『勿忘草』
「久しぶり!」
そう言って部屋に入ってきた彼女。
青い小さな花のアクセサリー彼女の耳を彩っていた。
夏だというのに黒いワンピースを身に纏っていた。
私があのときあげた花。
大好きな、大好きな花。
花言葉を込めて贈った。
私はいつまでも覚えていてほしかったから。
どんなときもずっと愛していることを。
誰よりも強く愛していることを。
私は届かないのが分かっていたけど、
耐えきれずに呟いた。
『勿忘草が欲しい』
届いたのだろうか。
彼女は驚いた顔をしながらよく2人で遊んでいた公園に行った。
10分位で戻ってきた彼女は
黒いワンピースに葉っぱを付けて
少し目を腫らして
泣いたあとによく見た満面の笑みで
「勿忘草!」
そう言って私の前に置いてくれた。
堪えきれず泣き出してしまった。
君に触れようとして触れられなかった。
8月の中旬の物語。
2/2/2024, 3:01:35 PM