『何でもないフリ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
何でもないふりしながら、キミを見つめる。
気づいているのかな?
もし気が付いていたら恥ずかしいけど、言う勇気もないから、このまま。
だってただキミを眺めているだけで、幸せなんだから。
【何でもないフリ】
君のいる喫茶店が、嫌いだ。蓄音機から奏でられるクラシック音楽は静かすぎて眠たくなるし、暗い室内は鬱陶しくて早く外の青空が見たくなる。挙げ句の果てに産地がどうのと君がこだわるコーヒーは、どれを飲んだって苦いばかりで美味しくなんてない。だけどそんなことを口にしたら「じゃあわざわざ来なければ良いのに」と呆れられるから、僕はいつも無言でコーヒーカップを傾けて、舌の上に広がる苦味を呑み下す。
毎週土曜日になるたびに、クラシックの荘厳さも、落ち着いた店内も、コーヒーの苦味と酸味も、全部理解してる素敵な大人ですよって顔をして、僕は君の築いた君の大好きなものに囲まれた城へと入り浸るのだ。
「いらっしゃいませ」
そう微笑んでくれる君の笑顔が見たいから。今日も僕は、何でもないフリで嘘をつく。
『何でもないフリ』
キッチンに立つ母の後ろ姿にぼんやりとした人影が見えることがあった。だいたいはひとり。たまにふたり。顔は違えどどれもこれも血だらけのそれが幼い頃はとても恐ろしく、泣いては母を困らせたものだった。少しだけ成長した今ではあぁいるなという感覚になってきている。
人影は母の帰りが遅くなる翌日についてくることが多かった。母は日中の仕事に加えてたまに夜にも働きにゆく。仕事の内容を詳しくは知らないが、人影の様子からなんとなく察しがついていた。
きょうもキッチンに立つ母の後ろ姿にぼんやりとした人影が見える。視線に気づいたのか母が振り返ってどうしたのと聞いてくる。
「別に。何でもない」
人影はこちらを一瞥もしない。じっと母のことを見つめ続けている。
正直できない
目があつくなるし、頭はぼーっとするし、手足は冷たくて、
身体がそうと表してしまう
言葉で何でもないと言えるけど、それはフリとは言わないよね
「何でもないフリ」
脈打つ心臓の音がやけに大きく響く。指先は氷のように冷たくなって感覚がないというのに、掌にはじっとりと汗が滲んで気持ちが悪い。溢れ出そうなものを無理矢理飲み込み、彼女に背を向けて歩き出した。踵を返すその瞬間、彼女の瞳に映る俺は、いつも通りの無表情。ひどく胸が痛むような気がするが、これは俺の勘違いだ。そう、思うことにした。
言われた言葉に
何でもないフリをして
傷ついてませんよって
平気なフリをするのが大人なら
大人になんてなりたくないって
思ってた
元カレと半年ぶりに偶然会った
となりには髪の長い美しい人
「久しぶりだね」
何でもないフリで
そう話しかけたけれど
心は動揺していた
まだ終わっていない
私の恋
#何でもないフリ
#57
なんでもないフリ
顔で笑って 心で泣いて
ワタシノキモチ ボロボロヨ
そんなフリなんか出来ません
何でもないフリ
何年か前、父が退職する少し前だったかと思う。母が言った。
「お父さんはいつも同じように帰ってくるよ。仕事から帰って来る時、いつも態度が変わらなかった。……偉かったよね」
父は仕事の愚痴を家で言う人ではなかったので、いろいろあることを察したうえでの母の言葉だった。
自分が家庭を持ってから、その意味がよく分かるようになった。不機嫌を家に持ち込まれると周りはまあまあ気を遣う。
何でもないフリは、父の意地と家族に心配をかけまいとする思いやりだったのだろう。
高校卒業からずっと同じ小さな会社で働き続けた父。有給休暇などなかった。
長い間お疲れ様でした。でも心配をかけないようにされるのも心配なんだよ、お父さん。
#115
パパは悲しいことがあっても何でもないフリをする。
だからわたしも気づかないフリ。
だけど、放っておけないから、いつもよりちょっと優しくしてあげる。
「わたしのチョコレート、パパにあげるね」
「どうしたんだい? 君の大好物なのに」
「甘いものは疲れが取れるのよ」
「そうだな……」
パパは何かに気づいたみたいにふふっと笑うと、チョコレートをぱくりと食べた。
「大丈夫、もう元気になったよ」
わたしの気づかないフリは、まだまだ特訓の余地があるみたい。
『何でもないフリ』
ぼうず、よく聞け
ソフトクリームのクリームが落ちても
顔色一つ変えない
大人になるってのはそういうことさ
知ろうとしないもの
ホントは興味津々で
手を伸ばせないもの
すぐそこにあるよ
なくてもいいと思っているもの
ないものねだりもするのにね
想像してみて
形になるよ
あなたが何でもないフリをして撃ち抜いた僕の左肩が、今年の冬もしくしく痛む。
いっそ心臓に当ててくれたらよかったのに。
あの日僕が取り落としたナイフは、きっとまだあなたの家に転がっている。
痛みよりも強く、苦しみよりも長く、刻まれたあなたの印は癒えない。
さよならと言えないままで、微笑みだけ遺してあなたは去った。
僕が追いかけることを疑いもしないで。
許しと裏切りと愛は同じものだと、僕らは知っている。
「何でもないフリ」
見せてはいけない この動揺を
気づかれてはいけないこの焦りを
さりげなくさりげなく
彼女の視界に入っていかなければ
「俺、美咲に昨日告られたんだけど」
予備校帰り、反対方向の美咲の背中が曲がり道に吸い込まれると、彼は言った。さっきまで三人で話していたときの、二人の妙な気まずさに、何かあるのではと思ってはいた。
「そうなんだ。付き合うの?」
少し不機嫌なような、突き放すような物言いになってしまったかもしれない。
「考えとく、って言った。でも明日にでもオーケー出すつもり」
僕ら三人は、同じ高校で、同じクラスで同じ塾で、そして同じ最寄駅だった。やけに顔を合わせる二人と一人、よくつるむようになるのは自然の摂理だった。美咲は男の中にいても物怖じしない、そんな明るさの中に、時々美咲も女の子なんだ、と感じる瞬間があって、そんな美咲に彼が惹かれているのは分かっていた。
「どうして、すぐに返事しないのさ」
「だって、高校卒業したら、違う大学になるだろ。今よりも会えなくなる中でやっていけるかな、とか思うよ」
いいややっていけるさ、その言葉は胸のなかに飲み込んだ。自分がひどく惨めになるような気がして。
ずっと、彼が美咲を見る目に嫉妬していた。美咲が入ってくるまで、僕は平穏だった。一人で本を読んでいる僕に話しかけてくれた瞬間から、僕にとって、彼の隣を独り占めできる日々は、何物にも変えられなかい生活だった。僕の方を向いて笑うその顔に、何度も心がはねた。
「そうか。上手くいくといいな」
「ありがとう。頑張ってみるよ」
どうせ分かっていた。彼に僕と同じ気持ちは返せないということ。僕の方を向いて、彼は笑った。僕の言葉が心からの祝福だと信じているかのように。以前のように心ははねず、その笑顔は僕に刺さる。でも、覚えておきたいと思う。僕と彼も、学校が分かれる。会えなくなる中で、きっと今まで通りにはいかないのは僕らの方だ。
何だかなみだが出そうで鼻をすする。これは、寒いからだ。友達の恋が実ったことを自分のことのように嬉しいと思っているからだ。僕の恋が終わったことが悲しい、なんてひとつも思ってなどいない。
何でもないフリ。要するに強がりか。男はいつだって見栄をはって生きているのさ。
強がりとか見栄と解釈したけどよく考えたら失敗を誤魔化す時なんかも含まれるか。
何か失敗して、これなんかヤバいっすね。自分関係ないっすけど。みたい態度取る奴。まぁ俺なんだけど。
誰にも見られてなくてかつ誰がやったのかわからない状況だとしらばっくれちゃうんだよね。
とはいえ本当にやばいミスは流石に報告するけど。軽いミスでばれない状況ならという前提。
こういうミスを報告しない奴を出さないためにミスを報告したら褒める、みたいな制度を導入してる場所もあるんだっけか。
しかし昨日の夜は雨だったけど全然寒くないな。冬の雨の日といったらそれはもう凍えるような寒さになると思うんだけど暖かい。
こう毎日暖かいと何だか感動するね。冬なのにあったけぇーって。
ただ冬支度を色々したのにほとんど使わずに終わりそうなのはちょっと寂しかったりもする。寒いよかいいけど。
『何でもないフリ』
この退屈な世界では無関心を貫けなくなった奴から消えていく
自分一人が何をどうしたって世界は変わりっこないのだから
何でもないフリをして日々を無意味に過ごしていれば良いのに
何でもないフリ No.7
幼馴染みの、亮介。
出会って10年、私たちも大人になった。
久々に公園のベンチでたまたま出会って、亮介はコーヒー片手に手を振って来た。
昔は二人ともコーヒー苦手だったんだけどな。
改めて大人になったことを実感する。
どこか昔の亮介の面影があったから、すぐに誰か分かった。デニムの羽織がよく似合う。……なんだか照れくさくて、褒めることは出来なかったけど。
ベンチで二人並んで座って、しばらく話をした。
最近どう?とか、身長伸びたね、とか。しょうもない話ばかりだったけど楽しかった。
急に亮介の体が固まったから、真剣な話なんだと思って、私もつい固まった。亮介の口から出たのは、恋愛相談だった。
え、って思った。
何でか分かんないけど。……すごくショック、だった。
「隣人なんだ」って言ってた。
私は固まったまま何も言わなかったから、亮介はどうした?って聞いてきたけれど、ううん、なんでもないよ、って笑って返した。
何でもない。
……はず。
猫は何でも無いフリをする。
会話もできないのに何でも無いフリをするので、
こちらはむやみやたらと話しかける。
機嫌はどう?
体調はどう?
喉乾いてない?
出すものだしてる?
何でも無いと、猫はムッとする。
若干、わかるようになる。
何でもないフリってすごく難しい。
でも何でもないフリしてれば、周りは
いつもと変わらない対応をしてくれる。
だから私は今日もまた何でもないフリ
#何でもないフリ
#1