『優しさ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
部屋の隅で一人、膝を抱えて蹲っていた。
どれだけ時間が過ぎたのか。辺りはすっかり暗くなり、暖房を入れていない部屋は息を吐けば白く曇るほど冷えきってしまっていた。
それでも動く気にはならない。昼間見た光景が、言われた言葉が頭から離れない。
大切な幼馴染だった。
いつも見ているだけの自分の手を引いて、皆の輪の中へと連れて行ってくれるような、そんな優しい人。いつも笑顔で助けてくれる、自慢の幼馴染だった。
きつく唇を噛みしめる。強く目を閉じて、込み上げる涙が溢れないように必死に耐えた。
幼馴染の、冷たい笑みが忘れられない。吐き捨てられた言葉を思い出すだけで、胸が苦しくて息が出来なくなってしまう。
まだ、直接言われないだけ、良かったのだろう。あの目で、あの言葉を言われたら、きっとその場から動けずに泣くことしかできなかった。
膝を抱いて、身を縮める。
今は何も信じられそうにない。
見せかけだけの優しさ。その裏の欺瞞が怖くて堪らなかった。
「ひどいことだ。本当にひどい。あんな言葉を皆の前で言って笑い者にするなんて、思わなかった」
聞こえた声に、小さく肩を竦ませる。
反射的に何かを言う前に、大きな手に頭を撫でられた。
「嘘だらけの人間のことは、早く忘れてしまえ。お前には、他にも大切にしてくれる人間がいるだろう?」
強く厳しさが滲む声に、恐る恐る目を開けた。
暗がりに大きな影が見える。恐ろしくはない。逆に安心できるその姿。
「でも……」
忘れろ、という言葉に、視線が揺れる。優しかった幼馴染を思い出して、本当に忘れていいのか迷ってしまう。
何か原因があったのではないだろうか。自分が幼馴染を怒らせて、それであんなことを言ったのではないだろうか。
もしかしたらの期待が迷わせる。けれど影は容赦なくその願いを否定した。
「上辺だけの優しさに縋ろうとするんじゃない。それでまた、お前が悲しい思いをするのは嫌だぞ」
ぐしゃぐしゃと、髪をかき混ぜられて俯いた。
忘れられない。忘れるのが怖い。浮かぶいくつもの思い出に、手を伸ばしたくなってしまう。
きつく手を握りしめた。それでも幼馴染がくれた優しさが消えてくれることはない。
「困ったな」
小さく息を吐く音がした。
怒らせてしまっただろうか。暗くて表情が見えないのが怖い。
頭を撫でる手が離れていく。思わず手を伸ばし、離れていく手に縋りついた。
「心配するな、どこにも行かない。ずっと一緒にいると言っただろう?」
忘れてはいない。でも今は、何もかもが嘘に思えてしまう。
「お前が傷つくのを我らは望まない。だから忘れられるまで、お前が与えられてきた以上の優しい夢を見せてやろう」
するりと、背後から腕が伸びてきた。
細くしなやかな、二本の腕。抱きしめられて、段々と意識がぼんやりとし始める。
「一度全てを忘れて、安全な箱庭で心穏やかに過ごすといい。いずれあれ以外で、お前を大切に思う者が迎えにきてくれることだろう」
包まれる温もりに、瞼が重く閉じていく。苦しかった気持ちが解けて、空になっていく。
「ごめんなさい。迷惑をかけて……」
「気にすることではない。子を護るのが我らの役目だ。お前は何も気にせず、笑っていろ」
厳しく、温かい言葉。その声すら端から解けていく。
「ありがとう」
忘れてしまうことを惜しく思いながら、深く夢の中へと沈んでいった。
「おはよう!」
見慣れた背に、少年は声をかけた。
いつもとは違う朝。幼馴染の少女を迎えに家に行くと、彼女はすでに家を出た後だった。
慌てて追いかけ、歩いていく少女を見かけて声をかけるも返事はない。
「どうしたんだよ、今日は。一人で学校に行くなんてさ」
嫌な予感に気づかない振りをして、少年は努めて明るい声を出した。
気のせいだ。何か理由があるのだろう。また悩み事を一人で抱え込んでいるのかもしれない。
いくつもの理由を並べ立てるも、少年の頭の中では、 昨日走り去っていく少女の小さな背が消えない。
振り返らない少女に、嫌な予感が強くなる。気のせいであれと願いを込めて肩に手を伸ばすが、その前に振り返る少女の目を見て息を呑んだ。
何の感情も浮かばない目。金に煌めく色彩に、少年は理解する。
「守り神?何で……」
この街は古い家が多く、それぞれの家には守り神がいる。少女や少年の家もそうだ。
その守り神が少女の中にいる。昨日見た、走り去る少女の背は見間違いではなかったのだ。
顔を青ざめさせて震える少年を一瞥し、少女は何も言わずに去っていく。それを呆然と見つめていれば、少年の影が小さく揺らいだ。
「あの時、警告はしました。恥ずかしいからとは言え、心にもないことを口にすることはよくないと」
「だって……聞かれなければ大丈夫だって思ったんだ」
影の言葉に、少年は俯いた。
昨日。友人たちに、少女のことについて揶揄われた。いつも一緒に登下校をしていること。手を繋いでいたこと。恋愛感情について。
その時は酷く恥ずかしく思えて、友人たちの言葉に思ってもいないことを返していた。
少女が付き纏うから、仕方なく相手をしている。本当は迷惑しているが、家のために我慢をしなければならない。だから少女のことは好きではなく、むしろ嫌いだった。
その場限りの言葉だと思っていた。聞かれていなければ、今までと変わらずに過ごすことができる。そう信じていたからこそ、自身の守り神の言葉に耳を貸さなかったのだ。
「諦めなさい。あの娘が戻ってきたとして、二度と元の関係には戻れないでしょう」
「そんな……」
「ああして、守り神が出てきているのです。それほどの苦しみがあったのでしょう。貴方にできることは、この先あの娘に関わらず過ごすことだけです」
そんなことはないと否定しかけた言葉を形にさせぬかのように、影は容赦なく事実を告げる。
分かっていたことだ。だが認めてしまうことは、少年にはできなかった。
遠ざかる少女に、誰かが話しかけているのが見えた。彼女の親友だろう。頷き、少女の隣を歩くその姿が羨ましい。
「大丈夫だって、思ってたんだ」
聞かれなければ大丈夫。ちゃんと話せば大丈夫。
そんな甘い考えを含んだ言葉に、影は何も返さない。少年も答えを求めてはいなかった。
それは結局、少女の優しさに甘えた考えだ。彼女の気持ちを無視した、最低な考えだった。
「馬鹿だなぁ」
呟いて、一人笑う。
滲み出す世界が少女の笑顔を消してしまうようで、少年は立ち尽くしたまま必死に涙を堪えていた。
20260127 『優しさ』
優しさが痛い。
良心が時には痛みへと変わる。
私はそれが辛い。
優しくされるぐらいなら、心配されるぐらいなら。
私は優しさなんて要らない。
痛みだけ、不幸だけ私にくれればそれでもいい。
『優しさ』
いつもありがとうございます。
スペースのみの確保です💦
目を覚ますと、シンヤはいなかった。代わりにシンヤが被っていた布団が自分にかぶさっていて温かい。優しい人間に育ったと考えていいんだろうか。ふわふわの掛け布団に顔を埋め直して、気づくと太陽が高く昇っていた。畳とはいえ硬い床で寝たせいで、身体を起こすとあちこちが軋んだ。
リビングと部屋を仕切る引き戸を開ける。
「おそよ」
「ん」
ルビンがこたつに座って、もそもそとパンを頬張っている。こたつ机の上にあった山の中からひとつとってかじると、口の中でぱりっと音を立てた。
「お前今日もパン屋行ったの」
「うん。昨日買わなかった分買ってきた」
やっぱりパンは焼きたてに限るよねえ、とルビンは嬉しそうだ。パンは焼きたて、ご飯は炊きたて、果物は採れたて。そういえば以前春先に来て、連日とこぞのいちご狩りを楽しんでいたな、こいつは。
ベランダに目をやる。特に意味も意図もなかった。レースのカーテンごしに、すこんと抜けるような青空が見える。遠く、地平の端が見える。……白い。
思わずガラス戸を開けて外に出た。今日は洗濯物が少ない。かき分けるまでもなく空と、手すりと、眼下に雪に埋まった町が見えた。はあ、と吐いた息が白い。何もかも生き絶えたような白い町で、俺は確かに、死ねず、息をしている。
かり、とベランダを靴底で擦る音がした。振り返るまでもなく、ルビンだ。
「積もったね」
「……うん」
その高い背を手すりにもたれかけて、ルビンはこちらを見た。一つ間違えたらここから落ちそうだな、と細い影のようなそいつを見上げる。その目は、生ぬるくこちらを見ていた。目尻のしわが心なしか深い。
「連れて行くよ」
「……シンヤが望んだのか」
「さあ? でも否定しなかった。それに、最初の一歩は誰だって怖気付くものだよ」
この町を出て行く。シンヤが。この住処から。俺の手元から。
恐ろしいと思う一方、けれどそれが、正しいことなのだろうと最初からわかっている。人の子を人の社会の中に帰す。外れている俺が囲い込んでいた、それこそが異常だったのだと、すぐにわかるだろう。
ルビンから目を背けた。真っ白い世界に目を向ける。
ゴミ屑みたいに小さい人間たちがあちこち歩いているのが見える。ぐっと指先で潰してしまえば、あっという間に終わってしまう、それぞれ個々のいのちたち。その群れの中に返すのか。
ルビンの手が伸びてきて、俺の頭を軽く撫ぜた。キモくて普通に振り払って、それから温かい部屋に帰る。こたつに潜り込むと、ルビンがガラス戸を閉めて、俺の隣の辺に足を突っ込んだのがわかった。
「シンヤが帰ってきたら、どっちが話をする?」
「……お前」
「わかった」
それから、特に会話もなく過ごした。ゲームをやる気も本を捲る気も起きず、とりあえずテレビをつけて人間の話し声を小さい音量で聞く。緑の海。灰色の雨。色とりどりの傘。温泉街。流される映像を流し見て、見て、見ているうちに、青かった空は橙に染まり、それから藍色、黒。ちらちらと星が瞬くのを見たルビンが「遅いな」とつぶやいた。
シンヤはその日、帰らなかった。
優しさか…なんだろうな
今は気力がなくて色んなことがぼんやりしてるけど、今までたくさんの人に支えてもらって助けてもらってここまできたと思うからこれからはちょっとずつちょっとずつ、ありがとうの気持ちを伝えて 広めていけたらいいな 優しさって大きなことじゃなくてもいいんだよ。小さな心遣いに気づける大人になりたい
「優しさ」
つらら
ぽと
ぽた
溶けてゆくよう
強さ
弱さから
生まれる温度
突き刺さった痛いところに
傷痕のこり情けを想う
時間おいて
含む白湯
繋いでゆけと骨沁みる
【優しさ】
「優しい人だね」とよく言われる。
でも私はそれが本当に優しさなのかはわからない。
ただ求められた事に応えて、求められたものを与えているだけ。
それって本当に優しさなのかな。
ある人に聞けば、「他人がそう受け取っているんだからそう思わせておけばいい」とかいうし。
ある人に聞けば、「そんなことで悩めるなら、優しい人間なんじゃ無いのか」なんて言われて。
私の周りには、“ヒトノココロ”というものがわからないやつが多いみたい。私も含めて。
でもそうだな、私にとっての優しさがなんなのかもわからないのに答えなんて出るわけないか。
優しい優しい女の子
涙にハンカチ
笑顔に花
優しい優しい女の子
傷に手当
暴力に忍耐
優しい優しい女の子
罪に赦し
罰に慈悲
優しい優しい女の子
気持ちに鈍感
殺意に無力
優しい優しい女の子
けれど誰も覚えてない
なのに誰にも想われない
優しい優しい女の子
可哀く愚かな聖人紛い
‹優しさ›
優しさ
「ねえ、ねえってば」
「え?何?」
リビングのソファに座りスマホを見ていると、キミに声をかけられる。
「何?じゃないでしょ。さっきから声をかけてるのに」
怒った顔をされ
「ご、ごめん。気づかなくて」
慌てて謝ると
「まあいいけどね」
キミは表情をフッと緩める。
「それよりも、何に悩んでるの?」
そんなに怒ってなくて良かった。とホッとしたのも束の間、キミにそんなことを聞かれる。
「え?別に悩んでなんて…」
「誤魔化さなくていいよ。声をかけても気づかないし、スマホを持ったままぼんやりしているし、何か悩んでるんでしょ」
「………」
何も言えなくて思わず目を逸らすと
「私に迷惑をかけちゃいけない。って、何も言わないのはあなたの優しさだとは思うけど、何も言われないのも、信用、信頼されてないみたいで悲しいよ」
キミは悲しそうな声を出す。
「一緒にいるんだもん、1人で悩まないで」
その声に、逸らしていた目を戻すと
キミは優しく微笑むのだった。
研究員たちの足音も過ぎ去った頃、真っ暗な廊下に一筋の光がさしていた
アカデミーの司令塔である、ホープ・エストハイムの執務室である。
現場に出ていたライトニングは報告書を提出する為に、開いていた扉をノックする。
中央の執務机にはたんまりと書類が乗っており、その間からひょこりとホープが顔をだす。
あ、ライトさん。こんな時間までお仕事ですか?お疲れ様です。
嬉しそうににっこりと笑い。慌てて駆け寄ってくる。
出会った頃より頭一つ分も大きくなってしまった男を見上げ
その言葉をそのまま返す。
過労死する気か?と眉を寄せる
目の下には隈、顔色も悪い
いつから寝ていない
えぇーっと、いつからだっけ
はは、と笑うホープの顎を掴みこちらに向ける
寝ろ。その状態で進めても効率が悪い。
あと少しで終わりそうなんですけれど、と頭を掻くホープの目が泳ぐ。目が合わない。そして、あの、少し、近いです。と呟く。
自分が出て行っても寝ずに仕事を続けそうなこのワーカーホリックの男をどうして寝かせようか。
物理的に寝かすか。と拳に力を入れると
なんか凄い怖いこと考えてませんか?と怯えるホープを見て、いや、何でも無い。気にするな。とだけ言う。気絶させると仕事はしないだろうが、明日に響いてしまいそうだな。ライトニングは考えを改める。
逃すまいとホープの顎を掴んだまま、当たりを見回すと寝心地の良さそうなソファが目に入った。これだ。ホープの腕を掴むとソファに座らせる、というより投げる。
いたた、暴力反対です
その上に馬乗りになるライトニング
暴力じゃない。優しさだ。
ライトニングは抵抗されないようホープの腕を片手で一括りにし、空いた手で器用にネクタイを引き抜く。ブラウスのボタンも幾つか外しておく。
え、あのっ、ライト、さん??
こんな、こんな場所で、待って、まだ、せめて、僕が上にっ
上?何の話だ。何をそんなに狼狽えている?寝ろ。寝るまでどかん。
え、あ。あぁ、びっくりした。僕、襲われるのかと。あの嫌ではなくて。本望ですが、ええっと
ホープは首まで赤くし目線もあちらこちらに飛んでいる
もう喋るな。寝ろ。
ライトニングはホープの拘束を解き、馬乗りのまま腕を組む
色々な意味で寝れないです。
歌でもうたってやろうか?
それは、かなり魅力的ですが、と言いながら力強くライトニングの腕を引く
油断していたライトニングはホープの胸で頬を打つ
お前、いい度胸だな
胸の上に落ちてきたライトニングを抱きしめるホープ。
大好きなライトニングの香り、暖かい、程よい重みとや柔らかさ。徹夜続きの脳には大打撃である。すぐ様、睡魔がやってくる。
すみません、少しだけ、
しばらくすると寝息が聞こえてくる。
ライトニングはため息をつくと、起こしてしまわないよう、そろりと起き上がるとホープに一つキスを落とす。そしてまた、ホープの胸に頬を預ける。
少しだけ
ホープは幸せな夢を見た。
愛おしそうに僕を見つめる、小さな頃からずっと思っている薔薇色の女性が、自ら口付けをーーーー
そこではっと目を覚ます。
夢、か。窓を見ると薄らと明るくなってきていた
随分寝てしまった。体を起こすと、彼女が着ていたコートが布団代わりに自分に掛けられており昨夜のことを思い出す。
あぁ、惜しいことをした。
だが、頭の中のモヤは晴れスッキリとしている。
やっぱり睡眠は大事だな。
大体、自分の限界を感じた頃にあの人はああやって、声をかけにきてくれる。だからといって自分を追い込んでいるわけではないが、気にかけてくれているようで、あの人の中には僕がいるようで嬉しく思う。
さぁ、寝てしまった分取り戻すか、と執務机に目をやると、昨日の散らかりが嘘だったかのように、綺麗に整頓されていた。
付箋が至る所に貼られている
固く形の整った字。ライトニングだ。
期限つきの書類は期限順に並んでおり、印鑑が必要な書類には丁寧に印鑑が押されている。放置していたファイルには種類順に丁寧に書類が分けて収納されてある。
なんて、できる人なんだ。
あの人事務職もできるのか?!
引き出しを開けると、大きめの文字で書かれたメモがあった。
最終チェックはしろ
今夜18時に迎えに行く。
その横に下手くそなモーグリの絵
さぁ、早く終わらせて、僕が迎えに行こう
優しいあの人を。
《優しさ》
真の優しさとは
一体なんだったのだろう
貴方は
一般的な感性では
明らかなる
"悪"ではあった
でも私は
優しかったのだと
自信を持って
言えるかもしれないんだよ
溢れる言葉と
痛めつける視線が
貴方には
見えないかもしれないけど
あとになってみないと わからない
不器用な 優しさも ある
あのひとは
とても 怖かったけど
いま 思えば
その 厳しさが
わたしを 強くした
あたたかく やわらかに
ふうわりと 包みこむような
優しさ では なかったから
その頃の わたしには
その 優しさが 理解できなかった
けれど
あのひとが 残してくれた
数々の 優しさが
いまのわたしを 助けてくれている
ありがとう。
今日のお題も物語その他が思い浮かばぬ…もういいや、何も書かぬより、長い独り言でも綴ってしまえー。
ーーー
それは独りよがりの『優しさ』で本当の優しさではない──?
じゃあなんだよ、本当の優しさって。
もらった相手に都合のいい優しさだけが、本当の優しさ?
独りよがりって、それって──そいつが一人で、一生懸命考えた結果なだけかもしれないのに?
それを頭っから、否定するのか?
なーんて、ね?
実際のところ──要らない優しさは、本っ当に要らない。
優しさって名前でラッピングされたゴミもらったって、こっちはそんなの、捨てるしかないこともあるし?
ぜーんぜん、それでいいと思う。
受け取らない自由は、絶対にあるよ。
……それを踏まえた上で。
そういう、良かれと思って選んだモノを、断られる可能性──感謝されないこともあるのだとわかった上で、自分ではない人間にあげられるヒトってのは、すげーなって思う。
まぁね、全人類にそれをしなくていい、身の回りにいる家族だったり家族じゃなかったりする人間に──この際人間じゃなくても、動物や植物や地球やなんかに、年に一回くらいでもそんなモノを差し出せれば。
それだけで、じゅうぶんにすごいこと、なんじゃないだろうか。
それが例えば、独りよがりのそれで、本当のそれではなかったとしても。
達人級の優しさだけしか必要とされないなんて、なんだかなぁ、って思うし。
下手な優しさだってアリでいいじゃん、ねぇ?
まーでも。
迷惑でしかない下手な優しさは、捨てちゃうんだけどね?
で、それで……捨ててしまう自分、ヤなヤツ! とか、思わなくていいと思う。
大概、多種多様の優しさを受け取りがちなときって、こっちが弱ってるときだったりするし……正直、そんな余裕はないのだ。
そのくらいは、お互い様ってヤツだと思いたい。
歩道を歩く鳩に、進路を譲るために立ち止まったり迂回したりするワタシの、これは『優しさ』でしょうか?
いまのところ、この善意からくる独りよがりな行為を、受け取ってもらったような気配はなく──。
でもまぁ、そんなもんだ。
そして、それでいいのだ、たぶんね。
あの人には彼女が居てあたしには彼氏がいる。
それでも何かと頻繁に顔を合わせて一緒にいる。
一緒にいると楽しくて楽しくてそして淋しい。
離れたくなくてでも離れたくて一生戯れていたくて。
戯れて痛くて。
楽しすぎるとダメなんだ。
過ぎるのはダメなんだ。
お互いに気持ちは口に出さない。
視線は意味ありげに交差して。
でも決して言葉にはなり得ないこの感情を。
探り合って、探り合って。
そして目を逸らす。
離れたくないんだよ。
本音は言ってしまったらすごく単純で。
でも多分言ってしまったら最悪で。
過ぎるから壊れてしまう。
彼が踏み込んで来ないのは優しさであり、ずるさでもある。
今回もまた。
あたしの好きな人はあたしのことを好きにならない。
(優しさ)
優しさ
優しさ?
やっぱり人から感じるかなー
たまに犬からも
口ケンカしていると
玄関でぶるってる
割って入ってくるわけじゃないけど
遠巻きに悲しげな表情で震えているのを見たら
ハッと我にかえるよ
静まったのを見計らって駆け寄る姿は
身を挺して仲裁にくる忠犬そのもの
二人の間でゴロンとお腹を出すの
私に免じて…ケンカはおしまいって
二人を交互に見つめてくるんだわ
「おまえは優しいね」で一件落着
お題:優しさ
「馬鹿かあんた!」
初対面の男は私の名前を尋ねもせず馬鹿と言ってのけた。
お酒でふわふわ浮かんでいた思考が、叫んだ男の声によって引きずり下ろされる。
ネオンでぎらつく繁華街。人工的な光に負けないくらい明るい金髪の男と、しがない会社員の私。アンバランスな男と私の組み合わせは、どう見ても顔見知りとは思いもしないはずだ。それなのに周囲は叫んだ男に物珍しげに目をやって横切るだけで、誰も私たちの間に割り込もうとする気配はない。都会の人は冷たいと聞いてたけどやっぱりそうなんだ。強く吹き付けてきた夜風さえも、頬の上を滑って通りすぎるだけだった。
「下手したら金目のもん全部盗られてたかもしんねえんだぞ」
さっきより落ち着いた様子の男は、相変わらず私に非がある言い方をする。
生まれてからずっと田舎で生活していた私は、就職を機にやっと憧れの都会へ飛び込んだ。今日は職場の同期と飲んでいて、解散のあと一人駅に向かおうとしたらガラの悪い男に声をかけられた。よく覚えてないけど二人でどこか行こうという話になったところでこの金髪男が横入りして、ガラの悪い男を追い払ったわけだ。私からしたらどっちも大差ない不良にしか見えない。
「ナンパかもしんないじゃん」ささやかな反抗としてタメ口で言ってやった。
「あんたみたいな田舎丸出しの女、誰もナンパしねえよ」
「田舎じゃないし!」
図星を突かれて気持ちが高ぶる。感情が大きく波打ったのにつられて声が大きくなった。
男が、ほら見ろと言わんばかりに鼻で笑う。
「髪染めりゃ都会に馴染めると思ってんだろ。全体がまとまってねえ。ちぐはぐなんだよ」
茶色く染めた髪に思わず手を伸ばしてしまった。そのまま手を下ろすのも癪だから、意味もなく髪を耳にかける。美容院でオリーブベージュと教えてもらった髪色。お洒落な色名に慣れなくてつい茶色と呼んでしまう。髪を染めるようになって半年以上経つのに、隠し切れない田舎っぽさがまだ残っているらしい。
私にさんざん言うこいつはどうなんだろうか、と男の頭から足まで観察する。とりわけ目につくのは金髪と羽織ってる赤いアウター。黄色と赤。どこかで見た色合いのそれらで記憶をかき混ぜる。
そして、ふと思い出した。
「デイリーだ」
「あ?」
「なんでもないです」
相手を刺激しないよう敬語で誤魔化す。
デイリーとはデイリーヤマザキの略称。私の地元でお馴染みのコンビニだ。よくパンを買ったなあと懐かしくなる。都会で見るコンビニは他のものばかりで、デイリーに巡り会えることはほとんどなかった。
「金盗られたくなかったらさっさと帰れ」
続けて男が「駅はあっち」と右を指さす。
結局この金髪男の名前はわからなかった。まあもう会うこともないだろうし、名前なんてどうでもいいか。
じゃあねデイリー。心の中で金髪男にあだ名をつけてから教えられた方向へ進む。すると後ろから足音がついてきた。振り返ると、別れを告げたはずのデイリーが私と同じ方角へ歩んできている。
「なんでついてくんの」
「俺も電車乗んだよ」
「後ろ歩くのやめて」
「じゃあ隣歩けば文句ねえよな」
隣も駄目に決まってんだろ。文句を言う前に風が強く吹いて唇を閉じてしまう。
「俺ん家の最寄りA駅なんだけどあんたは?」
デイリーが聞いてくる。なんという偶然。A駅は私も家から一番近い。嘘をつけばよかったのに、気づけば「同じ」とこぼしていた。
『優しさ』
なぜ「やさしさ」という言葉を「優しさ」と書くのだろう。
「亻(にんべん)」+「憂」
にんべんは人、右側の「憂」は心が沈んで「うれえる」「心配する」様子。
誰かのことを心配し、思いやる気持ち。
それが「やさしさ」なのかな。
損得なしに誰かを思いやるのって、家族や友人にはできるけど、それより関係が薄い人にはなかなかできない。
でも、配慮や気づかいは忘れたくないよね。
【優しさ】
友人から、
自分が特に考えず発した言葉に対して、
「あんた、優しいね、、ありがとう」
こう言われると、少し戸惑う。
『『え、、、?
世の中って、あなたの周りの人間って、
どんだけ、、
どんだけ冷たいの、、、??』』
こう思ってしまうから。
別に、あたしが優しいんじゃ、ないのよ、、。
優しさは、
軽い気持ちで作るものではない。
優しさは、
これさえあれば良いというものではない。
優しさは、
カスタマイズできるものではない。
優しさは、
お金で買えるものではない。
優しさは、
自分のために売れるものでもない。
優しさは、思いやりだ。
人の心だ。
本来なら、
社会の中で雑草のごとくすくすくと育っていく人の心だ。
草が育つ栄養豊富な土すらないのなら、
教育しようが身につくはずがない。
肥料を撒けば、
農薬だらけの汚いものが手に入るだろう。
30[優しさ]
優しい訳ぢゃない
嫌われたくなかっただけ
#優しさ