研究員たちの足音も過ぎ去った頃、真っ暗な廊下に一筋の光がさしていた
アカデミーの司令塔である、ホープ・エストハイムの執務室である。
現場に出ていたライトニングは報告書を提出する為に、開いていた扉をノックする。
中央の執務机にはたんまりと書類が乗っており、その間からひょこりとホープが顔をだす。
あ、ライトさん。こんな時間までお仕事ですか?お疲れ様です。
嬉しそうににっこりと笑い。慌てて駆け寄ってくる。
出会った頃より頭一つ分も大きくなってしまった男を見上げ
その言葉をそのまま返す。
過労死する気か?と眉を寄せる
目の下には隈、顔色も悪い
いつから寝ていない
えぇーっと、いつからだっけ
はは、と笑うホープの顎を掴みこちらに向ける
寝ろ。その状態で進めても効率が悪い。
あと少しで終わりそうなんですけれど、と頭を掻くホープの目が泳ぐ。目が合わない。そして、あの、少し、近いです。と呟く。
自分が出て行っても寝ずに仕事を続けそうなこのワーカーホリックの男をどうして寝かせようか。
物理的に寝かすか。と拳に力を入れると
なんか凄い怖いこと考えてませんか?と怯えるホープを見て、いや、何でも無い。気にするな。とだけ言う。気絶させると仕事はしないだろうが、明日に響いてしまいそうだな。ライトニングは考えを改める。
逃すまいとホープの顎を掴んだまま、当たりを見回すと寝心地の良さそうなソファが目に入った。これだ。ホープの腕を掴むとソファに座らせる、というより投げる。
いたた、暴力反対です
その上に馬乗りになるライトニング
暴力じゃない。優しさだ。
ライトニングは抵抗されないようホープの腕を片手で一括りにし、空いた手で器用にネクタイを引き抜く。ブラウスのボタンも幾つか外しておく。
え、あのっ、ライト、さん??
こんな、こんな場所で、待って、まだ、せめて、僕が上にっ
上?何の話だ。何をそんなに狼狽えている?寝ろ。寝るまでどかん。
え、あ。あぁ、びっくりした。僕、襲われるのかと。あの嫌ではなくて。本望ですが、ええっと
ホープは首まで赤くし目線もあちらこちらに飛んでいる
もう喋るな。寝ろ。
ライトニングはホープの拘束を解き、馬乗りのまま腕を組む
色々な意味で寝れないです。
歌でもうたってやろうか?
それは、かなり魅力的ですが、と言いながら力強くライトニングの腕を引く
油断していたライトニングはホープの胸で頬を打つ
お前、いい度胸だな
胸の上に落ちてきたライトニングを抱きしめるホープ。
大好きなライトニングの香り、暖かい、程よい重みとや柔らかさ。徹夜続きの脳には大打撃である。すぐ様、睡魔がやってくる。
すみません、少しだけ、
しばらくすると寝息が聞こえてくる。
ライトニングはため息をつくと、起こしてしまわないよう、そろりと起き上がるとホープに一つキスを落とす。そしてまた、ホープの胸に頬を預ける。
少しだけ
ホープは幸せな夢を見た。
愛おしそうに僕を見つめる、小さな頃からずっと思っている薔薇色の女性が、自ら口付けをーーーー
そこではっと目を覚ます。
夢、か。窓を見ると薄らと明るくなってきていた
随分寝てしまった。体を起こすと、彼女が着ていたコートが布団代わりに自分に掛けられており昨夜のことを思い出す。
あぁ、惜しいことをした。
だが、頭の中のモヤは晴れスッキリとしている。
やっぱり睡眠は大事だな。
大体、自分の限界を感じた頃にあの人はああやって、声をかけにきてくれる。だからといって自分を追い込んでいるわけではないが、気にかけてくれているようで、あの人の中には僕がいるようで嬉しく思う。
さぁ、寝てしまった分取り戻すか、と執務机に目をやると、昨日の散らかりが嘘だったかのように、綺麗に整頓されていた。
付箋が至る所に貼られている
固く形の整った字。ライトニングだ。
期限つきの書類は期限順に並んでおり、印鑑が必要な書類には丁寧に印鑑が押されている。放置していたファイルには種類順に丁寧に書類が分けて収納されてある。
なんて、できる人なんだ。
あの人事務職もできるのか?!
引き出しを開けると、大きめの文字で書かれたメモがあった。
最終チェックはしろ
今夜18時に迎えに行く。
その横に下手くそなモーグリの絵
さぁ、早く終わらせて、僕が迎えに行こう
優しいあの人を。
《優しさ》
1/28/2026, 9:26:56 AM