『二人ぼっち』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
フタリシズカの花を見たことがあるだろうか。
私は数年前まで名前も知らなかった。
センリョウ科の多年草で、マットな質感のミントグリーンの葉と、二本の花穂に米粒みたいな白い花をいっぱいつけるのが特徴。花といいつつ花びらはなく、三本の雄しべがくるんと丸まって雌しべを包んでいるのがお米みたいに見える。
同じ仲間にヒトリシズカという花もあるが、あちらは油を塗ったような光沢のある葉で、花穂は一本だけ。使い込んで毛先がボサボサになった歯ブラシみたいな、ちょっと面白い花を咲かせる。
ヒトリシズカの名前は義経の愛妾静御前の舞い姿から、フタリシズカは静御前とその亡霊になぞらえているんだとか。
このフタリシズカと出会ったのは亡くなった祖母が残した庭だった。
車で二時間はかかる祖母の家は、植生が違うのか、道端の雑草さえうちの辺りと違っている。
そして祖母が元気だった頃は特に気にも留めなかった庭には、私が名前も知らないような植物が溢れていた。それまで人並みに花の名前は知っているつもりだったのに、本当にわからなかった。ショックだった。
ゆくゆくは取り壊すことになる祖母の家とともに打ち捨てられるのが忍びなくて、少しずつ、移動できそうな草花を持ち帰った。
祖母の庭は畑の土を入れていたせいかなんでもよく育つ。タンポポもスミレも水仙もうちのよりかなり大きい。ついでに言うと虫もでかい。
そこを無理にわが家の痩せた土に植え替えて、本当のところかなり不安はあった。常緑のものを除けば冬に地上部がいったん枯れる。春にまた芽吹いてくれるかは賭けのようなものだった。
ちいさな芽が顔を出したときは心底ほっとした。
アマドコロ、竜の髭、ヤブランに、桜草、シラン、イヌサフラン。タイワンホトトギス、ホタルブクロ、狐の孫、ギボウシ。おまけでくっついてきたスズメノエンドウとカスマグサ。私も少しは詳しくなった。どれもしっかり根付いてくれたようで嬉しい。
ときに、梨木香歩さんの本には植物がよく登場する。『家守綺譚』やエッセイ『不思議な羅針盤』その他もろもろ、読めば花の名前に詳しいというのがよくわかる。その表記は、ひらがなだったりカタカナだったり漢字だったり一定はしていない。無頓着、もしくは生真面目なひとならどれかに統一しそうなものを、あえて使い分ける感性の豊かさ。手が届かない。
そうそう、フタリシズカのこと。
ヒトリシズカに対して二本の花穂が出るからこの名前なんだけど、必ずしも二本とは限らず、一本だったり三本だったりもするらしい。
栄養豊富な祖母の庭のフタリシズカはどうだったかというと。もちろん一番多いのはフタリだが、ゴニンシズカもかなりあった。
あとの三人、誰?
(二人ぼっち)
嘘かほんとか、十二本まで確認した例もあるとか。
「先輩、お久しぶりです!僕の事、覚えてますか?」
知らん。誰だお前。
とは言えず、放課後の校舎で突然俺に声を掛けてきたちんちくりんの豆柴みたいな奴を見下ろす。
この棟では見かけたことがないし、おそらく隣の棟の1年のガキなんだろう。
しかし、やっぱり知らん。誰だお前。
眉根を寄せてしばし考える。
「先輩…まさか僕の事覚えてないですか?」
俺が覚えていないことを察したのか、悲しそうな顔で豆柴が見上げてくる。
はい、覚えてないです。
「僕と先輩、二人ぼっちの仲なのに?」
「二人ぼっちィ?!」
思わずでかい声で叫んでしまった。
なんなんだ、その野郎同士の仲にあるまじき気色悪いワードは。
俺は自分のケツの心配をした方が良いのだろうか。
この修羅場をどう乗り切ろうか考えた時、ふと、先の言葉の響きを頭の中で反芻する。
何か思い出せそうな予感があった。
二人ぼっち。
おそらく一人ぼっちの二人バージョンということだろう。
二人ぼっち。
ふたりぼっち。
「あーーーーーっ!!!!!!」
思わず豆柴を指差す俺。
「思い出してくれました?!」
無邪気に目を輝かせる豆柴。
思い出したのは、遠い記憶。
──なんだよおまえ、こんなとこにすわってなにしてんの?
──お家のカギ、わすれた。
──母ちゃんは?
──ママ、夜おそくにならないと帰ってこないんだ。パパもしゅっちょうだって。ぼくは今日、ひとりぼっちの日なんだ。
──ふーん。
──なのにお家に入れない。どうしよう……
──じゃあ、ふたりぼっちになる?
──ふたりぼっち?
──そう!おれも毎日、母ちゃんも父ちゃんもしごとでいねえし、ひとりぼっちなんだ!
──お兄ちゃんも?
──おう!だからひとりぼっちとひとりぼっちで、ふたりぼっち!!ふたりぼっちなら、さみしくねえだろ?
「お前……もしかしてあの時のガキ……?!」
「そうです。と言っても先輩と2つしか変わらないので、先輩もガキだったわけですが」
そうだ、全て思い出した。
それから少年二人は、二人ぼっちを掲げ親交を深め遊ぶようになり、お互いの家を行き来するまでになった。
二人ぼっちを先にふっかけたのは俺の方だったんだ。なんてこった。絶望だ。
それにしても、なんかすげえ生意気に成長してやがる。
「確かお前、転校してったんじゃなかったか」
「はい、小2の夏に。僕の事忘れてたってことは…あの約束も覚えてないですよね……?」
待て、どの約束だ、何を交わしやがった俺。
落ち着け、まずい雰囲気になったらシラを切ればいい。
恥ずかしいやつだったら俺は自害する。
覚悟を決めて息を飲む。
「転校が決まって、寂しくて泣いてる僕に先輩が言ってくれたんです。『ふたりぼっちは永遠だ、お互いに思い続けてたらいつかまた会えるぜ。また会えたら、ふたりぼっち再結成しよう!』って」
「さっっっっぶ!!!!」
「僕もそう思います」
「いや、お前は思っちゃだめだろ?!」
豆柴がケラケラと声を上げて笑った。
その顔を見て、思い出した。
あの頃も俺らは、なんでもない事で声を上げてケラケラ笑っていた。
寂しさを二人で埋めるように。
「だから、会いに来ました。中2の夏にこっちに戻ってきたんです。先輩がこの高校に居るって知って、僕も受験しました」
「なにそれこわい」
「変な風に思わないでください。先輩は僕の憧れだったんですよ。優しくてかっこよくて、本当のお兄ちゃんみたいだった。嬉しかったんです、あの日、僕に声を掛けてくれたこと…先輩とふたりぼっちになれたこと…こうして再会できて嬉しいです」
目を細めて笑う姿が、本当に豆柴みたいだな、と思った。
けどな、あの頃、俺もお前が居てくれて心強かったんだぜ。
というのはなんだか癪だし、これからも先輩風を吹かせておきたいのでやめておこう。
「とりあえず、お手」
「はい?」
首を傾げながらも従順に手を差し出す豆柴に、思わず笑ってしまった。
「あ、二人ぼっち、再結成ですか?」
「その約束は破棄させていただきます」
2024.3.22
「二人ぼっち」
あの時の君と家で毎日話していた言葉
内鍵ぜーーんぶ壊したらさ。私たちずっと2人だね。どこからもでれない。ださせない。ふたりぼっちだよ。
叶わなかったけれど少しロマンチックだったななんて思う。
刺し殺されても監禁されても拷問されても、死ぬのも。怖くない。でも君とだったら。
ひとりぼっちは怖いの。殺されるより何倍も。
目を瞑ると真っ白い箱の中に私一人だけ放り込まれて怖くて誰にも声は届かなくて泣いても泣いても意味がなくて。そんな感覚に引き寄せられる。
人間が好きです。街ゆく人も。君も。本指名の男も。これから出会うお客様も。
私はさ。私達はさ。弱いんだ
ひとりぼっちでなんて何も出来ない。
私は1人だとなにもないただの女になってしまう。
だからさ、ひとりぼっちだとダメだから君と私でふたりぼっちでいようよ。
そうしたら最強だね
手を繋いで走っていた。
後ろから来るモノに、追い付かれてはいけなかったから。
時々小さく手を引かれたけど、その度に強く引き返して走り続けた。
追い付かれてしまわぬよう、力付くで引き続けた。
走って、走って、走って
突然強く腕を引かれた。
転んでしまったのかと振り返った。
繋いでいた、握りしめていた手を見た。
其処には誰もいなかった。
後ろにすら、何も無かった。
開いてみた手の中で
小さな小さな指が
黒く干からび潰れていた。
直ぐ隣に居た筈の人を、
顔も声も思い出せない程、
気を遣っていなかったことに気が付いた。
<二人ぼっち>
美しい時間だった。
君と出会ってから、
沢山重ねてきた日々。
夕焼けを背に笑って、
紡がれた筈の言葉。
「……教えてほしいよ」
君の残した走馬灯の中、
いつも、いつも、何回も、
三文字目から先を
聞くことができなくて。
<夢が醒める前に>
「ねえねえ、一緒に帰ろ」
「うんちょっと待って」
たいした話はしない。たいしたことはしないのに、あなたと居られる時間が嬉しい。
なんならさっきで教室で駄弁っていた。それなのに、まだ喋っていたい。
わたし、あの人と二人きりがいいのかな。もうクラス替えで離ればなれになってしまうから、一緒に居られない時間にも慣れないといけないのにね。
「あのさ、」
最後にあなたに告白を。あなたはどう思うだろう、一緒に帰らしてくれるかな。
「あなたのことが好きなの、だから、これからも一緒に居てほしい」
言っちゃった。あなたを照らす夕焼けがとても綺麗だ。
#二人ぼっち
二人ぼっち
「今から少し外歩かない?」
時計を見るやいなや、彼女はそう口にした。
お酒を飲む手を止めて時計を見ると、とっくに二時を回っている。
散歩ついでにお酒を買いに行くのだろうか。
どちらにせよ、外は寒いしできることなら出たくない。
「またお酒買い足しに行くの?もう飲みすぎだよ。時間も時間だし、もう寝ない?」
「違う違う、その辺ぷら〜っと歩くだけ。そう言わず来なよ、ほらほら立って」
「う〜ん...」
外は寒いし出たくない...けど一人残されるのもさみしい...と悩んでいるうちに彼女はすでに靴を履き終えていた。
「ちょ、ちょっと待って!」
私は慌ててハンガーに掛けてあったコートを手に取り、腕を通しながら小走りで玄関に向かった。
「お、行く気になった?あとちょっとで置いてくとこだったよ」
「ちょっとくらい待ってくれたっていいじゃん」
靴を履きながら文句を言う。
「寂しがり屋は置いてくふりしたら寄って来るかなって思って」
私は彼女の手のひらで転がされてたわけか...
何だか悔しい思いを抱きつつ玄関の鍵を閉める。
マンションから出るとふわっと少し冷たい風が頬を撫でる。
思っていたより寒くなくて助かった。
夜中の二時過ぎ、どこに行くわけでもなくひたすらに無言で歩く。
耳に入ってくる音はお互いの足音と少しの雑音だけで、これが不思議と心が落ち着く。
そして、深夜の静寂を切り裂くように彼女が口を開いた。
「私、この深夜の静けさというか、寂しい感じ好きなんだよね」
続けて彼女が言う。
「普段は人や車で溢れている場所が私達の知らない間に見せる本来の姿、みたいな。
何というか、非日常?って感じ」
「あぁ〜なるほど、少し分かる気がする。さっき歩いてる時も思ったけど、聞こえてくる音が私達の足音とか自動販売機の稼働音だけの、不思議な感じ。」
「そうそうそんな感じ。ね?ついてきてよかったでしょ?」
「まあ...うん。私だけだとこの非日常な世界を知ることなかったと思うから、ありがとね。」
彼女がいなかったらこの不思議な感覚は一生知らなかっただろうなと、彼女にお礼を言う。
「いいってことよ」
「にしても、ほんとに静かだね。まるで世界に私達だけみたい」
「私達だけっていうか、二人ぼっちって感じかな」
「二人ぼっち...確かにそっちの方がしっくりくるかも」
空を見上げると、非日常に終わりを告げるかのように遠くの空が少し明るくなっているのが見える。
あと少し、この二人ぼっちの世界を堪能したら帰ろう。
二人ぼっち
この世界に二人ぼっち
君の声以外には何も聞こえない
何も聞きたくもない
君はたまに怖いけれど
僕のためなんだよね?
僕を好きでいて
そしたら僕は君を嫌いにならなくて済むから
「こんにちは、佐々木誠人くん。少しいいかしら?」
昼休憩、弁当を持って人気のない廊下を歩いていると、突然呼び止められる。
自分の名前を呼ばれたので条件反射で振り返るが、そこで僕は声を失った。
そこには不審者が立っていたからだ。
顔には漫画でしか見ないような仮面をかぶり、黒いタキシードを着て、その上に黒いマントで身を包んでいる。
マントで体形が分からないが、声から女子だということが分かる。
だからどうしたという感じであるが。
まさに不審者の中の不審者。
僕のこれまでの人生、そしてこれからの人生で遭遇しないであろう不審者。
間違いなく面倒ごとの匂いがする。
ここはスルーが吉。
「違います。人違いです。それじゃ、ぼく」
もちろん、佐々木誠人は僕の名前だ。
だが不審者に正直に答える義理は無い。
あくまで何でもないようを取り繕い、黒マントの横を通り過ぎようとする。
だが、彼女は僕の前に立ちふさがる。
「どこへ行く」
「はい、一人で静かにお弁当を食べられる場所に……」
「ほう、一人ぼっちで弁当を、ねえ」
黒マントはニヤリと笑った――気がした。
「ああ、自己紹介がまだだったな。私は『一人ぼっち撲滅委員会』のものだ」
「『一人ぼっち撲滅委員会』だって!?」
一人ぼっち撲滅委員会。
それは現生徒会が、少子高齢化の解決という壮大な目的を掲げ、作られた組織だ。
『子供が増えないのは、結婚しない人が増えたから。
結婚しない人が増えたのはカップルが減ったから。
カップルが減ったのは出会いが少ないから。
ならば、作ろうじゃないか!
男女の出会いを!
我々の手で!』
という控えめに言って、頭がおかしい理念によって作られた。
そして、交際相手のいないものに、無理矢理相手を宛がうという常軌を逸した活動している。
そしてこれに対する全校生徒の共通の認識は『出会ったら逃げろ』。
僕は即座に後ろを振り返り、来た道を全速力で走る。
もちろん廊下は走ってはいけないが、緊急事態なので許してもらうことにする。
そして僕は陸上部だ。
足の速さには自信がある。
「無駄だ」
にもかかわらず、僕は捕まってしまった。
後ろから引っ張られ、組み伏せられる。
陸上部の僕より速いだと!?
そんな人間居るわけ……
まさか!
「お前、釘宮か!」
釘宮鈴穂、同じ陸上部で僕より速い人間だ。
男子より速い女子として、ちょっとした有名人だ。
信じたくない事実だが、男子はともかく、女子で僕より早い奴はコイツしかいない。
「ご名答」
勝ち誇りながら、黒マントは仮面を取る。
予想とたがわず、釘宮の顔が現れた。
こいつ、委員会の手先だったのか。
全く知らなかった。
「くそ、何が目的だ」
「委員会の目的はご存じでしょう?『一人ぼっちより二人ぼっち。愛を求める人間に恋人を!』。あなたに恋人を用意しました」
「そんな事が許されると思っているのか!お互いの気持ちを無視したカップルが長続きするとでも!?」
「ご安心を。そこは配慮しています」
釘宮は不敵に笑う。
「ふん、僕の事が好きな人間がいるとでも」
言ってて少し悲しくなる。
「ええ、いますよ」
だが釘宮は衝撃の事実を告げる。
僕の事が好きな女の子がいる?
少し期待しつつ、僕は思わず周囲を見渡す。
だが悲しいかな、ここにいるのは僕と釘宮だけだった。
「どこにもいないじゃないか。男の純情をもてあそびやがって!重罪だぞ!」
だが僕の文句にも、釘宮は動じた様子はいなかった。
「佐々木君。安心してください。ちゃんといます」
「ふん、どこにもいないじゃないか。ここにいるのは僕と釘――はっ」
まさか!
「ふふ、やっと気づきましたか」
釘宮は無表情だった顔を崩し、獰猛な笑みを浮かべる。
「はい、佐々木君が好きなのは私です」
突然なされた愛の告白に頭が真っ白になる。
「え、いや、でも。こういうのはお互いを知ってから……」
我ながら何を言っているのか分からないが、言い訳をする。
だが――
「名案ですね。じっくり話し合うとしましょうか?」
「え?」
「私、そこの空き教室のカギを、たまたま持っているので、そこに行きましょう。
ああ、お弁当を貴方のために作ってきています。
それを食べながら、ゆっくりと話しましょう」
「ちょ、ま」
「ゆっくり、じっくり、話しましょう。空き教室で、二人きりで、ね」
二人ぼっち
『約束の地』
一人ぼっちの僕には友達がいない。
クラスで浮いている僕に話しかける人などいない。
いないはずなのに、、、
未来(みく)「ねぇねぇ穂どう?かわいい?」
僕に唯一話しかけてくる彼女は今日もまた話しかけてきた。
穂(みのる)「何が?」
「いつもと違うでしょ、ほらブレザーの下にパーカー、かわいい?」
未来はピンクのフードを僕に見せびらかせてきた。
穂「はぁ〜、もうすぐで夏なのに考えられない」
未来「オシャレだよオシャレ!かわいい!?」
穂「かわいいんじゃね」
未来「やった!昴のかわいいもらっちゃったー」
穂「昴(すばる)?」
未来「あぁ〜間違えた、穂のかわいいだ、つい癖で、あはははは」
彼氏の名前とでも間違えたのだろう。
勘弁してくれ。
未来「あっもう授業始まっちゃう、じゃあまた後でね」
去り際にさり気なくまた話しかけてくる予約をされた。
本当に変な奴だ。
僕はぼっちなのに頭が悪い。
だからよく先生に居残り勉強をさせられている。
アニメなどではぼっちキャラは頭がいいというのが定番だが現実はそうとはいかないようだ。
今日も1人夕日のが射し込む教室で居残り勉強をしていると
未来「頭悪いのは変わってないんだね」
僕1人だけの教室に未来は入ってきていつもの調子で話しかけてくる。
穂「そういう君は変わってんな、僕みたいなぼっちにこんな風に話しかけてくる女子なんてアニメキャラくらいだと思うけど」
勉強の片手間に言った。
教室が静かになった。
未来の顔を見ると、
穂「何ニヤニヤしてるんだよ」
未来「いや〜嬉しくて、私も変わってないな〜って」
穂「いやだから変わってるんだよ」
未来はさらにニヤニヤした。
本当に変な奴だ。
未来「覚えてないの?」
またこの質問だ。
未来は僕によくこの質問をしてくる。
未来がこの学校に転校してきて、初めて会ったときからずっとしている質問だ。
穂「だからもういいよその質問」
最初の頃は昔どこかで会ったことがあるのかと思ったが、自分のそんなに長くない人生を振り返ってみても未来という女の子に身に覚えはなかった。
未来「そっか、、、赤莉」
赤莉(あかり)?
穂「誰だよ」
未来は目から涙を流した。
そして走って教室から出ていってしまった。
これだから人間関係は嫌なんだ。
どこに地雷があるかわからない人間と喋った僕が間違っていた。
穂「赤莉って、、、」
一人になった教室で未来が言った名前を口に出すと僕も目から涙が流れた。
それと同時に僕の頭の中に存在するはずのない記憶が流れ込んできた。
僕も教室を出て走った。
穂「はぁはぁはぁ、やっぱりここにいた、勘弁してくれよ、ダッシュで階段登るのが一番きついんだって」
僕は屋上に来た、そこには涙目の未来がいた。
未来「なんでここってわかったの?」
穂「みんな平等に前世の記憶があるわけ無いだろ、本当にお前は変わらず変わってんな、赤莉!」
僕は思い出した。
前世での僕、昴と赤莉との記憶を思い出した。
未来「だって、約束したじゃん、またこの学校で出会おうって」
未来は泣きながらそう言った。
穂「ありがと、覚えててくれてこの学校に来てくれたんだよな」
未来「うん、そうだよぉ」
僕は言うべきことを言うことにした。
穂「今度こそはヨボヨボの年寄りになって死ぬまで一緒にいよう、僕と結婚してください」
未来「はい」
「今日からここがあなたの部屋よ」
お母さんがそう言いながら僕を案内した。新しい家の新しい部屋。お母さんも新しい人。全てが今までのものとまるっきり違うから、僕だけが古い人間のような気がした。
案内された部屋はベッドと机と椅子以外は何もなかった。窓が1つ。カーテンもまだない。殺風景な部屋の隅に座り込む。真ん中に座らなかったのは、どうにも隅っこじゃないと落ち着かないからだ。
じっと、膝を抱えて俯いていた。何分何十分そうしていたか分からない。膝小僧に水がぽたぽた落ちてきて服の袖で拭った。僕の涙だった。
その時突然ドアのノックの音がする。この部屋のドアを外から叩いている誰かがいる。こんな時に誰だ。さっきの、新しいお母さんかな。できるなら今日はもう1人にしてほしかった。だけど僕は“聞き分けのいい子”を演じないとお父さんに叱られるから。深呼吸を軽くしたあと扉を開けた。立っていたのは1人の女の子だった。僕よりずっと歳下に見える。ひと回り以上違うかもしれない。誰だろうと思っていたら、
「だぁれ?」
向こうから質問をされた。僕は名前と歳を教えて、今日からここでお世話になる旨を伝えた。こんな小さな子に親の再婚の話をしても果たして通じるかどうか分からなかったからやめておいた。ついでに、“きみのお兄ちゃんになるんだよ”ということもひとまずは伝えなかった。だっていきなり現れた僕が兄になるだなんて、そんな重要なことを簡単に言っていいわけがない。こういうのは親が一緒にいる時じゃないと駄目だと思ったから。
「ふぅん」
その子は適当な返事をしてそのまま僕の部屋に入り込んできた。僕の存在をあんまり深くは考えていないらしい。かと思ったらワンピースのポケットをまさぐり、取り出した何かを僕に見せる。
「きれいでしょ」
「……これは、何?」
「なんかのホウセキのカケラだよ」
あげる、と言って僕に向かって差し出してくる。綺麗なエメラルド色の小石みたいなものが、その子の手の中できらきら光っていた。だがどうみても紛い物である。
「どうして僕に?大切なものなんじゃないの?」
「タイセツだけど、おにいちゃんにあげたら、きっとタイセツにしてくれるきがするから」
今彼女が言った“お兄ちゃん”は、そういう意味は持ち合わせていないのに、呼ばれた瞬間なんだか心がふわっとした。嬉しさなのか恥ずかしさなのか分からない不思議な感覚。くすぐったい、が1番近いかもしれない。
「あたしずっとひとりだったの。ヒトリボッチあきちゃった」
「そうなんだ」
「でもきょうからはフタリボッチだからうれしいな」
笑った顔がとても可愛らしかった。守ってあげたいと思った。親の都合で嫌々に受け入れた再婚だったけど、ずっと潜んでいたその呪いの気持ちのような感情が、この子の笑顔を見たらどこかへ消えてしまった。今日から僕は、この子の兄になるんだ。
「これからよろしくね」
「うん。どういたしまして」
「それを言うなら、“こちらこそ”だよ」
新たな生活は絶望ばかりじゃないかもしれない。根拠もないのにそう思えた。手のひらのエメラルドの石がきらりと光った気がした。
今日は放送の当番だったのを思い出した。
職員室前の質問ボックスを確認し
慌てて放送室に向かう
[あれ?先輩?]
息を整えてからドアを開けた
[今日俺も一緒だよ]
[そうなんですか]
あ〜そういえば忘れてた
[ほら、突っ立ってないでこっち来い、放送始めるぞ]
[は、はい]
先輩に促され電源を入れ名乗り、曲をながす。
混乱してて気づかなかったけど、この先輩ってイケメンで有名なんだよなー
なんだかドキドキするな
[お弁当なんだね]
先輩は購買のサンドイッチか
[はい、作るの好きで]
[自分で作ってるの?]
妙に聞いてくるな
[はい、親がいないので]
[親が居ない?]
あ、口が滑っちゃった
[はい、ちょっと事故で、、、]
言った方がいいのかな
[そうなんだねー、君もなんだね、]
君も?なんだか引っかかるな
[俺もだよ、親亡くしたの]
先輩もなんだ、
[そうなんですね、]
[寂しいよな]
なんでわかるの?、、、
ずっと1人ぼっちだった、
1人には慣れてたはずなのに、、
[はい、寂しいです、ずっと1人ぼっちだと思ってました。]
本音がポロポロ出てくる
[そうだよな、大丈夫、これからは1人ぼっちじゃない、俺がいる]
[先輩、ありがとうございます。]
2人きりの放送室で、2人ぼっち
涙が出るのになぜだか暖かくて、優しくて、目の前にいる先輩が別世界だった。
魔法を使ったかのように、本音を当ててくる。
あぁこれが 恋 というものなんだろうか
お題[2人ぼっち]
No.86
菜の花畑に身を任せ、
小鳥のさえずりを聞く。
あなたと私は
ふたりぼっち。
#11
二人ぼっち
『二人ぼっち』
※意味を知らずにやりました
この世界に居るのは二人だけ。
互いにぼっちとして生きている。
二人とも自給自足を行いなんとしても
生き延びようとしている。
そう、二人ぼっちなのだ。
二人ぼっち、それは良いものやら、良くないものやら…。
二人ぼっちと聞くと二人だけしか居ない空間が頭に浮かぶ。その空間は嬉しいのか、楽しいのか、悲しいのか、嫌なのか…。 二人ぼっちの相手が恋人や好きな人なら嬉しいのかもしれないが、苦手な人や、関わりの無い人等となると、自分はその空間から逃げたくなるだろう。結果、二人ぼっちとは人それぞれ違う捉え方があるのだ。
二人ぼっちって何?一人ぼっちはたぶんわかってる。ちなみに、ぼっちって何?だって人は必ずしも何かしら人と関わりを持っている。それが、SNSの中の人でも、会社やバイト先の人でも、家族でも、同級生でも。だから、一人ぼっちとはどんな人?だから二人ぼっちは良くわからない。朝晩は一人になる時もある。でも、ぼっちだと思うのは気持ち次第だと思うのは私だけ?もちろん人恋しくて淋しい時もあるが、それは別に一生続くわけでもなく、この忙しない現代でぼっちでいる時間も必要だと思う。だから、私は二人ぼっちのぼっちはいらないと思う。何て思う私は、今一人の時間がある事が幸せだからかな?
朝は来ないよ
連帯責任でねむろ
2024 3/22(金)『2人ぼっち』
無邪気に笑っていた君は
いつしか大人になって
説明のつかない複雑な笑顔を
僕に見せる
大丈夫、大丈夫だからって
わたし結構強いんだよって
僕の手を軽く握って
駆け出すから
ふたりして
サヨナラ
さよならって
昨日に手を振ったんだ
二人ぼっち
めまぐるしく
すぎる季節を
共に越えてきた
騒がしいけど安心できて
慌ただしいけど充実してて
やることいっぱいだけど幸せで
大変なこと
いろいろあったけれど
わたしたちすごく
がんばった
立派に巣立った
姿を見て
うれしいのに寂しい
誇らしいのにむなしい
静けさがとても悲しい
だから
もっとふたりで
どこかへ行こう
新しいことやってみよう
見たことない景色を見て
美味しいものを食べよう
そして
楽しかったことを
巣立った彼らとも共有しよう
ねえ
二人ぼっち
もう寂しくないよ
世界に二人だけ
そんな夢物語
叶うわけない
『二人ぼっち』2024,03,22
『2人ぼっち』
「これが1年の最後か…なんか、やだな…」
私は帰り道に呟いた
違うクラスの友達と2人ぼっちの帰り道
他愛のない話で盛り上がる
だがしかし、私の気分は沈んでいた
そして今日は修了式
学生の1年はあっという間である
皆で一緒に写真を撮るなどして楽しんでいる人もいた
年度末であるから別れを惜しむ人もいた
それを横目に私は、スマホで[ストレス緩和]、[愚痴アプリ]等調べていた
今まで仲良くしていたはずの複数人が何故か冷たい対応な気がしている
自分だけ退けられたように感じた
「これが1年の最後か…なんか、やだな…」
※この文章は上と下から両方とも読めます