勿忘草(わすれなぐさ)』の作文集

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勿忘草(わすれなぐさ)』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

2/2/2026, 10:20:47 AM

勿忘草

風の隙間に
そっと揺れる青のひかり
名を呼べば
返事のように震える花びら

忘れないで、と
誰よりも小さな声で
春の土に根を張り
空の色を映しながら咲いている

手のひらにのせれば
すぐにこぼれてしまうほど儚くて
それでも
心の奥では消えずに残る

別れのあとに
静かに芽吹くものがあるなら
きっとそれは
勿忘草のような
やさしい記憶なのだろう



眞白あげは

2/2/2026, 10:19:34 AM

『勿忘草』 花言葉は真実の愛・私を忘れないで。

貴方に渡せばよかった。昔の人じゃないよ。私は今も貴方

のことが好きなの、気づいてよ。貴方は私がもう好きじゃ

ないってわかったから話してくるようになったのね。

2/2/2026, 10:19:07 AM

もし貴方が花を贈るなら、誰に何を贈りたい?
世間一般の人は恋人に立派な薔薇をたくさん贈るし
無邪気な子は家族にカーネーションを
残された人は昨日まで話してた者に白百合を

私ね、貴方に勿忘草を贈るわ。
薔薇みたいに立派じゃないし
カーネーションの丈夫さも
白百合の世論もないけど。
勿忘草って恋人を亡くした人が「忘れないで」って思って名前をつけたんだって。
とっても素敵じゃない?
貴方にとても似合うわ。
だから、私のことを忘れないでね。

誕生日おめでとう
生まれてくれてありがとう

『勿忘草』

2/2/2026, 10:18:07 AM

忘れな草 もう、絶対に 私のことを      忘れないでねぇぇええ!!!! 古明地こいしより。

2/2/2026, 10:17:21 AM

湖の畔を歩く
美しい女性がいた

ふと彼女に目を惹かれて
追いかけてしまった

彼女は
見た目に似合わない
豪快な仕草で

停めていたらしいボートに乗り
湖の真ん中へ向かっていく

その仕草が
何故か愛おしく見えて

自分が
邪魔者に思えた





数日後に
ある避暑地で
水死体が見つかった話とは

別に関係ないと思うのだが

彼女の手には
勿忘草の花束があったんだ

2/2/2026, 10:14:25 AM

131.『安心と不安』『ミッドナイト』『優しさ』


 友人の沙都子がおかしくなった。

「百合子。
 ふふ、呼んだだけ」
 耳元で、沙都子が甘い言葉を囁いてくる。
 まるで恋人に接するかのような距離感に、私は動揺を隠せない。

「緊張しているの?
 女同士なんだから、気にすることはないわ」
 口を開けば罵詈雑言の嵐、私をいじめることに喜びを感じている沙都子が、私に対し柔和な笑みを向ける……
 悪夢だと思いたいが、紛れもない現実だった。

「クッキーを食べましょう。
 ほら、口を開けて」
 始めは新手のイタズラかと思った。
 でも違った。
 かれこれ一時間くらいこれだし、なんならさっきよりも距離が近い。

「美味しい?
 ふふふ、私のお気に入りなの」
 沙都子と私は気の置けない仲はあるけど、決して百合な仲じゃないし、間違っても睦まじく愛を語らうような仲では決してない。

「ふう、はしゃぎ過ぎちゃった。
 ちょっと休むね」
 そう言って肩に寄りかかる沙都子。
 何の警戒もなく、身を委ねるように体を預ける。
 普段の沙都子なら絶対にしない行動。
 疑いようもなく、沙都子はおかしかった

「うわああ」
 私は沙都子を突き飛ばす。
 私はもう、限界だった。

「どうしたの、沙都子!
 今日は様子がおかしいよ!」
「私はいつも通りよ」
「嘘だ!」
 私は叫ぶ。
 少しだけ『調子に乗るな』と沙都子から罵倒されることを期待した。
 けれど沙都子は、悲しそうな瞳でこちらを見ただけだった。

「そうね、百合子がそう思うのも無理はないわ。
 あなたには、いつも酷いこと言っているもの……」
「そうだよ、沙都子は私をいじめて喜ぶような性格破綻者なんだよ。
 甘い言葉なんて囁かないでよ!
 罵ってよ!」
「いいえ、それは出来ないわ」
「なんで?」
「反省したの。
 いつもひどいこと言ってごめんなさい」
「そんなこと言って!」
「実はね、百合子のことが大好きなの」
 私は頭が真っ白になった。
 あの暴言しか出てこない沙都子の口からそんな言葉が出てくるなんて!
 衝撃のあまり、気を失いそうだった。

「照れくさくて、つい乱暴な言葉を言ってしまったわ。
 ごめんなさい、愛してるわ、百合子」
「……ありえない」
 耳を疑うとはまさにこのこと。
 絶対に沙都子が言わないであろう、その言葉。
 もはや、目の前にいる沙都子が偽物であることは明白だ。

「沙都子を返せ!
 この偽物め!」
「何を言っているの。
 私は本物よ」
「沙都子はね、愛なんて語らないんだよ」
 私は続ける。
「沙都子はね、クッキーを食べさせてくれないし、優しさなんて欠片もない。
 やること全部がメチャクチャじゃなきゃいけないの」
「うーん、なかなか分かってもらえないなあ」
 聞いているのかいないのか、沙都子は顎に手をあてて考え事をし始めた。

「仕方ないわね。
 言葉で分からないのなら、体で分からせてあげる」
「え!?」
 私が何かを言う前に、沙都子が私を押し倒した。

「分かってくれないのなら最後の手段よ」
「ちょ、待って」
 危険を感じた私は、身をよじり脱出する。
 けれどここは狭い部屋の中。
 逃げる場所なんて限られていた。
 あっという間に部屋の隅に追い詰められる。

「ねえ、やめない?
 ちょっと悪ふざけが過ぎるよ」
 私は懇願するように沙都子を見る。
 すると沙都子は、怯える子供を前にしたような、穏やかな笑顔で言った。

「優しいキスと、激しいキス、どっちがいい?」
「助けてー!!!」
 でもここには、私と沙都子の二人しかいない。
 絶体絶命だった。

「騒がしいわね、何をやっているの?」
 だが神は私を見捨ててなかった。
 騒ぎを聞きつけて、家族の誰かがやって来たのだ。

 (助かった)
 私は助けを求めるために、入り口の方を見て、そして固まった。

「ひぇ?」
 我ながら間抜けな声が出たなと思った。
 だってそうだろう。
 部屋に入ってきたのは、他ならぬ沙都子だったのだから。

 馬鹿な、私は沙都子に迫られていたはず。
 なのに、なぜ沙都子が部屋の入り口にいるのか……
 意味が分からなかった。

 正面を見た。
 沙都子がいた。
 聖女のような微笑みで私を見ている。

 横を見た。
 沙都子がいた。
 汚物を見るような目で私を見ている。

 どっちが本物かって?
 そんなの決まってる!

「助けて、沙都子!
 ニセモノに襲われてる」
 ドアの近くに立っている沙都子に助けを求めた。

「ニセモノってなによ。
 馬鹿だと思っていたけど、いよいよ本物の馬鹿に……
 ――あら、姉さんじゃないの」
「お、お姉さんなの!?」
 思わず沙都子の言葉を繰り返す。

「沙都子、お姉さんがいたの?」
「言ったことないかしら?
 私には姉がいるの」
「……よく遊びに来ているのに、全く知らなかったよ」
 私は二人を見比べる。
 一卵性双生児だろうか、沙都子とその姉は瓜二つであった。

「全然見分けが付かない」
「すぐ分かるでしょ。
 こんなに違うのに」
「そっくりだよ!?」
「容姿じゃなくて、性格が」
「……うん」
 なるほど、たしかに性格は似ていない。
 私が感心していると、お姉さんが深々とお辞儀をした。

「改めまして、私は沙都子の姉の沙夜です。」
 そして、お姉さんは申し訳なさそうな顔で私を見た。

「ごめんね、百合子ちゃん。
 少しだけからかうつもりだったんだけど、あんまり可愛い反応するからつい苛めちゃった」
 『嘘だ』、そう思った。
 私を追い詰めた気迫は、『つい』で済まされるようなものじゃなかった。
 絶対に私の唇を奪おうとしていただろう。
 私は一歩、お姉さんから距離を取る。

「姉さんは部屋から出て行ってくれる?
 ここは私の部屋よ」
「もう、沙都子ちゃんたら意地悪ねえ。
 3人で遊びましょうよ」
「出て行って!」
「はいはい、分かりましたよ。
 またね、百合子ちゃん」
 そう言って、大人しく出ていく沙都子(姉)。
 それを見て、私はようやく胸をなでおろした。

「ありがとう、沙都子。
 危ない所だったよ」
「まったく気を付けなさいよ、姉さんは危険だから」
「やっぱり?」
「ええ、性別関係なく気に入った人の唇を奪おうとするキス魔よ」
「……へえ」
「手段を選ばないところがあって、深夜の闇討ちも辞さないわ。
 姉さんを知っている人からは、ミッドナイト沙夜なんて呼ばれることもあるわ。
 暗い夜道に気をつけなさい」
 その言葉を聞いて、私はもう一度震えた。
 私はとんでもない化け物に気に入られたらしい。
 もう一人でトイレ行けない。

「それより百合子、あなたに聞きたいことがあるんだけど」
「な、何かな?」
「あなた、私のクッキー食べたでしょ?」
 私はビクリと体を震わせた。

「あれ、後で食べようと取っておいたんだけど、知らない?」
「それ、お姉さんが食べてたよ。
 ほら、そこに残りがあるでしょ」
 咄嗟に嘘をつく。
 お姉さんに『あ~ん』して食べさせられたクッキー。
 絶対に私の責任じゃないけけど、絶対に怒られるので誤魔化した。

「いいえ、姉さんは甘いものが駄目で、クッキーは食べないの」
 でも無駄だった。
 沙都子は、親の仇とばかりにジロリと私をにらんだ。

「きっちり詰めてあげるから覚悟しなさい」
「私、悪くないよ。
 お姉さんが――」
「問答無用!
 歯を食いしばりなさい」
 拳を固く握り始める、沙都子。
 その様子を見て、私は安堵にも似た感情を抱く。
 やっぱり沙都子はこうでなくては!

 いつもの沙都子が戻って来た安心。
 そして、未来の自分の身に起こることへの不安。
 その矛盾した感情を抱えた私は、もう笑うしかないのだった。

2/2/2026, 10:13:21 AM

昔むかし、ある騎士が恋人の乙女のために、急流に咲くこの花を摘みにいって、川で溺れ、乙女に花を投げて「私を忘れてくれるな」と叫んだ......それが勿忘草、forget-me-notにまつわる言い伝えである。

しかしながら、わたしは勿忘草の外見を知らない。いや、見ても認識できないのだ。

小さい頃から目が悪く、視覚認識より聴覚認識に頼っていたのもあるのだろう。また、草花、虫、魚、そういったものに一切関心を示さなかった子供であり、大人になった今尚判別がつけられない特性もあるだろう。

言い伝えはわかるのに、どんな花なのかわからない。
この歪みがわたしの特性を如実に表している気がする。

【勿忘草(忘れなぐさ)】

2/2/2026, 10:11:25 AM

『勿忘草』

花言葉なんて

色で変わる
場所で変わる
人でも変わる

なのに何故
こんなに人を惹きつけるのか

自分の境遇に沿った言葉を
選んで使ってるだけだとしても

それを頭に入れた上で
今日も花を愛でるのだ

「私を忘れないで」と
願うように花を見る

2/2/2026, 10:09:18 AM

「勿忘草ってどう読むんだっけ?」っと
彼が文字を指さして言う
私が「わすれなぐさだよ」って教えたら
彼が笑って「忘れっぽいお前がよく覚えてたな」
なんてかえしてくる
私はむくれてソッポを向いた

2/2/2026, 10:08:27 AM

勿忘草

花言葉は「私を忘れないで」らしいです。
今調べてきました。草だろうとは思ったけど、花だった。申し訳ない、ごめんね勿忘草。
てか、「私を忘れないで」とか儚すぎるでしょ。
私もそんな魅力的な女性になりたい。

2/2/2026, 10:05:13 AM

小さな青い花を渡して去っていった

涙が止まらなかった

私のことは目に入ってなかったの




勿忘草

2/2/2026, 10:03:50 AM

『天空のアパート ラペータ』

「アシータ!ごはんできたよ!アシータ!」

パドゥが呼ぶ中、
アシータはアトリエに飾られた、
大きな写真に魅入られていた。

「これは?」
と、たずねるアシータ。

パドゥは思い出に浸るような、
遠い目をして語りはじめる。

「この世には、伝説の空飛ぶアパートが存在すると言われてるんだ。天空のアパート『ラペータ』って言ってね」
「ラペータ?」
「うん。家賃月8,000円」
「8,000円!」
「父さんは何年もラペータを探していたんだ。そして、ついに見つけたんだ!」

写真には、まぶしそうに目をつぶったパドゥの父が写っている。
間違えて自撮りしたらしい。

「父さんは『ラペータ』を見たんだ!」
そう言い張るパドゥ。

「でも、この写真をSNSにアップしたら「自撮りで草w」「ラペータ写ってないじゃん」とか、叩かれた父さんはショックで都内の68,000円のアパートに隠居しちゃった」
「そんな…」

パドゥは袖でサッと、涙をぬぐう。

「だから、いつか僕がラペータを見つけて、YouTubeにアップしてやるんだ!」

2/2/2026, 10:03:30 AM

『ブランコ』
『勿忘草』

いつもありがとうございます。
買い物していたらスペース確保するのを忘れました。

二日分置いておきます😭

みな様、ご自愛してお過ごしくださいませ。

2/3/2024, 11:14:52 PM

「ソティ、ちょっと手伝ってくれない?」
 母は、昔から私のことを「ソティ」と呼んだ。可愛い響きで、その呼び名は私も気に入っていた。けれど、どうして呼ばれていたかは、少しも分からない。母が亡くなったこの機会に、考えてもいいかもしれない。私だって、母の遺産だ。
 本名から推測してみる。「古賀須 澪子」。これで「こがす みおこ」と普通に読めるだろう。確かに、名字も名前も、ありふれたものとは言い難いかもしれないが、だからといって珍しいと上げられるものでもないだろう。ならば、本名は関係ないのかもしれない。
 いや、関係ある気がする。母は私を産む直前父と離婚した。そのときに、名字をわざわざ古賀須にしたと聞いている。戸籍をいじったと。ならば、関係あるのではないか。
 古賀須。こがす。「こ」が「す」。まさかとは思いつつも、偶然ではないような気がしていた。
 澪子の「こ」を「す」に変える。そして、「ソティ」と組み合わせると、
 ミオソティス。勿忘草だ。確か花言葉は、「真実の愛」。
 そうたどり着いたのはいいものの、何を思ってこれになったのだろう? なんだか釈然としない。
 と思ったけれど、きっと母は父に未練があったのだろう、と気づく。
 気持ち悪いなと思った。








#勿忘草(わすれなぐさ)

2/3/2024, 3:45:11 PM

今宵、朧月夜に咲いた花

誰を想い、月明かり見詰めているのか

空色の小さく控えめな花を好きだと言った

薄明かり照らし出す中で

悲しげに笑う貴方が浮かんでは消えていく



幾千幾億と流れる記憶の奔流に飲まれて

真っ白に揺れていた 取り戻せないままに

貴方と過ごした日々も

貴方と交わした言葉の欠片でさえも

何もないまま

ただ小さく一輪、揺れている

2/3/2024, 12:29:28 PM

勿忘草(わすれなぐさ)

目を覚ましたら、見慣れた自分の街に戻っていた。
近くにあった時計の時刻は、私が異世界に飛ばされてから30分ほどしか経っていなかった。
今までの出来事が、まるで嘘みたいだった。

でも、元の世界に帰る前に彼が私の左薬指に咲かせた指輪には、勿忘草が施されていた。左指に残るそれだけが異世界にいた真実を物語っていた。
勿忘草の花言葉は、「真実の愛」「私を忘れないで」
こんなことされて、彼を忘れて他の人と添い遂げるだなんてできない。最後までずるい。
「忘れるわけないじゃない…私だって別れたくなかった」

とめどなく溢れる想いは誰にも止めることはできなかった。

2/3/2024, 12:03:15 PM

勿忘草の香りが頬を撫でて喉に入った罪を吐き出させる。言ってはいけない、絶対に言ってはいけないのだ。やめてくれ。
「愛してる、離れないで、辛いんだ助けてくれ」あぁ、視線が刺さる。そんな顔で見ないで、私を捨てないで

2/3/2024, 10:06:59 AM

勿忘草



 適齢期を過ぎてからの婚活は、当然苦戦する。
 特に、私のような、まともに女性と付き合ったことがない人間は、ほとんどの相手から「地雷」と見られているのだ。

 なので、最初に会ったときは、なるべく話を途切れさせないように、相手が喋らないならこちらから喋るように努力する。
 日時を決めて落ち合ってから、予約していた店に、二人で少し歩いて向かう。
 今日の人は落ち着いた雰囲気の女性だが、道沿いの花壇に咲いた小さな水色の花を指さした。

「あ、勿忘草ですよ。」
「ワスレナグサ、ですか。名前は聞いたことがあったんですけど、見たのは初めてです。青い花だったんですね。」
「色は色々です。白いのもピンクのもあります。」
「花言葉、知っていますか?」
「あいにくと、知らないです。その辺は疎くて。」
「当ててみてください。」
「・・・では。言葉通り、私を忘れないで、とか。」
「あたりです。まあ、そのまんまですね。」

(なんだか、今日は会話が続いているぞ。)
 彼女は草花と由来に詳しい人だった。

 店に着いて、食事をともにしている間も、気性が穏やかで好ましい人だった。
 だめなのは私の方だった。
 仕事の話ばかりしてしまい、相手の顔が、若干無表情になり、( あ、しまった)と気がつくが、時すでに遅く、その後の顔は愛想笑いだと私にもわかった。

 作り笑いには詳しいんだ、私は。作り笑いには。

 当然、二度目はなかった。



 翌日、選挙準備の仕事をしながら、職場の後輩の谷に、昨日の話をしてしまう。
 谷は、年齢だけ重ねた私と違い、才能に溢れて努力も惜しまない、エース職員だ。後輩だが、すでに職位は並んでおり、もう少ししたら追い越されるだろう。
 数年同じ職場にいるので、割と何でも話す間柄になっていた。

「先輩、バカですね。」
「・・・。」
「仕事の話ばかりするとか、分かってないです。今まで女と付き合ったことないでしょ。」
「・・・。」
「そういうの、女には分かるんスよ。」

 何でも話す間柄故に、遠慮がない。
 私は、黙って手を動かしていた。


 一般的にイメージされづらいが、選挙というものは基本的に激務だ。
 うちの町では、選挙期間中は8:30〜20時まで役場で期日前投票ができる。
 窓口で選挙をしつつ、投票日当日、町6ヶ所の投票所で投票ができるよう、準備をしていく。

 また、投票日は同時に開票日でもあるので、開票の準備もする。
 投票日当日に投票所の運営をする職員への説明、開票事務をする職員への説明も行う。
 立候補者陣営からの質問や、入場券が届かないといった問い合わせ、さらには「 寝たきりの家族の投票を家族ができないのはおかしい」といった制度へのクレーム対応など。なお、選挙制度は法律で決まっているので、制度上の多くのことは、町の役場の職員では逆立ちしてもできることがない。国会議員が法律を変えないと、こちらが法律違反になるのだ。
 説明責任を果たすのみである。

 数限りなく仕事はある。
 土日も期日前投票所は解説するため、自然、この期間はブラックな職場になる。

 今やっているのは「県議会議員選挙」の事前準備で、任期は四年に一回。統一地方選挙だ。

「そういえば、前回選挙の時、先輩の友達が物見市の市議会議員選挙に出てたッスよね。今回も出てます?」
 私が見合いの話に応えなくなったので、谷は話を変えた。

 木倉のことだ。

「あいつは出ない。病気で死んでた。」



 木倉との付き合いは、主に高専5年次の研究室だ。

 高専は中学卒業時から進学できる高等専門学校で、高校と違って5年間ある。
 卒業時には「準学士」つまり短大卒と同じ扱いになる。
 大抵の高専は「工業高等専門学校」とか「商業高等専門学校」とかが前に付き、高校の授業+就職時に必要とされやすい専門的な内容を学ぶことができる、という学校だ。
 学校側も、卒業生の就職先と強く関係ができており、就職先側が求めるスキルを授業に反映するなどして学生を育て、即戦力とまではいかなくても、優秀な専門知識と技能を持った学生として「企業が欲しい人材」にしていく。
 と、ここまではいいことばかり書いたが、物事には裏側も当然ある。
 専門知識が学べるが、入ってくるのは中学校を卒業したばかりの15歳。
 世の中のことなんて全くわかっていない子どもだ。何が言いたいかというと、入ったはいいが、水が合わない人間が入り込むのだ。
 私なんかがモロにそうだった。工業高専に入ったくせに、文系の科目に惹かれ、当然に必要となる理数系の成績は散々であった。今でもお情けで卒業させてもらったと思っている。
 高校と違って5年間である。15歳の子どもが20歳の若者になる期間だ。水があっていないが我慢して卒業するというには、長い。
 生徒会室の窓に貼ってあった「そのまま腐っていくだけなのか」という殴り書きは、そんな停滞感を感じていたのは自分だけではないことを示していたと思う。

 そして、木倉も、成績はどうだったかまでは知らないが、心情的には明らかにそっち側だった。



 高専では、最終学年である5年次に、一年かけて研究をする。大学で言うゼミみたいなものだ。

 それまで授業をしていた教授の研究室を選ぶのだが、当然、人気に違いが出る。そして、研究室への生徒割当数は決まっているからして、学生は、人気の研究室は取り合い、不人気な研究室は避けられた。

 そして、じゃんけんで負け続けた私と木倉は、一番不人気の教授の研究室になった。


 期待されていなかったからか、内容も大した事ない。むしろ教授はほとんど研究室に来なかった。

 ボチボチやっていると、研究は進まない割に与太話だけははずんだ。

 私は、おおむねいつも1人で、教室内では何をやっているか分からない「ワケワカラン奴」という評価だった。
 しかし、皆が知らない漫画を持ってきていくつも回し読みに回したことで、かろうじてクラス内の居場所を得ていた。

 一方の木倉は社交的で、歌がうまく、ダンスをやっていた。クラスでも交友が広い方だ。

 なんだか話が合わなそうだが、木倉が子どもの頃に見た「時◯の旅人」というアニメを私が知っていたことで、よく話をするようになり、研究室の時間はある程度快適な空間となった。

 木倉は三国志が好きだったが、私はそれまで読んだことがなかったので、私は勧められて三国志を読んでみた。
 木倉は横山光輝を勧めてくれたが、何故か私が選んだのは北方◯三の三国志だった。
 しかし、これも結果的には悪くなかった。
 漫画とは違う内容、目線であり、読んだあとは木倉に回し、「呂布が渋くてカッコいい」という話で盛り上がった。

 なお、こんなことばかりしていたので、当然、研究ははかどらなかった。

 卒業後は、私は全くの別業種の大学に編入し、高専とは縁が切れた。



 木倉とも当然縁が切れたが、現代はネット社会だ。
 以前の時代ならそれが今生の別れとなっていたが、実名SNSというものが台頭してきて、以前の縁をつなぎやすくなった。

 特に、私のように学歴においても職歴においても何度か経歴ルートを変えている人間にとっては、業種を変えると知り合いがすべて切り替わるので、昔の知り合いとつながるためには、このような場がありがたかった。

 私は大学を出て社会人になり、一度の転職を経て小さな町役場で働いているとき、SNSに友達申請があった。
 木倉だった。彼はダンス講師となっていた。

(私も彼も、結局工業高専の勉強は活かせなかったかな。)

 一年間、二人で研究室の研究を乗り越えたのだ。名前を覚えてくれていたようで、懐かしい気持ちで友だち登録をした。



 そんな役所勤めも10年を超え、30代半ばになった私は、選挙事務に勤しんでいた。

 統一地方選挙と呼ばれる選挙がある。
 一つの選挙を指すのではなく、四年に一回、4月に日本中の多くの自治体で同時に選挙が行われるときの選挙の総称だ。

 これは、終戦後、日本国憲法の制定から最初の選挙が一斉に行われ、この時に行った選挙が4年毎に任期を迎えるので毎回同じ時期になる、という寸法だ。もちろん、県知事や市長が任期途中で辞任したりして、タイミングがずれるとこの時期から外れることになるが、今でも多くの選挙がこの時期に統一されていた。

 何が言いたいかというと、うちの町で県議会議員選挙の事務をしていたとき、同時に物見市では県議会議員選挙に加えて市議会議員選挙、更には市長選挙もあったのだ。
 物見市の職員はうちとは比べ物にならないくらいブラックであったろう。

 そして、SNSのタイムラインに、木倉の選挙活動が流れてきたのだ。
 物見市で生まれ育って、ダンス講師となっていた木倉は、物見市議会議員選挙に立候補していた。

 心情としては応援したかったが、統一地方選挙だ。同時にこちらでも選挙事務があり、休むこともできなかった。

(頑張れ、木倉。)

 10年以上前の研究室の日を懐かしみ、内心で応援した。


 職場の後輩の谷と選挙事務をしながら、物見市に友人が出ていることを伝えてみる。

「へえ、知り合いが議員になるような年なんスね。」
「最近は議員も若年化しているから。」
「うちの町の議員は高齢者ばっかりっスけど。」
「それは言うな。」

 議員が高齢化すると何が問題なのか。
 議会の改革が進みづらいのだ。
 例えば、タブレットが使えないのでペーパーレス化が進まない。ペーパーレス化が進まないので、資料は全部印刷してホッチキス止めして議員一人分をセットしていく手間がかかる。印刷ミスがあればやり直しだ。

 話が逸れた。

 木倉の立候補者としてのプロフィールを見ると、「読書。北方◯三の歴史ものなど。」と書いてあった。
(まさかあのときの三国志のことじゃないよな?)

 頻繁に昔を懐かしむようになると、要するにおっさんになったということだろう。

 その後、木倉の惜敗を知った。SNSには、悔しさがにじみ出るようなタイムラインが載っており、再出馬を予想させた。



 更に数年。

 SNSを見て、妙なことに気がつく。

 木倉自身の発言は相当昔で止まっていたが、「木倉さんは〇〇さんと〇〇にいます」というタイムラインが流れていたので、活動は続けているのだろうと思っていた。

 しかし、よくよく読むと、そのタイムラインは「木倉先生、見ててください」とか、「子どもが大きくなりましたよ」とか書いているのだ。

 SNSの木倉関係のページを調べてみる。

 この数年の間に病死していた。

 私が木倉のタイムラインと思っていたものは、全て、彼を懐かしみ、心は一緒だ、と思った彼の知人・関係者が投稿したものであった。



 ガンは一般的な病気だ。
 日本人の3人に1人はがんで死ぬとまで言われている。

 しかし、私は、自分は若くはないものの、死が近いとまでは思っていなかったため、衝撃であった。

 そのまま調べて見ると、木倉は、私が伝染病対策として10万円を給付する仕事をしているとき、病院で亡くなっていた。

 「次の選挙のときに部署異動していれば時間が取れるので応援に行こう」と思っていた私の密かな希望は、永遠に叶わなくなった。

 更に調べると、木倉がガンの闘病時に雑誌に寄稿していたことを知り、取り寄せてみた。

『ガンは生活習慣で治せる』『むしろ前より健康になった』『親より早く死ぬ不孝をしたくない』

 そこには、活動的で情熱的なかつての木倉を思わせる文章が踊っていた。

(生きているうちに会えばよかった。)

 後悔しても、もちろんどうしようもない。



 木倉は死んでしまって、もう何をすることもできない。

 一方で、私は生きてはいるが、40代になっても独身で、ブラックな職場環境に追われ、夢を追うどころではない。

 夢。
 そういえば、研究室で就職の話をしたことがあった。
 工業高専の就職は、基本的には夢がない。現実の会社の話だからだ。
 そんな話だけだとうんざりするので、好きだったゲーム会社に入るなんて、夢があっていいよね、といった話もしたことがあった。私はファ◯コムゲーが好きで、木倉はア◯ラスゲーが好きだった。

 もちろん、工業高専で習ったことはゲーム制作とはなんの関係もないので、就職先としては現実味がなかったが、気分転換の話題としては華やかなものだった。

10

 道の途中に咲いている勿忘草を、お墓代わりにして拝んでみる。

 木倉とは学校のみの付き合いだったので、家も墓も知らないので、墓参りにも行くことができないのだ。
(こうして墓標代わりにしていくと、墓の場所も知らない故人が増える度に、大変になりそうだ。)

「あれ、先輩。何してんスか。それ、花っすよ。」
 後ろから後輩の声が聞こえた。我に返る。

「知ってるよ。変だったか?」
「変だったっス。」

 気にするな、後輩。
 私は昔からこういうやつなんだ。そっとしておいてくれ。

2/3/2024, 10:00:28 AM

「俺は死んでも好きな人に忘れて欲しくないんだ」

我儘かな?なんてちょっぴり可笑しそうに言った先生だったけれど、瞳は本気の色をしていた。
これは嘘じゃない。稀にある先生の本心の話、だ。

私と先生とていつもこんな生き死にの話をしている訳では無い。
好きなお菓子とかハマっているドラマとか、日常のなんて事ないたわいのない話をしている時もある。
だけれど、先生は国語の先生であって、文学の影響もあるか他の大人より何倍も生きる事と死ぬ事を考えているような気がする。
これは私が勝手に思っていることであって、もしかすると先生がただのメンヘラな夢見がち少年を抜け出せずにいるという可能性も無くはない。

「死んでも?」

「人は2度死ぬというでしょう?物理的に死んだ時と人の記憶から忘れ去られた時。…でも、臆病なだけかもね、」

「そんなことないです、!素敵、だと思いますよ」

「、ありがとう」

出来ることなら、私が先生を永遠に覚えていたい。
私だけが先生を覚えていたいのに。
私の知らない先生を知っている人が他にいるなんて許せない。
先生のせいで私は最近やけにロマンチックになってしまった気がする。
先生を永遠に覚えていたら、先生の一番になれるのかな。


2024.2.2『勿忘草』

2/3/2024, 9:59:44 AM

自分の名前と引き換えに、彼女との思い出を忘れずにすむ薬、、


【お題:勿忘草(わすれなぐさ)】

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