何でもないフリを長く続けるから、日本人はうつ病になりやすいと思っている。
心の構造について、とある精神科医YouTuberの動画を拝聴した。その人が言うには、心はハードウェアとソフトウェアの2種類で出来ていると言った。
ハードとは、例えばスマホの機器本体のことで、心の入れ物である。
ソフトとは、いわばスマホの中にインストールされているアプリ群のことで、いわば心を構成している要素である。
人は日々、スマホのストレージ内でアプリを落としたり、または消したりする。
ストレージ容量は人それぞれで違う。
128GB、256GB、あるいは64GBという小容量を使っている古い携帯もあるだろう。
アプリを落とした順番が気に入らなくて、時折ホーム画面上のアプリの配置転換を行うこともするだろう。
意外と時間がかかるから、めんどくさくてしない人もいる。
それでも良いが、やがてストレージ一杯手前になると、警告が入って、アプリを削除しなさいと言われる……僕は言われたことはないが。
つまりはうつ病の人は、やたらめったらアプリのダウンロードばかりをして、そのまま放置してしまっている。
無駄なデータを蓄積した結果なのだ、何年もやっていないゲームアプリが重いのだ。ゆえにスマホが重くてサクサク動かないのだ、と説明した。
今はスマホがあるからこのような説明ができるが、スマホができる以前はどのように説明したのだろう。
心とは何か。
ネットは愚か、紙とペンすら希少だった時は、頭の中だけが頼りだった。記憶領域を短期と長期に分けて、ひどく哲学的思索をしなければならない。
そんな悲鳴のような、悲痛のような。
聞こえてくる。
遺伝子情報を通して、自分の脳内から聞こえてくる。
連綿とした試みが、過去何世紀もかけて行われ続けたという軌跡が。
例えば、所詮人間も、心という概念的な100%で出来ているのではなく、タンパク質の入れ物の中に神経伝達物質が飛び交っているだけのものなのだ、と気づくまで、科学の進歩を待たねばならなかった。それまで、宗教的信条が独占して、宗教戦争や革命が起き、血で血を洗う悲惨が巻き起こった。
……失礼、脱線した。
今はアプリの話をしているんだった。
睡眠時間というものがある。
人間も生物の一員だから、一日の1/3は寝て時間を捧げなければならない。
その時に記憶領域の自然的操作が行われるのだが、うつ病の人や疲れ果てている人は、これをぎこちなく行う。睡眠の質が落ちるのだ。
脳が起きている時間が多いと、その分身体を休める時間が短くなって、いわゆる「寝た気がしない」という状態になる。
だから、うつ病の心の何がおかしいのかというと、ハード面ではなくてソフト面……アプリがとっ散らかってて、ストレージ容量一杯になっているのが良くないのだ、という結論。
じゃあ、どうすれば良いの?
動画では「寝れば良い」
再起動するよう働きかければ良い。
あるいはOSのアップデートをして、作業効率をあげるように仕向ける、という。
スマホのように買い換える、という方法が物理的にできないのだから、そうする他ない。
データが一杯手前だとしても、フリーズするわけではない。
ストレージ容量を超えようとしても、超えることはない。身体のほうがリミッターを付けていて、ブレーカーがガコンと落ちるように、勝手に寝るようになる。
「もう寝ろ」と身体を壊した。それがうつ病だ。
ここまで書いてきた通り、精神科医YouTuberは理路整然と動画で述べていたのだが、そもそもうつ病になった人は文章は読めないし動画も観れない。
というか、集中力が散漫を起こして、この短い文章さえも拒否してしまう。
そうなると精神科医は、
「薬を飲んで寝ろ。話はそれからだ」
ということになり、眠剤を処方して寝るだけの人生にするしかない。
いったい何のために動画を出しているのか。本当に伝えたい人には、届かないことをしている。それは精神科医なら知っているはずなのに……
つまり「そうなる前に」というのが肝心なのだ。
何でもないフリをするのは、限界を知っている人が一時的にするもので、ずっと我慢するためではない。
それは演技ではない。
何でもないフリ……、フリとついているから演技なのだ。「何でもないフリ」を我慢しすぎると、何でもない、になることはない。
12/12/2024, 4:59:49 AM