『優しくしないで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私のことをなんとも想っていないひどいあなたが好きだから、優しくしないで。
優しい人が嫌いだ
その優しさを全て返さないといけないから
…そんなことを言う君が一番優しいのではないだろうか
あの人にはあんな意地悪しといて
私に優しくしなくていいよ
人によって態度変える人が
私は好きじゃない
優しくしないで
別れて何年経つけど
LINEしたら
必ず返事がくる
しんどいときに
あなたに連絡する
その気もないのに
優しくしないで
気持ちがあの頃に
舞い戻るよ
なな🐶
2024年5月2日1131
自分がみじめになるから。
プライド高くて、あなたの優しさを受け入れられなくてごめん。
でも、そうしないと生きていけないから。あなたも私を殺したくないでしょ?
題 優しくしないで
「つまりはこういうことなんです。お前はそのレモネードを飲み終わったら私を殺します。また会おうね。Congratulation。」
バチくんは、珍しいこともあるものだなァ、とストローをかじりながら目の前の謎の生物を見つめた。
ここは地元のカフェである。と、言っても、夢の中なので、客も居なければ店員もいない、真昼の太陽だけが店内を照らし、床は所々腐っている。現実とはいろいろ違うカフェだ。
さて、目の前の謎の生物だが⋯⋯ こいつは変幻自在なので、姿の特定は難しい。口が出るのは喋る時だけで、目が出るのはものを見る時だけである。おおよそヒトの形を求める何かである。
バチくんはこのヘドロのような生物のことを、アイちゃんと呼んでいた。似つかわしくない名前だが、そう呼び始めたのには理由がある。
初めてアイちゃんが夢に現れたのは、バチくんがイジメていたクラスメイトがお空に飛んでった次の日である。
バチくんは金魚鉢の中にいた。しかもここは、友達の家のようだった。窓際の棚に置かれた金魚鉢では、ピラニアが旋回し、バチくんを齧っては離れ、齧っては離れしていた。ピラニアは黒いホースのようなものを伝って、上からドぽ、ドぽ、と降ってきているようだったが⋯⋯ ホースを辿った先には、黒いドロドロとしたヘドロのようなものが溜まっていた。これがアイちゃんだ。アイちゃんは目をカタツムリのようにして、バチくんの血が煙草の煙のように広がるのを見ていた。
「⋯⋯ !、⋯⋯ !!」
バチくんは必死にもがいてガラスを叩いた。もう何でもいいから助けて欲しかった。
この夢の悪質なのは、感覚があるところである。だからバチくんは、夢とわかっていても激痛に悶えた。少しずつ失っていく体を知って、もう殺してくれ、と本気で願った。
ここでやっと、アイちゃんが動いた。びちゃっ!と金魚鉢を覆うように広がり、大量の口でガラスをガリガリした。すると金魚鉢は割れ、ざぱぁ!と赤とかピラニアとかが流れ出た。バチくんは棚から落ちるギリギリのところで止まった。
ヘドロは、からだの色んなところを失って死んだバチくんに近づいて、一言、
「良かったね"ぇ」
と、口を(おそらく)腹から出して言った。
つまり、バチくんを殺したのはこのバケモノで、助けたのもこのバケモノである。
こんな夢がもう8年も続いた。いつも、何かに喰われる夢だった。
バチくんは、自分を殺すも助くもこのヘドロであり、なんだか神様みたいだなって、いつも夢から醒めてから思うのだ。だから慈愛の意味を込めて、夢のバケモノをアイちゃんと呼んだ。
「いきなりどうしたのさ。しかも今日は随分穏やかな夢なんだね」
「いつもはお前が望むからそうしてるだけだよん」
「今日は?」
「卒業式」
アイちゃんは手っぽいものを3本出して、パーっとやってみせた。
「もう痛い夢は見ないってこと?ていうか、あんなの望んでないよ」
「いいや、望んでるね。喜んでた」
「俺Mじゃないんだけど」
バチくんは眉をしかめてジューっとレモネードを啜った。あと半分くらいある。
アイちゃんは中指でバチくんを指さして、ここで問題です、と言った。
「ここで問題です。そのレモネード、何でできてると思いますか?ハイ、バチくん」
「え、レモンと炭酸⋯⋯ ?」
「まったく違うよ。ヒントは昨日の夜、シンクの中」
「⋯⋯ エ、エ⋯⋯ マジで?俺の?」
「ウィ。昨日バチくんが零したゲェを集めてレモネードにしました。お味はどーお?」
「エ、普通に美味いわ」
バチくんは、この夢に感覚が伴うことをよくよく知っていた。だからレモネードはおいしい、たとえ夢であっても。
「つまりはそういうことなんです。お前は自分の苦しみがおいしいんです。可哀想にね」
「⋯⋯ 」
バチくんは寝る前になると、いつもゲェを吐いていた。夜のエネルギーはスサマジイので、バチくんを深いところまで追いつめて、「あれ?俺なんで今日生きてたんだろ。許されないのに」って気持ちにさせるのだ。
「ダメだ」
バチくんはグラスを握りしめて下を向いてしまった。
「俺、ぉ、アイちゃんにまで優しくされたら、生きていけない⋯⋯」
「それが望みだろう」
「違う」
「辛かったね」
「ちがう」
バチくんはとうとう泣き出してしまった。
「ちょっとからかっただけなんだ。あいつも笑ってたし、みんなも面白いって言ってた」
「へぇ」
「俺、誰にも責められなかった、俺が子供だったから。」
「ふーん」
「うぇ、ゲホゲホ⋯⋯ でも、嫌われるのも怖いんだ。普通に生きたいのに、いざ、少しでも幸せを感じると、あいつを思い出すんだ⋯⋯ 」
「自業自得ですね」
「うん⋯⋯ 」
アイちゃんは、たくさんの手っぽいものをひょっとこのようにうにょうにょさせた。そのうちの一つがグラスを掴んで、「マァ飲めよ」とバチくんのほうにぐっと押した。残りは4分の1くらいある。
バチくんは10分くらいグズグズしていた。それをアイちゃんは、たくさんの手の平に出した目で見つめていた。
「お前はもう生きてちゃいけないよ」
「うん、」
「卒業式だからね、私もお前も」
「アイちゃんも辛かった?」
「イヤ私はお前だし⋯⋯ 知らん」
「そっか、」
バチくんは最後のレモネードをジューゴゴゴ、と飲み干した。そのままグラスをしっかり握って、アイちゃんの頭っぽいところに振り下ろした。
優しくしないで……
貴方に優しくされたら……
罪悪感が湧くじゃない!!!
_________________
諦めようとした時に限って
思わせぶりしてきて優しくして
期待しちゃうじゃん
好きじゃないなら優しくしないで
_________________
Theme:優しくしないで
カーテンを開けると、別の世界が広がるの。
こないだ読んだ本で見たような景色。
よく晴れた空。草原に渡る道。
白い囲いに赤い屋根のお家。お庭には大きな犬。
おかしいな。
少し前まで、ここは灰色の壁だったのに。
看護師さんは、良かったねと笑う。
やめて。惨めになるから、こんなことしないで。
/『優しくしないで』
『カラフル』
子どもたちのおえかきの時間、保育士はとある子どもの画用紙が気になった。
「それなにかな?」
子どもが描いていたのは、うさぎとくまと中央にかかる大きなカーブを描いた橋。
今日のテーマは『虹』で、確かに中央の橋は虹っぽいのだが、保育士の知っているカラーリングではなかった。
「にじだよ」
子どもは赤色のクレヨンで橋に色を塗っている。それは黄緑、茶色、白、ピンク、金、銀、水色の7色だった。黄緑の上に更に赤を塗ろうとしている。
「そっか、珍しい虹だね。先生の知ってる虹と違うけど、どうしてその色にしたの?」
「あのね、おかあさんがね、にじはねがいごとをかなえてくれるっていってたの。どんなねがいごとも、なないろでかなえてくれるんだって」
子どもはにこにこ言ったあと、顔を曇らせた。
「でもね、ぼくもね、おねがいしたんだけど、かなえてくれなかったの」
クレヨンを塗る手を止めて、子どもはうつむいた。
「おかあさん、しんじゃった」
保育士は去年の夏に、この子どもの母親の訃報を聞いたことを思い出した。保育士が何も言えずにいると、
「だからね、にじいろじゃないほかのいろもぬって、いろんないろでみんなのねがいをかなえてくれるようにするんだ!」
子どもが保育士を見上げて笑った。
「……そっか。たくさんねがいごとかなうといいね」
保育士は微笑み返して、子どもの頭を撫でた。
「虹」/『カラフル』
上げ損ね昨日分。
17 優しくしないで
生まれて二ヶ月もたっていない子犬が、ぺろぺろと可愛らしく私の腕や頬をなめている。
この店では、やってきたお客に必ず子猫や子犬を抱かせる。そうすればみんな、たまらなくなって「お迎え」をしてしまうのだ。何もかも計算ずく。
わかっている。わかっていてもとまらない。
「この子、ください」
私は言った。
仕事も婚活もダイエットも、何もかもうまくいかない。生活はストレスだらけだ。かわいい子くらい、いいじゃない。さあ、私のうちに来てね。名前は何にしようかな。
私の家には「衝動買い」した犬や猫が二十匹いる。
金銭的にも物理的にも、もう限界だ。
それでも優しくてかわいいこの子を前にすると、私はおかしくなる。ああおねがいします。どうかもう、優しくしないで。かわいいのをやめて。
アイスを落とした。
ただのアイスじゃない、全て味の違う3段重ねのアイスだ。購入して2秒後に落ちた。当然1口も食べてはいない。
「あ…その…」
キッチンカーの店員さんが気まずそうに笑顔を引きつらせる。それもそうだろう、客が目の前で商品を落としたらかなり居た堪れない気持ちになる。私が店員なら100%固まる。先程まで和気あいあいと話していた周囲のお客さんも静まり返ってしまった。
「おねいちゃんだいじょうぶ…?ぼくのアイスはんぶんあげる…?」
気まずい空気が漂う中で、幼い男の子の声が私の耳に届いた。声のした方に振り返るとお母さんと一緒にアイスを食べていた男の子が私に食べかけのアイスを差し出してくれていた。
「…!坊主それはお前さんのアイスだ!ねえちゃんには俺のをあげるぜ!まだ口つけてねぇからよ!」
「わ、私のもどうぞ!2段目はスプーン入れてないですよ!」
「いえいえ!皆さん!次は僕が購入する番ですからぜひお姉さんの分も僕に買わせてください!」
「お客様方!むしろここは店員である私にもう一度お姉さんのアイスを作らせてください!今度は!カップで!」
男の子の提案を皮切りに、おじさん、女子高校生、男子大学生が次々に声をかけてくる。さらには店員さんまで加わってきた。
「「それがいいそれがいい!」」
私以外の全員の声が一致する。
「よかったね!おねいちゃん!」
男の子が眩しい笑顔でこちらを見上げた。
「…アリガトウ」
羞恥心が限界に達して真っ赤になる私は、喉から何とか言葉を絞り出した。
みんなに見守られながらアイスを受け取りその場を去る。
楽しみだったはずの3段アイスは涙の味でほんのりしょっぱかった。
優しくしないで
優しくしないで
俺になんか
優しくしないでください
なにもかも
全部が
重くて
貴方の気持ちも
理解できずに
死ぬのは嫌だから
頑張って
生きる
「痛い…痛い、全部、嫌いなのに」
貴方が優しくするから
俺に気にかけるから
もっと
貴方の全部が
好きになっちゃうから
心を開いちゃうから
優しくしないで
そんなに
優しくされたら迷惑なんですよ…!
「和菜さん!」
モノクロ
瞳にかかった雨雲も
どっかに飛んでいったみたい
私はもう大丈夫よ
何も悲しくないから
安心して。振り向かないで。
私はここにいるから
白黒の世界に花束を添えよう
「これでお別れです」
長いようで短い夏の夜が終わる。
大丈夫よ
朝には涙も乾いてるだろうから
前に進まなきゃ、君の分まで
祈りながら、君とまた会えることを信じて。
屋上に続く階段を静かに上がると、思った通り屋上のドアの前に両膝を立てて座り、俯いて泣いているキミがいた。
「やっぱりここにいたか」
そっとつぶやいた声に、キミは肩をピクリと震わせ顔を上げる。
「どうして…」
流れる涙をそのままに、キミは驚き固まっている。
「どうして。って、落ち込んでるんじゃないかと思って」
俺がそう言うと、キミは嗚咽を漏らす。
「頑張ったね」
キミを抱きしめようと、キミの横に座り腕を伸ばすと
「優しくしないで」
キミは拒絶するように俺の腕を掴まえ
「優しくされたら、あなたの優しさに頼り切ってしまいそうだから」
泣きながら言う。
「大丈夫、キミならそうはならないよ。だから、こんなときくらい優しくさせて」
笑顔を向けると、掴んでいた腕の力が緩む。
「ずっとそばにいるよ」
泣き止むまで、そっとキミを抱きしめたのだった。
【優しくしないで】
もしも自分に優しくしてくれる相手に対して、
「優しくしないで」と言ったとする。
その相手は、今後から優しくしてくれることはない。
でも、それって、ただ相手が自分に優しくなくなった、というわけではないのだと思う。
「優しくしないで」という言葉を受け入れてくれた。
その“優しさ”から生まれる行動なのかもしれない。
同じ部活の人。
その人は自分が体調悪い時は助けてくれて、笑わせてくれる。
優しくしないで。
好きになっちゃうから。
優しくしたい。そう思うのは普通だ。
優しくするなと言われて、YESと頷けないのも普通だ。
でも、優しくすることだけが優しさではない。
すぐに切り離すくらいなら、最初から。
私に優しくしないで欲しい。
君のその優しさは、私には毒だ。
仕事仲間。同僚。戦友。──相棒。
私たちのこの関係に、どんな名前をつけても間違いではない。
時に背中を預けあい、支え合って生きる。
その関係性を言葉にするのなら、それで間違いはない。
だからそれ以上の感情を、優しさを向けないで欲しい。
君のことが、その優しさが嫌いではない。むしろ、好きだ。
君以上に大切な人などいないし、作るつもりもない。
けれど、恋人になりたいわけではないんだ。
どれだけそばに居ようとも、ずっと一緒には生きていけない。
私は君を置いて行く人間なのだと、わかっているから。
そう自分に言い聞かせて、一線を引く。
君の好意をわかっていながら、曖昧に笑う。
だからどうか、相棒のままでいるために。
そんな風に笑わないで。
この恋は、はじまる前に終わらせたはずだから。
『その熱は身を焦がすほど』──(お題:優しくしないで)
「なぁルシアン。もう俺に、優しくするなよ」
「な、なんで……?」
「この間の、お前が『兄ちゃんも来なよ! 絶対楽しいよ!』って連れてったパーティーで、他のやつらに俺がなんて言われてたか知ってるか?」
『また来たよ』『毎度毎度律儀に来ちゃってさ、学ばないの?』『早く帰れっての』
「……なぁ、わかるか? 惨めなんだよ。何でも持ってる、誰にでも愛されるお前に優しくされるのは。お前はいいやつで、善人だ。お前より劣ってる俺なんかを慕い、好いているのが嫌でもわかる。だから、お前が俺を思ってくれるなら。どうか俺と関わらないでくれ」
「わ、わかんないよ……。どうして? 俺、兄ちゃんといたいよ」
「ま、そうだよな。お前がそう言うのはわかってたさ。だから、明日一日だけでいい。起きても、俺の部屋を覗くな。学校でも俺の事を探すな。帰って俺がいなくても探そうとするな。一日だけでいいんだ。頼むよ」
「……わ、かった」
「ありがとな」
「……そう言って部屋に消えた兄ちゃんを、引き留めればよかったって、今でも思ってる。関わらないって約束した日の次の日。一日だけって言ってたから、またいつもみたいにおはようって、言えると思ってたのに。……兄ちゃんの部屋の、ドアが重かったの。頑張って押せば入れそうだったけど、そんなに入ってほしくなかったんだ、って思ったら無理に開けない方がいい気がして窓から様子を見に行ったの。そしたら、さぁ。ドアノブで、首、吊ってた。……ごめんね、兄ちゃん。望んでないし、それで許してくれるとも思わないけど……。兄ちゃんに酷い事言ったりしたやつは、苦しめておくから。ゆっくり眠ってね」
瓶底に沈んだ幸福は、何色をしているのだろう。
暗い海の淵に沈むきみの手を取る夢を見た。そんなこと、ある筈がない。否、あっていい筈がない、そう理解っている。いつもよりも重い頭を擡げて、自分の身体に光を遮られて陰に染まった掌に視線を落とした。僕の心を締め付けているのは焦燥か、それとも黒い恐怖か。手の平の皺に爪を立ててみても、夢の中の冷たい手の感触がどうもついて離れない。
溟い闇の中で、きみの目だけが僕を見ていた。
きみは、僕を憎んでいるはずだ。そうでなければ、僕は。
僕は、きみの瞳を見つめた。きみが僕を許してくれないというのなら、僕は幾らか心が晴れる。そうだ。いっそのこと、僕を海の底に沈めてくれたっていい。その方が、僕の気は楽になる。僕はそれだけのことをきみにしたのだ。きみが僕に報いを与えてくれると言うのなら……、僕は少しだけ、僕を許せる気がするんだ。
——嗚呼、だと言うのに。
きみの瞳は澄んでいた。何処までも、どこまでも。
それはあの時と変わらない、誰かを信じて疑わない目。きみの瞳そのものだった。
きみは何と言った? その感情の宿らない目で。
ぞっと芯までも凍り付くような冷たい感覚が、僕の身体を支配する。ひぃ、と喉から転がり落ちた悲鳴は誰のものだったか。僕に掛かった体重が一気に遠のく。きみの手を掴む力が抜けたのだ。僕の手を放したきみは、あっという間に黒い波にさらわれて姿を消す。きみが飲まれて行くのをじっと見ていた僕は、たった一人安全な闇の上に取り残されて。そこで、やっと夢から覚めた。
きみはまだその目で僕を見るというのか。止めてくれ、僕は惨めな愚か者だ。きみの思うような良い友達ではなかった。きみにもわかっただろう? 僕は、僕自身が一番大切な人間なのだと。きみは本当に良いやつだった。誰よりも正しかった。けれども、それを簡単に裏切ったのは僕だ。なあ、僕は酷いやつだろう? それなのに、何故きみは未だにその目で僕を見る? 君が一言僕を許さないと言ってくれれば、憎んでくれたのなら…………いや、所詮はただの夢だ。本当のきみじゃない。これはただの幻想に過ぎない。僕の罪の形が君の姿を成しただけ。……これは、僕への罰だ。永遠に、逃れる事は赦されない罪。僕はそれと向き合わなければならない。そうだろう?
視界を埋め尽くす澱んだ液体の緩い感触を肌で感じ、僕はただ茫然と息をする。知っているさ。爪を立てた手の平には、赤い血は浮かばない。僕の捻じ曲がった性根が変わることはない。
きみからの手紙を、僕は見ようとしなかった。
酷く小さな、芯からの叫のつまった瓶は今も溟い海に沈んでいる。その思いが掬われることはもう、ないだろう。