飛花

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「ソティ、ちょっと手伝ってくれない?」
 母は、昔から私のことを「ソティ」と呼んだ。可愛い響きで、その呼び名は私も気に入っていた。けれど、どうして呼ばれていたかは、少しも分からない。母が亡くなったこの機会に、考えてもいいかもしれない。私だって、母の遺産だ。
 本名から推測してみる。「古賀須 澪子」。これで「こがす みおこ」と普通に読めるだろう。確かに、名字も名前も、ありふれたものとは言い難いかもしれないが、だからといって珍しいと上げられるものでもないだろう。ならば、本名は関係ないのかもしれない。
 いや、関係ある気がする。母は私を産む直前父と離婚した。そのときに、名字をわざわざ古賀須にしたと聞いている。戸籍をいじったと。ならば、関係あるのではないか。
 古賀須。こがす。「こ」が「す」。まさかとは思いつつも、偶然ではないような気がしていた。
 澪子の「こ」を「す」に変える。そして、「ソティ」と組み合わせると、
 ミオソティス。勿忘草だ。確か花言葉は、「真実の愛」。
 そうたどり着いたのはいいものの、何を思ってこれになったのだろう? なんだか釈然としない。
 と思ったけれど、きっと母は父に未練があったのだろう、と気づく。
 気持ち悪いなと思った。








#勿忘草(わすれなぐさ)

2/3/2024, 11:14:52 PM