『何でもないフリ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
小さな手を掬い上げるように両手できゅっと握った。
暖かいとも冷たいとも言い難い手の温もりが、仄かに伝わってくる。
目の前の彼女は小首を傾げて、何をするのかとこちらを見ている。どうしたの。そう言うように覗き込み、見上げてくる。
拾われて包み込まれたその手は、所在無さげにしながらもそのまま貸してくれていた。
「なんでもないよ」
言いながら、しばらくそうしていると互いの手の間にじんわりと温かさが生まれてくる。
本当にどうしたの。と、再度彼女が目で訴えてくる。
「……なんでもない」
また同じように答える。
なんでもない。
本当になんでもないんだ。
意味はない。目的もない。
なんなら、自分でもわかっていない。
いや、わかってないわけではないのだ。ただ、それを言語化するのが難しい。
焦燥感、喪失感、妬み、恨み──そんなような、でもそれではないような。モヤモヤ、と表するのが一番手っ取り早いような。
理由のひとつは見当が付いている。
単なる日常。いつもの、なんでもない会話。
『いつも元気だよね、悩みとかなさそう』
「はは、そうですか?」
──本当はそんなことないのに。
『メンタル強いから、大丈夫でしょ』
「がんばりますね」
──本当はそんなこと、
『悩みとかある? あったら言ってね』
「ありがとうございます、大丈夫ですよ」
──本当は、
『ほら、いつも忙しそうだから、あんまり遊びとか誘っちゃあれかなって』
「ごめんね、気遣ってくれてありがとう」
──……。
単なる日常。なんでもない会話。
別になんでもない。
そう、なんでも。
だって実際、他人にとってはなんでもないことなのだから。
だから当然自分にとっても、
「なんでもない、はずなんだよ」
そうであるはず。
そうでなければならない。
そうじゃないとおかしい。
だから、なんでもないと、笑わなくてはいけない。
それがむしろ、人として当然なのだから。
顔を埋めるかのように態勢を低くして蹲れば、彼女は反対に身を乗り出し頬ずりをし、──かと思えば身を捩ってどこかへ行ってしまう。
小さく鼻を啜る音に被せて、彼女は遠くで「にゃあ」と鳴いた。
title. うまくいきるために。
Thema. 何でもないフリ
彼女「どうかした? 暗い顔しているけれど」
彼氏「いいや、大丈夫。
ちょっと最近疲れてしまったから。
心配させてごめん。」
彼女「私は全然いいのだけれど」
✻
彼女「やっぱり何かあったでしょう。
3日前もこんな事あったよね
いつもと比べて顔が暗いんだもの
何があったの?
教えて」
彼氏「じゃあ、話すには
僕の秘密基地に行かないと
少し旅行気分になるよ。
山奥にある僕の秘密基地に行けばね」
彼女「山奥?
別荘があるの?」
彼氏「いいから、車に乗って」
✻
彼氏「あれ〜?
黙り込んでるけどどうかした?」
そこには大量の死体と、
強張ったせいで顔にとてつもない
力がかかっている彼女がいた。
何でもないフリをする。殺されたくないならね。
聞いてはいけないことがある。殺されたく
ないならね。
忘れたことにする、
彼氏がこんな人だということを。
殺されたくないならね。
テーマ-【何でもないフリ】
私の数メートル前を
かなり年配のご婦人が
歩いていた
いきなり突風が吹いた
ご婦人の帽子が
私の方へ飛んできた
咄嗟に身構えて
両手でキャッチした
どうぞ…
何でもないフリなんて
するわけない
喜びで盛り上がった
良かった🤭
✴️238✴️何でもないフリ
明日が来るのが怖いけど、
明日が来たら嫌な予感が当たる気がするけど、
もう、そんなこと言ってられないのかな。
自分が何かのきっかけで死を迎えない限り
私の明日は来る。
そんな不安を君だけに打ち明けたら、こう言った。
「明日が怖くても、近い将来はわからない。
あなただけの楽しみだってあるでしょ?
困難を乗り越えた先には君だけの喜びが待ってる。
楽しみがないなら作れば良い。
誰にだって好きなものはあるし、得意なものもある。
それを心に秘めて明日を迎えよう?
きっと『生きててよかった』って思える日が来るよ」
それを聞いて私は、
自分の好きなものや得意なものを過去を通して探った
「何でもないフリ」
話さなくなった
関わらなくなった
君との最後の連絡
スタンプだったね
話したくないのばればれ
ごめんね。
話続けようとして
そこから君とは遠くなってったね
私が怖くて辛くて避けようとし始めたからかな
でもたまにまだ目合うよね
廊下であったら絡んでくるよね
心の中では嬉しいよ
でも辛いの
もう連絡はしてくれないんだって
君は好かれてる自覚ないでしょ
もともと友達だったのもあるかな
だから私も隠してる
何でもないフリしてるんだよ
昔ゲーセンに残り寿命を教えてくれる
ゲームが置いてあったのでやってみた。
心とか技とかの質問に答えていって
なかなか好成績で進んでいたのに
最後の運のところで、がっつりマイナスをくらい
今の年齢より前に死んだことにされてしまった。
ゾンビ扱いの診断が出て大爆笑だった。
今日のお題を見て
私がゾンビであることを気付かない振りしてくれてる
周りの人に感謝しましょう。
と書かれてたのを思い出した。
(何でもないフリ)
何でもないフリをあいつはした。
「ホントに、こんなビルの裏にあんのか?」
『あぁ、でも、ついて来たくないなら帰れ、』
「へいへい、」
何処にでもある様なビルの裏路地に地下への入り口
「うぁ、すげぇ、ホントにあったんだな」
『しっ!少しは落ち着けよ』
重い扉を開けると、そこは競売の会場になっていた。
[ようこそ、おいでくださいました。]
✡
続く…かもです。
「何でもないフリ」
・多忙なクランツ王の休暇
隣国との交流の機会に夜会へ出席
舞踏会の開催
遠い国で起きている諍いの仲介・解決
自国の民達への支援・財政についての会議
ここ2ヶ月でかなりの仕事が増えている
寝る間も惜しんで書類と向き合っているのに一向に減る気配がない…
金の髪を結った王は多忙であった
自国のことだけではなく、他国の問題などにも関わることになり働き続けていた
後ろに結った三つ編みが解けても気にすることなく働いた
そうすると、臣下達は心配し始めた
民のため、豊かな国にするためと一人で背負い過ぎている王
…どうにか休ませねば、我らの賢王が潰れてしまう。と
とある臣下は言った
「今この世界に滞在してるであろうグランローヴァ様に
頼んで、陛下を休暇に連れ出してもらおう。」
臣下たちの声を聞かず働き続けるのなら、王が反論も何もできない相手をあてがうのが良い
名案だ
続きは後ほど書きます
何でもないふりなのか
そうでないのか
肌にぴったりと擬態するそれでは
もう判別することはできない
知らずについていた切り傷に
シャワーが染みて初めて気付く
手当なんて必要ないと
ざっと洗って、流して
流れてく
温度のわからない涙
【何でもないふり】
そんなフリを続けていたら、何が辛くて苦しいことなのかわからなくなってしまった。
何でもないフリを長く続けるから、日本人はうつ病になりやすいと思っている。
心の構造について、とある精神科医YouTuberの動画を拝聴した。その人が言うには、心はハードウェアとソフトウェアの2種類で出来ていると言った。
ハードとは、例えばスマホの機器本体のことで、心の入れ物である。
ソフトとは、いわばスマホの中にインストールされているアプリ群のことで、いわば心を構成している要素である。
人は日々、スマホのストレージ内でアプリを落としたり、または消したりする。
ストレージ容量は人それぞれで違う。
128GB、256GB、あるいは64GBという小容量を使っている古い携帯もあるだろう。
アプリを落とした順番が気に入らなくて、時折ホーム画面上のアプリの配置転換を行うこともするだろう。
意外と時間がかかるから、めんどくさくてしない人もいる。
それでも良いが、やがてストレージ一杯手前になると、警告が入って、アプリを削除しなさいと言われる……僕は言われたことはないが。
つまりはうつ病の人は、やたらめったらアプリのダウンロードばかりをして、そのまま放置してしまっている。
無駄なデータを蓄積した結果なのだ、何年もやっていないゲームアプリが重いのだ。ゆえにスマホが重くてサクサク動かないのだ、と説明した。
今はスマホがあるからこのような説明ができるが、スマホができる以前はどのように説明したのだろう。
心とは何か。
ネットは愚か、紙とペンすら希少だった時は、頭の中だけが頼りだった。記憶領域を短期と長期に分けて、ひどく哲学的思索をしなければならない。
そんな悲鳴のような、悲痛のような。
聞こえてくる。
遺伝子情報を通して、自分の脳内から聞こえてくる。
連綿とした試みが、過去何世紀もかけて行われ続けたという軌跡が。
例えば、所詮人間も、心という概念的な100%で出来ているのではなく、タンパク質の入れ物の中に神経伝達物質が飛び交っているだけのものなのだ、と気づくまで、科学の進歩を待たねばならなかった。それまで、宗教的信条が独占して、宗教戦争や革命が起き、血で血を洗う悲惨が巻き起こった。
……失礼、脱線した。
今はアプリの話をしているんだった。
睡眠時間というものがある。
人間も生物の一員だから、一日の1/3は寝て時間を捧げなければならない。
その時に記憶領域の自然的操作が行われるのだが、うつ病の人や疲れ果てている人は、これをぎこちなく行う。睡眠の質が落ちるのだ。
脳が起きている時間が多いと、その分身体を休める時間が短くなって、いわゆる「寝た気がしない」という状態になる。
だから、うつ病の心の何がおかしいのかというと、ハード面ではなくてソフト面……アプリがとっ散らかってて、ストレージ容量一杯になっているのが良くないのだ、という結論。
じゃあ、どうすれば良いの?
動画では「寝れば良い」
再起動するよう働きかければ良い。
あるいはOSのアップデートをして、作業効率をあげるように仕向ける、という。
スマホのように買い換える、という方法が物理的にできないのだから、そうする他ない。
データが一杯手前だとしても、フリーズするわけではない。
ストレージ容量を超えようとしても、超えることはない。身体のほうがリミッターを付けていて、ブレーカーがガコンと落ちるように、勝手に寝るようになる。
「もう寝ろ」と身体を壊した。それがうつ病だ。
ここまで書いてきた通り、精神科医YouTuberは理路整然と動画で述べていたのだが、そもそもうつ病になった人は文章は読めないし動画も観れない。
というか、集中力が散漫を起こして、この短い文章さえも拒否してしまう。
そうなると精神科医は、
「薬を飲んで寝ろ。話はそれからだ」
ということになり、眠剤を処方して寝るだけの人生にするしかない。
いったい何のために動画を出しているのか。本当に伝えたい人には、届かないことをしている。それは精神科医なら知っているはずなのに……
つまり「そうなる前に」というのが肝心なのだ。
何でもないフリをするのは、限界を知っている人が一時的にするもので、ずっと我慢するためではない。
それは演技ではない。
何でもないフリ……、フリとついているから演技なのだ。「何でもないフリ」を我慢しすぎると、何でもない、になることはない。
「何でもないフリ」
「ニンゲンしゃん!たいへん!」……なになに……今度は……朝6時15分……。もうちょっとだけ寝かせてほしい……。
「な、にー……?」「たいへんたいへん!」
「おてがみがなくなってるのー!」「手紙……?」「ん!おてがみ、ないのー!」……あ、あぁ、そういえばこのおちび、前に手紙書いてたっけ。「しゃんたしゃんのおてがみー!どこー?」
そう、純粋なこの子はサンタさんを信じている。良い子にしていたらプレゼントが貰えると信じて、サンタクロースに手紙を書いたんだ。
そして、その手紙がなくなっている……らしい。
「サンタさんが来たんじゃないのか?」「えっ、ほんとー?!……でも、ボクしゃんたしゃんみてないよー?」
さて、手紙はどこにいったんだろうなー。
「ちゃんとおとどけものちないと、しゃんたしゃんにおてがみあげられないのー。」
……ふふっ。
「ニンゲンしゃん!」「……!」「なんでわらうのー!」ほっぺたをぷくぷくさせて怒っている。ごめんごめん。
……何でもないフリするのが難しくて。
まず、小さい子どもならではの純粋さに微笑ましくなった。それから、この子の真剣に狼狽える様子も可愛くて。あと、「サンタに手紙を渡した」のが……自分だから。
……つい笑みを浮かべてしまった。
「もしかしたら、おちびの弟が何か知ってるかもしれないよ?」「そかー!ニンゲンしゃん、ありがとー!⬛︎⬛︎ちゃんにきいてみるねー!」
元気に去っていった……。
「⬛︎⬛︎ちゃん!しゃんたしゃんのおてがみ、ちってるー?」
「おはよう!あぁ、アレならサンタさんに渡しておいたよ。忙しいみたいですぐに行っちゃったが、しっかり渡せたはずだ!」
「そかー!ありがと!」
……我が兄ながらかわいいね!
ボクも何でもないフリをするのが大変だよ!
……楽しみに待っていてね!
この世の中で生きていくことは、ストレスを抱えていくことなのか?
学生生活での自分とプライベートの自分はどちらも自分自身。
本当の自分は、己自身が分かるのか悩ましいことがある。
人間関係にも疲れつつある。もう嫌になることがある。
すべて無になりたい。
【お題:何でもないフリ】
夢を見た。
それは、妙にリアルで、けれど絶対に夢だ。
「柘榴? どうしたの、ぼーっとして」
優しく甘い声。見覚えのある懐かしい一室。もう失いはずの全て。
背後を振り返ると、対面式キッチンに立つ、一人の女性の姿。
艶やかな黒髪をポニーテールに縛り、知的な色を宿す漆黒の瞳は、疑問を隠さずきょとんとしている。
「姫菊、今日の夕飯はなんだろうか?」
「ふふっ、ぼーっとしていると思ったら、夕飯のことを考えていたの? そうね、今日は撫子が好きな餃子と……」
なんともない会話。日常の一ページ。
ずっと続くと思っていた、安寧と小さな幸福。
けれど、日常はいつだっていきなり壊れてしまうものだ。
あの日は、いつも通り会社に出勤していた。いつものように、いってきますと言って出ていった。
全てに気付いたのは、遅すぎた。
仕事が終わり、家路に着く。なんとなく、騒がしいなと思ういつもの道。段々と、焦げ臭くなる臭いに、嫌な予感がして、早足で家に向かう。
あの赤を、自分は一生忘れないだろう。消防車の音と、野次馬の声と、燃える家。
火事だった。それも、家を燃やし尽くす程の大火事。家の中に居た、妻と子は助からなかった。
火の回りが早すぎるのと、あまりにも火の勢いが強かったことから、警察は事件の可能性を含めて捜査を進めていたが、途中で打ち切りになった。
理由を問いただしたところで、意味などなかった。何かしらの圧力がかかったのだろうと推測するしかなかった。
だから、今目の前にいる彼女は夢なのだ。もう居ない人間が、目の前に現れることなどないと。祈っても、望んでも、会うことは叶わないのだと。
自分は嫌という程知っている。体験したし、実際壊れていく人間を見てきたのだから。
「……姫菊、認めたくはないが、俺は父に似たんだな」
愛した人を忘れられず、諦められず、狂気に染まるその様は、なりなくないと思っていた、嫌っていた父そのもので。
夢の中の君は、曖昧に微笑むだけだ。
「柘榴、貴方は……」
「おじさま!」
ふと、夢の中に誰ともない声がした。現実に引き戻す、ハツラツとした明るい声だ。
ゆっくりと瞼を開けると、ピンク色の髪が目に入った。
「……おはよう、ざらめ」
「おはようじゃないのです、随分魘されていたのです」
「そうか……」
体を起こす。心配そうな顔をするざらめの頭を撫でながら、大丈夫だと一言。
心臓を鷲掴みにされたような、ぎゅっとした痛みは、何でもないフリをした。
「今日、食事は?」
「今日は必要ないのです!」
「了解。なら、ざらめのストックが無くなりそうだ、調達しに行くか」
「はいなのです!」
自分がやっていることを正義だとは言わない。むしろ、悪人側だろう。
それでも、もう後には引けない。ざらめとの盟約も、自分の目的も、達成するまで……否、達成しても尚。
Sugar Bloodは、自分が消えるその時まで、続いていくのだろう。
ーあとがきー
今回のお題は何でもないフリ。
雨ざらしの死神かSugar Bloodかで悩み、後者を選択しました。
手を繋いでと同じ語り部、柘榴さんの妻子の話。
彼の狂気の始まりと申しましょうか、人を殺して笑顔でいられるタイプの男が爆誕した理由という感じです。
ユークドシティは、魔法が発達した街ではありますが、現代日本がモチーフなので、警察も消防もあります。まぁ、精度はまだあまりです、だからこそ、姫菊さんや撫子ちゃんは助かってない、なんなら処理の仕方すらおかしいことになってます。
余談ですが、黒影家の皆様は名前が花の名前になっています。柘榴さんの両親もです。こちらは別で語る機会があればなぁと思います。また別種の狂気の話となりますが。
ざらめちゃんの存在についても語れてないので、こちらもいつか出したいところですね、むむむ語りたい事が多すぎる、まだ雨ざらしの死神もあるのに……。
さて、また長くなりそうなので、今回はこの辺で。
それでは、またどこかで
エルルカ
何でもないフリ
強く見せたいのか
馬鹿にされたくないのか
恥ずかしいのか
照れ隠しか
リアクション出来ないだけか
ただの強がりか
計算なのか
心配させなくないのか
優しさか
フリ?ではなく本当か
子供の頃からズッコケても
必死に泣かずに踏ん張った
いじめられても無視をして
可哀想な奴らと同情してやった
どんなに好きになったって
幸せにする自信がなくて諦めた
何でもないフリをして
何でもないように過ぎ
何でもなかった過去になる
何でもない、そのことが
いつしかこころを、むしばんで
何でもなくない、今になる
何でもないフリ…なんか
や、め、て、く、れ!
おれがぜんぶ
うけとめる
「3月30日に書いたのが『何気ないふり』ってお題だった」
何書いたっけな。覚えてねぇや。某所在住物書きは大きく口を開けて、右アゴが地味に痛むのを、それこそ「何でもないフリ」のようにしていた。
リンゴのまるかじりを試したら固かったのだ。
「去年も同じことで悩んだけどさ。何でもない、『フリ』ってどんなフリだろうな」
おお、いたいいたい。気にしない。
物書きは右アゴをさすり、今日もネタに苦心する。
――――――
ゲームコラボのアイパレットを買った。
私が推してるゲームは、性質上、日用品や特定の食べ物との親和性が高くて、
時折、ネットストアにせよ、リアルのストアにせよ、コラボが展開されてる。
主要キャラのひとりがコタツムリ、かつ主食の頻度でミカンを食べるから、
その手の農協さんとコラボしたこともあったし。
同じく主要キャラのひとりが、ペンの形をしたアイテムで戦ったことがあったから、
その手の文具メーカーとコラボもしたし。
今回は化粧品メーカーとのコラボ。
完全に、普段遣いできるケースデザインと中身。
「手繋ぎのアイパレット」っていうアイテムだ。
ドワーフホトっていう、ウサギのビジネスネームを持ってるキャラのアイテムだ。
私の推しカプの右と左が手を繋いだきっかけを作ってくれたパレットの商品化である。
6個買った。
普段遣い用と普段遣い用のスペアと更にそのスペアと、保存用と観賞用と布教用だ。
おお、ホト様、ル部長とツー様の手を繋いでくださった、ドワーフホト様。
ありがとうございます(五体投地)
ありがとうございます(感謝の拝礼)
なお、仕事用メイクにも対応可能な、ガチで普段遣い可能な色ばかりが揃ってる、コラボアイテムながら優秀なパレットなので、
せっかくだし、職場に付けてってみる。
ファンアイテムだけど、何でもないフリ。
コラボアイテムだけど、何でもないフリ。
細かいところまで結構観察してる新卒ちゃんは、私の化粧が変わったことに気付いたみたい。
だけど時間はそのまま流れて、
誰からも、特に突っ込んだことは聞かれず、
「どこのメーカーのやつ?」とも言われず……
そのまま、夜になった。
――…「酷いよ!ちょっとくらい、聞いてよぉ!」
夜は、丁度私の推しゲーのコスプレグループが、ひとつの魔女風な喫茶店を貸し切って、コラボコスメの発売記念オフ会をやってた。
何でもないフリもせず、ガッツリ化粧直しして、ちょっと参加してきた。
なお新卒ちゃんを道連れだ。
新卒ちゃんを、沼に落とすのだ。
ホト様コスの神様に、直々にコラボコスメを付けてもらって、新卒ちゃんは少し嬉しそうだ。
よしよし。沈め。しずめ……(腕組みと微笑)
「しゃーないよ。『普段遣い特化』だもん」
昔っからの私の創作仲間は、ゲームに登場する某タバコ部長の服だけコスをして、タバコ型クッキーをぽりぽり、ポリポリ。
「完全に日常の使用に耐えるアイテムってのが、公式様のポリシーでしょ。そんな気づかないよ」
しゃーない、しゃーない。
1本食べ終えて、2本目。タバコを吸うマネを、タバコ型クッキーで再現する親友は、遠くでパフォーマンスしてるスフィンクス様コスの声に振り返った。
「見たまえ、諸君。これこそ俺様のコタツ、『Ko-Ta2』の根幹、セントラルコア。
滅びた世界が最期の間際まで溜め込み続けた、夏と太陽と暖かさと暑さと、火のチカラの結晶!
再生と完全の業火。日向夏である!!」
本物のコタツムリさん、本物のスフィンクス様と見間違う声と姿で、スフィ様コスのひとが大きなミカンの形の宝石を掲げると、
周囲のスフィ様推しは歓喜の声、感謝の写真と動画と以下略、それからお布施。
店内にどういうギミックを仕込んでたのか、
スフィ様コスさんが掲げたミカンジェムから、
火の粉みたいな光が溢れて、周囲を照らして、
なんなら、室温が少し上がった心地さえする。
誰もが光のショーに釘付けだ。誰もがスマホでそれを撮って、誰もが自分の近くに飛んでくる「熱くない火の粉」に触れて、喜んでた。
新卒ちゃんは、このパフォーマンスも気に入ったらしい。何でもないフリしてるけど、目がキラキラ輝いてた。 よしよし沈め……(以下略)
「せんぱい、あれも、」
ホト様コスの人からアイメイクをしてもらって帰ってきた新卒ちゃんが、
光と暖かさと気持ちの明るさを室内にもたらすミカンジェムを指さして、聞いてきた。
「先輩がやってるゲームに、出てくるんですか」
「そうだよ。日向夏っていうの」
新卒ちゃんを見る私の顔は、どんなだったろう。
「ホト様がスフィ様に贈って、スフィ様をミカンキャラに決定づけた、2個目の宝石でね――」
知っているんだ 俺は
お前は一人で
何かを抱えている時には
大丈夫だ と笑うんだ
普段はつまらないことで
構ってくる癖に
俺は頼りにならないのか
なら勝手にしろ 俺も勝手にする
お前を追いかけて
手を差し伸べてやるんだ
【何でもないフリ】
何でもないフリをするのが上手いって言われたことがある。
でもそうなるにはそれなりの過去があって、
そうしていないと心を守れないような瞬間があって、
そうすることで誰かを救うことがあったからなんだよ。
誰かを傷つけるくらいなら、
自分が傷つくほうがましだって思う。
こんなの弱い人間の考えなんだろうけど。
それでも私はこう言う人間だから、
弱くても、脆くても、
今日もまた何でもないフリをして生きていく。
気づいてくれる誰かが現れたとしたら、
私はその人の過去に寄り添いたい。
きっと同じ種類の人間だと思うから。
何でもないフリ
そりゃ俺だって傷つくことはあるよ。言いたいこと言ってるけど、他の人に言ったら名誉毀損だからな。
そう思いながら、俺は何でもないフリをして、笑って受け流している。
「イヤなら辞めても良いんだぞ」なんて、毎日言われている。
「まったくお前はトロいなぁ」
「お前なんか転職しても使い物にならないから、またすぐ辞めることになるぞ」
「結婚出来ないでずっと一人モンなんだから、残業ぐらいいいだろう。残業させてやるよ」
でも、サービス残業なんだ。
こうして毎日言われていると、本当に俺ってトロくて無能なんだと、思ってしまいそうになる。でも、悪しざまに言うのはその上司だけだ。他の人に迷惑はかけていないつもりだ。与えられた仕事はちゃんとこなしている。
今は何でもないフリをしているが、いつか大爆発を起こしてやる。その時になって後悔しても知らねぇぞ!
お題『何でもないフリ』
友達が珍しく愚痴を言っていた。
「職場でさ、新しく入ってきた後輩の面倒をみてるんだけど、その子がちょっと人として問題がある人でさ」
その愚痴を聞けば聞くほど、なんだか友人が気の毒に思えてきた。何度教えても覚えない。それどころか反論する。もしくは声を荒げてブチギレる。会議で的外れな意見を言うことを『自分には意見がある』と勘違いしている。
「ねぇ、それで怒らないの?」
「内心は怒ってるけど、怒ったら負けだからなんとか笑顔でやり過ごしている」
友人のそんな姿が目に浮かんで私は頭を抱えた。
私は納得がいかないことは、上司だろうが構わず言い返すタイプだ。仕事を押し付けられそうになった時ブチギレ、もめた同僚と話し合いした時も暴言一歩手前の応酬に発展した。
強い言葉を使うのは、自分が下に見られたくないからなんだけど、時には友達みたいに一旦深呼吸して、何事も冷静に対応する力が必要なんだと思う。
そんな友達の姿を心から尊敬しつつ、私は自分の行いをすこし反省した。