「12月の下旬らへんってさ、空いてる日ある?」
クラスメイトと談笑しながら階段を降りてくる彼女を下駄箱前で待ち伏せして捕まえる。
「えっ?」
靴を取り出す手がピタッと止まり、疑わしそうに眉を顰めたが、スカートを握り込んで俯く私を見て事を察したのだろう、その顔はすぐに綻んだ。
「何よ遠回しに。素直にクリスマス会いたいです、って言いなさいよ。」
「……クリスマス会いたいです。」
「よくできました。もう空けてあるから。」
「えっ……いいの?さっき誘われてなかった……?」
「全部断ってる。大切な日は、大切な人と居たいでしょ?」
「泣いちゃう……。」
「好きなだけ泣きなさい。聖夜を祝うような柄じゃないけど、あやかれるものはあやかっておいた方がいいのよ。」
「肝に銘じます……。」
気づけばこちらの言葉を待たず先を行く彼女を、靴の踵を踏み潰しながら急いで追う。
「……まだ何か言いたそうね。遠慮せず言いなさいな。」
靴を履き直したところで、改めて彼女に向き直る。が、彼女の真っ直ぐな視線に耐えかねて、少し目を逸らす。
「あ、あの……、お泊まり……とかって、できたりしますかね……。」
「お泊まり?」
「ごっ、ごめん急に!調子乗った!今のは忘れて」
「しましょう。」
「えっ」
「しましょう、お泊まり会。」
「えっ……いいの……!?」
「その代わり、忘れられない夜にしてね。」
「……頑張ります……!」
冬が、はじまる。
11/29/2023, 8:43:37 PM