22時17分

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4/3/2025, 9:33:59 AM

空に向かって延びる階段があった。
トマソン建築というものだ。無用の長物。展示されている芸術品のように、周囲に異彩のみを放っている。
階段の周りは色の失ったバイオームが広がっており、つまりは砂漠だ。空から大量の砂を降らせ、すべてを埋没させたのだ、と錯覚するような、大砂海。
しかし、飲水などを心配することはない。この世界はゲームで出来ている。類似するものをいえば、マイクラだろうか。原子ではない、世界は。ブロックで出来ている。ブロックが積まれて、出来ている。

一体どこまで続いているのだろう……。
興味を持った少女(アバター)は、気の向くままに。くだんの建築に近づいていった。
砂漠の色がそのまま延びたようだった。支柱は、何処にもない。当然の話だ。ブロックで出来ているのだから空中に浮かんでいても、さほど不思議でもない。
幅は1✕3のブロック。横が3だ。
段数は……分からない。数える気が失せるほどに続いており、遠近法に従って細くなっている。肉眼では100段から先は無限と同じだ。そのことを、ゲーム画面でも明瞭に理解する。階段とは、そういうものだ。現実でも似た作りをしている。

プレイヤーの意思に従って、2頭身の少女はジャンブをしながら階段を登っていく。一ブロックずつ一段、一段……。一段飛ばしをしたくなるほどだが、そこまでの反射神経は搭載されていない。横に広いが縦に狭い。足の踏み場はシビア。2面の接着面は角と角。角の上に角が乗っている感じ。建築法違反だ。絶対に子どもが作っている。あるいは社会に出たことのない不登校か。

手すりはない。だから、慎重さを求められる。忍耐ゲーを思い出した。落下判定にダメージは付き物。体力ゲージがあるので、足を踏み外したら命を落とすだろう。
階段のみが永遠に続いている。だが、150を越えた辺りから、段の表面積が増加した。

2✕3ブロックに増加した。歩きやすく登りやすい。
そして、平坦になった。


(あとで)

4/2/2025, 12:19:41 AM

はじめまして。

まだTwitterがTwitterだった時代。どこぞの金持ちが「名をXと改める」と宣言した。
今も昔も当時も、Twitterは読み専だったので、「高輪ゲートウェイ駅みたいなものか」と思っていた。未だ馴れず……。
数年前、元号を令和に改元したり、引きこもりのことを「こもりびと」と名を変える自治体もあったから、世の中名前を変えたがる年頃なのだろう。キラキラネームが流行った頃を思い出した。
子供にキラキラネームを付与して、人生がキラキラするかと思ったら一向にキラキラしないので、自分をキラキラ星に喩えて命を絶った物語がどこかにあるっぽい。「〜こわれて、きえた」

寂れた郊外のことをニュータウンと呼称して、住宅や駅前建物を刷新。新たな人を呼び込む。
見かけだけ変わっただけで根本は変わらない。けれど、世の中は良い意味でも悪い意味でも動き出した。
コロナ禍、デジタル化、学タブ、学パソ。

あの時は「X」になろうとは、思っていなかった。今も慣れていないので、Twitterって呼ぶことにします。
そう諦めて、Xくんについて調べてみると、Z世代とかはちゃんとXって改称したものを言うようにしているというし、逆にTwitterという名前を使い続ける民には遠くをみるような目を投げているという。あの頃のTwitterはもう無いんだ、と。過去にしがみついていると憐れんだのだろう。
なるほど、では。
考え方の違い、ということで退散します。

デジタル化以前、以後に世代は分かれると思う。
僕は旧い光景に憧れる傾向。生成AIに「はじめまして」とかしこまるより、2年前くらいのままでいてくれ方がよろしい。
技術発展の理由が変容してきたと思っている。社会がより良くなるために、ではなく、人が減っているからより便利に、になっている。人のいた場所をロボットにすることで円滑に物事は進むようになる。一方、人としてのぬくもりは、どこへ消えた?
キラキラ星に聞くっきゃない。そう思って、AIに探させたい。生成AIより検索AIくらいの便利さがちょうどよい。
不便を楽しみたいと、スマホをポケットに入れた。

4/1/2025, 9:52:21 AM

またね!――と、明るく別れを告げる時は何かしらの理由が映り込む。決して言葉にできない強い意志か、あるいは口封じに遭わされたか。
後者のほうの悪い側面。そう思わないような世の中になればよいのにな、と想いつつ、今も発生し続ける目下の泡影に、俯く女性と黒いカゲ。

3/31/2025, 9:59:25 AM

春風とともに、ドアを叩く音がした。
トン、トン、トントン。
場所は玄関。木でできているから、軽いノックが音に乗る。
木こりの斧で叩かれたようだった。絵本のなかにだけ存在するおもちゃではない。まるで、本物そっくり。野生のリスでも狩ったのだろうか。だから、中にいた居住者は、身を竦める。

トン、トン。トントン。

不気味なノックは、なかなか不在着信にならなかった。
自分が彫刻になるように、仏に祈った。宗教なんて、身になじまぬ観念。生まれてはじめて教わった、名の知らぬ母からの記憶、入れ知恵。
絶妙な静けさ。ノックのみ響き渡る空間。

誰だ……?
と、異母妹は目線をあげた。手には血糊のついた包丁があり、氷柱のように鋭い。その時ほど、肝に据わった女性というのは、他に漏れないものだろう。

異母妹は血まみれで、異母姉は絶命。
数時間前までかりそめの家族だったものだ。今は、冷たいドライアイスのお世話になっている。細かく切り刻んでやろうとも思ったが、予定がクルッと変わった。

しばらく、音が止んだ。
不幸中の幸い。鍵を掛け、ドアロックをしてから凶行に及んだのだ。しかし、ここからどうすれば良い?

「ねぇ、どうすればいいと思う? ねぇ、ねぇ、ねぇ……」

春風とともに、振り下ろす凶器。
冬風とともに、吹き上げる狂気。
大家を携え、警察がドアを開けるまで、三十分以上も掛かってしまった。

「春香さん! 大丈……くっ、遅かったか!」
どうやら二人は天使になったようだ。玄関より吹いた春風とともに神聖なる羽根が生え、尊い宇宙へ羽ばたく。
「春香ぁ! はるかぁぁ!」
異母姉の名前だけを叫ぶ、母親を残して。

3/30/2025, 7:55:03 AM

涙に影は出来るのか。
出来ない。だから、読み取るのは難しい。

人は、涙を通して何かを読み取るのではなく、顔を通して読み解くのだろう。あの、白黒の縞模様の、バーコードから、数字の羅列的な暗号資産を、光を当てて読む。
泣き顔のまま、グミを噛み締めるように。口を上げ、歯を見せ、零れ落ちる動機をみせ、おかしみを見せ。
だから、涙は弱々しい武器になる。
つながりを感じ取る、Communication要素の一つ。

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