【冬のはじまり】
冷たい木枯らしが村を吹き抜け、ひとひらの雪が舞い落ちる。障子戸の向こうにそれを見てとって、僕は庭へと飛び出した。
灰色の雲の薄く広がる空。息を深くまで吸い込めば、肺を満たす凍てつく冷気が全身を内側から切り裂いていく。ああ、冬だ。冬がやってきた。
「待ってたよ!」
両手を広げ天を仰ぐ。そうすると僕の目の前に、風に紛れて人影が舞い降りた。雪よりも白い白銀の髪に、見るもの全てを魅了する冷ややかな蒼玉の双眸。僕の誰よりも愛する、冬を呼ぶモノ。
無機質な美貌で僕を見据える君の手を取り、冬のはじまりを告げる女王の氷よりも冷たい指先に、再会を祝福するキスを落とした。
11/29/2023, 10:34:56 PM