『二人ぼっち』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
チクタクという時計の音がこの部屋が静かだと物語る。1人の老人が縁側に座り空を見ていた。ぽかぽかと当たる太陽の温もりがとても心地よさそうに見えた。
「ねぇ、あなた。歩夢が今朝、ひかるさんと海斗を連れて帰って行きましたよ」と振り返りベットに横たわる老人に声をかけた。「海斗も今年10歳になったんですって。子供の成長は早いわね」なんて微笑んだ。
「歩夢なんて昨日ね。眼鏡がないないって言って大騒ぎしたのよ。頭にかけてあるのに全然気付かなくって。まるで、あなたを見てるようだったわ」そうベットの方へ歩き老人の手を握る。機械に繋がれた体は呼吸を繰り返すだけで握った手なんて握り返してはくれない。
「また、あなたと二人ぼっちになりましたね」悲しいような寂しいような顔をした女性の頬には涙が流れた。その雫が男性の手にかかった。その瞬間、少しだけ男性の手に力が入り握り返してくれたような気がした。それはまるで、『大丈夫』と元気付けてくれてるようだった。
幼なじみの西園寺小鳥は、文芸部の部長を務めているらしい。
『らしい』というのは、自分が部外者だから当然かもしれないが、実際に本人が部長として活動している姿を目にしたことが無く、あくまで伝聞の情報だからだ。
それによると、小鳥はいかにも育ちが良さそうな、のほほんとした雰囲気を醸し出しながら、その実、昼ドラに出てきそうな愛憎劇を執筆すると聞く。文芸部が学祭で配布する作品集が初見という人の中には、本人の見た目の可愛らしさと肉筆とのあまりのギャップに、まさに青天の霹靂と言っても過言ではない衝撃を受けて、一気にコアなファンになっている者もいるようだ。
こういった噂の類いには尾ひれ羽ひれがつきものだとも思うが、かく言う自分も、小鳥の作品の愛読者である。というか、自分―入江虎太郎は、小鳥の幼なじみであり、護衛役(見習い)なのだ。
西園寺家と入江家は、両家の長い歴史の中で主従関係にあった。
虎太郎の父は、西園寺グループの現・総帥、西園寺鷲智氏が小規模なグループ企業の常務に就任した時から秘書室の統括役として氏を支えてきた。その後、氏の役職が取締役などへ順調に変わっていく中で、虎太郎の父は右腕として適切な役職に就くよう氏に打診されてきた。欲のない父は、いまと同じ働き方以上のものは望まず、氏の秘書であり続けている。
長年の付き合いで、西園寺家の敷地内で開催される家族ぐるみの食事会や季節の行事に招かれることもあった。西園寺鷲智氏の愛娘である小鳥とは、よく敷地内を散策して遊んだものだ。
あれは、いつ頃だったか。
数十種類の薔薇が見頃を迎えたと、西園寺家から毎年恒例の園遊会に招かれた。
そうだ、高校入学後間もなく、クラスの同級生お互いがお互いを見定める、落ち着かなかった時期だ。
正直、あまり虫が得意ではないし、だるいと思ったけれど、時期を同じくして、小鳥が塞ぎ込みがちであると耳にしたこともあり、様子を見に行こうと足を運んだのだった。
その頃には、小鳥はただの幼なじみではなく、ご令嬢と護衛の主従関係にあっても、特別な存在として小鳥を意識するようになっていた。
「虎太郎さん、いらっしゃい。学校生活は慣れました?」
薄いミントグリーンのフレアワンピースにレースのカーディガンを羽織り、精巧な柄の日傘をさりげなく差して、小鳥は虎太郎を出迎えた。
「まぁまぁですね。小鳥様こそ、気疲れなさっているのではありませんか?」
小鳥は容姿や家柄のことでどうしても周囲の注目を浴びやすい。それはクラスメイトだけではない。保護者は元より、教員や外部講師、大学生のボランティアグループ、地域住民…学校に関わるありとあらゆる人たちが、好奇の目で彼女を見るのだ。むしろ生徒たちの羨望の眼差しの方が、まだ好感が持てる。
ふぅと溜め息をついた小鳥は、確かに疲れているようだ。
虎太郎はさりげなく庭園に視線を移し、できるだけ朗らかな声を意識した。
「今年の薔薇はいかがですか?作庭の専門家が見学に訪れるほど見事であると伺っておりますが。」
小鳥は右手の人差し指を顎に当てると、少し思案してから虎太郎に目線を合わせた。顎に人差し指を当てるのは、考え事をする時の癖だ。
「そうね、昨年は冷え込みが強くて、ガブリエルの数が少なかったでしょう?今年は苗床を変えたり、他の品種の病気に気を配ったりして、だいぶ数が増えたようだわ。とても可憐でうっとりするような美しさで、虎太郎さんも見とれてしまうと思うわ。ぜひご覧になってくださる?」
ふふっと小鳥が向ける笑顔には、無理をしている様子は感じられなかった。
小鳥が先導し、連れ立って庭園を歩き、時々立ち止まっては、目の前の薔薇の種類と特徴を、まるで音声解説を流しているのではないかと思うほど流暢に説明していった。その声が心地よくて、虎太郎は園遊会に来た目的を忘れてしまいそうになる。二人だけで過ごすこんな時間も、悪くないなと思った。
西園寺小鳥 × 入江虎太郎
『二人ぼっち』
私はいっつも結局一人ぼっちのつまらない人間だ。
そんな私を変えてくれた人がいる。
彼女は、どんな時でも私のそばにいてくれた。
黙って私の話を聞いてくれた。
友達を作るのが苦手な私にとって、唯一無二の大切友達だった。
ある放課後、彼女に悩みを打ち明けたことがある。その時も彼女は黙って話を聞いてくれた。
「私は、いつも一人ぼっちな人間だ。」
そう言った時、彼女は一瞬悲しい顔をして、こういった。
「あなたは一人ぼっちじゃないよ。私がいるじゃない。二人ぼっちだね。」と。
二人ぼっちか。確かに、そうかもしれない。
その時はそう思った。
けど、やっぱり私は一人ぼっちだ。
1人で部屋に籠っているただのぼっち。
あれ以来、彼女とはあえていない。
そもそも、元々彼女はいなかったんだ。
彼女は、私が作った“イマジナリーフレンド”だった。
『二人ぼっち』
「お前の今一番叶えたい願いを一つ叶えてやろう。その代わり、お前の二つ目の願いはおれがもらってやろう」
今、目の前にいる悪魔から、突然そう告げられた。この世に悪魔がいたという事実にも驚きだが、その悪魔がなんとも頓珍漢なことを言ってきたことにも驚いた。
「…そういう時、普通『願いを叶える代わりに命をもらう』っていうのが定石じゃないんですか?」
「確かに普通はそうなんだがな。流石に何千年も命ばかり食らっていたから、飽きがきてしまったのだ。だから、人間の感情を食らうことにした。するとどうだ。人間の願いのなんと美味なことか!人間側も願いを忘れて何不自由なく生きているようだし、お前たちの言葉で言う『うぃんうぃん』というやつさ」
悪魔がWin-Winの関係を築いていいのだろうか。人間の欲望に対して、命という他の何物にもかえられないものをいただくのが悪魔というものだと思っていたのだが。最近は悪魔もアップデートするようになったらしい。それがいいことなのかどうかは自分にはわかりもしないが。
「さて、おれがお前の願いを求めているのは十分わかっただろう。早くお前の一番叶えたい願いを言うのだ」
「二番目の願いは言わなくてもいいんですか?」
「二番目の願いは必要ない。一番目の願いを叶えた時点でわかるからな」
「はぁ、そういうもんですか……」
「ほら、早く言え。その願いがおれの糧となるのだから」
そうは言われてもな。自分は今ビルの屋上で飛び降りようとしていたところで、願いも何も未来すら考えていなかった。そんなところに現れるとは、この悪魔はだいぶ抜けているのかもしれない。いや、もしかするとわかっていて自分の前に現れたのかもしれない。それなら、この悪魔の想定通りに動いてやるのもまた一興だろう。
「じゃあ、自分を死なせてください」
「は?」
「もともと自分は死にたくてここにいるんです。だから、なんの問題もなく自分を死なせてください」
「それが、願いなのか?」
おや、随分と困惑している。もしかして、本当にただただ偶然自分の前に現れただけだったのか?だとしたらとんだおマヌケな悪魔だ。
「いや、ほら、折角願いを叶えられる機会が目の前にあるのだぞ?もっと生産的な願いを言ってみろ」
「ちゃんと生産的じゃないですか。なんたって死体がうまれるんだから」
「それは生産的とは言わない!」
なぜ自分は悪魔から正論を言われているのだろう。おかしなものだ。これではどちらが人間なのかわからなくなってきそうだ。少しおかしな気分になってきた。
「どれだけ悪魔さんに言われても、自分の願いは変わりません。自分を死なせてください」
「…本当に、それが願いでいいんだな?」
「ええ、問題ありません。後悔もいたしません」
「…わかった。その願い、叶えてやろう」
そう言うと、悪魔は自分に覆いかぶさり、あたりは一切の闇となった。自分の意識は、そこで途絶えた。
なんとも酔狂な人間だった。己の欲望のままに生を楽しむことができる手段を与えてやったというのに、それを無碍にしたのだから。この人間が叶えた願いは、到底一人では叶えられないものではなかったのに。わざわざそんな願いを悪魔たるおれにした。本当に不思議なものだ。
まあいい。とりあえずこの人間の願いは叶えたのだ。二番目の願いをいただくとしよう。さてさて、コイツの願いは、と……。輪廻転生することなく、世界を見届けたい、だぁ?余計わけわからんぞ、コイツ。まさか、死にたいと思っていたのも、この世界に嫌なことがあったからではなく、この世界を見続けたいと望んだからだとでもいうのか?確実にその願いが叶う可能性だって限りなく低いというのに?
…いや、この二番目の願いが美味であるのは、人間が無意識に願っていることであるからこそのもの。ということは、この人間は意図して願っていたわけではない。となると、この人間は何故かわからんが死にたいと思い、ちょうど目の前に都合よく殺してくれそうな悪魔が現れたから、願いを叶えてもらったと。そういうことになるのか。いやわからん。
とりあえず、この願いはありがたくいただくとしよう。……うむ、予想通り、いや予想以上に旨い。命は食い飽きたとはいえ、やはり命を天秤にかけたものは限りなく旨い。ここ数百年で一番の味ではないだろうか。
さて、願いはいただいたことだし、この残ってしまった魂はどうしたものか。今まで願いを叶えた人間は普通に日常生活に戻していたから、日常生活に戻れないコイツの処遇には困ったものだ。せっかくならこの魂も食らってしまってもいいが、対価を既にいただいている以上これ以上コイツからもらうわけにもいかない。放置でもいいが、そうすれば天使どもに連れていかれることは想像に難くなく、それはおれの意に沿わない。
そうだ。コイツはおれが飼ってしまおう。どうせ捨てられた魂だ。おれが食らう以外で何しようがコイツに文句を言われる筋合いはない。ちょうど話し相手も欲しかったところだ。なんせ人間の願いを食らうようになってから、他の悪魔どもにも敬遠されていつも一人だったからな。わけもわからず死を望んだコイツと、魂を食わないおれ。外れものの二人でちょうどいいではないか。
おい、喜べ人間。これからお前は、おれのしもべだ。せいぜいおれが他の人間どもの願いを食らうさまを共に見続けているがいい。
「愛の逃避行」
ホテルの窓から荒れ狂う海を見ている。
なぜ悪いことをした人って、ひと気のない土地へ逃げるのだろう。
木を隠すなら森の中って言うし、都会の方が見つかりにくいと思うけど。
「人の目が気になるからだろ」
窓から視線を逸らさずあなたは言う。
そういうもんかなぁ……
罪を犯したふたり。
時刻表と睨めっこしながら、電車を乗り継ぎ日本海を目指す。
追い詰められたふたりは、手を繋いだまま、荒れ狂う海へ……
「新婚旅行で心中する想像すんなよ」
────二人ぼっち
星がきれいだから会いたいってきみがいうから
適当なサンダルを履いてきみに会いに行ったんだ
「きれいだね」
きみがとなりで星を見つめながら言ったのに
わたしはとなりにいるきみを見てた
わたしはきみとのふたりぼっちの世界に酔いしれてた
きみはもっと先を見てる気がして遠く感じてさびしかった
クラスの溢れ者同士、仲良くしよ?と寂しそうな顔をして笑った君は僕を置いて行ってしまった。
2人ぼっちだったのに2人には飽きちゃったのかな?今では君はカースト上位の陽キャ様。
世知辛いね。中々堪えたよ。
君が僕に笑いかけてくれることはなくなった。
2人ぼっち
二人ぼっちの世界に私一人だけ。
貴方なんていらないって手を振り払ってしまったから、
貴方はわたしの歩く方向と違う道へ進んでいった。
他のひとは、みんな透明になっちゃった。
だからわたしたちには、何にもわからない。
それなのに、貴方までいなかったらわたし…。
あぁ、もう一度貴方に触れたい。弱いなぁ。
私の手のひらは、半分消えかかっている。
それを見られたくないからいらない、なんて嘘をついたのに。
もう一度貴方と会いたいだなんてどうかしてる。
でも、貴方が一人ぼっちの世界にならないうちに
二人ぼっちの世界の間に貴方ともう一度見つめ合いたい。
走らなきゃ、貴方が行った方向へ。
貴方ともう一度二人ぼっちでお話ができるように。
お題「二人ぼっち」
とある密室にて
白骨化した二つの遺体と一枚のメモが残されていた
だいすきだよ
れんあいじゃなくてもいい
かならずしもね
ただそばにいてほしいだけ
すきなあいてとなら
けっしてはなれない
てつなごうよ
お題「二人ぼっち」
ずっと私は一人ぼっちだった
今はあなたがいるから二人ぼっち
一人よりずっと心が軽いの
きみとわたし
二人ぼっちだね
わたしはきみを通して世界を知る
ゆびさきひとつで
つながりをもてる
きみはいろんなことができて
わたしは飽きることがないの
きみは歳をとらないけれど
スマートフォンだからね
いつかこわれてしまうかもしれないね
きみを手放して
もっと広いところへ行けるかな
(二人ぼっち)
昨日までこの町には家族がいた。友達がいた。みんながいた。平和があった、平穏があった。
昨日までは。
今朝、「仕事に行ってくるよ。今日は早く帰れそうだから、晩御飯は一緒に食べよう。」と父と母に告げ家を出た。「久しぶりの家族団欒ね。」母が目尻の皺を深くさせ微笑んだ。父は何も言わず口元だけが綻んでいた。
僕は仕事に向け家を出た。今日の仕事内容は、隣り町にゴブリンが出て農作物を荒らすから助けて欲しいと言うものだった。隣町まではそう遠くない。僕は鍛冶屋の父が作った剣を持ち隣町まで向かった。
この剣とは長い付き合いだ。父は町では有名な鍛治職人だった。僕は鍛冶屋を継ぐよりも、父のつくった剣で戦い国を護る仕事をしたかった。
父にその思いを告げた時、そうかと一言だけ言い受け入れてくれた。その日から、僕は毎日剣術の練習に励んだ。騎士団の試験を受けると決めた時、父が僕の為に剣をつくってくれた。僕に直接渡すのが気恥ずかしかった様で母伝えでもらった。居間にいた父に「ありがとう」と呟くと「おう」と一言だけ返ってきた。
剣には毎晩磨きながら話しかけた。大切に大切に扱った。僕を思いつくってくれた父を思いながら。
結局僕は騎士団の採用試験には受からなかったが、違う道でも人々を護ることは出来ると諦めなかった。
そして今現在、町に蔓延る魔物退治をしている。1人で行く時もあれば、ギルド冒険者達と手を組むこともある。
今日はゴブリン退治だったので、1人で大丈夫だろうと思い向かった。難なく依頼を果たし終えた。
仕事を切りあげ、家へ帰ろうと踵を返した瞬間。僕の時が止まった。いや、時は動いてるが思考が止まったのだ。僕の目の前をファイアードレイクが空を飛び、炎を吹いて森や町を一瞬にして火の海にしたのだ。ファイアードレイクは炎のドラゴンで今は見ることのない幻の様な存在だった。
僕は無我夢中で家へと走った。あんなのと戦えるわけがない。人々を護りたいと仕事をしてきたが、到底太刀打ちできる相手ではない。家は、家族は大丈夫だろうか。頭はそれがいっぱいだった。
息を切らし、走りすぎて胃液が上がって気持ちが悪い。それでも走り続けた。家族の無事だけを祈って。
町に着いた瞬間、絶望が襲いかかった。この町も火の海になっていた。教会は炎で崩れ落ち、友達の家も畑も火達磨になっていた。
そして、僕の家もだ。
僕は「父さん!母さん!」と叫び続けた。喉から血が出ても叫び希望に縋った。
希望もこの町と一緒に崩れ落ちた。
家族が死んだ。今日の朝まで話してた、夕食を一緒に食べようと約束したのに。
友達が死んだ。僕の隣に住んでいた幼なじみのジョン。来週結婚式を挙げる予定だったのに。
全部、全部灰になってしまった。
僕は途方に暮れ、歩き続けた。町にはとてもじゃないが居れなかった。走馬灯の様に思い出が過ぎるから。
僕は父がくれた剣を抱きしめ「2人ぼっちになってしまったな」と呟いた。声に出した瞬間、現実味が出て涙が止まらなかった。もう戻ってこないと受け入れざるを得なかったから。
僕らは二人ぼっちだ。クラス…いや学校全員が敵だ。いじめてくるクラスメイト、それをみて笑う他の学生、見ないふりをする先生。だから僕達は決めたんだ
「二人でここを壊す」と
#二人ぼっち
二人ぼっち
(本稿を下書きとして保管)
2024.3.21 藍
二人ぼっち
僕と君、二人ぼっちだ。
出会いは突然だった。
僕は旅人だ。
常にそこらじゅうを歩き回っている。
さあ、今日も歩こう。
どれくらい歩いただろうか。
全然知らない道を歩いていた。
ここはどこだろうか。
また少し歩いた所に大きな木が1本、立っていた。
あそこに行ってみよう。
近づいていくと、人影が見えた。
よく見ると、髪が長く、白いワンピースを着た女性がいた。
本を読んでいるようだった。
一目見ただけなのに凄く、彼女の事が気になる。
こんな気持ち、僕は知らない。
話かけたいが、よく分からないその場の雰囲気で話しかけれなかった。
そこには僕たち、二人ぼっちなのに。
「ねぇ、苦しい」
そう君は言った。
空気を吸い込めばむせ返ってしまいそうな程暑い夏、田んぼだらけの、過疎化が進む田舎。
きっと君は、こんな辺鄙な場所に居たくないのだと思った。
君は模範的な人で、どんなときも、どんなことも想像以上の結果を残してきた。けれどある日、恋人であった僕の家に入っていく君を見た誰かが「あのふたりは一線を超えた。高校生なのに」なんて法螺を吹いたのだ。こんな小さい田舎では、ウワサは瞬く間に広まる。だから当然僕らの耳にもその"ウワサ"は入ってくるのだ。
元々この土地に住んでいた僕は気にしていなかった。こんなことは日常茶飯事にあるから。だが都会から来た君は、僕より気にしやすくて、真に受けやすい性格。それにこんな田舎に慣れていない君だからこそ、気に病んでしまったのだろう。
僕があの日、家に呼ばなければ。
僕には、そんな責任があった。
だから、言ってしまった。
「いいよ。何処にでも連れていく」
なんて___
「…君となら、世界でふたりぼっちになったって構わない」
僕はそう言って君を連れ出した。
あと、何年かしたら、あなたと二人ぼっち。
僕ら、あとから、淋しさこみあげるかもしれない。
だけど、そのとき、やっと二人ぼっちを
あなたとなんだか幸せになる。
そう思う。
空気みたいにって、よく言うけど、
そばで無言の空間が広がっても、
僕はきっと、あなたとずっといられる。
仲良かったね、そう言われたい、
二人ぼっちになりたい。
1人ぼっちの私には、二人ぼっちというのはよく分からない。
2人いるのだから、ぼっちじゃないでしょ?!
映画「無能の人」では奥さん役の風吹ジュンが言う、
「この、ひろ~い宇宙に、3人だけみたい…」
つまり、この家族は3人ぼっちなのだ。なんだか世間からぜんぜん相手にされてない親子3人。
絶望的なようだが、
つげ義春役の竹中直人が答える、
「いいじゃねぇか、俺たち3人だけで。」
絶望ではないのである。親子3人が寄り添っている。
つまり、仲のいいカップルなら普通は子が生まれるから、やっぱり「二人ぼっち」にはならない。
すると、子供が巣立った後の老夫婦の事を「二人ぼっち」と言うのか?
或いは、現代的な言い方をすれば、パートナーシップを持つ人たちの話だろうか??
なるほど、これなら確かに「二人ぼっち」のようなイメージがあるかも知れない?
「二人ぼっち」はロマンチックなようだが、愛が冷めたら地獄のような気もする。
最近のニュースに、
千葉県いすみ市の夫婦岩が崩落したというのがあった。
肯定的に、「家族岩と呼べば良いのでは?」なんて声もあるみたいだが、
「二人ぼっち」は岩ですら保つのは難しいのかもね?
"二人ぼっち"
「ハナ」
「みゃあ」
「ハーナー」
「みゃーあー」
名前を呼ぶと、やまびこのように鳴き返してくる。
面白くて何度も繰り返す。
「ハナー」
「みゃー」
俺の声を真似て鳴くのが面白い、そして可愛い。
今は二人だけ──厳密には一人と一匹──だからできる。
こんな所、他の人には見せられない。いや、見せたくない……恥ずかしいから。
ここに居るのは、ハナと俺だけ。この時だけはハナに目いっぱい構う。
普段は居室に缶詰め状態にしたり、一人でお留守番させたりしているから、その罪滅ぼしではないが、二人で居る時は沢山構っている。
「ハーナ」
「みゃーあ」
そしてハナの頭にキスを落とす。ハナの柔らかな体毛が口元を覆う。
ゆっくり離して、頭を撫でて毛並みを整えてあげる。すると喉を鳴らして『もっと』と言わんばかりに手に擦り寄ってきた。
「いっぱい撫でてやるから止めろ」
少し呆れ笑いを含みながら言って、ハナの気が済むまで沢山撫でた。
「2人ぼっち」
何もない、白色が広がるだけの空間に飛ばされてから二時間が経過した。ひたすらに歩いてみたが、何もない。
不思議と不安はなかった。わたしには公がいるから。
「…うん、扉も何もないや。通信も繋がらない。」
「でもね、そんなに絶望してないんだ。貴方と一緒だから」
「何年振りだろうね。最近はいっぱい人がいたから、一緒に話すことも少なくなっちゃったから、少し嬉しいかも」
「…」
「ねぇ、王様。私ここで死んでも良いわ。」
「貴方と一緒にいられるなら、貴方と一緒に死ねるなら」
壁にもたれかけるように置かれた死体は、すでに腐敗が進んでいた。