『優越感、劣等感』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「あーあ来週かあ…。」
私は大きく伸びをした。ここは、会社の休憩所だ。
「何が?」
同僚のイシイちゃんが尋ねる。アクティブな彼女と大人しい私では、まったくタイプが違うが、不思議とウマが合うのだ。
「いや、来週結婚式なんだよね。友達の。出費はかさむし、旦那はイケメンだし、イマイチお祝いするモードになれないんだよねえ…。」
「人の幸せを素直に喜べない人は、劣等感が強いらしいよ。」
「え、何それ!?」
私は思わぬ鋭い言葉に、胸をズシリと射抜かれたように感じた。
「劣等感?そりゃまあ、確かにあるけど…。でも友達も悪いんだよ、なんせイケメンの旦那ができて、優越感のかたまりみたいになってるんだから…。」
「まあまあ。そんなんほっときなよ!飲みに行こ!」
彼女は何かというと飲みに誘う。
「わかった。じゃあ仕事終わったらね!」
私は思わず約束をして、制服に着替えた。制服があるのは嫌だったが、今以上は太れないという縛りが出来て、助かる部分はある。
結婚式前にあまり太りたくはないが、この制服が入るサイズなら、パーティードレスも入るはずだ。
【劣等感、優越感】
同じような
幕の下ろし方
分かってる
逃げだって
変われば楽に
なれるのだって
いつだって
分かってた
それでも私は
私のままで
これまでずっと
生きてきたから
泣いたって
辛くたって
私のまま
生きてきたから
これからも
こんな私のまま
ありのままで
生きてく
変われないまま
変わらないまま
譲れないまま
譲らないまま
だって
これが
私だから
「これまでずっと」
優越も劣等も連れてきたよ
それが俺だからね…
顔にはださないけど…
いつも2つを道ずれにしてきたよ
誰にもサトラレナイ様にね
顔で笑って心で泣いて
顔で怒って心で泣いて
イチローさんは凄いよいなぁ…ほんとに…凄い!
劣等も優越も顔でなくて…
行動で明日を魅せてきたから…
大谷さんの時代の礎を導いたね…
さてと
私も
今日も暑いけど…
もう一踏ん張りしますか!(笑)
ミーチャン…
イチローさんは生意気とか責められても
自分を通したね
俺は…俺の中の気持ちを…
通してね
いつかかならず…!
そして…
いつまでもミーチャンを…
「優越感、劣等感」
私はこの二つに縛られている。
私は時に人より何かが出来たとき優越感になる。
だが、人よりも何かが出来ないと、劣等感に襲われる。私は、この二つに縛られている。
キラキラ輝いていないと価値はないの。
盛りに盛った写真を撮って、世界に発信。
毎日毎日、高級ブランドの衣服や装飾で着飾って、高いお菓子やお酒を貪りながらパシャパシャ。
高級品に取り囲まれたアタシも、価値ある存在に見えるでしょ。
家一軒ポンと買えちゃうような高級車を乗り回しても。
美男美女を侍らして、毎晩の様に遊び狂っても。
アタシ自身は、セミの抜け殻みたいに空っぽで、みっともないハリボテなのにね。
あー、笑える。
テーマ「優越感、劣等感」
「みなさん、マフィンが焼き上がりましたよ」
きみの声はよく通る。
わっと我先にと集まってくる子どもたちを鷹揚自若に迎えて、きみはにこやかに微笑む。
神官装束の裾をひらめかせながら大皿いっぱいに盛られたマフィンを庭先に運び入れていった。甘い香りにつられた子どもたちがはやくはやく、ときみを急かす。
全員に行き渡るように、ひとつひとつ手渡しで配ってゆくきみは、よっぽど神の子に見えた。
さくりとした食感のあとに甘いチョコレートの味が頬を緩ませて。チョコチップ入りのものも、バターたっぷりのプレーンもとってもおいしそう。
現に子どもたちは次から次へときみの手からマフィンを受け取ってゆく。きみが笑えばつられて子どもたちも笑顔になった。
きみはとても温厚でやさしくて優雅。けれど確固たる芯を誰にも壊させない。だからだろうね、きみの周りにはいつも人が集まる。
いまもそう。
孤児院の穏やかな庭先をぼくはじっと眺めている。庭に出されたチェアで脚を組みながら、テーブルに肘をついて頬杖。
きっと、いま、あんまり宜しくない顔をしてる。
ぶすっと不機嫌。
手にはきみから一番に渡されたマフィン。むしゃりと頬張れば不機嫌な顔がさらに悪化して。
「……」
きゃあきゃあ、とても和やか。きみと子どもたちの周りだけ時間が贅沢なままいつまでも続くような気配で。
三分の一になったマフィンを配り歩いていた。
ぼくの表情に気づかないはずがないのに、きみはまるで気にした素振りもなく。残りのマフィンを持ってぼくが座っているテーブルとは別のテーブルに足を運んだ。
ひとりで手遊びをしている少年。
その子の前に屈んで、目線を合わせてお話し。
……何話してるんだろ。
あんなににこにこして。口許に手の甲を持ってくる癖なんかも魅せちゃって。
そうしたら少年が不意にぼくのほうに向いた。ぼくだって大人。スマイルで手を振ったらその子のお顔はぱあっと明るくなる。けれどその子に話しかけているきみは、少しもぼくを一顧だにしない。
なんだか妙にお腹がぐつぐつとしてきた気がしているけれど、唇を噛んでおしまい。
少年と視線が外れればぼくはまた不機嫌顔に。
庭を見渡せば、きみが配ったマフィンを頬張ってしあわせ顔な子どもたち。それを見ればぼくだってこころ穏やかになる。
あー、こういうお顔がぼくにも引き出せたらなぁ。
適材適所とはよく言ったもの。それができていればなんにも問題はないのに。できないから困っちゃう。
「なんです、そんな不機嫌顔で」
「……」
いつの間にかきみがとなりに。
ぼくなんかと違っていつも変わらない笑みが憎たらしい。ぼくにも持てるかもって思ったものは、だいたいきみがすでに持っている。
だからってじゃないけれど、ぼくは不機嫌なまま答えちゃう。
「べつにぃ。誰にも教えたくないだけ。でもぼくには素直じゃなくちゃね」
「なんですか、それ。おかしなひと」
手の甲で口許を隠した。
ぼくの目はきみを贔屓するようにできてるのかも知れない。
だからかな。
きみは空っぽになったぼくのお皿に冷めたマフィンを。大皿は空っぽに。
「一番に焼き立てのマフィンを手渡して、一番最後にもうひとつ」
「…ふぅん」
「そうでしょう?」
「……きみってばほんと、まるっきりぼくじゃないんだね」
当たり前でしょう?
そう言ってのけたきみがぼくの向かいに腰を下ろした。
ほんと些細なこと。
それだけで、ぼくはきみに心底からあふれたスマイルを見せちゃうんだから。
#優越感、劣等感
私が少し苦手な言葉。
その中に「優越感」「劣等感」というものがある。
これは、今はあんまり好きじゃないけれど、
昔はすごく気にしていたものだった。
いろんなことを誰かと比べては
「優越感」や「劣等感」を抱いていた。
例えば、何でもできる友だちとテストの点数や
体育の授業の試合などで勝負し、負けた時に
劣等感を抱いていた。
それと反対に、習い事で同じ子と勝負して
勝つ度に優越感を抱いていた。
でも、年齢があがるにつれてどれだけそれが
幼いことなのかが分かってきた。
もちろん、生きている限りそれらを抱かないことは
ありえないと思っている。
そして、それらを抱かなくなったのは、
「人それぞれ得意なことや
不得意なことがあるのは当たり前です。
だから、人と比べるのではなく、
過去の自分と比べなさい。
そして、自分で自分のことをちゃんと
認めてあげなさい。」
という先生の言葉がきっかけだった。
そのおかげで今は自分は自分、人は人、
というふうに考えることができている。
これからもその考えを大切にしていこうと思う。
#優越感、劣等感
優越感、劣等感
私のほうが可愛いでしょう?
私のほうが優秀でしょう?
あの子よりも、あの子よりも、あの子よりも。
私のほうが勝ってるでしょう?
足りない。
まだ足りない。
もっと私を見て、私を褒めて、私を認めて、私が必要だと言って。
「みて、じょうずにできたの!」
歪な折り鶴を、まるで宝物のように見せてきたのはあの日の幼いわたし。
ヨレヨレで、折り目だって揃ってない。
誰が見たって不格好なその鶴は、だけどあの時のわたしが一番丁寧に作ったものだった。
こんなもの。
そう言ってはたき落とそうとした私を、幼いわたしはキラキラとした笑顔で見上げた。
振り上げた手をそっと、彼女の小さな手に添えた。
「とても素敵ね」
「ありがとう!」
幸せそうに喜ぶ彼女に、胸か温かなもので満ちていく。
わたしは、私に認めてほしかったんだね。
不細工でバランスの偏った折り鶴は、何よりも美しいものに見えた。
私の友達のA子ちゃん。
運動も勉強もできる文武両道の優等生。
肩より少し長い真っ直ぐな黒髪と、白い肌。
化粧もしてないのに整った顔。
まさに高嶺の花。
乱雑で男っぽくて、肌が黒い私とは大違いの、守ってあげたくなるような女の子。
高嶺の花と友達であることへの優越感と、
女の子として完璧なA子ちゃんへの劣等感。
二つがぐるぐると頭を回る。
何も知らない純粋なA子ちゃんは、今日も私の隣で微笑んでいる。あぁ、最低だな私って。
私の友達のB子ちゃん。
いつも周りの人を笑顔にしているムードメーカー。
肩につかない焦茶の短髪と、健康的な浅黒い肌。
大きな目にくっきりした二重。
皆んなに好かれる人気者。
無愛想で冷たくて、肌の白い病弱な私とは大違いの、明るく元気な女の子。
人気者と友達であることへの優越感と、
いつも皆んなに囲まれているB子ちゃんへの劣等感。
二つがぐるぐると頭を回る。
何も知らない純粋なB子ちゃんは、今日も私の手を引いてくれる。あぁ、最低だな私って。
優劣感、劣等感
「ありがとう! 君って本当に優しいね!」
ああ、気持ちがいい。
「どうってことないよ。またなにかあればおいで、できる限りのことはするから」
そんな羨望の目で見るのはよしてくれよ。気持ちが高ぶりすぎてどうにかなりそうだ。
「僕もう帰らなくちゃいけないんだけど……」
ああ、その縋るような目。何かを求める目が自分に向けられていることがとても興奮するんだ。
「そうかい、良かったら一緒に帰ってもいいかな?」
「も、もちろんだよ! 嬉しいよ、君から誘ってくれるなんて」
君から、なんてよく言うよ。お前が望んで出させた言葉なのに。
「何を言ってるんだ、私達は”友達”だろ? 当然のことだ」
友達なんて馬鹿げたものになったつもりはないけれど。
「それじゃあ帰ろうか。話は帰り道でもできるからね」
そして私は彼の手をとって教室を出た。
君のその薄紅に染まった頬と耳で私に向けられている感情をたやすく感じることができた。
可哀想に。今まで誰とも関わってこなかったから、こんな経験もないのね。
それもそうよね。少し前までいじめられて、友達もいなくて、誰にも相手にされなくて、本当に可愛そうな人生よね。
だからこそ、こうやって私があなたに目をかけているのだけれど。
「でね、そうしたら今日谷屋くんがクラスで〜」
「ふふ、そうなのね」
こうやって適当に相槌を返すだけで勝手に喋って、勝手に好感度を上げてくれる。
こんな簡単に好かれるなんて、今まで本当に誰にも相手にされなかったのね。可哀想に。
「そういえばさ、君って兄弟は居るの? 君と友達になってからいろんな人とかいろんなことを聞いているけど家族の話だけは聞いたことがないと思うんだよね」
「なんの変哲もない普通の家庭さ。それ以上でもそれ以外でもない」
「そ、そっか」
”家族”そのワードを聞いて思わず強く言葉が出てきてしまった。あいつはそれに対して少し戸惑ったように返事をして、そのまま黙り込んでしまった。
……あいつらの話をする、お前が悪いんだ。あんなやつら家族なんかじゃない。
「私の家族よりもさ、君の家族の話を聞かせてくれよ」
この沈黙を破るために私は話題を振った。…まあ彼の家庭環境はあまり良くはないと聞いている。
いや、端から見たら良い家庭と言えるのだろうが彼に限ってはそうではない。
「僕の家族…? 僕の家族かぁ。僕の家族は自慢じゃないけどおじいさんの代から全員医者の一族なんだ。だからみんな優秀で、両親も医者で姉と兄も今は国立のトップの大学の医学部なんだ。
弟も良いところの私立中学校に入学したんだ」
聞いた通りのエリート一家だ。
「すごいんだね。君が成績が良いのも納得だ」
「そんなことないよ……、僕は落ちこぼれだから。家でいつも言われているんだ。家においてくれてるのが奇跡みたいなものだよ」
ヘラリと笑ってそう言い始めたが、言い終わる頃には顔から笑みが消え、うつむいて拳を握って居るのが見えた。
だから私は立ち止り、彼の手を取って
「そんなことないよ、君が落ちこぼれなんてことは絶対ない。だって君は今まで頑張ってきたのでしょう?」
そうやっていってやると、彼は顔を上げて少しうるんだ目を私に向けている。その目はさっきと同じ目をしている。
何かを望んでいる目。私に言ってほしい言葉があるんでしょう?
「そ、そうだけど、でも僕は」
「大丈夫だよ。君は落ちこぼれなんかじゃない。今まで頑張ってきた君が落ちこぼれなはずないじゃない」
まあ、成績が底辺の君に本当にできるとは思っていないけれど。
それでもほら、目の色に少し希望が走り始めている。本当に身の程知らずね。
まあそれでも、ほんとうに気持ちが良いわ。そうやって私に願いを込めて、私の存在をありがたがれば良いのよ。
「それに、今からでもどうにかなるわよ。……一緒に頑張って、みんなを見返してやりましょう? 大丈夫、君ならできる!」
今まで溜まっていた涙が瞳からこぼれ落ちていく。その涙は流れるほどに勢いをましていって頬を伝う。
私はすかさずポケットからハンカチを出して彼の涙を優しく拭った。
……可哀想に、こんなに心のこもってない嘘を信じて泣いて。
「本当にごめん、君にこんな迷惑をかけてしまって。ハンカチもごめん。洗って返すよ」
ひとしきり泣き、少し落ち着いたあとも涙の余韻が残っているようなのでハンカチを渡し、彼の背中をさすりながら再び帰路についた。
そして彼の家の前で彼を見送ろうとしたとき、彼はそう言って一度私の手に帰ってきたハンカチを優しくとった。
「そんな、大丈夫だよ」
その時、何故か彼の目を見ることができなかった。見たくはなかった。
だから私は彼の手からハンカチを奪い返すことなく、一人で帰路についた。
私の中には先程まであったあの優越感なんてものはなく、ただただ形容し難い虚しさがあるだけだった。
「…ただいま」
「あら、おかえりなさい。今日は遅かったのね、何をしていたの? ……まさか」
「図書館で勉強していただけだよ。お母さんが心配するようなことするわけないじゃない」
気持ち悪い。
「そうよね……、安心したわ。あなたはあの子のようになってはいけませんからね」
「わかってるよ」
心配しなくても、あんなやつみたいにはならないさ。
「さ、ご飯を食べて。もうこんな時間ですからね」
「うん」
家に返る途端に重くなった足を一歩一歩進めてリビングへと足を進めた。
「いただきます」
無言で箸を進めていく。料理以外に何も見ないし、何も喋らない。見れば見るほど、喋れば喋るほど私が惨めになっていくから。
「ねえ、見てくれないかしら」
ああ、さいっあく。
「このトロフィー、すごいと思わない? またあの子が獲ってきたのよ!」
そのトロフィーは嫌味なほど眩しかった。その輝きはただの光の反射以外の光を放っているような気がしてとても嫌だった。
その光を見たくなくて目をそらした。反らした目の先に合ったのは、おびただしい数の賞状とメダルとトロフィー。
あれもこれも全て、弟のもの。
ああ、胸がざわつく。苦しい。気持ちが悪い。
「それに比べてあなた達は…、違うのよ? 別にあなたを見限っているわけではなくて」
そうやって表向きだけを良くするあなたが本当に嫌い。
もう話を聞きたくなくて、ご飯をかきこんで部屋に逃げた。
「本当にくだらないわ」
全部、全部。
今日はなかなか良かった。いつもい以上に私を満たしてくれた。クラスメイトは相変わらず私を羨望と憧れの目で私に接してきた。
彼だってそうだ。今日は特に私を特別にしてくれていた。
……だけれど、最後のあれだけが、どうしても気になった。気がかりだったんだ。
「君って空っぽだね」
「…どうしてそう思ったの?」
放課後、突然私にそういったのは一月ほど前に転校してきた男子だ。一ヶ月だ、たった一ヶ月。たった一ヶ月でこいつはクラスの中心人物になった。
そのお陰で私の立場が弱くなった。あいつも、最近こいつと話している。私はどうしてもこいつが嫌いだった。
「うーん、なんていうかさ楽しくなさそうじゃん。いっつも作り笑いで、他人に媚びてる? っていうんかな。なんか自分がないっていうか」
「そんなことないよ。いつも楽しいし、媚びているつもりもないしね。自分の好きなことをしているからね」
心のそこから出ている嫌悪感を抑え込んでなんとか返事をした。
「ふーん、そっか。まあ良いけどさ、でもそのまんまだと」
「おい、何してんだよ。今日ゲーセン行く約束だろ。早く来いよ」
「おーわりー。っておい引っ張んなって! それじゃあ行くから」
「ええ、さようなら」
またな! となんとも輝かしい笑顔を放って連れて行かれるアイツをなんとなく見ていた。
あの裏表のなさそうな性格、天性の輝き、類まれない才能のひとつだと思う。あいつがいると私が霞む。私という存在も、私の心も。
私の脆い心の支えが、ゆらいでいく。
「馬鹿みたい。あいつも、あいつに群がるやつらも。みんな私を崇めていればいいのに」
ボソリと言った私の言葉は、誰の耳に入ることなく空気に溶けていった。
最近私と一緒に帰ることがなくなったあいつの席を軽くにらみつけて、帰路へとついた。
しばらくして、テストの結果が帰ってきた。
結果は、学年二位。二位。そう、二位だ。私が二番目。
「ねえ、聞いてくれよ! ぼくついにやったんだ!」
「おお、いつにもまして元気だな。っておいお前すごいな! 学年一位って……、やばすぎだろ!」
聞こえたその会話に勢いよく顔をあげた。その声はあいつと、あの転校生の声だった。
学年一位? あいつが? 私があいつより、下?
「僕報告しなくちゃ!」
「報告って、誰に?」
「僕のことを応援してくれている子が居るんだ! 僕が自信をなくしていた時もずっとそばに居てくれたんだ!」
二人が近づいて来る。でも、今の私はそんなのが気にならないほど混乱していた。
「ねえ、聞いてくれよ!」
その言葉で意識が再び覚醒した。
「な、なに? なにかいいことでもあった?」
私がそう聞くと彼は嬉しそうに私に自慢を始めた。
「僕、ついに学年一位になれたんだ! これを見てよ!」
そういって私に今までのテストの結果と、今回のテストの結果が記載されている紙をこちらに見せてきた。
私がその紙を見ている時ですら、彼は自分の努力を語っていた。
320位、125位、32位、10位、3位、……1位。
その字を見た時、私の心の何かがこぼれ落ちた。
そしてそれと同時にこいつの声が耳障りでしょうがなくなった。
「……るさい」
「え?」
「うるさい!!」
気がついたときにはそう叫んでいた。
だって、だっておかしいじゃない。私が上でこいつが下。それが当然のことでしょう?
なのになのになのになのに……。なんでこいつが一番なの?
「ねえ、大丈夫? どうかした?」
あいつはそういって私に手を伸ばしてきた。私にはその手がとてもおどろおどろしく見えて、とても恐ろしく見えて。
だから私はその手を振り払った。
クラスの連中の視線が私に突き刺さるのに気がついた。
「どうしたこうもないわよ……。なんで、なんであんたが上なのよ? どうしてあんたが上にいる!? そこにいるのは私だろ。どうしてお前がそこにいるんだ!」
気がついたときにはもう遅かった。
私の心に流れるこのどろどろしたなにかは私の脳みそを支配して、私の思考を鈍化させる。痛い、痛い、苦しい、怖い、痛い、つらい、かな、しい。
「お前の、せいだ」
「ど、どうしたの? なんか、変だよ」
変? 私が変? 違う私はおかしくなんてない。普通だ、いや違う。普通以上だ。私は特別なんだ。
私は人より上なんだ。だから、私はこんなやつに負けたらだめなんだ!
「お前が私を軽蔑するな!」
「君を軽蔑なんてしていないよ!」
「いいやしてるね。そうやって一位をひけらかして。私を下に見ているんだろう? なあ、どうしてお前が私の上に居る? お前は私の下にいる人間だろ。
家で見向きもさあれないグズが私の前に立つなよ!」
「……え?」
その時、私の頭がサーッと冷めた。
やってしまった。周りの目線が軽蔑の眼差しになったのを肌でジリジリと感じた。痛い。とても痛い。
その時ふと目に入って来たのは、あいつの悲しそうな顔だった。その瞬間何故か居た堪れない気分になって、私は教室から飛び出した。
あの教室に、私の居場所などなかった。
私は私の足の赴くまま逃げ続けた。いつの間には私は屋上の扉の前まで来ていた。
人が屋上に行きたがるのはなぜだろう? アニメや漫画に出てくるから? 憧れ? ……学校という空間で、一番空に近いから?
ガチャガチャッ
扉は開かなかった。それはそうか。屋上は元々立入禁止だし。
「大丈夫?」
後ろから、声をかけられた。
「可哀想に、こんなに乱れちゃって。君らしくないね」
君らしい、ね。ちょっと前に君は空っぽだといった人のセリフとは思えないね。
「なによ。なにか用事でも?」
「大したことではないさ。ただ僕は、やっと君らしい君を見ることができたなと思ってね」
「初めて見たときからずっと思っていたんだ。君みたいな人は初めてだってね。君みたいに、劣等感にまみれた人間はね」
劣等感? 私が、劣等感にまみれている?
「私が劣等感にまみれている?」
「そうさ。だからああやってアイツのことを見下して、情けをかけてやったんだろう。クラスのみんなにも同じように」
「まあ、それもたった今崩れちゃったんだけど」
「可哀想に。ずっと見下してたやつに抜かされて、自分の嫌いな人間がクラスの中心になって、もう君の中になにが残っていると言うんだ?」
こいつの言っていることが頭の中をぐちゃぐちゃと駆け回る。
胸がざわついて、苦しい。痛い、涙が出そうなほど今までに感じたことのない何か私の心をうごめいている。
「なあ、君は知っているか? これが、劣等感だ」
今までの優越感が幸せなほど、今の劣等感が刺激されるだろ?
「優越感、劣等感」
どちらも、
誰もが誰かに対して大なり小なり感じることで、
それを肥大化させずに生きていくことが、
だいじなのかな、と思う。
優越感と劣等感は、紙一重だ。
結局は他人と比べて己が優秀かどうかの感情を孕み、時には己の自意識を蝕んで、喰らい尽くしてしまう。
しかしヒトという人種は社会性とともに生きており、生きている限り他のヒトと干渉して生きて行かねば生きていけない。
不器用で、不完全な存在だ。
だからこそきちんと自意識と向き合って、優越感に溺れず、劣等感に苛まれず、バランスをとって生きていくのだ。
---自分が自分で、あるために。
#優越感、劣等感
私はクラスで2番目に絵がうまい。
一番うまいのは隣の席の安堵さんだ。
何かクラス内で絵を載せる機会がある時、決まって安堵さんに任される。
何かで一番になりたい気持ちはあるけど、優劣を比べても気持ちが落ち込む、優越感、劣等感だけを描く動機にしてもきっとつまらないものになると思う。
昼休み、ノートに描いた落書きを私はひたすら消しゴムで消していた。
耳鼻科の検査喉に腫瘍があるとのこと、肺の治療を優先するため化学治療ごに摘出手術するようなことを告げられた。これも入院が必要とのこと、
優越感に浸った瞬間、不安に苛まれる。
劣等感を持った瞬間、惨めになる。
どちらでもない平穏がいい。
ただ、精神的に大人になる為には必要な感情。
【優越感、劣等感】
神様は理不尽だ。天は二物を与えずなんて真っ赤な嘘。あらゆる面で優秀なエリートというのは当然この世にいるし、何の才能にも恵まれない平凡なヤツだっている。そうして当然のように、僕は後者に分類される人間だった。
ドリップしたコーヒーに、温めたミルクを注ぎ込む。苦く芳醇なコーヒーの香りが好きな身としては、せっかくの美味しいコーヒーにミルクを入れるなんて邪道に等しいと思うけれど。ミルクと砂糖をたっぷり入れないとコーヒーを飲めない子供舌な君のためには致し方ない。自分のぶんのブラックコーヒーと、君のためのミルクコーヒーをトレイに載せて、僕はリビングでパソコンと睨めっこをしている君の元へと歩み寄った。
紅茶でもジュースでも好きなものを用意するよと何度言っても、君は飲めやしないコーヒーを飲みたがる。不思議だよなぁと思うけれど、君のような天才の思考回路が僕にわかるはずもないから、理由を考えることそのものをとうに放棄していた。
「ありがとう」
パソコンのモニターから視線を外さないまま、君は声だけを僕へと向けた。マグカップを雑に掴み、見もしないで一口。その瞬間、げほりと激しく君はむせ返った。
「ちょっと、これ砂糖入ってなくない?!」
「あはは、ごめんごめん。うっかり忘れてたよ」
「絶対わざとじゃん!」
むくれた君の白い頬をツンと指先でつついた。容姿端麗、頭も良ければ人脈もあり、行動力にも溢れた、非の打ちどころのない完全無欠のエリート様。君の隣にいるといつも、自分自身の凡庸さを痛感させられて、果てのない劣等感がちくちくと刺激される。
だけどそんな完璧な君が、僕なんかに構い、僕なんかの一挙手一投足で顔色をころころと変え、無邪気に笑い、子供のようにむくれてくれる。それがどうしようもなく幸せで、だから僕はこうして肥大した劣等感を持て余しながら、君の隣に立ち続けている。
神様は理不尽だ。だけど非凡な君が凡人の僕を選んでくれたというその事実だけで、僕は世界の全てに対して仄暗い優越感をひけらかして、君の隣で笑って生きていけるんだ。
【優越感、劣等感】
僕はずっと皆より劣っていると感じている。
皆は当たり前に出来るのにどうして僕だけ出来ないのだ。
ずっとそんなときばっかりだ。
僕が人より優れてるって自信を持って言えるものは何もない。そもそも自分自信にさえ自信なんてものもない。
別に幼いときから親とか大人達に、他人と比較されていたわけではない。ただ、自分で、他人と比較してしまって、自分を縛り付けている。それは分かっている。
だけど、どこか特に兄には本当に劣っていて自分が兄弟でいることが申し訳ない気持ちがいっぱいだ。自慢の兄であると言いたい気持ちと同時に、兄がいる。兄はこういう人だと言えない自分がいる。
兄に劣るまいと頑張ってるが全く追いつかない。差が開くばかりだ。余計に自分はダメな人間だと思ってしまう。「人と比べなくていいよ」そう親は言う。でもごめん、僕もそうしたいけどそこにしか目が行かないのだ。自分が出来ていることを毎日褒めていくのがいいと聞く。やろうとしているが、出来たって自分で褒めるものが無くて毎日困っている。
今度からは自分の弱さを認められて偉いと言うようにしようか……?
銃を片手に笑い、走る。
「ほらほら、逃げろ逃げろ! どこへ行く? どこへ逃げる?」
相手は逃げるしかない。生殺与奪の権利を握る瞬間はとてもいい。
この分野において、最高の優越感を抱くことが出来る。
逃げる相手の足を狙って撃った。当たったが相手は足を止めない。展望台に逃げられる。
舌打ちが出てしまった。建物内だと万一があり得る。しかし時間を与えるほうがまずい。
躊躇したのは一瞬。すぐに突入する。
血痕は階段に伸びていた。すぐに撃てるよう構えながら血痕を追う。
相手はガラス張りの展望デッキに居た。背中を向け動かない。
「観念したか」
ゆっくり近づきながら頭に狙いをつけた。
「死ね――」
引き金を――――
あれ、なんで? 視界が? 赤く? あっ……
画面に5位という表示が出た。
「はい! ということで本日の最終戦は5位という結果に終わってしまいました。というかまじでどこから撃たれたの?」
有名なバトロワゲームで実況プレイをしていたが今日は結局優勝できずに終わってしまった。
コメント欄におつ、お疲れ様、遊びすぎとコメントがボチボチ流れる。
「ロールプレイして他の実況者様方と差別化しようと思ったんですが難しいですね。えっ! さっきあの有名実況者に狙撃されたの?」
コメント欄に登録者数が自分の300倍はある実況者の名前が流れてきた。
「はい、半端な腕でイキってしまい申し訳ありませんでした。精進します。ではお疲れ様でした」
嫉妬で早口になり、すぐに締めの挨拶をしてしまった。配信を切る。
まわりを見てみるとダンボールに遮音材貼っただけの簡素な防音室に、最新のゲームをするには厳しいパソコン。
「はぁ、有名になりてー上手くなりてー金ほしー」
劣等感混じりのため息は誰にも聞かれずに消えていった。
[優越感、劣等感]
優越感。劣等感。
どちらも必要ない。
世の中を競わせたい人がつくった言葉だろうか?
優越感を求めれば劣等感に苛まれるだろう。
それを繰り返して生きるなんてきつ過ぎる。
ただ心静かに暮らしたい。
title of the day
- 優越感、劣等感 -
優越感?感じたことのない感情だな 。
劣等感? 常に感じてる感情だな 。
だって、誰かに愛されていると感じないと
優越感とは無縁でしょ 。
何人に告白されて、何人と付き合おうと
劣等感しか感じたことない 。