江戸宮

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「俺は死んでも好きな人に忘れて欲しくないんだ」

我儘かな?なんてちょっぴり可笑しそうに言った先生だったけれど、瞳は本気の色をしていた。
これは嘘じゃない。稀にある先生の本心の話、だ。

私と先生とていつもこんな生き死にの話をしている訳では無い。
好きなお菓子とかハマっているドラマとか、日常のなんて事ないたわいのない話をしている時もある。
だけれど、先生は国語の先生であって、文学の影響もあるか他の大人より何倍も生きる事と死ぬ事を考えているような気がする。
これは私が勝手に思っていることであって、もしかすると先生がただのメンヘラな夢見がち少年を抜け出せずにいるという可能性も無くはない。

「死んでも?」

「人は2度死ぬというでしょう?物理的に死んだ時と人の記憶から忘れ去られた時。…でも、臆病なだけかもね、」

「そんなことないです、!素敵、だと思いますよ」

「、ありがとう」

出来ることなら、私が先生を永遠に覚えていたい。
私だけが先生を覚えていたいのに。
私の知らない先生を知っている人が他にいるなんて許せない。
先生のせいで私は最近やけにロマンチックになってしまった気がする。
先生を永遠に覚えていたら、先生の一番になれるのかな。


2024.2.2『勿忘草』

2/3/2024, 10:00:28 AM