをひるがえして笑う彼女はとても眩しかった。
「うん、似合ってる。基本似合ってるけど特に」
そう返すと彼女は勢いをなくして僕の肩に顔を埋めた。
「きみさぁ…そうやって急に刺してくるのやめよ?私の心臓に悪いんよ。この天然褒め上手」
僕は身に覚えがないためキョトンとしているとドスッと一撃を食らった。解せぬ。
「まぁ嬉しいけどね。ありがと!」
少し照れたような横顔の彼女を今日も微笑ましく思う。
周囲を歩いていたサラリーマン
「……せいしゅんだなぁ…」遠い目
犬の散歩をしてたおじーちゃん
「ほっほっほ。ばぁさんにあいたくなるのぉ」
二人のクラスメイト①
「まだ付き合ってないんだよなぁ…信じられねぇー」
二人のクラスメイト②
「は!よ!付き合えーー」
#半袖
半袖のTシャツ着てる女の子って、普段より2倍増しくらいでかわいく見えるよね。
夏っていいよね、みんなキラキラしてて。
拝啓 ……
春から夏へかわりゆくこの頃
如何お過ごしでしようか。
この頃の時期といえば
服装には
ほとほと迷う日々です。
つい昨日まで暑いかと思えば
翌日は急に気温が下がったり
寒いかな?と思い、とっておいた
セーターや上着は結局
使わなくても大丈夫だったり
そんなこんなの近況ですが
もうそろそろ暑い日が多くなるかと
思っております。
お互い体調には気をつけたいですね。
敬具 【半袖】
『半袖』
夏が近づいてきてるなあと感じる。
日焼けを気にして長袖のままでいる人も多いけど、半袖になる人も増えてきた。
通勤時に途中ですれ違う。
自転車を必死にこぐあの子はいつから半袖になるだろう。
白く輝く肌と学校へ向かう、どこか晴れ晴れとした顔に、思い出すのは自分の青春時代。
すっかりおじさんになったかつての学生は、今日も家族のため湿気の増え始めた道をひたすら歩く。
半袖のワイシャツで、長袖の上着を片手に持って。
半袖
俺の幼なじみは、本当にひとから虐められやすい。
「――なんで――よ」
「……ごめ、んなさ、い……」
ほら、また。
「またお前らか。こいついじめて、そんなに楽しいのか?」
今にも、バケツの水をかけられかねない状況に、一声をかける。
「……!!」
そいつらは、一目散に逃げてった。
「お前も、あんなのもっと上手くあしらえるようになれって、いっつも言ってるだろうが」
「だって……」
「で? 今日はなにでだ?」
「……まだ、長袖なのか、って」
はあ?
「お前それ、ついにネタ切れなんじゃねえのか……」
そもそも、そんなの本人の勝手だろう。
ぶつぶつといなくなった相手に文句を言っていると。
「わたし、だって」
「あ?」
「わたしだって、そろそろ半袖でもいい頃だとは、思う。けど……」
「けど?」
まるで、勇気を振り絞るように、こいつは言った。
「わたし、腕太いから。無理なの」
「……はあ」
なんだ、そんな理由だったのか。
あきれ顔の俺に、こいつなりに食い下がる。
「本当に、ほんとに。真剣に悩んでるの……!」
うーん……。どう言えば良いやら。
……あ、そうだ。
「ちょい、腕出せよ」
「え、なに――」
言いながら、問答無用に腕を引っ張る。
「――ほら。俺より全然細いじゃねえか」
自分の腕と、こいつの腕を見比べる。
「白くて、普通の細い腕だ。そんなに気にすることねえよ」
「そ、れは! あなたと比べたら当たり前でしょ!」
お、調子出てきたな。
「まあ、長袖のままも、半袖にするも、お前の自由だろ」
「そ、そうでしょ」
「また、呼べ」
「……え」
ぽかんとした顔。面白い。
「幼なじみとして、いつでもまた、駆けつけてやるよ」
そう言って、笑ってやる。
「……え。え?」
普通喜ぶとこだと思うのに、なにが気にくわないのやら。眉間にシワをよせ、こいつなりに、なにやら考えているようだ。
「……やっぱり、お前は面白いよ」
「はあ!?」
意味がわからない、と。今度は俺が、文句を言われることになった。
まあ、いいや。泣かれるよりかはいい。意外と言ってくるのも、こいつらしいし。
まだ、蝉の鳴く頃ではないが、それでもかなり。天気が良い日の、ちょっとした出来事だった。
君の半袖を見ると、なぜか胸がこんなにもドキドキする
半袖
そろそろ冬物を着る時期なのだが、駅でよく見かける人は、半袖シャツにチノパンにリュックを前抱えて文庫本を読みながら電車を待っている。
鍛えていそう…あぁ、ムキムキじゃなくても代謝がいいから暑いのかな。
あれ、薄いダウン着ているぞ。
周りはモコモコなのに、あっ、ウルトラダウンか!
すぐ脱げるな。
ん?新半袖…違う人か 腹ポッコリだし、パツパツだよな。代謝機能かな?
半袖シャツの上にジャケット羽織って真似したら寒かった。代謝悪 脂肪は冷えるんだよな?
パツパツさんはどうして暑い?こっちもそこそこだが、何が違う?脂肪のつき方だろうか 血行か? いや、それなら条件は変わらんだろう。
そんな事ばかり考えていたら春が来て夏になり、半袖の季節となってしまった。パツパツだな。半袖シャツ。
今年こそは、半袖を着よう。
そう決意しても、なかなか着れない。
どうしてだろう。
どうして着れないのだろう。
私は今日もそれを、ベットの中で考えている。
【半袖】
半袖にはまだ早いかと
出し渋ってるうちに
世界から袖がどんどん消えて
わたしだけが
取り残されてしまった
『半袖』
今年こそは君の半袖姿を見たかった。
なんで一年中長袖だったんだろう?
悩みに気づいてあげられていれば、
君の半袖姿を見られたのかな?
常夏の国に住んでみたいな
僕の国にもずっと半袖派の人がいるけど
そういう人にちょっと憧れてる
夏が嫌いだと言うから、その理由を訊いてみた。
まず一つ目。シンプルに暑いから。判る判る。三〇後半の数字も、アスファルトを歪める陽炎も、ほんとうにげんなりする。
二つ目に、汗が気持ち悪い。流れていくのも、服が張りつくの、ベトベトするのも、すべてが気持ち悪い。
三つ目が、バカがいつも以上にバカになるから。なんだそれ。どうやら、バカが公園に集まって酒盛りしたり花火したりで、毎年毎年夜中までバカ騒ぎしているらしい。家が公園に近いってのも考えものだ。
それから、と言いかけて、止めた。視線は顔の少し下辺りにいた気がする。
とにかく嫌いなものは嫌いと、この話は終わりだと口を閉じてしまった。
後に残ったのは、夏の始まりを告げる鳥の声と、開け放った窓から吹き込む風。
風に吹かれ、前髪がさらりと揺れた。
ぼんやりと、はぐらかした四つ目は想像がつく。きっと、たぶん、同じ理由だと、なんとなく感じている。
衣替えで短くなった袖の、そこから顔を出すしかなくなった二の腕に、そこはかとない恥ずかしさを覚え、目を逸らすしかないのはこちらも同じだから。