銃を片手に笑い、走る。
「ほらほら、逃げろ逃げろ! どこへ行く? どこへ逃げる?」
相手は逃げるしかない。生殺与奪の権利を握る瞬間はとてもいい。
この分野において、最高の優越感を抱くことが出来る。
逃げる相手の足を狙って撃った。当たったが相手は足を止めない。展望台に逃げられる。
舌打ちが出てしまった。建物内だと万一があり得る。しかし時間を与えるほうがまずい。
躊躇したのは一瞬。すぐに突入する。
血痕は階段に伸びていた。すぐに撃てるよう構えながら血痕を追う。
相手はガラス張りの展望デッキに居た。背中を向け動かない。
「観念したか」
ゆっくり近づきながら頭に狙いをつけた。
「死ね――」
引き金を――――
あれ、なんで? 視界が? 赤く? あっ……
画面に5位という表示が出た。
「はい! ということで本日の最終戦は5位という結果に終わってしまいました。というかまじでどこから撃たれたの?」
有名なバトロワゲームで実況プレイをしていたが今日は結局優勝できずに終わってしまった。
コメント欄におつ、お疲れ様、遊びすぎとコメントがボチボチ流れる。
「ロールプレイして他の実況者様方と差別化しようと思ったんですが難しいですね。えっ! さっきあの有名実況者に狙撃されたの?」
コメント欄に登録者数が自分の300倍はある実況者の名前が流れてきた。
「はい、半端な腕でイキってしまい申し訳ありませんでした。精進します。ではお疲れ様でした」
嫉妬で早口になり、すぐに締めの挨拶をしてしまった。配信を切る。
まわりを見てみるとダンボールに遮音材貼っただけの簡素な防音室に、最新のゲームをするには厳しいパソコン。
「はぁ、有名になりてー上手くなりてー金ほしー」
劣等感混じりのため息は誰にも聞かれずに消えていった。
[優越感、劣等感]
7/14/2023, 2:40:14 AM