夏が嫌いだと言うから、その理由を訊いてみた。
まず一つ目。シンプルに暑いから。判る判る。三〇後半の数字も、アスファルトを歪める陽炎も、ほんとうにげんなりする。
二つ目に、汗が気持ち悪い。流れていくのも、服が張りつくの、ベトベトするのも、すべてが気持ち悪い。
三つ目が、バカがいつも以上にバカになるから。なんだそれ。どうやら、バカが公園に集まって酒盛りしたり花火したりで、毎年毎年夜中までバカ騒ぎしているらしい。家が公園に近いってのも考えものだ。
それから、と言いかけて、止めた。視線は顔の少し下辺りにいた気がする。
とにかく嫌いなものは嫌いと、この話は終わりだと口を閉じてしまった。
後に残ったのは、夏の始まりを告げる鳥の声と、開け放った窓から吹き込む風。
風に吹かれ、前髪がさらりと揺れた。
ぼんやりと、はぐらかした四つ目は想像がつく。きっと、たぶん、同じ理由だと、なんとなく感じている。
衣替えで短くなった袖の、そこから顔を出すしかなくなった二の腕に、そこはかとない恥ずかしさを覚え、目を逸らすしかないのはこちらも同じだから。
5/28/2024, 9:12:30 PM