『冬のはじまり』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
吐き出した息が白くなる。感覚が殆どなくなった指を画面の上で滑らせる。待ち合わせよりもずっと早い時間だけれども待たせるよりはずっと良いだろう。
この冬こそ、あの娘と…
「見られたって?」
その言葉に同僚は静かに頷いた。
「馬鹿だな、あれだけ気を付けるよう言われてるのに。おかげでこっちの部署は大慌てだ」
ばたばたと走り回る仲間達。
別部署の同僚の尻拭いをこちらの部署がする羽目になってしまい、本当は自分も急いで働かなくてはいけないが、落ち込んでいそうなこの同僚をほっとくことも出来ず、とりあえず話を聞きに来た。
「まぁでもわかる。ようやく自分の出番がやってきて、楽しくなって、ちょっと気が抜けちまったんだよな。今年はあっちの部署がやけに長い期間働いてたから」
その部署の方を向いてみれば、この尻拭いを手伝ったりしていた。ありがたいが、お前達の出番じゃないのに。
「そもそもあいつらが長く出張ったりしなければこんなことにはなってなかったかもしれないのに……」
思わずぶつぶつと不満が漏れる。
それに、同僚がふるふると首を横に振った。そんな心優しい同僚を困らせるのが許せなかった。
「いや、たしかにお前も不注意だったが、俺はそもそも納得いってない。本来この時期にはお前のところの仕事もちゃんと終わって、俺達の仕事が始まってたはずだ。あっちの部署のせいで、人間達も不満に感じていることだろう」
そんなことを考えていたら一言文句を言わないと済まなくなってしまい、立ち上がる。
「やっぱり一言言ってやる」
そう言うと、同僚は俺を必死に止めようとした。
まぁそうだよな、おまえは優しいから止めるよな。
不意に、同僚が笑う。
何がおかいしのかと尋ねると「君は熱い人だね」と嬉しそうに微笑んだ。
「まるで夏みたい」
それ、あっちの部署じゃん。最悪の褒め言葉だな。
――はぁ、そろそろ俺も働くか。
「あとは俺達に任せとけ。秋はもう今年は終わり。ゆっくり休んでろ」
そう言い残し、仕事に戻る。ここからは俺達の出番。
さぁ、冬を始めよう。
『冬のはじまり』
我が家の暖房器具はガスファンヒーターである
あ〜そろそろやなぁ〜。。。と準備して
スイッチをポチッと押してしまった瞬間から
”冬のはじまり”を感じ
ガス代の心配をすることになる。。。
【冬のはじまり】
冷たい木枯らしが村を吹き抜け、ひとひらの雪が舞い落ちる。障子戸の向こうにそれを見てとって、僕は庭へと飛び出した。
灰色の雲の薄く広がる空。息を深くまで吸い込めば、肺を満たす凍てつく冷気が全身を内側から切り裂いていく。ああ、冬だ。冬がやってきた。
「待ってたよ!」
両手を広げ天を仰ぐ。そうすると僕の目の前に、風に紛れて人影が舞い降りた。雪よりも白い白銀の髪に、見るもの全てを魅了する冷ややかな蒼玉の双眸。僕の誰よりも愛する、冬を呼ぶモノ。
無機質な美貌で僕を見据える君の手を取り、冬のはじまりを告げる女王の氷よりも冷たい指先に、再会を祝福するキスを落とした。
─冬のはじまり─
「うわっ…寒っ!」
外に出ると、吐いた息が白くなる程寒かった。
手袋とか持ってくるべきだったなぁ…。
『あっ!やっと来た!』
『お前遅いよ、こっちはめっちゃ寒いのにさ!』
「いや~ごめんよ?朝布団から出られなくて…」
『確かに分かるけど…!』
そんなくだらない会話だけでも、心がほっとする。
嗚呼、また1日がはじまるんだな、って。
『…おーい。聞いてる?』
「…え?何が?」
『だーかーら!一緒に返ろうぜって話!』
「あぁ、それね」
『それねじゃねぇよ、お前聞いてなかっただろ!』
そんな会話も今年で終わり。
こいつと過ごす、最後の冬。
でもまだ冬は、はじまったばかり。
イルミネーション
年賀状用ポスト口
ダウンジャケットとブーツ
手袋とマフラー
街を歩くと
置いていかれてることを
思い知らされる
『冬のはじまり』2023/11/309
冬のはじまり
何十年振りだろう?彼の夢を見たのは
設定は現在
覚えているのは、
映画の主人公のように3ピースのスーツを着崩した彼と話しながら歩いてる場面だ
彼は背も高くスタイルも良いから、
あぁやっぱり格好良いなぁ…
当時も今も服のセンスは抜群に良いなぁ…
やっぱり好きだなぁと見惚れながら話してる私
あぁ、この目だ
いつもこの目で私を見つめてた
懐かしい
私以外を見る時とは、全く違う目
愛おしいそうに幸せそうに照れくさそうに、いつも微笑んでくれてた
彼は私を好きなんだなと実感するこの目
それなのにどうして愛が足りないと私は言い続けてしまったんだろう…
そう思った瞬間、夢なのに
夢だと分かっているのに
胸が締め付けられて、無理矢理飛び起きた
夢の中と現実の自分が入り混じって、
たくさんの愛情をくれたのに信じ切れなかった自分に嫌気がさして
顔を合わせる資格もない
微笑まれる資格もないと、夢でも自分が許せなくなり現実に戻った
本当は永遠に目覚めなくてもいいから、彼を感じていたかった
あんなに誰かを愛する事は二度とない
木の葉が散り
風が冷たくなった。
粉のように振るなにか
雪だ。
冬の始まりだ。
外が寒くなってきました。ゆきはまだ降ってないけど寒さがやべーです。インフルエンザもつれーです。みんなはかからないように手洗いうがい欠かすなよ。インフルエンザ辛い!
[冬の始まり]#8
「12月の下旬らへんってさ、空いてる日ある?」
クラスメイトと談笑しながら階段を降りてくる彼女を下駄箱前で待ち伏せして捕まえる。
「えっ?」
靴を取り出す手がピタッと止まり、疑わしそうに眉を顰めたが、スカートを握り込んで俯く私を見て事を察したのだろう、その顔はすぐに綻んだ。
「何よ遠回しに。素直にクリスマス会いたいです、って言いなさいよ。」
「……クリスマス会いたいです。」
「よくできました。もう空けてあるから。」
「えっ……いいの?さっき誘われてなかった……?」
「全部断ってる。大切な日は、大切な人と居たいでしょ?」
「泣いちゃう……。」
「好きなだけ泣きなさい。聖夜を祝うような柄じゃないけど、あやかれるものはあやかっておいた方がいいのよ。」
「肝に銘じます……。」
気づけばこちらの言葉を待たず先を行く彼女を、靴の踵を踏み潰しながら急いで追う。
「……まだ何か言いたそうね。遠慮せず言いなさいな。」
靴を履き直したところで、改めて彼女に向き直る。が、彼女の真っ直ぐな視線に耐えかねて、少し目を逸らす。
「あ、あの……、お泊まり……とかって、できたりしますかね……。」
「お泊まり?」
「ごっ、ごめん急に!調子乗った!今のは忘れて」
「しましょう。」
「えっ」
「しましょう、お泊まり会。」
「えっ……いいの……!?」
「その代わり、忘れられない夜にしてね。」
「……頑張ります……!」
冬が、はじまる。
冬の始まり。
それは何だか寂しい日。
嫌なことも忘れたくなる日。
でも、絶対に忘れちゃいけない日。
たとえ、うまく伝えられなくても。
冬の始まり
夏が終わると私は少し寂しさを感じるのです
季節が過ぎればそれと同時に何かを失うのです
当たり前のやうで人は失った事を気づきあしない。
子供の頃とは違う真っ暗闇に
真っ暗の夜に降る雪はまるで粉のようで
あられのようで
矢張り寂しさが目に染みるのです。
春には春の
夏には夏の
秋には秋の
そして
冬には冬の想い出を
沢山
遺してくれた君
君との想い出を辿りながら
哀しさや淋しさに
涙を零す回数は
確かに減ってきたけれど
君を想う心には
何の変わりもなく
季節だけが
移ろってゆき
君がいない冬が
また
始まる
# 冬のはじまり (335)
澄んだ空気
遅い朝焼け
白い息
頬を刺激する凍る風
口から出る温かい吐息で
自分の手を 温め
両手を擦る
見上げた空には
微かに見える
星星の輝き
月の煌めき
また今年もこの季節がやってきたと
ヒートテックを身に纏い
寒くないように 次々と
服を着ていく
マフラーを巻いて
さぁ 今日も完璧
行ってきます
いつもより30分早く家を出る
そんな日がやってきた
咳が止まらない。季節の変わり目は、冬のはじまりは毎年こうだ。子どもの頃は、大人になれば喘息は治るからね、と言われた。そんなことはなかった。ぽつりぽつりと降る雪のように積もってしまった言葉のうちのひとつだ。恨みに分類してもいいようなものだ。大人の無責な願いと祈りと愛を間に受ける子どもだった。素朴な。なあ、治らなかったよ。おまえは治らないよ。今年は特にひどく、加湿器を常時回しながらネブライザーを日に四度回している。薬剤を超音波で細かく霧状に放出して吸引させる医療機器だ。霧が、煙が、この不具の肉体を包んで、薬剤の反作用で心臓は早鐘を打ち、わずらわしい睡眠欲を諌める。子どもの頃、深夜の救急センターで隣り合ったあの喘息の子どもは今頃どうしているだろうか。元気に大人をやれている?それとも煙につつまれながら、何のものとも知れずにくだらない恨みを分類してる?
息を吸う
鼻の奥ガツンとなる
布団を出て
学校に行くでもなく
会社に行くでもなく
ぼんやりと
うちがわに
新しい風を招く
冬のはじまり
「乾燥で本の頁が上手く捲れなかった時」
それだけ言い放って、彼女は返却本を棚へ並べる作業に戻った。
「いまいち共感出来ないな」
「じゃああんたは? どんな時に冬だなって思う?」
どんな時に冬だなと思うだろう。
「コンビニの肉まんが食べたくなった時、かな」
彼女はハードカバーの小説を棚に戻しながら「なにそれ」と笑った。
「でも、嫌いじゃない」
「そうですか」
日焼けして装丁の色が薄くなった小説を、ラベルを頼りに棚へと並べる。
「食べ物じゃないけど、暖かいココアは冬って感じするかも」
ブラックコーヒーを好みそうなイメージが勝手にある。
「今、似合わないって思ったでしょ」
「まさか」
似合わないとは思っていない。意外だとは思ったけれど。
他愛もないことを言い合っている内に作業は終了した。図書委員も楽な仕事じゃない。
返却本を入れていたケースを所定の位置へとかたづけて、ぐっと一つ背伸びをする。どこかの骨が愉快な音を立てた。
「あんた、これから暇?」
「あとは帰るだけ」
「じゃあさ、コンビニ行こうよ。言ってるうちに食べたくなってきた」
財布を確認する。買い食いに付き合うだけの資金はありそうだ。
作業が終わったことを司書教諭へと報告して図書室を後にする。外に出ると、ちらほらと星が顔を出していた。
朝は生徒でごった返しているコンビニも、下校時刻にはわりと空いていた。ホットの緑茶を手に取ってレジに向かい、一つしかなかった肉まんの代わりにピザまんを選んだ。
少し遅れて、肉まんとココアを装備した彼女がイートインスペースへと入ってきた。
「食べ合わせ悪くない?」
「いいの。こうしたいと思ったから」
意志の強いことだ。
「ねぇ、半分こして食べない?」
冷気に晒されて湯気立っている肉まんが、半分に割られてこちらに差し出された。
「急になんで?」
「あんた、私に遠慮したでしょ」
「してないよ。別にどっちでもよかった」
食べたいと思っている人間に食べられた方が、肉まんもましだろう。
「じゃあ、ピザまんも食べたいから、半分交換しよ」
「じゃあ、って……」
譲る気はなさそうなので大人しくピザまんを半分にして渡す。圧力に屈したトレードだ。先進国同士なら国際問題に発展するだろう。
「あんたは、今年サンタさんに何頼むの?」
口に運びかけた肉まんを落としてしまうところだった。隣を見やると、平然とした顔でピザまんを頬張っている。
「冗談」
分かりづらい冗談だ。
「サンタはともかく、欲しいものとかないの?」
「特にないな」
「そう、幸せなのね」
至って普通だよと言い返したかったけれど、口いっぱいにチーズの幸せな味が広がっていたのでやめておいた。
「そっちは? 欲しいものあるの?」
「欲しいもの、はない」
「含みのある言い方だね」
緑茶にそっと口をつける。快適に飲める温度まではまだ時間がかかりそうだ。
「イルミネーション、隣町でやってるじゃない? 毎年。あれ、観に行きたい」
「そっか」
脇腹をつつかれた。
「やり直し」
「は?」
「は? じゃなくて。返事、やり直して」
まっすぐ窓の外を見つめたまま、彼女の表情は伺い知れない。
「一緒に、行く?」
弾けては消える言葉達の中で、唯一残ったのがこれだった。
「ぎりぎりだけど、合格」
満足気に、彼女は合格を言い渡した。冬は始まったばかりで、約束はまだまだ遠い。
適温になったはずの緑茶の味が、何故か感じられなかった。
春は沈黙し、夏への扉は閉ざされた。10月はたそがれの国。闇の左手でさらに奥へ。国境の長いトンネルを抜けると雪国であった
ウィルソンの霧箱で放射線がみえる様に、吐いた息の行方を伺える。すぐに息は霧散した。五十の星と一つの丸い日が空にある。永遠に輝けることを願って、
私は祈祷した。やがて千羽の鶴が空へ羽ばたいた。
あなたを知ったその日から、
私は長い冬のはじまりを迎えた。
その想いが芽吹くことはなく、
その花が可憐に咲くこともなく、
そしてその実が結ぶこともない。
白く染まった視界に映る銀世界。
分厚い氷に閉ざす一面の氷原。
寒さにも慣れ、冷たさにも馴染み、
マイナス60度に凍りつく。
永久凍土のその上で私はひとり静かに佇む。
そしてあなたを失ったその日から、
私の冬の終わりは永遠にないのです。
【冬のはじまり】
もう何もしたくないと思うような朝。重たい瞼を開けて、身体を起こす。
アア、つい最近まではあんなにも温かかったのに。
季節の思わせ振りな態度に苛つきながら洗面所の蛇口を捻る。勢いよく水が出たものだから慌てて調節した。冷たい水を両手で掬って顔にぱしゃりと掛けた。手で感じるよりも冷たく、ブルリと体を震わせた。
冬はまだ始まったばかり。これからが本番だと思うと酷く気が重い。
そうだ、今日帰ってきたらこたつを出そう。そうと決めたら会社への足取りが少しだけ軽くなった。
(ふゆのはじまり)