『勿忘草(わすれなぐさ)』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「この花が好き」
そう云ったのは誰だっただろうか。母親だったか、それとも隣に住んでいた幼馴染だっただろうか、はたまたクラスが一緒だった影の薄い同級生だったか。小さな花弁が北風に吹かれて、今にも散ってしまいそうなか弱い見た目をしているが、以外にも図太いらしく花弁一つ土の上には落ちていない。耐寒性に優れた花ではあるが、花期は春頃だったように記憶している。
めずらしい。
しげしげと眺めて、はて、どうしてそんなことを知っているのかと不思議に思う。園芸に興味はないし、花に関心があるわけでもない。なのに、なぜ。
「花言葉って知ってる?」
ああ、そうだ。誰かがこの花を育てていたのだ。しかし、それが誰だったのか思い出せない。致命的だ。姿も、声も、覚えていない。だというのにこの花に感する記憶だけは一丁前に覚えている。
勿忘草、花言葉
調べてみるとすぐに検索結果が出てきた。あっ、
勿忘草。花言葉は、「真実の愛」「誠の愛」
それから「私を忘れないで」だ。
初めて見た時、えらく控えめな花の癖に重たい愛を望んでいるなぁと思った。人は忘れゆく生き物だ。懐かしい、と思う程深く遠くで忘れてしまう。いつかの旅出を共にして、どこかの海辺へ流して一人立ち直り、新しく出会い生きた者と進み行く。
それなのに、忘れないでだなんて、大層な重い思いなことで。
俺は、人に執着しない。嫉妬も勿論しない。
人は変わりゆく生き物だからだ。
幾ら俺が望んでも、人は変わっていく。
呆気なく、手のひらで掬った砂のようにサラサラと隙間から零れていくように、俺がどれだけ囲っても、縋っても変わるものは変わる。
嫉妬も執着もしない。できない、が正しいのだろうか。
でもまあ寧ろ、俺以外と幸せになってくれるなら、大満足だ。
俺なんかじゃ、幸せに出来ないってことは最初から分かってたから。
「幸せになりたいよ」
そう零すお前は、相も変わらず薄っぺらい身体をしていた。
白く細長い手には何本もの管が繋がっているのが見えて、俺はただ座ってお前の手を撫でる。
何も出来ないのだ。俺には、何も。
「お前の、幸せって何」
酷い言葉かもしれない。けれど、本当に俺には分からないのだ。
「あはは、酷いなぁ。何度も言っているじゃないか。君に、愛されることだよ」
「またそれか」
「またそれかっていうか、これだけしかないっていうか」
はぁ。
俺の溜息に、ピクリと肩を揺らしたのが見える。細い指が、俺に触れようとするから、思わず「止めてくれ」と呟いた。
「ごめん……」
「……俺は、恋愛感情が分からないんだ」
「うん。知ってるよ。恋愛に関する感情や記憶が無くなる病気でしょう」
「あぁ。まだ、治療方法が見つかってないんだ。だから、見つかるまで、待ってくれないか」
「はは、私の肺炎がこれ以上酷くなる前にお願いするね」
態とらしくコホコホ、と軽い咳をしてみせて微笑んだ。
それが、最期に見たお前の、笑みだった。
今、俺の手の中にあるのは、多分お前が吐いた花。
肺炎で苦しい中花吐き病にかかれば、体への負担は相当あったハズなのに、気付かなかった俺が許せない。
「勿忘草」だなんて、重い思いを置いていきやがって、って文句を言ってやりたくなった。
けど、もう、お前は居ない。
こんな小さな花を置いて、どっか行っちまった。
あぁ、いや。俺が、殺したんだろうか。
お前の幸せになれなかったから、お前を幸せに出来なかったから。
ゴホッ……
いきなり体が地面に引き寄せられたように重くなった。と、同時にとてつもない吐き気に襲われる。
胃から迫り上がる何か。
喉に近づくにつれ、形になっていくのが分かった。
あ、吐く。
我慢する余裕すらなく、喉を通り、口を抜け、床にボトボトと、何かが落ちていく。
それを見て、目を見開いた。
「なぁんだ……。俺も大概、お前が好きだったってか」
俺が吐いたのが、お前と同じ名前を持つ「紫苑」だなんて、皮肉なもんだな、全く。
───────
恋愛感情消失病(適当〜な創作奇病)の唯一の治療方法は、別の奇病にかかること。
花吐き病は、吐かれた花に接触して感染する。
片思いを拗らせると発症する訳で、お前は俺のことが好き。で、俺も実はお前が好き。
俺は恋愛感情に関連するものが無くなるから、気付かないのよ。でも、最後、お前の最期の花に触れて感染。
無事に恋愛感情消失病は治るのね〜Happy〜!
はは、でも好きな御相手はもうこの世には居ないよ。
恋をして花を吐き、実らなければ死に至る病。
存在すれば美しくも残酷でしょうね。きっと。
私は、花を吐くことはないと思いますが、吐くのなら美しい花を吐きたいものですねぇ。
花へ自分の想いを込めて、贈る。
青く小さな花たちが、あなたの胸で咲いている。
私を忘れないで、なんて花言葉、あなたはまさか知らないでしょう。花にはめっぽう疎いあなただから、こうしてそっと贈ったのです。
そう、とてもきれいな花だから、あなたへ贈ったのです。
『勿忘草』
「私を忘れないで」
それは、どれほど重い言葉だろうか。
言う方は、相手が頷いてくれたら、満足して笑みと共に目を閉じるのだろう。
言われた方は、目を閉じた相手に縋り付いて、枯れることのない悲しみに溺れるのだろう。
言われなくとも、決して忘れない。…だからどうか。
「貴方を覚えていられる“幸福”」を、
「貴方を忘れない為の“義務”」にすり替えないで。
我に問う 勿忘草の 花言葉
理解する日は 来るのだろうか
#勿忘草
1年前の今日、就寝前のスマホに着信があった。
同じ高校の女子友達から。
今度久しぶりに、みんなと〇〇しない?
久しぶりに連絡で驚いたけれど、なんて誘いだったのか覚えていない。
ごめん、その日は予定があって難しいんだ。
特に予定はなかったけど断った。なんで断ったのか、正確な理由は覚えていない。
たぶん、長年顔もあわせず、頻繁に連絡をしていなかった、忘れかけの過去の友人と会うことに抵抗があったのかもしれない。
すると、もうその女子友達から連絡が来なくなった。
なんとなく原因はわかるのだけれど、なんで連絡が途切れてしまったのかわからない。
たぶん、その友達はつれない自分を「忘れよう」と思ったのだろう。なんでも忘れてしまう自分と同じように。
『勿忘草』(創作)
「忘れる、忘れない、忘れる、忘れない…」
勿忘草の小さな青い花たちに願いを込めて呟いてみる。
花占いは花弁を引き抜くけれど、勿忘草の小さな花に、そんなことは出来なくて、わたしは花を数えるように呟いていた。
「忘れる、忘れない…」
ごめんね。もう占うのはやめよう。
わたしは忘れるつもり。忘れなくちゃ。
だから「忘れないで」なんて言えない。
─ 忘れて、いいよ ─
静かに落ちる涙は、勿忘草を濡らして消えた。
無題
元妻の物を処分して欲しい
彼の所に行くにあたり、お願いした事だ
ただの物と言えば物だ
私は我儘なんだろうか…?
彼のタイミングでしてもらえば良かったかな…
言った事に少し後悔してる
彼は当たり前の事だよ
sarangが来るって言った時から考えてたし
言いにくい事言わせちゃったね
って言ってたけど…本心…か…?
こう言う事に関して男って無頓着だよなーって思う
何で元妻の物が嫌なのかな?って考えてみた
きっと私の事を適当に扱われてるって思うからなんだよなぁ
反対に男性は、元彼や元夫の物で溢れかえってる彼女の部屋で過ごす事に抵抗はないんだろうか…?
物より捨てて‼︎って言うのが写真らしい
反対に写真はあまり気にならない
でも、見えない所に置いといて欲しい
写真は過去のものだから
ただの思い出だし
処分してと言ったものの、
きっといくつかは残っているだろう…
わざとではなく、無意識に
うっかり、すっかり忘れてる事ってあるだろうし
心の中に豊かなベランダがあった頃
勿忘草と チューリップ
モネの庭を見習って、小さな丸い鉢に植えた
少しの間花を愛でて楽しんだ
あの世界はどこに行ったんだろう
私が作ろうとした世界は 最初 1つが綻び
やがてガラガラと音を立てて全て崩れ去った
きっと誰の世界でもそうなのかもしれない
形あるものはいつか消える
だから魅了されるのかもしれないし、
欲しくなり、作りたくなるのかもしれない
そしてそれが永遠に在り続ける事を夢見る
元に戻って欲しい、また手に入れたい私の植木鉢
金継ぎで美しく戻して、また花を植えたい
『勿忘草』
「久しぶり!」
そう言って部屋に入ってきた彼女。
青い小さな花のアクセサリー彼女の耳を彩っていた。
夏だというのに黒いワンピースを身に纏っていた。
私があのときあげた花。
大好きな、大好きな花。
花言葉を込めて贈った。
私はいつまでも覚えていてほしかったから。
どんなときもずっと愛していることを。
誰よりも強く愛していることを。
私は届かないのが分かっていたけど、
耐えきれずに呟いた。
『勿忘草が欲しい』
届いたのだろうか。
彼女は驚いた顔をしながらよく2人で遊んでいた公園に行った。
10分位で戻ってきた彼女は
黒いワンピースに葉っぱを付けて
少し目を腫らして
泣いたあとによく見た満面の笑みで
「勿忘草!」
そう言って私の前に置いてくれた。
堪えきれず泣き出してしまった。
君に触れようとして触れられなかった。
8月の中旬の物語。
わ るいとおもってるなら
す ぐにあやまってよ
れ んらくもくれなかったくせに
な によいまさら
ぐ レーな関係
さ っさと終わらせましょう?
勿忘草の花言葉
【わたしを忘れないで】
人って未練ばかり。
ま だ 人 生 の 少 し し か 生 き て い な い
君 と の 時 間 も
き っ と 思 っ た よ り も す ぐ に な く な っ て し ま う ん だ ろ う
僕 は 君 と 過 ご し た 時 間 は き っ と 忘 れ な い し
短 い だ な ん て 言 う こ と も な い だ ろ う
だ け れ ど 、 君 は ど う な ん だ ろ う ?
色 ん な 人 に 囲 ま れ て
僕 よ り も 人 気 者 の 君
す ぐ に 、 僕 よ り も い い 人 を 見 つ け て 仲 良 く な っ て
僕 と は お さ ら ば な ん だ ろ う な
き っ と そ れ で い い
僕 達 は そ う い う 関 係 で 始 ま っ て 終 わ る の が ち ょ う ど い い
き っ と 、 そ れ で い い
ち ょ っ と だ け 、 我 儘 聞 い て く れ る な ら
ど う か
僕 と 過 ご し た 中 で の
ど れ か 一 つ の 思 い 出 だ け は
君 を 縛 る よ う に 忘 れ な い で ほ し い
L I N E を 開 く
君 か ら の 返 事 は ま だ み た い だ
2/2 「勿忘草」「楽しい時間だけは」
#作者の日記帳
一面の薄青にフォーカスはぼやけても
鼻腔の奥に残る香りよ
ありがとう さよなら
ドイツに住むソフィアは、想いを寄せていたディルクに、ディルクの好きな花をつもうと思った。
その花は、綺麗な青紫色で、水辺に沢山咲いていた。
崖を降りようとしたが、ワンピースの裾が足に引っかかり、うっかり滑らせてしまった。
そのまま下へ落ちてしまい、水の中へと消えてしまった。
ディルクもソフィアのことが気になっていたので、死んでしまったのが、悲しくて仕方なかった。
毎日、ディルクはソフィアのお墓にあの花を供えた。
ある水曜日、ディルクはソフィアのお墓に、花と一緒に手紙も添えた。
手紙には、 『 ソフィアへ 君のことは忘れないからね。ソフィアも僕のことを覚えててね。見守ってくれたら嬉しいな。 ディルクから 』
と、書いた。
勿忘草は、ドイツ語で「Myosotis sylvatica」。
私を忘れないでという意味。
動けなくなってしまうので
終わるまではごめんなさいではなくて
ありがとうでいさせていただきます
勿忘草、多分すみれみたいなやつだ。花への関心がないのでチューリップとかひまわりとか、オーソドックスな花に似ているかで全部の花を判断している。新しい花を覚える気はない。名前と特徴が一致する、比較対象の花は自分でもう選んだ。その中で勿忘草が確か一番すみれに近い。
調べたけどあんま似てなかった。どちらかというとアジサイに似てて青かった。よく調べてないから青くない勿忘草もあるかもしれない。でも、私の中の比較対象が増えそうなのでやめる。
小さく咲く
勿忘草よ
真実は
何処にもないよ
今よりほかに
「勿忘草」
勿忘草
あなたからメールで届いた画像には、小さな青い花が咲いていた…それきり、あなたと連絡取れなくなって、あなたの写真に、その日の出来事や、愚痴をこぼしている…
何の前触れもなく、私の前から消えたのは何故…幾つもの季節が過ぎても、理由が判らない…毎日が、色褪せて、あなたの居ないこの時間が、空間が…辛くて…逢いたい…あなたに…あなたの暖かい指先で触れて欲しい…
「はい、これ」
「……これって、」
「勿忘草。花言葉はね…」
さっき道端でガサゴソやってたのはこれが理
由か。幼子か?こいつは。いや、今に始まった
ことじゃ…ってそれどころじゃない。
実はこの草花を渡されるのはこれが初めてじ
ゃない。前にも一度渡され、数日しないうちに
ふらっと居なくなった。エグい気分屋のこいつ
は数十年一緒にいる俺のことでも簡単に着拒に
した。
「花言葉はね、『私を忘れないで』」
「…今度はどこ行くんだ。」
呆れ半分、怒り半分のような声が出た。
「別に。どこにも」
「………」
「ただ、なんとなく」
* 勿忘草 No.14
昔大好きだったw-inds.の曲に、
勿忘草ってあったな。
ちょっと切なくて、優しい感じの曲。
そう言えば、最近好きな競馬にも、
勿忘草賞ってレースあったな。
花言葉『私を忘れないで』だったっけ。
どんな花?むしろ草?
それは全く記憶に残っていないのに、
言葉だけが残像のように残っている。